年金は高すぎる?若者が払う意味はあるのか|国民年金の仕組み・将来もらえない説・海外移住まで解説

年金

毎月の給与や生活費から年金保険料を負担していると、「このお金を貯金や旅行、資格取得、子育てに使ったほうが有意義ではないか」と感じることがあります。特に20代・30代にとって老後は数十年先なので、負担だけが現実的に見えやすいのも自然です。

一方、公的年金を「自分が積み立てたお金を65歳以降に返してもらう制度」と理解すると、制度の実態を見誤ります。日本の公的年金には世代間扶養の仕組みがあり、さらに老後だけではなく障害や死亡という現役世代にも起こり得るリスクを保障する社会保険としての性格があります。

また、「今の40代以下は将来まったく年金をもらえない可能性が高い」と現時点で断定できる公的根拠はありません。少子高齢化によって給付水準や負担のあり方が変化する可能性と、制度そのものが消滅して一円も受け取れなくなることは分けて考える必要があります。

国民年金はいくら払っている?月3万円台なら内訳を確認

自営業者など国民年金の第1号被保険者が納める国民年金保険料は、2026年度(令和8年度)で月額17,920円です。毎年度、賃金や物価の変動を反映して改定されます。[参照:日本年金機構 国民年金保険料]

したがって「年金として毎月3万円数千円を払っている」という場合、それが国民年金だけを意味するのであれば金額が一致しません。会社員なら通常は厚生年金で、給与・賞与に応じた保険料が給与から控除され、事業主も保険料を負担しています。

給与明細には健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税など複数の控除が並びます。「社会保険で3万円以上引かれている」と「年金だけで3万円以上払っている」は別なので、まず給与明細の厚生年金保険料の欄を確認すると正確です。

払った年金保険料がそのまま自分専用に積み立てられる制度ではない

日本の公的年金は、現役世代が納めた保険料を中心として、その時点の年金受給者への給付を支える仕組みを基本としています。そのため、自分の名前が付いた口座へ毎月1万数千円を積み立て、老後にその残高を引き出す個人貯金とは性質が違います。

もっとも、財源が現役世代の保険料だけというわけでもありません。基礎年金には国庫負担があり、積立金も年金財政に利用されています。厚生労働省の資料でも、基礎年金の財源には国庫負担、保険料、積立金が関係する仕組みが示されています。[参照:厚生労働省 社会保障審議会年金部会]

したがって「毎月払った1万7,920円が、そのまま特定の高齢者一人へ渡っている」と捉えるのも正確ではありません。公的年金という大きな社会保険制度の財源として負担していると考えるほうが実態に近くなります。

年金は老後のためだけではない

若い世代にとって特に見落としやすいのが、公的年金には老齢年金だけでなく障害年金・遺族年金があることです。つまり長生きした場合だけを保障する制度ではありません。

例えば20代で病気や事故によって一定の障害状態になった場合、要件を満たせば障害基礎年金や障害厚生年金の対象になる可能性があります。一定の要件を満たす加入者が死亡した場合には、残された家族が遺族基礎年金や遺族厚生年金などの対象になることもあります。

このため「65歳になる前に亡くなったら払い損だから、同じ金額を貯金したほうがよい」という比較だけでは、公的年金の価値を正確に比較できません。自分だけで老後・障害・死亡という複数のリスクをカバーするには、単純な預貯金とは異なる考え方が必要になります。

「若者は将来年金をもらえない」は確定した話ではない

日本の人口減少と少子高齢化が年金制度にとって大きな課題なのは事実です。現役世代が減り、高齢者の割合が高くなれば、現在とまったく同じ給付・負担の関係を永久に維持できるとは限りません。

しかし、それを理由に「現在の40代以下は年金をもらえない可能性が高い」と断定するのも正確ではありません。公的年金では少なくとも5年ごとに長期的な財政の健全性を検証する財政検証が行われています。2024年財政検証でも複数の経済前提を使った長期的な見通しが公表されています。[参照:厚生労働省 2024年財政検証]

厚生労働省は2024年財政検証を踏まえた審議で、5年前の検証と比較して将来の給付水準が上昇し、所得代替率50%の確保が確認されたと説明しています。一方で基礎年金の給付調整期間が長くなるなどの課題も示されています。つまり「問題がない」でも「若者はゼロになる」でもなく、経済・人口・就業などによって将来の給付水準が変化し得る制度として見る必要があります。[参照:厚生労働省 年金部会議事録]

1600万円払うなら自分で貯金したほうが得?

