障害基礎年金を受給しながら会社などで働き、厚生年金保険料を納めている場合、「払った厚生年金保険料は65歳になったらどうなるのか」「現在の障害基礎年金に上乗せされるのか」は重要なポイントです。
特に知的障害などによる20歳前傷病の障害基礎年金を受給している人は、障害基礎年金と老齢年金を別々の制度として理解する必要があります。原則として同じ人に複数の年金を受ける権利がある場合は一つを選択しますが、65歳以降には例外的に組み合わせて受給できるケースがあります。
この記事では、障害基礎年金を受給しながら厚生年金に加入して働いた場合、65歳以降の年金がどのようになるのかを、20歳前傷病の場合も含めて分かりやすく整理します。なお、年金制度や金額は改正されることがあるため、実際の受給時には日本年金機構や年金事務所で最新情報を確認することが大切です。
- 障害基礎年金を受給しながら厚生年金に加入して働くことはできる
- 週20時間働けば必ず社会保険に加入するとは限らない
- 払った厚生年金保険料は65歳以降の老齢厚生年金につながる
- 65歳以降は「障害基礎年金+老齢厚生年金」という組み合わせが可能
- 「障害基礎年金+老齢基礎年金」と二重にもらえるわけではない
- 20歳前傷病の障害基礎年金でも考え方の基本は同じ
- 20歳前傷病では働いたときの「所得による支給制限」に注意
- 働いていることが障害年金の更新に影響する場合もある
- 具体例で考えると仕組みが分かりやすい
- 厚生年金を払った期間が長いほど老齢厚生年金は基本的に増える
- 国民年金保険料と厚生年金保険料を混同しないことも大切
- 65歳になったら自動的に最も有利な組み合わせへ変更されるとは限らない
- 「ねんきんネット」で厚生年金の加入記録を確認しておく
- まとめ:障害基礎年金を受けながら納めた厚生年金は65歳以降につながる
障害基礎年金を受給しながら厚生年金に加入して働くことはできる
まず押さえておきたいのは、障害基礎年金を受け取っていること自体を理由として、厚生年金に加入できなくなるわけではないという点です。
勤務先や労働条件などが厚生年金の加入要件を満たしていれば、障害基礎年金を受給している人も厚生年金の被保険者になります。給与から厚生年金保険料が差し引かれ、勤務先も保険料を負担します。
ここで重要なのは、厚生年金保険料を払ったからといって、その都度、現在受給している障害基礎年金の金額が増えるわけではないということです。厚生年金への加入期間や報酬は、将来の老齢厚生年金を計算する際に反映されます。
週20時間働けば必ず社会保険に加入するとは限らない
「週20時間」という基準は短時間労働者の社会保険加入要件の一つとして知られています。しかし、週20時間以上働くだけで全員が自動的に厚生年金へ加入するという意味ではありません。
勤務先の規模、賃金、雇用期間の見込み、学生であるかどうかなど、その時点の社会保険の適用要件によって判断されます。また、制度改正によって適用範囲が変更されることもあります。
したがって将来の年金を考えるときには、「週20時間働いたか」だけでなく、実際に厚生年金の被保険者になり、厚生年金保険料を納めている期間がどれだけあるかを確認することがポイントです。
払った厚生年金保険料は65歳以降の老齢厚生年金につながる
会社員などとして厚生年金へ加入した期間があれば、その加入期間と標準報酬月額・標準賞与額などを基礎として老齢厚生年金が計算されます。
例えば、障害基礎年金を受給しながら30歳から60歳まで厚生年金に加入して働いた場合、その30年間の厚生年金加入記録がなくなるわけではありません。原則として老齢厚生年金の受給資格を満たしていれば、将来の老齢厚生年金の計算に反映されます。
ただし、「これまで払った厚生年金保険料の合計額が、そのまま障害基礎年金へ足されて返ってくる」という仕組みではありません。年金は預金口座への積立とは異なり、法律で定められた計算式によって年金額が決まります。
65歳以降は「障害基礎年金+老齢厚生年金」という組み合わせが可能
公的年金には原則として「1人1年金」という考え方があり、支給事由の異なる複数の年金を受給できる場合には、原則としていずれかを選択します。
