派遣社員でも社会保険に加入できる?派遣元との契約書がない場合の雇用関係・加入条件・確認方法を解説

社会保険

勤務先の会社とは別の会社から給与を受け取り、その会社が一定のマージンを受け取っている場合、「自分は派遣社員なのか」「社会保険にはどの会社で加入するのか」が分かりにくくなることがあります。

特に注意したいのが、派遣元とされる会社との契約書や労働条件通知書を受け取っていないケースです。派遣労働者であること自体は、健康保険・厚生年金保険へ加入できない理由にはなりません。むしろ適用事業所との雇用関係があり、所定労働時間などの加入要件を満たせば、原則として社会保険の加入対象になります。

ただし「A社で働き、B社から給与が振り込まれている」という事実だけでは、法的に通常の労働者派遣なのか、請負・業務委託なのか、それとも別の関係なのかは断定できません。まず誰と雇用関係があるのかを整理する必要があります。

派遣労働者でも社会保険には加入できる

厚生労働省によると、労働者派遣とは、派遣元事業主が「自己の雇用する労働者」を派遣先の指揮命令のもとで働かせる仕組みです。つまり通常の派遣では、派遣労働者を雇用しているのは派遣先ではなく派遣元です。[参照:厚生労働省 労働者派遣事業について]

そのため、B社に雇用され、B社からA社へ派遣されてA社の指揮命令を受けて働いているのであれば、社会保険については原則として雇用主であるB社側との関係で加入要件を判断します。「実際に仕事をしている場所がA社だからA社の社会保険に入る」という仕組みではありません。

派遣社員、契約社員、パート、アルバイトといった呼び方だけで社会保険加入の可否が決まるわけでもありません。日本年金機構は、適用事業所に常用的に使用される人について、雇用契約書の有無などとは関係なく、労務の対価として給与・賃金を受ける使用関係を基に判断すると説明しています。[参照:日本年金機構 適用事業所と被保険者]

社会保険の加入条件は「派遣かどうか」より勤務実態が重要

健康保険・厚生年金保険では、適用事業所で通常の労働者の週所定労働時間と月所定労働日数のそれぞれ4分の3以上働く場合、原則として被保険者になります。

例えば通常の正社員が週40時間・月20日勤務する事業所なら、週30時間以上かつ月15日以上というのが4分の3基準の一例です。実際には勤務先の通常の労働者の所定労働時間・日数を基準に判断します。[参照:日本年金機構 パートタイマー等の社会保険加入]

4分の3基準に届かない短時間労働者についても、対象となる事業所では一定の要件を満たすと加入対象になります。2026年時点の現行制度では、代表的な要件として週の所定労働時間20時間以上、所定内賃金月額8.8万円以上、2カ月を超えて働く見込み、学生ではないことなどがあります。なお制度改正が予定されているため、実際の加入時点では最新条件を確認する必要があります。[参照:日本年金機構 短時間労働者への適用拡大]

B社と契約書を交わしていない点は確認したほうがよい

「契約書に署名していないから雇用関係は絶対に存在しない」とは限りません。一方で、雇用されているのであれば労働条件が何も明示されていない状態には問題があります。

厚生労働省は、使用者が労働者を採用するときには賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、一定の事項については書面などでの明示が必要であると案内しています。[参照:厚生労働省 労働契約]

したがって「知人の紹介で働き始めた」「B社が給与を振り込んでいる」というだけで済ませず、少なくとも自分の雇用主は誰なのか、雇用形態、契約期間、賃金、労働時間、休日、社会保険の扱いについて書面で確認することが重要です。

本当に「B社からA社への派遣」なのかも確認する

通常の労働者派遣なら、B社と労働者の間に雇用関係があり、B社とA社との間には労働者派遣契約があり、実際の仕事ではA社から指揮命令を受けるという三者関係になります。厚生労働省もこの関係を労働者派遣の基本的な仕組みとして示しています。

