子育てをしながらパートで働く場合、「勤務日数を増やして社会保険に加入するか」「勤務時間を抑えて配偶者の扶養内で働くか」は迷いやすい問題です。特に時給制では、勤務日数を増やしても社会保険料などが差し引かれるため、短期的な手取り額だけを見ると差が小さく感じることがあります。
ただし、現在の「扶養の壁」は103万円・106万円・130万円という一つの基準で決まるわけではありません。税金上の扶養と社会保険上の扶養は別制度であり、さらに勤務先の規模や週の所定労働時間によって自分自身が社会保険の加入対象になることがあります。2026年には制度変更もあるため、古い「103万円以内なら扶養」という情報だけで勤務時間を決めないことが重要です。
まず「103万円・106万円・130万円」はそれぞれ意味が違う
年収の壁が分かりにくい最大の理由は、税金と社会保険の基準が混在して語られていることです。特に従来よく知られていた「103万円」は税制上の数字であり、社会保険の扶養を直接決める130万円とは別物です。
税制も改正されており、現在は昔の「103万円」という数字だけで判断できません。国税庁の2026年向け資料では、同一生計配偶者などの所得要件について、給与収入だけの場合は123万円以下と示されています。さらに配偶者特別控除という別の仕組みもあるため、「123万円を1円超えたら世帯の税負担が突然大幅に増える」という単純な制度でもありません。[参照]
一方、106万円・130万円として知られる基準は社会保険に関係します。したがって「扶養内で働きたい」と考える場合は、まず税金ではなく健康保険・厚生年金の加入条件を確認する必要があります。
2026年は「106万円」より週20時間を特に確認
2026年8月時点では、厚生年金の被保険者数が51人以上の企業などで働く短時間労働者について、原則として週の所定労働時間20時間以上、所定内賃金月額8.8万円以上、学生ではない、2か月を超えて雇用される見込みなどの条件を満たすと、健康保険・厚生年金の加入対象になります。[参照]
さらに重要なのが制度改正です。厚生労働省は、いわゆる「年収106万円の壁」と呼ばれてきた月額8.8万円以上という賃金要件を2026年10月に撤廃予定と案内しています。今後は「106万円を超えないようにする」という考え方より、週20時間以上働くかどうかの重要性が高まります。[参照]
なお、企業規模要件も今後段階的に縮小され、2027年10月から35人超、2029年10月から20人超、2032年10月から10人超、2035年10月には撤廃される予定です。社会保険の適用範囲は今後さらに広がっていく方向です。
8時~13時で働くなら「週何時間になるか」を計算する
たとえば実働5時間として考えると、週3日なら15時間、週4日なら20時間、週5日なら25時間です。ここで大きなポイントになるのが週4日勤務です。
| 勤務例 | 週の所定労働時間の目安 | 社会保険でのポイント |
|---|---|---|
| 5時間×週3日 | 15時間 | 20時間未満 |
| 5時間×週4日 | 20時間 | 短時間労働者の20時間要件に該当し得る |
| 5時間×週5日 | 25時間 | 20時間以上 |
つまり「週3~4日なら扶養内」と一括りにはできません。週4日を所定勤務として契約して実働5時間なら週20時間になるため、勤務先の条件などによっては自分自身が社会保険の加入対象になります。
また、休憩時間がある場合は所定労働時間の計算が変わります。「8時から13時までだから5時間」と自己判断するのではなく、雇用契約書に記載された週の所定労働時間を勤務先へ確認するのが確実です。
130万円未満なら必ず扶養に入れるわけではない
社会保険の被扶養者については、「年間収入130万円未満」という基準があります。日本年金機構の2026年の資料でも、原則として年間収入130万円未満で、被保険者の収入との関係など所定の要件を満たす場合に被扶養者になれると説明されています。[参照]
しかし、130万円未満なら勤務条件に関係なく扶養でいられる、という意味ではありません。勤務先で健康保険・厚生年金の加入要件を満たした場合は、130万円未満でも原則として自分の勤務先の社会保険に加入します。
そのため、「年収129万円にすれば大丈夫」と先に年収だけを決めるのではなく、①自分の勤務先が社会保険の適用対象か、②雇用契約上の週所定労働時間は何時間か、③自分自身の社会保険加入条件を満たすか、④満たさない場合に配偶者の健康保険の被扶養者要件を満たすか、という順番で確認すると整理しやすくなります。
処遇改善手当がある介護職は年収計算にも注意
