生理用ナプキンやタンポンなどは、月経のある人にとって生活上ほぼ不可欠な用品です。物価上昇で生理用品の価格も負担になりやすい中、「食品が軽減税率8%なら、生理用品も減税・非課税にできないのか」「必要不可欠なものなら公費で支援してもよいのでは」と疑問に感じるのは自然なことです。
日本では現在、生理用ナプキンなどの生理用品は消費税の軽減税率対象に含まれておらず、原則として標準税率10%が適用されます。これは「生理用品は必要性が低い」と政府が認定しているからではなく、現在の軽減税率制度が、対象品目を原則として「酒類・外食を除く飲食料品」と「一定の定期購読新聞」に限定する制度設計になっているためです。
一方、「生理の貧困」は国も政策課題として認識しており、自治体による生理用品の無料配布や学校・公共施設への設置など、税率を下げる方法とは別の支援も進められています。生理用品の負担を考える際には、消費税の仕組みと支援政策を分けて理解すると分かりやすくなります。
生理用ナプキンの消費税率は現在10%
日本の消費税には標準税率10%と軽減税率8%があります。国税庁によると、軽減税率の対象になっているのは、酒類・外食を除く飲食料品と、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞です。
生理用ナプキン、タンポンなどの日用品はこの対象品目に含まれていないため、原則として10%の標準税率が適用されます。[参照:国税庁・消費税の軽減税率制度]
「生活に必要不可欠かどうか」で商品ごとに税率が決められているわけではない点が重要です。現在の制度では、必要性の高い日用品であっても、軽減税率の対象として法律上定められていなければ10%になります。
なぜ必要不可欠な生理用品が軽減税率になっていないのか
軽減税率は、2019年10月の消費税率10%への引き上げと同時に、低所得者への配慮という観点から導入されました。その際、対象を主に飲食料品へ限定する制度になりました。財務省も、軽減税率の対象を酒類・外食を除く飲食料品と一定の新聞と説明しています。[参照:財務省・消費税の軽減税率制度の概要]
その結果、生理用品だけでなく、トイレットペーパー、衣類、洗剤、紙おむつなど、日常生活で必要性の高いさまざまな商品も原則10%です。つまり現行制度は「必需品すべてを低税率にする」という設計ではありません。
生理用品を8%や0%にすること自体は、法律を改正すれば制度上不可能というわけではありません。ただし、その場合には「なぜ生理用品は対象で紙おむつは対象外なのか」「医薬品や介護用品はどうするのか」といった対象範囲の線引きも政策課題になります。
消費税をゼロにすると実際いくら安くなる?
消費税10%の商品について、税抜価格1,000円なら税込価格は1,100円です。仮に税率が0%となり、税負担減少分が販売価格へそのまま反映されれば、100円安くなる計算です。
| 税抜価格 | 消費税10% | 消費税0%なら | 差額 |
|---|---|---|---|
| 500円 | 550円 | 500円 | 50円 |
| 1,000円 | 1,100円 | 1,000円 | 100円 |
| 3,000円 | 3,300円 | 3,000円 | 300円 |
| 10,000円 | 11,000円 | 10,000円 | 1,000円 |
例えば税込で毎月1万円程度の生理用品を購入している場合、その価格に標準税率10%が通常どおり含まれているとすれば、税抜価格は約9,091円、消費税相当分は約909円です。年間では単純計算で約1万900円の消費税相当額になります。
したがって消費税をゼロにすることで負担は確実に減りますが、月1万円の支出そのものがゼロになるわけではありません。税率変更と、生理用品そのものを公費で提供する政策は負担軽減の規模がかなり異なります。
「税金で生理用品を賄う」という政策も考えられる
生理用品の負担軽減策は、消費税を下げる方法だけではありません。学校、自治体施設、相談窓口などで生理用品を無料提供し、公費や寄付などで費用を負担する政策もあります。
内閣府男女共同参画局は、経済的な事情などで生理用品を購入できない女性や女の子がいる問題を「生理の貧困」として取り上げています。自治体では、防災備蓄品や予算、寄付などを活用した無料配布の取組が行われています。[参照:内閣府男女共同参画局・生理の貧困]
学校のトイレなどへ無料の生理用品を設置する自治体もあります。2026年度にも、地域女性活躍推進交付金を活用し、学校や公共施設で生理用品を提供する取組が確認できます。[参照:内閣府男女共同参画局・地域女性活躍推進交付金]
減税と無料配布にはそれぞれメリット・課題がある
生理用品の消費税を下げる方法には、購入するすべての人の負担を広く減らせるメリットがあります。所得や申請手続きに関係なく、店頭で購入するだけで恩恵を受けられるからです。
一方で、所得に関係なくすべての購入者へ同じ税率が適用されるため、経済的に困っている人だけを重点的に支援する制度ではありません。税収も減少するため、どの財源で補うのかという議論も必要になります。
無料配布や給付方式なら、学校の児童・生徒、生活に困っている人など特に必要性の高い層へ重点的に支援できます。その反面、利用できる場所や対象者が限定されたり、申請することへの心理的負担が生じたりする可能性があります。どちらか一方だけが正解というより、政策目的によって向き不向きがあります。
