大学生がアルバイトで収入を増やそうとすると、「103万円」「123万円」「130万円」「150万円」など複数の金額が出てきて、結局いくらまで働けるのか分かりにくくなります。しかも近年は税制と社会保険の両方で制度改正が行われており、古い「103万円の壁」だけを基準にすると現在の制度と合わない場合があります。
特に重要なのは、「親の税金上の扶養」と「親の健康保険上の扶養」は別制度だという点です。さらに2025年以降、19歳以上23歳未満の子どもについては税金と健康保険の両方で特別な仕組みが設けられました。
2026年現在、18歳と19~22歳では基準が異なります。また年齢は原則としてその年の12月31日時点で判断する制度があるため、現在18歳でも年末までに19歳になるかどうかで結論が変わる場合があります。大学生がアルバイトを増やす前に知っておきたい現在の「扶養の壁」を整理します。
- まず知っておきたい「扶養」には大きく3種類ある
- 2026年に18歳なら親の税金上の扶養は給与収入136万円以下が基本
- 現在18歳でも年末までに19歳になるなら扱いが変わる
- 19~22歳は「特定親族特別控除」があるため税金上の壁が大きく緩和された
- 19~22歳なら給与197万円までは親の税控除が段階的に残る
- 健康保険の扶養は18歳なら原則130万円未満
- 19~22歳になると健康保険は150万円未満へ引き上げ
- 18歳と19~22歳を一覧にすると分かりやすい
- 2026年4月から健康保険の扶養認定は労働契約上の見込み収入も重視される
- 大学生なら「106万円の壁」は通常それほど気にしなくてよい
- 自分自身の所得税は2026年なら給与178万円以下が一つの目安
- 住民税は所得税とは別に考える
- 親の会社の「家族手当」には別の年収基準があることも
- 具体例:年末時点で18歳ならいくらを目安にする?
- 具体例:年末時点で19歳ならいくらを目安にする?
- 150万円ちょうどは避けて「150万円未満」と考える
- 大学生が働く金額を決めるときのチェックポイント
- まとめ:18歳なら130万円未満、19~22歳なら150万円未満が扶養維持の分かりやすい目安
まず知っておきたい「扶養」には大きく3種類ある
大学生が「扶養から外れる」と言う場合、実際には少なくとも3つの制度が混ざっています。
| 制度 | 主に影響する人 | 何が変わるか |
|---|---|---|
| 税金上の扶養 | 主に親 | 親が扶養控除などを受けられるか |
| 健康保険の扶養 | 大学生本人・親 | 親の健康保険に無料で入っていられるか |
| 本人の所得税・住民税 | 大学生本人 | 自分自身に税金がかかるか |
例えば「150万円まで大丈夫」という情報は、19歳以上23歳未満の健康保険の被扶養者基準を指していることがあります。一方「159万円まで」という数字は2026年の税制上、19~22歳の子について親が最大額の所得控除を維持できる給与収入の目安として登場します。
このため、一つの金額だけを見て「ここまでは全部の扶養が大丈夫」と考えないことが重要です。
2026年に18歳なら親の税金上の扶養は給与収入136万円以下が基本
2026年度税制改正により、扶養親族の所得要件がさらに引き上げられました。2026年分の所得税では、給与収入だけの場合、扶養親族に該当する収入の目安は136万円以下です。
したがって、その年の12月31日時点で18歳であり、アルバイト以外の所得がない一般的な大学生であれば、年間給与収入136万円以下が親の所得税上の扶養控除を維持する一つの目安になります。
以前よく言われていた103万円は、給与所得控除55万円と所得要件48万円を足した旧制度の数字です。その後123万円へ引き上げられ、2026年分ではさらに136万円へ変更されています。
[参照] 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
現在18歳でも年末までに19歳になるなら扱いが変わる
税金上の扶養で重要なのは、単純な「今日の年齢」ではなく、原則としてその年の12月31日時点の年齢です。
例えば2026年8月現在18歳でも、2026年12月31日までに19歳の誕生日を迎える人は、2026年分の所得税では19歳以上23歳未満の「特定扶養親族・特定親族」に関する制度が関係します。