介護職では基本の時給以外に処遇改善に関する手当などが支給されることがあります。たとえば月8万円の基本給与に毎月2万円の手当が付けば月10万円、年間では単純計算で120万円です。毎月2万5,000円なら月10万5,000円で年間126万円になります。
ただし、社会保険の「月額8.8万円」の賃金要件で何を算入するかと、被扶養者認定の年間収入で何を収入として見るかは同じとは限りません。手当の名称だけで自己判断するのは避けたほうが安全です。
さらに勤務日数が月によって増えたり、ほかの手当や賞与が支給されたりすれば、想定していた収入と実際の収入が変わることがあります。扶養内を希望する場合は、勤務先の人事・給与担当者と、配偶者が加入する健康保険の双方へ確認すると確実です。
手取りが1~2万円しか増えなくても社会保険にはメリットがある
社会保険に加入すると健康保険料と厚生年金保険料などが給与から差し引かれるため、加入直後は「勤務時間を増やした割に手取りが増えない」と感じることがあります。ただし、社会保険料は単なる税金ではなく、保障と将来の年金にもつながっています。
厚生年金へ加入すると、その期間や報酬に応じた厚生年金が将来の老齢基礎年金に上乗せされます。また、一定の要件を満たせば障害厚生年金・遺族厚生年金の対象となるなど、国民年金だけの場合より保障が厚くなる面があります。
健康保険にも、病気やけがで働けず給与を受けられない場合に一定の条件で支給される傷病手当金など、被扶養者にはない給付があります。社会保険料は原則として会社と本人で負担するため、目先の手取りだけでは社会保険加入の価値をすべて比較できません。厚生労働省も社会保険加入による保障の充実を案内しています。[参照]
扶養内と週5勤務は「時給換算の手取り」だけで決めない
たとえば扶養内で月10万円、週5勤務で月11万5,000円の手取りになるなら、確かに目先の差は月1万5,000円程度です。勤務日数が月8日ほど増えるなら、「それなら扶養内のほうがいい」と感じるのは自然です。
ただし、この比較では勤務先の実際の社会保険料、所得税・住民税、交通費、手当、賞与、将来の厚生年金などが反映されているかを確認する必要があります。概算の手取り額だけで判断すると実際との差が出ることがあります。
また、子育て中なら「増える手取り」以外も重要です。保育・学童の時間、子どもの急病への対応、通勤時間、家事負担、勤務先でのキャリア、今後勤務時間を増やす予定があるかなども含めて考える必要があります。扶養内勤務にも社会保険加入にも、それぞれ合理的な選択理由があります。
迷ったら勤務先にこの4点を確認する
制度を自分だけで調べ続けるより、まず勤務先の人事・給与担当者に「週3日と週4日では所定労働時間がそれぞれ何時間になるか」「私は健康保険・厚生年金の加入対象になるか」「処遇改善関係の手当は社会保険上どのように扱われるか」「週5勤務の場合の社会保険料控除後の給与見込みはいくらか」を確認すると判断しやすくなります。
扶養内を選ぶ場合は、配偶者の勤務先または加入している健康保険にも被扶養者の収入条件を確認します。さらに、配偶者の会社に独自の家族手当・配偶者手当がある場合は、その支給条件も別途確認しましょう。税金・社会保険・会社独自の手当はそれぞれ別制度です。
特に2026年は社会保険制度の変更時期にあたるため、「以前は106万円まで大丈夫だった」という過去の経験だけで決めず、勤務開始時点の条件を確認することが重要です。
まとめ:130万円だけで決めず、まず週20時間と勤務先の条件を確認
扶養内パートと社会保険加入のどちらが有利かは、手取り額だけでは一律に決められません。「年収130万円未満なら必ず扶養」という認識は正確ではなく、自分の勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合には、130万円未満でも加入対象になることがあります。
特に8時~13時の実働5時間なら、週3日は15時間、週4日は20時間、週5日は25時間となります。週4勤務でも「週20時間」の条件に達する可能性があるため、「週3・4なら扶養、週5なら社会保険」と単純に分けないことが大切です。また、いわゆる106万円の賃金要件は2026年10月に撤廃予定です。
子育てとの両立を優先して週3程度に抑える選択にも合理性がありますし、勤務時間を増やして社会保険に入り、厚生年金や健康保険の保障を充実させる選択にもメリットがあります。まず勤務先に実際の所定労働時間・社会保険加入条件・給与見込みを確認し、その数字と家庭で確保したい時間を並べて比較することが、最も現実的な決め方です。

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