生命保険を長く続けていると、保険代理店や担当者から「現在の保険を解約して変額保険に切り替えたほうが、将来の返戻金が増える可能性があります」と提案されることがあります。特にメットライフ生命の「つづけトク終身」のような低解約返戻金型の終身保険では、保険料払込期間中に解約すると、払込保険料に対して解約返戻金が少なくなることがあるため、乗り換えるべきか判断に迷いやすいところです。
ただし、現在40万円の解約損が出るから「絶対に継続」、変額保険の運用益が期待できるから「絶対に乗り換え」という単純な比較はできません。重要なのは、今日から先に支払うお金と、将来受け取れる可能性のあるお金、保障内容、運用リスクを同じ条件で比較することです。この記事では、つづけトク終身を継続・払済にする場合と、解約して変額保険へ乗り換える場合の考え方を整理します。
つづけトク終身は「低解約返戻金型」の終身保険
メットライフ生命の「つづけトク終身」の正式名称は「終身保険(低解約返戻金型)」です。終身にわたる死亡・高度障害保障を目的とした保険で、保険料払込期間中の解約返戻金を低く設定する仕組みが採用されています。商品内容や契約時期によって条件が異なるため、自分の契約については契約時の設計書・約款を確認する必要があります。[参照:メットライフ生命 つづけトク終身]
つまり、払込期間の途中で解約したときに「支払った保険料よりかなり少ない金額しか戻らない」という状態そのものが、必ずしも異常なわけではありません。低解約返戻金型の商品では、途中解約時の返戻金を抑えることを前提として設計されています。
たとえば、これまでの払込保険料累計が300万円、現在の解約返戻金が260万円なら、単純比較では40万円少ないことになります。しかし、この40万円だけを見て今後の判断をするのではなく、今後さらに支払う保険料と、継続後に得られる保障・解約返戻金を確認することが大切です。
「今解約すると40万円損」はどう考えればいい?
保険の見直しで難しいのが、これまで支払った金額への考え方です。仮に現在解約すると払込保険料より40万円少なくなるとしても、「40万円を取り戻すためだけに契約を続ける」という判断が必ず正しいとは限りません。
経済的な比較では、すでに支払って戻ってこない部分だけでなく、現在を起点として今後どれだけ支払い、最終的にどれだけの価値を受け取れるかを見る必要があります。たとえば今後6年間でさらに180万円の保険料を払うのであれば、「40万円の損を避けるために180万円払う」と考えるのではなく、180万円を追加で支払った結果、死亡保障や将来の解約返戻金がどう変化するのかを確認します。
逆に、解約して変額保険へ移る場合には、現在受け取れる解約返戻金を新しい資産形成のスタート地点として考えます。そこで初めて、継続した場合と乗り換えた場合を同じ時点から比較できます。
変額保険なら返戻金が高くなるとは限らない
変額保険は、保険料の一部を株式や債券などを中心とする特別勘定で運用し、その運用実績によって保険金や解約返戻金などが変動する生命保険です。運用が好調なら資産が増える可能性がある一方、運用状況によっては期待したほど増えない、あるいは解約返戻金が払込保険料を下回る可能性もあります。生命保険文化センターによると、変額保険の解約返戻金には最低保証がありません。[参照:生命保険文化センター 変額保険]
したがって、「今の終身保険より変額保険のほうが返戻金が高くなる」という説明は、将来の運用結果を一定の利回りで仮定したシミュレーションである可能性があります。シミュレーション上の金額と保証されている金額は分けて考える必要があります。
たとえば変額保険の設計書で年率3%や6%など複数の運用例が表示されている場合、「6%ならこれだけ増える」という数字だけを見るのではなく、より低い運用実績の場合やマイナスになった場合についても確認すると判断しやすくなります。
「つづけトク終身をあと6年続けて払済」と「変額保険へ乗り換え」を比較する
比較するときは、担当者から口頭で説明を受けるだけではなく、現在の契約と新しい契約について数字を並べることが重要です。最低でも次の項目を確認すると、かなり判断しやすくなります。
| 比較項目 | つづけトク終身を継続 | 変額保険へ乗り換え |
|---|---|---|
| 現在の解約損 | 今は確定しない | 解約時点で確定 |
| 今後の保険料 | 残り払込期間分 | 新契約の保険料 |
| 死亡保障 | 現在の契約内容に基づく | 新契約の内容に基づく |
| 解約返戻金 | 契約条件に基づく | 運用実績などで変動 |
| 運用リスク | 商品設計による | 市場変動の影響を受ける |
| 再加入時の審査 | 既存契約なので原則不要 | 新規契約として審査が必要な場合がある |
特に確認したいのが、6年後の払済変更時点での数字です。「あと6年間の保険料総額」「6年後の解約返戻金」「払済変更後の死亡保険金」「その後の解約返戻金の推移」を保険会社に確認すると具体的な比較ができます。