反対に2027年1月以降に19歳になる人なら、2026年12月31日時点では18歳なので、2026年分については通常の扶養親族として考えることになります。
19~22歳は「特定親族特別控除」があるため税金上の壁が大きく緩和された
大学生世代の働き控えを減らすため、2025年分から19歳以上23歳未満の親族を対象とした「特定親族特別控除」が創設されました。2026年の税制改正では給与所得控除などの変更に伴い、給与収入ベースの金額も変わっています。
2026年分では、19歳以上23歳未満の子どもの給与収入が136万円を超えても、すぐに親の控除がゼロになるわけではありません。
給与収入159万円以下なら、親は原則として63万円の最大控除を維持できます。従来の「103万円を1円でも超えたら親の扶養控除がなくなる」というイメージとはかなり違います。
19~22歳なら給与197万円までは親の税控除が段階的に残る
2026年分の特定親族特別控除では、給与収入が159万円を超えた後も、いきなり控除がなくなるわけではありません。収入が増えるにつれて親の控除額が段階的に小さくなります。
| 19~22歳の給与収入の目安 | 親が受けられる所得控除 |
|---|---|
| 136万円以下 | 特定扶養控除63万円 |
| 136万円超~159万円以下 | 特定親族特別控除63万円 |
| 159万円超~164万円以下 | 61万円 |
| 164万円超~169万円以下 | 51万円 |
| 169万円超~174万円以下 | 41万円 |
| 174万円超~179万円以下 | 31万円 |
| 179万円超~184万円以下 | 21万円 |
| 184万円超~189万円以下 | 11万円 |
| 189万円超~194万円以下 | 6万円 |
| 194万円超~197万円以下 | 3万円 |
| 197万円超 | 特定親族特別控除なし |
つまり19~22歳では、「扶養に入る・外れる」という二択ではなく、159万円を超えると親の税控除が徐々に減り、197万円を超えるとこの特別控除がなくなる仕組みです。
[参照] 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
健康保険の扶養は18歳なら原則130万円未満
ここからは税金とは別に、親の勤務先の健康保険について考えます。
2026年現在、一般的な健康保険の被扶養者について、18歳の場合は原則として年間収入130万円未満が基準です。130万円「以下」ではなく、基本的には130万円未満なので注意が必要です。
さらに同居している場合は、原則として扶養している親の年間収入の2分の1未満であることなど、生計維持関係についての要件もあります。
そのため、その年の12月31日時点でも18歳で、親の健康保険の扶養を絶対に外れたくない場合には、税金上の136万円よりも健康保険の130万円未満のほうが先に問題になります。
19~22歳になると健康保険は150万円未満へ引き上げ
19歳以上23歳未満の子どもについては、2025年10月1日から健康保険の被扶養者認定における年間収入要件が引き上げられました。
親などの被保険者の配偶者ではない19歳以上23歳未満の人は、年間収入要件が従来の130万円未満から150万円未満へ変更されています。
日本年金機構によると、この年齢についても原則としてその年の12月31日時点で判定します。例えばその年の11月に19歳になる場合、その年は19歳以上23歳未満の基準が適用されます。
[参照] 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
18歳と19~22歳を一覧にすると分かりやすい
アルバイト給与だけがある一般的なケースについて、2026年現在の代表的な基準を整理すると次のようになります。
| 年齢 | 親の所得税上の主な基準 | 親の健康保険の主な基準 |
|---|---|---|
| 18歳 | 給与136万円以下で扶養控除の対象 | 原則130万円未満 |
| 19~22歳 | 159万円以下なら親の63万円控除を維持、197万円以下まで段階的に控除あり | 原則150万円未満 |
「親の税金も健康保険もなるべく今までと同じ状態にしたい」という意味なら、18歳の年は130万円未満、19~22歳の年は150万円未満を意識すると分かりやすくなります。
