45歳で配偶者がおらず、20歳と15歳の子どもがいる家庭では、生命保険の死亡保障をいくらに設定すべきか迷いやすいものです。子どもの独立が近ければ大きな保障は不要という考え方がある一方、まだ高校・大学などの教育費が必要なら一定の保障を残したいケースもあります。
結論として、死亡保険は「45歳なら1,000万円」のように年齢だけで決めるものではありません。死亡後に必要となる教育費・生活費・葬儀等の費用・住宅ローンなどから、遺族年金、預貯金、死亡退職金、住宅ローンの団信などで賄える金額を差し引いて計算します。
特に現金預金が少なく、15歳の子どもがいる家庭では、「家を売れば財産を残せる」という理由だけで死亡保障を葬儀費用程度まで減らすのは慎重に考えたいところです。自宅は現金と違い、死亡直後にすぐ希望価格で売れるとは限らないためです。
死亡保険の必要保障額は「遺族の支出-入ってくるお金」で考える
生命保険文化センターでは、死亡保障の必要保障額について、家族に必要となる生活資金などの「支出見込額」から、公的保障や企業保障、自己資産などの「収入見込額」を差し引いて考える方法を紹介しています。[参照:生命保険文化センター]
したがって、「子どもに1,000万円残したいから1,000万円」という決め方だけではなく、実際に不足する金額を確認することが重要です。
主な支出としては、15歳の子どもが独立するまでの生活費、高校・大学等の教育費、葬儀や整理費用などがあります。一方、入ってくるお金としては遺族年金、死亡退職金、現在の金融資産、団体保険などが考えられます。
つまり死亡保険は、財産を増やして子どもへプレゼントすることが第一目的ではなく、死亡によって家族に生じる資金不足を埋めるためのものと考えると必要額を整理しやすくなります。
20歳と15歳では必要な死亡保障の考え方が違う
20歳の子どもについては、すでに就職して経済的に独立しているのか、大学などに通っていて学費・生活費を親が負担しているのかで必要額が変わります。
例えば20歳ですでに働き、自分の生活費を賄えているのであれば、その子の生活保障を目的とした大きな死亡保険は必要性が低くなります。一方、大学生で卒業までの学費や仕送りを負担しているなら、その残額は必要保障額へ加えることが考えられます。
15歳の子どもは事情が異なります。高校進学から大学等への進学を想定すると、経済的な独立までまだ数年以上あります。親が亡くなった後に誰と暮らすのか、生活費を誰が負担するのかという問題もあります。
「子どもはもう大きいから葬儀代だけで十分」と判断する前に、少なくとも15歳の子どもが独立するまでに必要なお金を具体的に計算することが重要です。
住宅ローンは団体信用生命保険を最初に確認する
住宅ローンが残っている場合、死亡保障を計算するうえで非常に重要なのが団体信用生命保険、いわゆる団信です。
一般的な団信では、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になった場合、保険金によって住宅ローン残高が返済されます。住宅金融支援機構の団信でも、加入者が死亡した場合などに残りの住宅ローンが全額弁済される仕組みが案内されています。[参照:住宅金融支援機構]
例えば住宅ローンが2,000万円残っていても、死亡時に団信で全額返済される契約なら、「死亡保険で住宅ローン2,000万円を用意する」と二重に計算する必要は通常ありません。
ただし、団信に加入しているか、保障対象となる人は誰か、どのような条件で残高が弁済されるかは契約によって異なります。生命保険を増額する前に、住宅ローンの契約書や金融機関で現在の団信内容を確認しましょう。
「死んだら家を売ればいい」だけでは不十分な理由
立地がよく資産価値のある一戸建ては、遺族にとって重要な財産です。しかし、自宅の評価額をそのまま現金預金と同じように考えることには注意が必要です。
死亡後には葬儀や各種手続き、日々の生活費など、比較的早い段階で現金が必要になります。一方、不動産は買主を探し、条件を交渉して契約・引渡しを行う必要があるため、すぐ現金化できるとは限りません。
また、「3,000万円程度で売れると思っていた家が必ず3,000万円で売れる」とも限りません。売却には仲介手数料などの費用も発生します。
そのため、自宅は死亡保障額を減らせる資産の一つではありますが、預貯金がほとんどない場合は死亡直後に使える現金を生命保険などで確保する意味があります。
遺族年金は子どもの年齢によって確認が必要
親が亡くなった場合には、公的な遺族年金を受け取れる可能性があります。会社員など厚生年金の被保険者であれば、一定の要件を満たした遺族に遺族厚生年金が支給される場合があります。[参照:日本年金機構・遺族厚生年金]
また、遺族基礎年金には「子」の年齢要件があり、原則として18歳になった年度の3月31日までの子などが対象です。障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳未満まで対象となる場合があります。[参照:日本年金機構]