例えば月3万円を40年以上支払えば、単純合計は1,000万円を大きく超えます。しかし、この総額と老後にもらう年金だけを比較して「得・損」を判定することには注意が必要です。

第一に、会社員の厚生年金では本人だけでなく事業主も保険料を負担します。第二に、公的年金には障害・遺族保障があります。第三に、老齢年金は原則として生涯にわたって支給されるため、何歳まで生きるかによって受給総額が変わります。

さらに数十年にわたる名目額を単純に足し算して現在の1,600万円と同じ価値として扱うことにも注意が必要です。物価や賃金は変化します。公的年金にも賃金・物価やマクロ経済スライドなどを反映して年金額を改定する仕組みがあります。

したがって公的年金と1,600万円の現金を単純比較するのではなく、「老後まで生きるリスク」「若くして障害を負うリスク」「家族を残して死亡するリスク」まで含めた社会保険として比較する必要があります。

それでも現在の生活費を圧迫するほど高い場合はどうする?

国民年金第1号被保険者で、所得の減少や失業などによって保険料の支払いが経済的に難しい場合には、正式な免除・納付猶予制度があります。一定の所得要件などを満たせば、全額免除・一部免除または納付猶予が認められる可能性があります。[参照:日本年金機構 国民年金保険料の免除・納付猶予制度]

20歳以上50歳未満では、本人と配偶者の前年所得が一定額以下の場合などに納付猶予制度を利用できる場合があります。学生には別途、学生納付特例制度があります。

お金がないから何も手続きせず未納にすることと、正式に免除・猶予の承認を受けることは大きく異なります。未納のまま放置すると、将来の老齢年金だけでなく、万一の際の障害年金などの受給要件に影響する可能性があるため、支払いが難しいときほど年金事務所などへ相談することが重要です。

数年後に海外へ移住する場合、日本の年金はどうなる?

将来日本を離れる予定がある場合には、「どうせ海外へ行くから日本の年金は全部無駄」と単純には考えられません。海外転出後の扱いは国籍、加入していた年金制度、移住先、日本との社会保障協定などによって変わります。

日本国籍の人が海外へ転出し日本国内に住所を有しなくなった場合、国民年金への強制加入から外れた後でも、条件を満たせば任意加入できる制度があります。また、日本と社会保障協定を締結している国では、年金加入期間の通算などが可能になるケースがあります。

外国籍の人が日本を出国する場合には、一定の条件を満たすと脱退一時金を請求できる制度もあります。ただし脱退一時金を受け取った場合の加入期間の扱いなど重要な注意点があるため、出国前に日本年金機構で個別に確認することが大切です。

年金への不満と自分の資産形成は分けて考える

少子高齢化が進む以上、将来の公的年金だけに老後生活のすべてを依存する必要はありません。公的年金を土台にしつつ、余裕資金で預貯金や長期・分散投資などを組み合わせるという考え方があります。

同時に、若いうちのお金をすべて老後のために使う必要もありません。資格取得、教育、旅行、家族との時間など、若い時期だからこそ価値のある支出もあります。公的年金への加入義務と、自分で自由に使えるお金の配分は別問題として考えると整理しやすくなります。

「年金か人生経験か」という二者択一ではなく、社会保険として必要な負担を理解したうえで、生活防衛資金、自己投資、家族への支出、資産形成、趣味などへ残った資金をどう配分するかを考えるほうが現実的です。

まとめ:年金は負担だけでなく老齢・障害・死亡を支える社会保険として考える

国民年金保険料は2026年度で月額17,920円であり、若い世代にとって決して小さな負担ではありません。少子高齢化が続く日本では将来の給付水準や負担のあり方について不確実性があることも事実です。

しかし、「払った保険料は高齢者へ渡して終わり」「40代以下は将来一円ももらえない可能性が高い」「貯金すれば年金と同じ」という理解はいずれも正確ではありません。公的年金には老齢年金に加えて障害・遺族保障があり、基礎年金には国庫負担も投入されています。

負担が生活を圧迫しているなら未納のまま放置せず、免除・納付猶予など利用できる制度を確認することが重要です。また海外移住を予定している場合には、国籍や移住先によって扱いが異なるため、出国時点の制度を日本年金機構で確認しましょう。年金制度への賛否とは別に、自分に適用される制度と保障内容を正確に把握したうえで、貯蓄・投資・自己投資などを組み合わせて人生全体のお金を設計することが大切です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました