扶養内のパートでも雇用保険に加入している場合、退職後に失業手当(雇用保険の基本手当)の受給対象になる可能性があります。しかし、妊娠・出産を理由に退職する場合は、通常の転職目的の退職とは少し考え方が異なります。
特に重要なのは、失業手当は「退職した人へ自動的に支給されるお金」ではなく、働く意思と能力があり、実際に求職活動をしている人に支給される制度だという点です。妊娠・出産・育児ですぐ働けない場合は、その期間に失業手当を受けるのではなく「受給期間延長」の手続きを検討することになります。[参照]
扶養内パートでも失業手当を受け取れる可能性がある
「扶養内で年収130万円以内だから失業手当はもらえない」という仕組みではありません。基本手当の受給資格では、年収130万円以内だったかどうかより、雇用保険の被保険者期間などの条件を満たしているかが重要です。
原則として、離職日の以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あることが基本的な条件です。特定受給資格者または特定理由離職者に該当する場合は、離職前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上でも受給資格を満たす場合があります。[参照]
妊娠・出産・育児などによる退職については、離職理由や受給期間延長の手続きなどによって特定理由離職者に該当する可能性があります。ただし、最終的な離職理由や受給資格はハローワークが個別事情を確認して判断します。
妊娠・出産ですぐ働けない期間は失業手当を受給できない
基本手当を受けるには、積極的に就職しようとする意思があり、いつでも就職できる状態で、求職活動をしているにもかかわらず仕事に就けていないことが必要です。厚生労働省も、妊娠・出産・育児などですぐ就職できない人は、その状態の間は基本手当を受給できないと案内しています。[参照]
したがって、出産のためにパートを退職し、「出産してしばらくは育児に専念し、仕事を探す予定はない」という状態であれば、退職直後から失業手当を受け取るという形にはなりません。
反対に、産後に就職できる環境が整い、「今なら仕事が決まれば働ける」「実際に求人を探している」という状態になれば、受給資格を満たしていることを前提として、基本手当の受給手続きを進められる可能性があります。
妊娠・出産なら「受給期間延長」が重要
基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。そのまま何もせず1年以上経過すると、出産・育児が落ち着いてから働こうと思っても、受給期間が終了してしまう可能性があります。
そこで設けられているのが「受給期間延長」の制度です。妊娠・出産・育児などによって30日以上継続して働くことができない場合、その働けない日数を本来の受給期間に加えることができ、延長できる期間は最長3年間です。つまり、通常の1年間と合わせて最長4年間の範囲で受給期間を確保できる仕組みです。[参照]
東京ハローワークでは、妊娠・出産・育児については「3歳未満」の育児で働けない場合も受給期間延長の対象として案内しています。また、30日以上働けなくなった場合には、できるだけ早期に延長申請を行うよう案内されています。[参照]
「産後○カ月から受給」という一律のルールではない
失業手当について、「出産から3カ月後なら必ず受給できる」「産後6カ月から受給開始」といった全国一律の開始月が決められているわけではありません。ポイントは産後何カ月かではなく、実際に就職できる状態になっているかです。
たとえば産後数カ月で保育環境などが整い、仕事が決まれば働ける状態になって求職活動を始める人もいれば、1年以上育児に専念する人もいます。前者は条件を満たした段階で受給手続きを進めることが考えられ、後者は受給期間延長を利用して後から求職活動を始める形が考えられます。
なお、単に「まだ働きたくないので休みたい」という状態では基本手当の対象にはなりません。受給を開始するときには、仕事を探し、採用されれば働ける状態であることが必要です。
2年以内に元のパート先へ戻りたい場合はどうなる?
以前の勤務先へ将来復帰したいという希望があるだけなら、それだけで直ちに基本手当を受けられなくなるとは限りません。ただし、雇用保険の基本手当は「雇用の予約や就職が内定・決定していない失業状態」にある人を対象としています。厚生労働省も、雇用の予約や就職が内定・決定している場合は基本手当の対象となる失業状態とは異なることを案内しています。[参照]
そのため、「できれば2年以内に以前のパート先へ戻りたい」と思っているだけなのか、それとも会社との間で「○月から必ず再雇用する」と具体的に約束しているのかで意味が変わります。
元の勤務先への復帰が確定しておらず、働けるようになった時点で他社も含めて実際に求職活動をするのであれば、その事実をハローワークへ説明したうえで受給資格の判断を受けることになります。復帰の約束がある場合は、自己判断せずその内容を正確に伝えましょう。
退職時には離職票と離職理由を確認する
妊娠・出産による退職では、会社から交付される離職票の内容も確認しておきたいところです。失業給付の手続きでは、離職理由について会社側の記載だけで機械的に決まるのではなく、ハローワークが本人の主張や資料なども確認して最終的に判断します。
特に「妊娠・出産のため退職し、すぐ働けない」という事情がある場合は、その事情をハローワークへ正確に伝えることが重要です。離職理由によって、必要な被保険者期間や給付制限の扱いなどに違いが生じる可能性があります。
退職後は離職票を受け取ったら内容を確認し、妊娠・出産のため30日以上働けない見込みであれば、住所地を管轄するハローワークへ受給期間延長について早めに相談すると安心です。
まとめ:妊娠・出産退職では「すぐ受給」より受給期間延長を確認する
扶養内で年収130万円以内のパートであっても、雇用保険に加入し、被保険者期間などの受給要件を満たしていれば、退職後に基本手当を受給できる可能性があります。扶養内だったことだけを理由に対象外になるわけではありません。
ただし、妊娠・出産・育児によってすぐ働けない間は基本手当を受給できません。この場合に重要なのが受給期間延長です。30日以上働けない場合、本来の受給期間に働けない期間を加え、最大3年間延長できるため、出産・育児後に働けるようになってから受給手続きを進められる可能性があります。
また、「産後○カ月になれば自動的にもらえる」という制度ではありません。働ける状態になり、実際に求職することが受給の前提です。将来元のパート先へ戻りたい場合も、単なる希望なのか再雇用が具体的に決まっているのかで扱いが変わり得るため、退職後は離職票を確認し、妊娠・出産による退職であることと復職予定の状況をハローワークへ伝え、受給期間延長の手続きを確認するのが確実です。


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