例えば、給与はB社から支払われる一方、毎日の仕事内容、出退勤、作業方法などをA社の担当者から直接指示されているのであれば、実態として派遣に該当する可能性を検討する必要があります。ただし契約関係全体を確認しなければ断定はできません。

一方、B社がA社から仕事そのものを請け負い、B社が自ら労働者を指揮して完成させる契約であれば「請負」という別の仕組みがあります。契約書の名称ではなく、実際に誰が仕事の指示をしているかなどの実態も重要です。

「給与からマージンを抜かれている」だけでは違法とは判断できない

派遣会社が派遣先から受け取る派遣料金と、派遣労働者へ支払う賃金が同額ではないこと自体は通常です。派遣料金には労働者の賃金だけでなく、会社負担の社会保険料、有給休暇費用、教育費、募集費、管理費なども含まれ得ます。

そのため「A社が支払った金額からB社が何割か取って残りを給与として振り込んでいる」という説明だけで、不当に給与を中抜きしていると断定することはできません。

ただし、B社との雇用関係も労働条件も明確ではなく、給与の計算方法も分からない状態なら話は別です。給与明細を受け取っているか、基本給・手当・控除額がどうなっているか、源泉徴収や雇用保険、社会保険の扱いがどうなっているかを確認しましょう。

最初にB社へ確認したい項目

このようなケースでは、いきなり「社会保険に入れますか」とだけ尋ねるより、雇用関係そのものを整理すると解決しやすくなります。B社へ次の事項を確認するとよいでしょう。

  • 自分はB社の従業員として雇用されているのか
  • 雇用形態は正社員・契約社員・パート等のどれなのか
  • 労働条件通知書や雇用契約に関する書類はいつ交付されるのか
  • A社への就業は労働者派遣なのか
  • 健康保険・厚生年金保険の加入対象になっているか
  • 雇用保険へ加入しているか
  • 給与明細を発行しているか
  • 社会保険へ未加入なら、その理由は何か

特に「勤務時間などの加入条件を満たしている」と考えられる場合は、B社が健康保険・厚生年金保険の適用事業所なのかも重要です。日本年金機構では、事業所名や所在地などから厚生年金保険・健康保険の適用事業所を検索できるシステムを公開しています。[参照:日本年金機構 適用事業所検索]

B社へ聞いても解決しない場合の相談先

社会保険の加入資格について確認したい場合は、管轄の年金事務所へ相談できます。雇用主、勤務開始日、勤務日数・時間、給与額、給与明細などの資料を用意しておくと状況を説明しやすくなります。

一方、「そもそも派遣として適法な形なのか」「派遣元との関係が分からない」といった労働者派遣制度に関する相談については、都道府県労働局の需給調整事業関係の窓口が選択肢になります。労働条件通知書が交付されないなど労働基準法上の問題については、労働基準監督署や総合労働相談コーナーへの相談も考えられます。

相談するときは「A社・B社」と抽象化するのではなく、実際の会社名、誰から仕事の指示を受けているか、誰が勤務時間を管理しているか、誰から給与を受け取っているか、給与明細の有無などを時系列で整理すると判断材料になります。

まとめ:派遣だから社会保険に入れないわけではない

派遣労働者であることを理由に、健康保険・厚生年金保険へ加入できないという制度ではありません。通常の労働者派遣であれば派遣元との間に雇用関係があり、派遣元側で社会保険の加入要件を満たしているかを判断します。

また、雇用契約書へ署名していないことだけで社会保険の対象外になるわけでもありません。日本年金機構は、雇用契約書の有無ではなく、適用事業所で働き、その対価として給与・賃金を受ける常用的な使用関係があるかを重要な判断要素としています。

一方で、B社との契約書や労働条件通知書がなく、B社から給与を受けながらA社の指揮命令で働いているのであれば、まず「誰に雇用されているのか」「A社での勤務は正式な労働者派遣なのか」「なぜ社会保険へ加入していないのか」を書面で確認することが大切です。加入条件を満たしているにもかかわらず説明が得られない場合は、年金事務所や都道府県労働局などの公的窓口へ資料を持参して相談するとよいでしょう。

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