メットライフ生命では、払済保険について、保険料の支払いを中止して保険金額を小さくしながら保障期間を維持する仕組みと説明しています。ただし契約状況や保険種類によって取り扱いできない場合もあります。[参照:メットライフ生命 払済保険への変更]
乗り換える前に必ず確認したい「保障がリセットされる」問題
生命保険の乗り換えは、投資商品の売却・購入だけとは違います。現在の保険を解約すると、その契約の保障はなくなります。メットライフ生命も、一度解約した契約は元に戻せず、再加入時には年齢や健康状態などによって保険料が高くなったり、加入できなかったりする可能性があると案内しています。[参照:メットライフ生命 解約手続き・注意事項]
たとえば現在の保険へ30歳で加入し、現在40歳になっている場合、新しい生命保険は原則として現在の年齢を前提に設計されます。また、この10年間で健康状態が変化していれば、新契約の条件にも影響する可能性があります。
そのため、乗り換えを検討する場合には、新契約が正式に成立する前に既存契約を安易に解約しないことも重要なポイントです。保障の空白期間を作らないよう、具体的な手続き順序について保険会社へ確認しておくと安心です。
保険と資産運用を分けて比較する方法もある
変額保険を検討するときには、「今の終身保険か変額保険か」という二択だけで考える必要はありません。生命保険には死亡保障という役割と、資金を蓄積する役割があります。この2つを分けて検討する方法もあります。
たとえば必要な死亡保障については生命保険で確保し、資産形成についてはNISAなどを利用して投資信託等で運用する、という考え方もあります。一方、保障と資産運用を一つの契約で管理したい人にとっては、変額保険が選択肢になる場合があります。
重要なのは「どの商品が一番儲かるか」だけではなく、何のために保険へ加入しているのかを明確にすることです。死亡保障が第一目的なのか、老後資金形成が第一目的なのかによって適した選択肢は変わります。
担当者には「同じ条件の比較表」を作ってもらう
乗り換えを提案された場合には、「変額保険のほうがお得ですか?」と聞くよりも、数字を指定して資料を出してもらうほうが有効です。現在のつづけトク終身については、現在の解約返戻金だけでなく、1年後・3年後・6年後・10年後などの返戻金と死亡保障額を確認します。
新しい変額保険についても、同じ年数で「払込保険料累計」「死亡保障」「解約返戻金」を並べてもらいます。さらに変額保険については、一つの想定利回りだけでなく、複数の運用ケースで確認することが大切です。
また、「変額保険に変更したほうが将来○万円増える」という説明を受けた場合には、その数字が保証額なのか、一定の運用実績を仮定した試算額なのかを確認してください。ここを区別するだけでも比較の精度は大きく上がります。
現在の解約返戻金と契約内容をまず確認する
メットライフ生命では、契約者向けWEBサービスで保障内容、保険料、解約返戻金額などを確認できます。担当者から提示された数字だけでなく、自分でも現在の契約状況を確認しておくとよいでしょう。[参照:メットライフ生命 ご契約者さまWEBサービス]
また、「6年後に払済にする」という予定であれば、実際にその契約で払済への変更が可能なのか、変更時に死亡保障額はいくらになるのか、解約返戻金はどう推移するのかを保険会社に直接確認しておくことをおすすめします。
保険代理店から乗り換えを提案されている場合でも、現在の保険会社や別の専門家などから説明を受け、複数の視点で比較する方法があります。大きな解約損が発生する契約変更ほど、その場で決めず、資料を持ち帰って数字を確認することが大切です。
まとめ:40万円の解約損だけでなく「今日から先」を比較する
つづけトク終身を今解約すると約40万円の差額が出る場合でも、「40万円損するから継続」「変額保険なら増えそうだから乗り換え」という判断だけでは十分ではありません。比較すべきなのは、現在から先に支払う保険料、将来の解約返戻金、死亡保障、払済後の保障、変額保険の運用リスク、新契約の費用や加入条件です。
特に変額保険の解約返戻金には最低保証がないため、好調な運用を前提としたシミュレーションだけで判断しないことが重要です。一方、既存契約を継続する場合にも、今後支払う保険料に対してどれだけの保障・返戻金が得られるのかを確認する必要があります。
最終判断の前には、「現在解約」「あと6年継続して払済」「変額保険へ乗り換え」の3パターンについて、同じ年齢・同じ期間で金額を並べた比較表を作ると判断しやすくなります。契約時期によってつづけトク終身の条件も異なるため、最終的には手元の保険証券・設計書・約款と最新の解約返戻金を基準に検討してください。


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