傷病手当金を受給中に副業はできる?収入がある場合の支給条件と会社に知られる可能性を解説

社会保険

病気や心身の不調で会社を休職し、給与が支給されなくなると、健康保険の傷病手当金を利用できる場合があります。一方、休職前から動画編集やライティング、ネット販売などの副業をしている場合、「副業を続けながら傷病手当金を受給できるのか」という問題が生じます。

傷病手当金で重要なのは、単純に副業収入があるかどうかだけではありません。療養のため本来の仕事に就くことができない「労務不能」の状態なのかが重要な支給要件です。そのため、副業をしている場合は、その仕事内容、作業時間、収入の性質などを含めて個別に判断される可能性があります。

この記事では、傷病手当金と副業の関係、副業を続ける際の注意点、申請によって勤務先に副業が知られる可能性について、公的制度の仕組みをもとに整理します。

傷病手当金は「会社を休んでいれば必ずもらえる制度」ではない

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガによって療養し、仕事を休んだ場合の生活保障を目的とする制度です。協会けんぽでは、主な支給条件として、業務外の病気・ケガの療養であること、仕事に就くことができないこと、連続する3日間を含め4日以上仕事を休んでいること、休業期間について十分な給与を受けていないことなどを挙げています。[参照]

特に副業との関係で重要なのが「仕事に就くことができないこと」です。これは一般に「労務不能」と呼ばれ、単に勤務先を休職しているという事実だけで決まるわけではありません。

労務不能かどうかについては、療養担当者である医師等の意見などを踏まえて判断されます。そのため、主治医から休養を指示されている場合でも、実際の就労状況によっては確認が必要になることがあります。

傷病手当金を受給しながら副業を続けられるのか

副業をしているからといって、直ちに傷病手当金が一律に受給できなくなると単純化することはできません。一方で、実際に副業として労働している事実は、労務不能かどうかを判断するうえで重要な事情になり得ます。

例えば、本業では対人対応や長時間勤務が必要で、その業務を行うことが療養上困難である一方、自宅でごく短時間の軽作業を行っているケースと、休職期間中も毎日数時間にわたって継続的に動画編集案件を受注・納品しているケースとでは事情が異なります。

後者の場合には、「継続して仕事ができているのであれば、本当に労務不能なのか」という確認につながる可能性があります。傷病手当金を申請するためだけに副業を隠したり、実際の就労状況と異なる説明をしたりすることは避けるべきです。

動画編集など在宅副業でも注意が必要

動画編集、Webライティング、プログラミング、イラスト制作などは自宅でできるため、「会社に出勤していないから問題ない」と考えがちです。しかし、傷病手当金における判断では、勤務場所だけでなく実際に労務を提供しているかという点が問題になります。

例えば、休職期間中にクライアントから動画編集を1本1万円で継続的に受注し、編集、修正、納品まで毎週行っているのであれば、実態として仕事をしていると評価される可能性があります。反対に、過去に制作したコンテンツから広告収入が自動的に入金されているだけなど、現在の労働による収入とは性質が異なるケースも考えられます。

したがって、単純に「副業収入が月○万円以下なら大丈夫」といった金額だけで判断するのは適切ではありません。何を、どの程度の時間、どの頻度で行い、その対価として何を受け取っているのかを整理する必要があります。

有給休暇中と傷病手当金の申請期間は分けて考える

会社から給与が全額支給されている期間については、原則として傷病手当金は支給されません。傷病手当金は、療養のため仕事を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合の所得保障だからです。

そのため、「今月までは有給休暇を使い、来月から無給休職になる」というケースでは、実際に傷病手当金の支給対象となる期間を確認することが大切です。給与が一部支払われている場合についても、傷病手当金との調整が行われることがあります。

なお、傷病手当金の申請では勤務状況や賃金の支払状況について事業主による証明が必要です。協会けんぽも、給与の支払いの有無について事業主の証明が必要になるため、1か月単位・給与締切日ごとの申請を案内しています。[参照]

傷病手当金を申請すると会社に副業がバレる?

傷病手当金の申請書には、被保険者本人だけでなく、事業主と療養担当者が記入する部分があります。事業主記入欄では、申請期間中の勤務状況や賃金支払状況などを証明します。[参照]

ただし、傷病手当金を申請したことだけを理由として、副業の内容が自動的に勤務先へ通知される仕組みだと考えるのは適切ではありません。一方、申請内容について確認が必要になった場合など、結果的に事情の説明が必要になる可能性まで否定することはできません。

また、「会社に副業が知られるか」という問題と「傷病手当金を受給できるか」という問題は別です。会社の就業規則で副業について届出や許可が必要とされている場合には、そのルールについても確認する必要があります。

副業をしている場合は申請前に何を確認すればよい?

副業を続けている状態で傷病手当金を申請する場合、自己判断で「少ししか働いていないから大丈夫」と決めるのは避けたほうが安全です。まず、加入している健康保険の保険者に具体的な状況を伝えて確認する方法があります。協会けんぽ加入者であれば、加入している都道府県支部へ問い合わせることができます。

問い合わせる際には、「副業しています」だけではなく、副業の仕事内容、1日・1週間の作業時間、作業頻度、報酬額、雇用契約なのか業務委託なのか、休職前から続けていた仕事なのかといった情報を整理しておくと状況を説明しやすくなります。

また、主治医にも副業の作業状況を伝えておくことが重要です。本業を休職している一方で一定の仕事をしている場合、その活動が療養上問題ないのかについて医師と認識を合わせておく必要があります。

副業を隠して傷病手当金を申請するのは避ける

傷病手当金を受け取りたいからといって、実際には仕事をしているにもかかわらず、その事実を意図的に隠して申請するのはおすすめできません。傷病手当金は実際の療養状況や就労状況を前提として審査される健康保険給付だからです。

特に、継続的な受注、納品記録、報酬の振込などがある副業では、「実際にはどの程度働いていたのか」を客観的に説明できるようにしておくことが重要です。

判断に迷う場合は、申請前に健康保険の保険者へ事実関係をそのまま伝えて確認するのが確実です。会社に副業を知られたくないという事情があっても、それを理由として保険者への説明を省略することは別のリスクにつながります。

まとめ|傷病手当金と副業は「収入の有無」だけでは判断できない

傷病手当金を受給しながら副業ができるかを考える際には、単純に「副業収入がある=受給不可」「在宅副業なら問題なし」と判断しないことが重要です。中心となるのは、病気やケガによって本来の仕事に就くことができない状態であるかという支給要件です。

動画編集などの副業を継続している場合には、仕事内容、作業時間、頻度、報酬の性質などによって判断に影響する可能性があります。また、傷病手当金の申請には事業主による勤務・賃金状況の証明も必要です。

そのため、副業をしている状態で申請を検討するときは、副業の実態を整理したうえで、加入している健康保険の保険者と主治医に事前確認することが重要です。制度の支給条件や申請書については、協会けんぽなど加入先の最新情報を確認し、事実に沿って申請するようにしましょう。

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