しかし65歳以降には例外があります。日本年金機構は、65歳以後について、障害基礎年金と自分の老齢厚生年金をあわせて受けることができると案内しています。
つまり、条件を満たして老齢厚生年金の受給権が発生すれば、65歳以降に「障害基礎年金+老齢厚生年金」という形で受給できる可能性があります。これが、障害基礎年金を受けながら厚生年金に加入して働く人にとって非常に重要なポイントです。
「障害基礎年金+老齢基礎年金」と二重にもらえるわけではない
ここは混同しやすいところです。65歳になったからといって、現在の障害基礎年金に老齢基礎年金がそのまま追加され、「障害基礎年金+老齢基礎年金+老齢厚生年金」という三段重ねになるわけではありません。
65歳以降に重要になる組み合わせの一つが、障害基礎年金+老齢厚生年金です。一方、老齢年金を選択する場合には老齢基礎年金+老齢厚生年金という組み合わせがあります。
そのため、「厚生年金を払えば現在の障害基礎年金そのものが増額される」と理解するより、「将来、障害基礎年金とは別の老齢厚生年金を受けられる可能性が生まれ、その組み合わせが65歳以降に認められている」と理解すると分かりやすいでしょう。
20歳前傷病の障害基礎年金でも考え方の基本は同じ
知的障害など、初診日が20歳になる前にある障害については、一定の要件を満たすことで20歳前傷病による障害基礎年金の対象となることがあります。
20歳前傷病による障害基礎年金は、本人が障害の原因となった傷病について年金保険料を納めていなかった場合にも支給され得る制度です。このため通常の障害基礎年金とは異なり、本人の前年所得による支給制限など特有のルールがあります。
一方、その後就職して厚生年金に加入すれば、その厚生年金の加入記録は将来の老齢厚生年金につながります。20歳前傷病による障害基礎年金を受けているから、その後に納めた厚生年金保険料が無意味になるということではありません。
20歳前傷病では働いたときの「所得による支給制限」に注意
20歳前傷病による障害基礎年金について特に注意したいのが所得制限です。通常の保険料納付を要件として支給される障害基礎年金とは異なり、20歳前傷病による障害基礎年金には本人の所得に応じた支給制限があります。
一定額を超える所得がある場合、障害基礎年金の半額または全額が一定期間支給停止となることがあります。基準額は扶養親族の有無などによっても変わるため、単純に「年収○万円までなら大丈夫」と一律には判断できません。
ただし、週20時間働いたこと自体を理由として自動的に障害基礎年金が停止されるわけではありません。20歳前傷病の場合には、就労時間と所得制限を分けて考える必要があります。
働いていることが障害年金の更新に影響する場合もある
所得制限とは別に、障害年金そのものの障害状態についても考える必要があります。障害年金が有期認定の場合には、一定期間ごとに障害状態確認届(診断書)などによって障害状態が確認されます。
特に精神障害や知的障害では、単純に「働いている=障害年金が停止」という仕組みではありません。仕事内容、職場から受けている援助、コミュニケーションの状況、日常生活能力などを含め、障害状態が総合的に判断されます。
したがって、厚生年金へ加入して働くことと、障害年金の障害状態に関する審査、20歳前傷病の所得制限は、それぞれ区別して理解することが大切です。
具体例で考えると仕組みが分かりやすい
例えば、知的障害による20歳前傷病の障害基礎年金を受給している人が、25歳から厚生年金に加入して働き始めたとします。
その後も障害基礎年金の支給要件を満たしながら厚生年金への加入を続け、老齢年金の受給資格も満たしたとします。この場合、厚生年金へ加入した期間と給与などに応じて、将来の老齢厚生年金が計算されます。
65歳になったときには、制度上の要件を満たしていれば「障害基礎年金+老齢厚生年金」という組み合わせを選択できます。したがって、厚生年金へ長く加入して働くことで、65歳以降の受給総額が現在の障害基礎年金だけの場合より増える可能性があります。
厚生年金を払った期間が長いほど老齢厚生年金は基本的に増える
老齢厚生年金の報酬比例部分は、厚生年金に加入していた期間と、その間の報酬などを基礎として計算されます。そのため、基本的には加入期間が長く、計算の基礎となる報酬が高いほど老齢厚生年金額も大きくなります。
