共働きで妻の収入が多い場合、子どもはどちらの扶養?会社員の妻とフリーランス夫・国保の判断基準を解説

社会保険

共働きで子どもが生まれると、「夫と妻のどちらの健康保険へ入れるべきか」が問題になることがあります。特に、一方が会社員として健康保険に加入し、もう一方がフリーランスで国民健康保険に加入している家庭では、一般的な会社員同士の夫婦とは判断方法が少し異なります。

基本的には、夫婦のうち主として家計を支えている側が誰かを収入で比較し、会社員側の収入のほうが多いと認められれば、子どもを会社員側の健康保険の被扶養者にできる可能性があります。一方、フリーランス側の収入のほうが多いと判断されれば、子どもは国民健康保険へ加入することになるのが基本です。

また、国民健康保険には会社員の健康保険のような「扶養」という制度がありません。そのため、同じ子どもについて「国保に加入しながら妻の健康保険の扶養にも入れる」という二重加入はできません。この記事では、会社員の妻とフリーランスの夫という家庭を例に、育休中の収入をどう考えるのか、世帯主は関係するのか、国保と社会保険のどちらになるのかを整理します。

子どもの健康保険は「世帯主が夫だから夫側」とは決まらない

子どもの健康保険を決める際、住民票上の世帯主が夫だから自動的に夫側へ加入する、というルールではありません。健康保険の扶養認定では、誰が主として子どもの生計を維持しているのかが重要になります。

厚生労働省は夫婦共同扶養の取扱いについて、夫婦の一方が会社の健康保険などの被用者保険、もう一方が国民健康保険に加入している場合、両者の収入を比較して、収入が多い方を「主として生計を維持する者」とする考え方を示しています。

したがって、夫が世帯主であっても、妻の年間収入の見込みが夫より多いと判断されれば、子どもを妻の健康保険の被扶養者として申請することが可能です。逆に夫側の収入が多いと認定されれば、原則として子どもは国民健康保険へ加入することになります。

[参照] 厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」

会社員の妻と国保の夫では、どの収入を比較する?

厚生労働省の通知では、夫婦の一方が国民健康保険の場合、会社員など被用者保険の被保険者については「年間収入」を、国民健康保険の被保険者については「直近の年間所得で見込んだ年間収入」を比較するとされています。

会社員側の年間収入は、単純に前年の源泉徴収票だけで決めるのではなく、過去の収入、現在の収入、今後の状況などから今後1年間の収入を見込んで判断するのが基本的な考え方です。

一方、フリーランスの場合は給与所得者のように毎月決まった給与がないため、確定申告書や課税証明書など直近の所得を基礎に、今後の年間収入を判断されることがあります。具体的にどの書類を提出するかは、妻が加入する健康保険組合や協会けんぽなど保険者によって異なります。

たとえば妻が会社員で通常時の年収550万円、夫がフリーランスで直近の年間収入等から約500万円と判断されるなら、通常時の金額だけを見ると妻側が多いことになります。ただし、出産後の育児休業などを含めた今後1年間の見込みを保険者がどのように算定するかによって、最終的な判断が変わる可能性があります。

妻が育児休業に入る場合は「前年550万円」だけでは判断されないことがある

子どもの出生と同時期に妻が育児休業へ入る場合、「前年の年収は550万円だったから妻の扶養で決まり」とは必ずしもいえません。健康保険の共同扶養では、今後1年間の収入見込みが判断材料になるためです。

たとえば育休によって会社から支給される給与が大幅に減少する場合、保険者から育休期間、復職予定日、休業前後の給与などを確認されることがあります。その結果、今後1年間について夫の収入のほうが多くなると判断されれば、妻側の健康保険では被扶養者として認定されない可能性があります。

逆に、育休期間が比較的短く、復職後の給与まで含めて今後1年間を見込むと妻のほうが多いと認定される場合には、妻側へ入れられる可能性があります。したがって、「育休中の月収」だけで比較するのでも、「前年年収」だけで比較するのでもなく、加入先の保険者が算定する年間収入見込みを確認することが重要です。

すでに扶養している子と「これから生まれる子」では育休時の扱いが違う

厚生労働省の共同扶養ルールには、育児休業に関する特例があります。すでに夫婦どちらかの被扶養者になっている子どもについて、主として生計を維持する側が育休を取得した場合は、扶養関係を安定させるため、原則として育休期間中に扶養先を変更しません。