ただし健康保険では将来の見込み収入で認定される場合があり、単純な1月~12月の実績だけでは判断しないケースがあります。
2026年4月から健康保険の扶養認定は労働契約上の見込み収入も重視される
2026年4月1日から、給与収入のみの被扶養者について、労働条件通知書や雇用契約書などに書かれた賃金から年間収入を判定する新しい取り扱いが始まっています。
例えば雇用契約上、今後1年間の給与が130万円以上になることが明確な18歳の場合、「12月までの実際の収入はまだ100万円だから大丈夫」とはならない場合があります。
19歳以上23歳未満であれば、この判定基準が150万円未満になります。アルバイトの勤務時間を増やす場合には、年間累計額だけでなく雇用契約の内容にも注意しましょう。
[参照] 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」
大学生なら「106万円の壁」は通常それほど気にしなくてよい
アルバイトについては「106万円を超えると社会保険へ入る」という情報もよく見かけます。これは一定規模以上の企業などで働く短時間労働者の社会保険加入制度から生まれた数字です。
ただし通常の昼間の大学生は、短時間労働者の社会保険加入要件にある「学生ではないこと」を満たさないため、原則としてこの短時間労働者ルールの対象外です。
そのため普通の大学生が週20時間程度アルバイトをしただけで、ただちにいわゆる106万円の壁によって勤務先の社会保険へ加入するわけではありません。
ただし正社員の所定労働時間・日数の4分の3以上働く場合などには、学生でも勤務先の健康保険・厚生年金へ加入することがあります。非常に長時間アルバイトをする場合には別途確認が必要です。
[参照] 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
自分自身の所得税は2026年なら給与178万円以下が一つの目安
親の扶養とは別に、大学生本人の所得税についても考えておきましょう。
2026年度税制改正により基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、給与収入だけでその他の所得がない一般的な人については、給与収入178万円以下なら原則として所得税がかからない仕組みになっています。
つまり「親の扶養から外れる金額」と「自分に所得税が発生する金額」は一致しません。例えば18歳で年間140万円稼いだ場合、親の税金上の扶養要件には影響しても、本人に所得税が発生するとは限りません。
住民税は所得税とは別に考える
所得税がかからなくても住民税が発生する場合があります。住民税には所得割と均等割などがあり、非課税基準は自治体や本人の状況によって異なる部分があります。
国税庁の2026年制度の説明では、給与収入だけの場合、住民税の所得割について給与119万円以下が一つの非課税目安として示されています。ただし均等割などの基準は自治体によって異なることがあります。
車校、振袖、旅行などのためにできるだけ手取りを増やしたい場合には、親の扶養だけでなく、自分自身の住民税についても翌年度に請求される可能性を見込んでおくと安心です。
親の会社の「家族手当」には別の年収基準があることも
もう一つ見落としやすいのが、親の勤務先から家族手当・扶養手当などが支給されているケースです。
会社の家族手当は税法や健康保険とは別の会社独自制度なので、「子どもの年収103万円以下」「130万円未満」など独自の条件が残っている場合があります。
法律上は健康保険の扶養に残れても、親の会社の家族手当だけ停止する可能性があります。アルバイトを増やす前に、親へ「会社から扶養手当をもらっているか」を確認しておくとよいでしょう。
具体例:年末時点で18歳ならいくらを目安にする?
例えば大学1年生で、その年の12月31日時点でも18歳、アルバイト給与以外の収入がないケースを考えます。
税金上は給与136万円以下なら親の扶養控除の要件内ですが、健康保険は原則130万円未満です。
したがって「親の所得税上の扶養も健康保険の扶養も維持したい」という目的なら、年間130万円未満を一つの安全側の目安として考えることになります。ただし健康保険は見込み年収によって判断される場合があるため、130万円ギリギリを狙う場合には親の加入する健康保険へ確認したほうが確実です。
具体例:年末時点で19歳ならいくらを目安にする?
