月給の額面が30万円でも、実際に手元へ残る金額は健康保険、年金、雇用保険、所得税、住民税などによって変わります。特に雇用契約書に「健康保険・雇用保険・労災保険」と書かれている一方、「厚生年金」の記載がない場合は、国民年金を自分で払う必要があるのか不安になるところです。
しかし、雇用契約書に厚生年金と書かれていないことだけを理由に「厚生年金には入らず、自分で国民年金を払う」と判断することはできません。法人事業所など一定の条件を満たす事業所には健康保険・厚生年金保険への加入義務があり、労働者側にも加入要件があります。
したがって手取りを計算する前に、勤務先で実際に厚生年金へ加入する契約なのかを確認することが最優先です。そのうえで、額面30万円から何が引かれるのかを整理していきましょう。
健康保険に入るのに厚生年金には入らないケースなのかをまず確認
会社員の社会保険では、健康保険と厚生年金保険は密接に関連しています。日本年金機構は、株式会社などの法人事業所や一定の条件を満たす個人事業所について、健康保険・厚生年金保険の適用事業所になると案内しています。[参照:日本年金機構 厚生年金保険のしくみ]
そのため「健康保険の記載はあるが厚生年金の記載がない」という雇用契約書を見ても、厚生年金に加入しないことが確定したとはいえません。単なる記載漏れや契約書の表現の問題という可能性もあります。
勤務予定の会社が健康保険・厚生年金の適用事業所かどうかは、日本年金機構の「厚生年金保険・健康保険適用事業所検索システム」でも確認できます。[参照:日本年金機構 適用事業所情報検索]
厚生年金に加入するなら国民年金を別に払う必要はない
勤務先で厚生年金保険の被保険者になれば、20歳以上60歳未満であっても国民年金保険料を別途17,920円支払うわけではありません。厚生年金の被保険者は国民年金では第2号被保険者となり、厚生年金保険料の中に基礎年金に相当する仕組みが含まれています。
したがって「会社から厚生年金保険料を引かれ、さらに自宅へ届いた国民年金の納付書でも毎月支払う」という二重払いが通常の状態ではありません。就職前まで国民年金だった場合には、就職後に届いた納付書の対象月と厚生年金の資格取得日を確認します。
一方、本当に厚生年金へ加入しない働き方で、20歳以上60歳未満の第1号被保険者になるのであれば国民年金を自分で納付します。2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は月額17,920円です。[参照:日本年金機構 国民年金保険料]
額面30万円で通常の社会保険に加入する場合の手取り目安
額面30万円の会社員が健康保険・厚生年金・雇用保険へ通常どおり加入する場合、給与から健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税などが差し引かれます。住民税が課税されている人なら住民税も引かれるのが一般的です。
厚生年金保険料率は18.3%ですが、労使折半のため本人負担は基本的に9.15%です。標準報酬月額が30万円なら厚生年金の本人負担は単純計算で月27,450円となります。健康保険料は加入する健康保険や都道府県、年齢などで異なるため一律には計算できません。
2026年度の一般の事業における雇用保険料率は、労働者負担が賃金の5/1,000です。月給30万円なら単純計算で約1,500円となります。[参照:厚生労働省 雇用保険料率]
| 項目 | 月額のイメージ |
|---|---|
| 額面給与 | 300,000円 |
| 健康保険 | 加入先・地域・年齢等で異なる |
| 厚生年金 | 標準報酬月額30万円なら27,450円 |
| 雇用保険 | 一般の事業なら約1,500円 |
| 所得税 | 扶養人数等で異なる |
| 住民税 | 前年所得・自治体等で異なる |
独身・扶養なしなど一般的な条件を想定すると、額面30万円の手取りはおおむね23万円台後半~25万円程度が一つの目安になります。ただし住民税の有無、健康保険料率、40歳以上で介護保険料が発生するか、扶養人数などによって変わるため、これは概算です。
本当に厚生年金なしなら国民年金17,920円を別に考える
仮に厚生年金へ加入しないことが正式に確認でき、国民年金第1号被保険者になるケースでは、2026年度なら月17,920円の国民年金保険料を考慮する必要があります。
重要なのは、国民年金が必ず給与明細から天引きされるわけではないことです。給与口座へ例えば26万円近く振り込まれても、そこから後日17,920円を国民年金として自分で支払うなら、実質的に自由に使える金額はその分少なくなります。
ただし「健康保険だけ会社の社会保険に加入し、厚生年金には加入せず国民年金を払う」という前提自体が、その勤務先・雇用条件で本当に正しいのかを先に確認すべきです。額面30万円という給与額だけでは厚生年金の加入・非加入は判断できません。
労災保険は通常、給与から本人負担として引かれない
雇用契約書に労災保険と記載されていても、労災保険料を従業員が給与から負担するわけではありません。労災保険料は全額事業主負担です。
そのため「健康保険+雇用保険+労災保険が全部30万円から引かれる」と考えて手取りを計算すると、実際より少なく見積もってしまいます。従業員本人が負担する雇用保険料とは扱いが異なります。
給与明細を受け取ったら、健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税などの欄を確認すると、何が本人負担になっているのかが分かります。
住民税がない1年目は手取りが多く見えることがある
額面30万円の手取りを考えるとき、意外に大きいのが住民税です。住民税は前年の所得を基礎として課税されるため、新卒で前年の所得がほとんどなかった人などは、就職直後に住民税の給与天引きがないケースがあります。
その場合、社会人1年目には手取りが多く感じられても、翌年度から住民税の負担が始まり手取りが減ることがあります。「去年は同じ月給で25万円近く残ったのに今年は24万円程度」という変化が起こるのは珍しいことではありません。
逆に転職者など前年にも十分な所得がある場合には、転職後も住民税負担があります。したがって額面30万円という情報だけで1円単位の手取りを算出することはできません。
入社前に会社へ確認したいポイント
雇用契約書に厚生年金の記載がない場合は、推測して国民年金への加入を前提にするより、採用担当者へ「健康保険とあわせて厚生年金保険にも加入しますか」と確認するのが最も早い方法です。
あわせて、健康保険は協会けんぽなのか健康保険組合なのか、社会保険の資格取得日はいつか、月給30万円のうち基本給と固定残業代・各種手当はいくらなのかも確認すると、実際の手取りを把握しやすくなります。
勤務先が適用事業所なのに加入させてもらえないなど疑問が残る場合には、年金事務所へ相談する方法もあります。雇用契約書に書かれている項目だけで加入資格を自己判断しないことが大切です。
まとめ
額面30万円の雇用契約書に健康保険・雇用保険・労災保険だけが記載され、厚生年金という文字がない場合でも、それだけで「厚生年金なし・国民年金を自分で払う」と判断することはできません。まず勤務先へ厚生年金の加入有無を確認しましょう。
通常どおり健康保険・厚生年金・雇用保険に加入する会社員で額面30万円なら、税金を含めた手取りは条件によっておおむね23万円台後半~25万円程度が一つの目安です。一方、本当に厚生年金へ加入せず国民年金第1号被保険者になるのであれば、2026年度は月17,920円の国民年金保険料を別途考える必要があります。
正確な手取りは、年齢、居住地、健康保険の加入先、前年所得、扶養人数などで変わります。まず「厚生年金へ加入するのか」を会社へ確認し、その回答を基に健康保険料・年金・雇用保険・所得税・住民税を計算するのが確実です。


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