しかし、育児休業中に新たに生まれた子については、この特例はそのまま使えません。新生児については改めて夫婦の収入比較を行い、どちらが主として生計を維持する者なのかを判断することになっています。

第1子の誕生を控えているケースでは、まさにこの「新たに誕生した子」に当たります。そのため「妻は育休前まで年収550万円だったので自動的に妻側」という処理ではなく、出生時点で妻の健康保険へ被扶養者届を出し、保険者に収入見込みを判断してもらう流れになります。

[参照] 厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」

国民健康保険には「扶養」という仕組みがない

会社の健康保険では、条件を満たす家族を「被扶養者」として加入させる制度があります。一方、国民健康保険は仕組みが異なり、原則として家族一人ひとりが被保険者になります。

たとえば夫がフリーランスで国保に加入しており、妻と子どもが夫の収入で生活していても、制度上「夫の国保の扶養家族」という資格になるわけではありません。子ども自身が国民健康保険の被保険者として加入します。

自治体も、国民健康保険には扶養制度がないことを明示しています。国保の加入届は世帯主がまとめて行う場合がありますが、これは世帯主だけが被保険者という意味ではなく、加入している家族それぞれが国保の被保険者です。

[参照] さいたま市「国民健康保険には扶養の制度はありません」

「国保に入れながら妻の扶養に入れる」はできない

公的医療保険は原則として一人につき一つです。子どもが妻の会社の健康保険で被扶養者として認定された場合、その子は妻の健康保険で医療保険資格を持つため、同時に国民健康保険へ加入する必要はありません。

反対に、妻の健康保険で被扶養者として認定されず、他の会社の健康保険などにも加入できない場合には、子どもを国民健康保険へ加入させます。

子どもの状態 加入する医療保険
妻の健康保険で被扶養者として認定 妻の健康保険
妻の健康保険で扶養認定されない・夫は国保 国民健康保険

したがって、「病院では国保を使いながら、制度上は妻の扶養にもしておく」という形にはできません。妻側の被扶養者資格が取得できれば国保には加入せず、取得できなければ国保へ加入する、という二者択一になります。

妻の健康保険の扶養に入れるメリットは保険料が増えないケースが多いこと

会社員の健康保険では、被扶養者が増えても、通常は子ども一人ごとに追加の健康保険料が請求される仕組みではありません。協会けんぽでも被扶養者について個別の保険料負担はありません。

一方、国民健康保険では扶養制度がなく、加入者一人ひとりについて保険料計算の要素があります。そのため子どもを国保へ加入させると、世帯の国民健康保険料が変わる可能性があります。

ただし、国保では未就学児の均等割保険料を5割軽減する全国制度があります。また自治体独自の軽減制度が設けられている場合もあるため、「国保に入ると大人と同じ額がそのまま追加される」という意味ではありません。

[参照] 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」

妻側の健康保険を希望しても自由に選べるわけではない

「会社で手続きをしてもらえるので妻の社会保険へ入れたい」「国保より手続きが楽そう」という希望があっても、本人の希望だけで扶養先を自由に決められるわけではありません。

妻の勤務先から被扶養者届を提出すると、健康保険組合や協会けんぽなどの保険者が共同扶養の基準に沿って審査します。そこで夫の収入のほうが多いと判断されれば、不認定になる可能性があります。

厚生労働省のルールでは、妻側の保険者が被扶養者として認定しない場合、不認定の理由や年間収入の見込み額などを記載した通知を発行することが望ましいとされています。その通知を使って国民健康保険への加入手続きを進める仕組みになっています。

年収550万円と500万円なら妻側になる?

通常時の収入だけで比較すれば、妻550万円、夫500万円で妻のほうが50万円高くなります。そのため妻側の健康保険へ申請する合理的な理由はあります。

ただし、今回のように妻が出産後すぐ育児休業へ入り、今後1年間の会社からの給与収入が大きく下がると見込まれるケースでは、前年の550万円だけで決定されるとは限りません。

また、夫がフリーランスの場合、「年収500万円」という言葉の意味にも注意が必要です。売上500万円なのか、経費を差し引いた事業所得が500万円なのかで書類上の金額は異なります。共同扶養の判断では、保険者から確定申告書、課税証明書などを求められ、所定の方法で収入見込みを算定される可能性があります。

妻550万円・夫500万円という数字だけでネット上から最終結論を出すのではなく、妻の健康保険へ出生前に確認し、育休を含む今後1年間の収入をどの資料・方法で判定するのかを聞くのが最も確実です。