したがって15歳の子どもがいる家庭では、公的保障を無視して死亡保険を決める必要はありませんが、遺族年金が子どもの独立までずっと同じ条件で支給されるとも限りません。
勤務形態や加入している年金制度によって金額・要件が変わるため、「自分が今亡くなった場合、子どもにいくら支給されるか」を年金事務所などで確認しておくと必要保障額をより正確に計算できます。
1000万円の死亡保障が十分かは教育費と現金不足から判断する
提案された保険に死亡保障1,000万円が付いていても、それだけで「多すぎる」「少なすぎる」と判断することはできません。
例えば仮に、今後必要な教育・生活資金500万円、葬儀や当面の整理資金200万円、その他の予備資金100万円で合計800万円が必要だとします。そして公的保障などで300万円相当を賄えると見込めるなら、不足額は500万円という考え方になります。このケースなら死亡保障1,000万円には一定の余裕があります。
逆に、20歳の子どもの大学費用がまだ数百万円残り、15歳の子どもも私立高校・私立大学への進学を予定しているなど、今後の教育費負担が大きければ1,000万円でも十分とは限りません。
つまり重要なのは保険会社から提示された「1,000万円」という数字から考え始めることではなく、家庭の不足額を計算した結果として500万円なのか、1,000万円なのか、1,500万円なのかを決めることです。
三大疾病保障と死亡保障は分けて比較したほうがよい
三大疾病への備えと死亡保障は、どちらも重要ですが目的が異なります。死亡保障は死亡後の家族の生活を支えるものですが、疾病保障は本人が生存したまま治療や療養を続ける場合の経済的負担へ備えるものです。
日本では公的医療保険に高額療養費制度があり、1か月の窓口負担が一定額を超えた場合、超過分が支給される仕組みがあります。自己負担限度額は年齢や所得によって異なります。[参照:厚生労働省・高額療養費制度]
ただし差額ベッド代、入院時の食事代、交通費など公的医療保険だけでは賄えない費用もあり、長期間働けなくなることによる収入減も別問題です。
そのため「三大疾病の治療費をほぼ網羅できる」という説明だけで契約せず、何が支払対象なのか、給付条件は診断だけなのか所定の治療が必要なのか、何回受け取れるのか、保険料はいくらなのかを約款・契約概要で確認することが重要です。
現金預金がほぼないなら保険料を上げすぎないことも重要
死亡保障を充実させる一方で見落としたくないのが、現在使える現金です。預貯金がほとんどない状態で生命保険料を大幅に増やすと、病気、失業、住宅修繕、車の故障などが起きた際に家計が苦しくなる可能性があります。
保険は「万一が起きた場合」の備えですが、現金預金は死亡しなくてもさまざまな緊急事態に利用できます。そのため、保険料を払える上限まで保障を増やすことが必ずしも安全とは限りません。
例えば月1万円保険料を増額するなら年間12万円、5年間で60万円です。その保障が本当に必要なのか、それとも一部を緊急予備資金として預金したほうが家計全体の安全性が高まるのかを比較する必要があります。
現金がほぼない家庭では、死亡保障を確保すると同時に、すぐ使える生活防衛資金を作ることも重要です。
まとめ:45歳・子ども20歳と15歳なら「葬儀代だけ」と決める前に不足額を計算する
45歳で配偶者がおらず、20歳と15歳の子どもがいる場合、死亡保障を葬儀費用程度にするべきか、1,000万円以上用意するべきかについて一律の正解はありません。
20歳の子どもがすでに独立していれば大きな生活保障は不要になりやすい一方、15歳の子どもには高校・大学等の教育費や独立までの生活費が残っています。20歳の子どもについても大学在学中などで親が費用を負担しているなら、その残額を考慮する必要があります。
住宅については、まず団信によって死亡時に住宅ローンが完済される契約なのかを確認します。自宅に十分な資産価値があっても、不動産は死亡直後に自由に使える現金ではないため、預金がほぼない場合は一定の現金保障を確保する意味があります。
必要保障額は「子どもの教育・生活費+葬儀等の費用+その他必要資金」から、「遺族年金+死亡退職金+預貯金などの金融資産+その他確実に使える資金」を差し引いて求めるのが基本です。
その計算結果が1,000万円前後なら提案された死亡保障には合理性がある可能性がありますが、数字を出さずに「1,000万円あれば安心」と判断するのは避けたいところです。また三大疾病保障については死亡保障とは別に、公的医療保険、高額療養費制度、勤務先の保障、収入減への備えを確認して必要性を判断します。
特に現金預金がほぼない場合は、高額な生命保険へ加入して毎月の余裕をなくすより、必要な死亡保障を確保しつつ緊急予備資金も積み上げるという両面から家計を設計することが大切です。


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