例えば同じ給与水準なら、5年間だけ厚生年金へ加入した場合より20年間加入した場合のほうが、将来の老齢厚生年金は原則として多くなります。
ただし具体的な金額は加入期間だけでは決まりません。給与や賞与、加入した時期などによって変わるため、「毎月○円払えば65歳から○円増える」という単純な計算にはなりません。
国民年金保険料と厚生年金保険料を混同しないことも大切
障害基礎年金を受給している人は、国民年金保険料について法定免除の対象となる場合があります。一方、会社で厚生年金の被保険者になれば、給与などを基礎として厚生年金保険料を負担します。
このため、「障害基礎年金をもらっているから年金保険料は全部払わなくてよい」とは限りません。厚生年金の適用事業所で加入要件を満たして働けば、原則として厚生年金へ加入します。
自分が現在どの制度へ加入しているか分からない場合は、給与明細の「厚生年金保険料」の欄や、ねんきんネットの加入記録を確認すると分かりやすいでしょう。
65歳になったら自動的に最も有利な組み合わせへ変更されるとは限らない
複数の年金を受ける権利が生じた場合には、年金の選択に関する手続きが必要になるケースがあります。そのため、65歳になった時点で何もしなくても自動的に最も有利な受給方法になる、と決めつけないほうが安全です。
日本年金機構では、65歳以降に障害基礎年金と老齢厚生年金をあわせて受けられることを案内していますが、個人によって年金加入歴や受給権が異なります。
65歳が近づいた段階で年金事務所に相談し、「障害基礎年金を受給中で、厚生年金の加入期間がある」と伝え、受給可能な組み合わせと見込額を確認すると確実です。
「ねんきんネット」で厚生年金の加入記録を確認しておく
厚生年金をきちんと掛けているか確認したい場合には、日本年金機構の「ねんきんネット」が便利です。これまでの年金加入記録や保険料納付状況などを確認できます。
給与明細で毎月厚生年金保険料が引かれている場合でも、長期的な年金記録を確認しておくことには意味があります。転職などをした場合にも、自分の加入記録を確認できます。
将来受け取れる年金については、現在の条件が将来まで続くと仮定した試算なども可能です。ただし障害年金と老齢年金の選択・併給について個別判断が必要な場合には、年金事務所へ相談するのが確実です。
まとめ:障害基礎年金を受けながら納めた厚生年金は65歳以降につながる
障害基礎年金を受給しながら厚生年金に加入して働いた場合、納めた厚生年金保険料によって現在の障害基礎年金が直接増額されるわけではありません。
その代わり、厚生年金への加入期間や報酬は将来の老齢厚生年金に反映されます。そして65歳以降には、要件を満たせば「障害基礎年金+老齢厚生年金」という組み合わせで受給することが可能です。
したがって、20歳前傷病による障害基礎年金を受けている人が厚生年金へ加入して働き続けた場合でも、その厚生年金加入期間が無駄になるわけではありません。長く加入すれば、原則として将来受け取れる老齢厚生年金にも反映されます。
一方、「障害基礎年金+老齢基礎年金+老齢厚生年金」のすべてを単純に足して受給できるわけではない点には注意が必要です。また20歳前傷病による障害基礎年金には本人の所得による支給制限があるため、働きながら受給する場合にはこの点も確認しておく必要があります。
さらに、週20時間勤務だけで必ず厚生年金へ加入するとは限りません。実際に社会保険の加入要件を満たして厚生年金の被保険者になっているかを、給与明細やねんきんネットで確認することが重要です。
年金制度は加入歴、障害年金の種類、障害等級、所得、厚生年金の加入期間などによって個別の結果が変わります。将来の具体的な受給額を知りたい場合は、ねんきんネットで加入記録を確認したうえで、年金事務所に「20歳前傷病の障害基礎年金を受給しており、現在は厚生年金に加入している。65歳以降に障害基礎年金と老齢厚生年金をどのように受給できるか」と相談すると確認しやすいでしょう。


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