「必需品なら全部非課税」にすると線引きが難しくなる
生理用品を非課税にする議論でよく問題になるのが、必需品をどこまで対象にするかです。生活に不可欠という意味では、生理用品だけでなく、紙おむつ、トイレットペーパー、歯ブラシ、洗剤、衣服、医薬品、介護用品なども高い必要性があります。
対象を増やせば家計負担を広く軽減できますが、税率が複雑になり、事業者の経理や価格表示の負担も増えます。また、ある商品が対象になるかならないかという境界問題も発生します。
国税庁は、消費税について「消費一般に広く公平に課税する間接税」と説明しています。そのうえで、課税になじまないものや社会政策的配慮が必要な一定の取引を非課税としています。[参照:国税庁・消費税の基本的なしくみ]
海外では生理用品の税率を下げた国もある
付加価値税・消費税の対象は国によって異なります。必需品に幅広い軽減税率を設定している国もあり、生理用品について税率を引き下げたりゼロ税率にしたりする政策を採用した例もあります。
このような政策は一般に「タンポン税」の見直しなどとして議論されてきました。一方、日本の軽減税率は現在、飲食料品と一定の新聞を中心とする比較的限定された制度です。財務省の国際比較資料からも、各国で付加価値税の軽減対象が大きく異なることが分かります。[参照:財務省・諸外国における付加価値税の概要]
したがって、日本でも制度改正によって生理用品の税負担を変更することは政策として議論可能ですが、それには国会での法改正や財源・対象範囲についての判断が必要になります。
2026年時点でも生理用品は飲食料品の軽減措置とは別扱い
2026年8月、政府は中低所得者の負担軽減策として給付付き税額控除の導入方針を決定し、その移行期には飲食料品の消費税負担を大幅に軽減する方針を示しています。[参照:内閣官房・飲食料品に係る消費税率の引下げ及び給付付き税額控除]
しかし、この方針も対象は軽減税率の対象となっている「飲食料品」を中心としたもので、生理用品が自動的に同じ対象へ入るわけではありません。
つまり、物価高対策として消費税制度そのものが動いている時期であっても、生理用品について個別に税率を下げるには、対象品目を変更する政策判断が別途必要です。
ピル代については「何の目的で処方されるか」でも扱いが違う
生理用品とは別に、月経困難症などの治療目的で低用量ピルなどが処方される場合には、公的医療保険が適用される薬があります。一方、避妊など保険診療の対象にならない目的では自由診療となることがあります。
そのため「ピルはすべて全額自己負担」「すべて保険が使える」のどちらでもありません。症状や処方目的、薬剤によって取り扱いが異なるため、負担が大きい場合には産婦人科で保険診療の対象になる治療方法があるか確認する選択肢があります。
また、生理用品への支出が非常に大きい理由が、出血量が多い、月経が長期間続くなどの症状によるものであれば、金銭面だけでなく一度婦人科へ相談することも検討できます。月経量には個人差がありますが、治療可能な原因が隠れている場合もあるためです。
生理用品に月1万円なら年間負担は確かに小さくない
毎月1万円なら年間12万円、10年間では単純計算で120万円になります。もちろん実際の使用額は年齢や製品、月経の状態などによって大きく異なりますが、長期間積み重なる支出として見ると負担感が大きくなるのは当然です。
さらに、生理用品以外にも鎮痛薬、下着、洗濯用品、通院費など関連支出が生じる場合があります。単純にナプキンの商品価格だけでは月経に伴う経済的負担のすべてを表せません。
「生理の貧困」という言葉が政策課題として扱われるようになった背景にも、こうした継続的な負担があります。特に学生や低所得世帯などでは、数百円・数千円の生理用品代でも購入を控える要因になり得ます。
まとめ|生理用品が10%なのは「不要品だから」ではなく現行制度の対象外だから
日本で生理用ナプキンなどに10%の消費税がかかっているのは、生理用品が不要・ぜいたく品と判断されているからではありません。現在の軽減税率制度が、原則として酒類・外食を除く飲食料品と一定の新聞に対象を限定しているため、生理用品は標準税率の対象になっています。
生理用品を8%や0%にすることは制度上不可能ではありませんが、対象範囲の線引き、税収への影響、事業者負担、ほかの必需品との公平性などを含めた法改正が必要です。
一方、国や自治体は「生理の貧困」を課題として認識しており、生理用品の無料配布や学校・公共施設への設置といった支援も行われています。減税はすべての購入者を広く支援する方法、無料配布や給付は必要性の高い人へ重点的に支援する方法と整理できます。
生理用品の経済的負担をどう軽減するのが望ましいかは政策上の議論ですが、「必需品なのになぜ10%なのか」という疑問に対しては、現在の税制が必需品全般を軽減する仕組みではないことが大きな理由です。今後、対象品目そのものを見直すか、無料提供・給付などを拡充するかは、財源や公平性を含めて社会的・政治的に決めていく課題になります。


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