病気やケガで休職している間に傷病手当金を申請する予定だったものの、書類を提出する前に退職することがあります。この場合、「会社を辞めたので、在職中の休職期間についても申請できなくなるのでは」と心配になるかもしれません。
しかし、退職したという理由だけで、退職前の休職期間に対する傷病手当金を申請できなくなるわけではありません。在職中に傷病手当金の支給要件を満たしていた期間については、退職後から申請することも可能です。
一方、「退職前の休職期間を退職後に申請すること」と「退職日の翌日以降について傷病手当金を受け続けること」は条件が異なります。この2つを分けて理解することが重要です。
退職前の休職期間は退職後でも申請できる
傷病手当金は、業務外の病気やケガの療養によって仕事ができず、連続する3日間の待期を完成したうえで4日以上仕事を休み、休業期間について十分な給与を受けられない場合などに支給される健康保険の給付です。[参照:全国健康保険協会 傷病手当金]
大切なのは「申請した日に会社へ在籍しているか」ではなく、対象となる日について支給要件を満たしているかです。そのため、例えば6月から8月まで休職し、その後に退職したケースでも、6月から8月の支給対象となる期間について退職後から申請できます。
ただし、休職していた全日数がそのまま支給対象になるとは限りません。最初の連続3日間は待期となるほか、給与・有給休暇の賃金や各種手当などが支払われている場合には支給されない、または差額支給となることがあります。
退職後に社労士へ書類を送って手続きしてもらえる?
会社からあらかじめ「必要書類がそろったら担当の社会保険労務士へ郵送してください」と案内されていた場合、退職したからといって当然にその手続きルートが消滅するとは限りません。協会けんぽの電子申請でも、傷病手当金支給申請書について社会保険労務士による申請が対象として案内されています。[参照:全国健康保険協会 電子申請の対象申請]
ただし、その社労士が退職者の申請まで会社から委託されているかは、会社と社労士との契約・運用によります。そのため、いきなり書類を郵送するより、まず元勤務先の人事・総務または担当社労士へ「退職前の休職期間分について、これまで案内された方法で申請してよいか」と確認するのが確実です。
会社側の社労士が手続きを行わない場合でも、それだけで傷病手当金を請求する権利がなくなるわけではありません。加入していた健康保険の保険者へ確認し、必要な証明をそろえて申請する方法があります。
退職前の期間では会社の証明が必要になる
傷病手当金支給申請書は、本人が記入する部分だけで完結するものではありません。協会けんぽでは、被保険者、事業主、療養担当者がそれぞれ必要な項目を記入して提出する仕組みになっています。[参照:全国健康保険協会 傷病手当金Q&A]
事業主の証明では、申請対象期間に勤務した日や給与の支払い状況などが確認されます。すでに退職していても、在職していた期間について申請するのであれば、元勤務先による証明が必要になるケースがあります。
また、療養のため仕事ができなかったことについては医師等の意見が必要です。退職した後になってから過去の期間を申請する場合でも、申請対象期間について必要な証明をそろえることがポイントになります。
退職後の期間も受給したい場合は別の条件がある
ここは特に混同しやすいところです。例えば6月から8月まで休職し、8月末で退職した場合、「6~8月の在職中の休職期間を9月に申請すること」と「9月以降も傷病手当金を受けること」は別の問題です。
協会けんぽでは、資格喪失後の継続給付を受けるには、原則として退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることなどが必要とされています。[参照:全国健康保険協会 資格喪失後の継続給付]
さらに重要なのが退職日の状態です。協会けんぽは、退職日に出勤した場合には資格喪失後の継続給付の条件を満たさず、退職日の翌日以降の傷病手当金は支給できないと案内しています。
つまり「すでに退職したから過去の休職分も申請できない」と考える必要はありませんが、退職後の期間まで継続して受給できるかについては、被保険者期間や退職日の就労状況などを別途確認する必要があります。
傷病手当金には申請期限があるので放置しない
傷病手当金は何年後でも自由に申請できるわけではありません。協会けんぽによると、健康保険給付を受ける権利は原則として受けられるようになった日の翌日から2年で時効となります。
傷病手当金の場合は、労務不能だった日ごとに、その翌日から2年とされています。[参照:全国健康保険協会 健康保険給付の申請期限]
例えば数か月前の休職期間について退職後すぐ申請するのであれば、通常は「退職したから期限切れ」という状況ではありません。ただし書類の準備や会社・医療機関への証明依頼には時間がかかることもあるため、後回しにせず早めに動くほうが安心です。
退職後に申請するときの進め方
まず、休職時に加入していた健康保険が協会けんぽなのか、会社の健康保険組合なのかを確認します。健康保険組合の場合には、申請書式や提出方法についてその組合へ確認してください。
協会けんぽの場合、傷病手当金支給申請書が公開されており、申請書と記載例を確認できます。[参照:全国健康保険協会 申請書]
実際には、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 元勤務先の人事・総務または担当社労士へ連絡する
- 退職前の休職期間について従来どおり社労士経由で申請できるか確認する
- 本人記入欄を作成する
- 申請対象期間について医師等の証明を依頼する
- 在職期間について必要な事業主証明を依頼する
- 必要書類をそろえて健康保険の保険者へ提出する
社労士へ郵送するよう会社から指示されていた場合には、その社労士の事務所名、担当者、送付先、必要書類、退職後も同じ方法でよいかを確認してから発送すると行き違いを防げます。
「復職してから退職したケース」は対象期間を整理する
例えば6月から8月まで病気で休職し、8月に復職してしばらく働いた後に退職した場合でも、条件を満たしていた過去の休職期間について申請すること自体は検討できます。
一方、いったん仕事ができる状態へ回復してから退職したケースでは、退職後の期間について資格喪失後の継続給付を受けられるかは別途判断が必要です。協会けんぽは、資格喪失後の継続給付について、いったん仕事に就くことができる状態になった後、再び仕事ができなくなった場合には支給されないと案内しています。
したがって申請するときは、「いつ休職したか」「いつ復職したか」「退職日はいつか」「退職日に出勤したか」「退職後も同じ傷病で労務不能なのか」を時系列で整理しておくと、保険者や社労士へ相談しやすくなります。
まとめ:退職後でも在職中の休職期間分は傷病手当金を申請できる
傷病手当金は、申請前に退職したという理由だけで、退職前の休職期間分まで申請できなくなる制度ではありません。在職中の対象期間について支給要件を満たしていれば、退職後から申請することが可能です。
会社から社労士へ書類を送るよう案内されていた場合は、まず元勤務先または担当社労士へ連絡し、退職後も同じ窓口で手続きを進められるか確認するとスムーズです。社労士経由で申請しない場合でも、加入していた健康保険の保険者へ相談できます。
なお、退職日の翌日以降についても傷病手当金を受けたい場合には、継続した被保険者期間や退職日時点の状態など、資格喪失後の継続給付の要件を満たす必要があります。過去の休職期間の申請と退職後の継続給付を分けて考え、時効もあるため早めに元勤務先・社労士・加入していた健康保険へ確認することが大切です。


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