夫の収入が不安定でも「今年はたぶん少ない」だけでは判断されない

フリーランスは会社員と違い、翌年の売上や所得を正確に予測するのが難しいことがあります。しかし、収入が不安定だから自動的に会社員の妻側になるというルールはありません。

厚生労働省の共同扶養ルールでは、国保加入者について直近の年間所得等から年間収入を見込み、会社員側の年間収入と比較します。そのため「今年は仕事が減りそう」「来年は増えそう」といった本人の感覚だけではなく、保険者が認める客観的資料をもとに判断されます。

必要書類は保険者ごとに異なりますが、確定申告書の控え、課税証明書、収支内訳書・青色申告決算書などを求められることがあります。出生前に会社の人事・総務または健康保険組合へ必要書類を確認しておくと、出生後の手続きを早く進めやすくなります。

税金の「扶養」と健康保険の「扶養」は別制度

子どもの扶養について調べていると、健康保険だけでなく「税金上は夫と妻のどちらの扶養にするか」という情報も出てきます。しかし、この2つは別制度です。

今回問題になるのは、病院などで利用する公的医療保険上の被扶養者です。健康保険の扶養先が妻になったからといって、住民票の世帯主を妻へ変更する必要があるわけではありません。

また、16歳未満の子どもには所得税の扶養控除そのものがないため、新生児について「夫と妻のどちらが38万円の扶養控除を受けるか」という問題でもありません。税、健康保険、児童手当、会社の家族手当などはそれぞれ条件が異なるため、分けて考えることが重要です。

出生前に妻の会社へ確認しておくと手続きがスムーズ

出生後は出生届、児童手当、医療費助成など複数の手続きが集中します。そのため健康保険については出産前に妻の会社へ相談しておくとスムーズです。

確認するとよいのは、「夫はフリーランスで国保加入」「妻の通常年収」「夫の直近所得」「妻がいつからいつまで育休予定か」を伝えたうえで、子どもの被扶養者認定にどの書類が必要かという点です。

具体的には、妻の収入見込資料、夫の確定申告書や課税証明書、出生を確認できる書類などを求められる可能性があります。加入している健康保険が協会けんぽではなく企業の健康保険組合の場合、組合独自の確認書類が設定されていることもあります。

妻側で不認定になった場合は速やかに国保へ加入する

妻側の健康保険へ申請したものの、夫の年間収入のほうが多いなどの理由で被扶養者認定されなかった場合は、子どもを国民健康保険へ加入させます。

自治体では、職場の健康保険などの被扶養者にならない子どもについて、出生後に国保加入の届出を求めています。手続期限は自治体案内では一般に出生後14日以内とされるため、妻側の審査が必要なケースでは事前に会社と自治体へ流れを確認しておくと安心です。

[参照] さいたま市「赤ちゃんが生まれました。赤ちゃんも国民健康保険に入らなければいけませんか?」

まとめ:まず妻の健康保険へ申請可否を確認し、収入比較で決まる

夫がフリーランスで国民健康保険、妻が会社員で健康保険へ加入している場合、子どもの医療保険は世帯主が誰かではなく、夫婦の収入を比較して誰が主として生計を維持しているかをもとに判断されるのが基本です。

厚生労働省の共同扶養ルールでは、会社員側については今後1年間の年間収入を見込み、国保加入者については直近の年間所得等から見込んだ年間収入を比較します。そのため、通常時に妻550万円・夫500万円なら妻側が候補になりますが、妻が育児休業へ入る場合は、育休を踏まえた収入見込みを保険者がどう判断するか確認する必要があります。

また、すでに扶養中の子については育休中も原則として扶養先を変えない特例がありますが、これから生まれる第1子は出生時に新たに収入比較をして認定されます。

国民健康保険には扶養制度がないため、「子どもを国保へ加入させながら妻の健康保険の扶養にも入れる」ということはできません。妻の健康保険で被扶養者として認定されれば妻側だけに加入し、認定されなければ原則として国保へ加入します。

したがって、実務的には出産前に妻の会社の人事・総務または健康保険組合へ、「配偶者はフリーランスで国保加入、直近の所得はこの程度、本人は育休予定」と伝え、新生児の共同扶養判定に必要な書類と年間収入の算定方法を確認するのが最も確実です。その判定で妻側が主たる生計維持者と認められれば、希望している会社の健康保険へ子どもを入れられる可能性があります。

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