同じ大学1年生でも、その年の12月31日までに19歳になる場合には事情が変わります。
健康保険の被扶養者については年間収入150万円未満が基本となります。一方、親の税金については159万円以下なら63万円の控除額を維持できる制度になっています。
そのため、税と健康保険を両方維持することを優先するなら、給与収入150万円未満が一つの分かりやすい目安になります。
例えば年間145万円なら、他の要件も満たす一般的なケースでは健康保険の150万円未満に収まり、税制上も159万円以下なので親の63万円控除を維持できる範囲です。
150万円ちょうどは避けて「150万円未満」と考える
19歳以上23歳未満の健康保険基準は「150万円以下」ではなく150万円未満です。
年間給与がちょうど150万円になると、原則的な収入要件を満たさなくなります。残業代や繁忙期の追加シフトなどで予定より増えることもあるため、扶養を維持したい場合には少し余裕を持った働き方をすると安心です。
また交通費などの扱いについて、税金上の給与収入と健康保険上の年間収入では考え方が異なることがあります。健康保険の認定をギリギリで調整する場合は、加入している健康保険へ直接確認するのが確実です。
大学生が働く金額を決めるときのチェックポイント
アルバイト収入を増やす場合、「○万円だけ覚える」のではなく、自分がどの条件に当てはまるかを順番に確認すると失敗しにくくなります。
| 確認事項 | ポイント |
|---|---|
| 12月31日の年齢 | 18歳か19~22歳か |
| 親の健康保険 | 協会けんぽか健康保険組合か |
| 年間給与の見込み | 18歳なら130万円未満、19~22歳なら150万円未満を意識 |
| 親の税金 | 18歳は136万円、19~22歳は159万円・197万円を確認 |
| 親の会社の家族手当 | 会社独自の基準がないか |
| 勤務時間 | 正社員の4分の3以上にならないか |
特に大学生の場合、税金の壁より健康保険の壁のほうが先に来るケースが多いため、親の健康保険を維持したいなら社会保険側の基準から考えると分かりやすくなります。
まとめ:18歳なら130万円未満、19~22歳なら150万円未満が扶養維持の分かりやすい目安
2026年現在、「大学生の扶養はいくらまで」という質問には一つの数字だけでは答えられません。税金上の扶養、健康保険の扶養、本人の税金がそれぞれ別制度だからです。
その年の12月31日時点で18歳の場合、親の所得税上の扶養控除は給与収入136万円以下が基本ですが、健康保険の被扶養者要件は原則130万円未満です。そのため、親の税金と健康保険の両方を維持したいなら130万円未満が分かりやすい目安になります。
一方、その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満になる場合、健康保険の年間収入要件は150万円未満に引き上げられています。さらに税制上は特定親族特別控除があり、2026年分では給与収入159万円以下なら親の63万円の控除を維持できます。
したがって19~22歳で、親の健康保険と税制上のメリットをできるだけ維持したいなら、150万円未満を一つの目安にすると整理しやすいでしょう。
なお税制上は150万円を超えた瞬間に親の控除がなくなるわけではありません。19~22歳なら159万円以下まで63万円の控除が維持され、その後も197万円以下までは特定親族特別控除が段階的に残ります。
また本人自身の所得税については、2026年分では給与収入178万円以下でその他の所得がない場合、原則として所得税がかからない仕組みとなっています。つまり本人の所得税、親の税金、健康保険ではそれぞれ違う金額を見る必要があります。
大学1年生で現在18歳の場合には、まず「今年12月31日時点で18歳なのか19歳なのか」を確認するのが第一歩です。そのうえで親が加入している健康保険と、親の会社に家族手当の独自基準がないかを確認し、年間のアルバイト予定額を決めるとよいでしょう。
[参照] 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
[参照] 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
[参照] 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件」
[参照] 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者認定」


コメント