子どもが高校卒業すると遺族年金はいくら減る?遺族基礎年金終了後の中高齢寡婦加算と厚生年金16年の場合を解説

年金

夫を亡くして遺族年金を受給している家庭では、子どもの高校卒業前後に年金額が変わることがあります。ただし、「子の加算だけがなくなる」と考えると実際の制度とずれる場合があります。子どもが一定年齢に達すると、子の加算だけではなく遺族基礎年金そのものが終了し、その後は遺族厚生年金と中高齢寡婦加算を中心とした受給へ切り替わるケースがあるためです。

特に、夫の死亡時または遺族基礎年金が終了するときに40歳以上65歳未満の妻では「中高齢寡婦加算」が重要になります。2026年度(令和8年度)の制度と金額を基準に、子どもが高校を卒業する家庭で何が変わるのかを整理します。[参照] 日本年金機構「遺族厚生年金」

子どもの高校卒業で遺族年金はどう変わる?

まず重要なのは、遺族年金における「子」の年齢要件です。原則として対象になるのは18歳になった年度の3月31日までの子です。障害年金の障害等級1級または2級に該当する障害状態にある場合には20歳未満まで対象になる特例があります。

したがって、一般的な高校3年生であれば、高校の卒業式の日そのものを基準に年金が終了するわけではありません。18歳になった年度の3月31日を迎えることによって、遺族年金上の「子」の要件から外れるのが基本です。

そして、対象となる子が1人だけだった家庭では、その子が年齢要件から外れると、単純に「子の加算額だけ」が消えるのではありません。妻が受け取っていた遺族基礎年金そのものが原則として終了します。ここは年金額を予測するうえで特に間違えやすいポイントです。

2026年度の遺族基礎年金はいくら?

2026年度(令和8年度)の遺族基礎年金は、子のある配偶者が受け取る場合、基本額が年額847,300円です。さらに1人目・2人目の子について、それぞれ年額243,800円が加算されます。[参照] 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」

例えば、遺族年金上の対象となる子が1人いる妻なら、2026年度額では847,300円+243,800円=年額1,091,100円の遺族基礎年金になります。月額換算すると約90,925円です。

対象となる子が年齢要件から外れ、ほかに対象となる子がいなければ、この約109万円について「24万3,800円の子の加算だけがなくなる」のではなく、原則として遺族基礎年金の受給自体が終了します。そのため一見するとかなり大きな減額に見えます。

40代の妻なら中高齢寡婦加算が始まる可能性が高い

ここで重要になるのが、遺族厚生年金の中高齢寡婦加算です。日本年金機構によると、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた妻について、子が18歳到達年度末に達するなどして遺族基礎年金を受けられなくなった場合、一定の要件を満たせば40歳から65歳になるまで中高齢寡婦加算が加算されます。

2026年度の中高齢寡婦加算は年額635,500円です。月額換算では約52,958円になります。つまり遺族基礎年金が終了して約109万円が丸ごとなくなったままになるとは限らず、その代わりとして中高齢寡婦加算が付くケースがあります。

特に、夫の死亡時に子がいて遺族基礎年金を受けており、その子が対象外になった時点で妻が40歳以上65歳未満というケースは、中高齢寡婦加算の典型的な対象パターンです。ただし実際の受給資格は死亡原因や夫の加入記録などによって異なるため、最終的には年金事務所からの通知や個別確認が必要です。

実際にはどのくらい減るのかモデルケースで計算

対象となる子が現在1人で、妻が40代、遺族厚生年金の金額自体には変化がなく、子の年齢到達後に中高齢寡婦加算の対象になるという典型例を考えてみます。

項目 子が対象年齢の間 対象年齢終了後
遺族基礎年金の基本額 847,300円 終了
子1人の加算 243,800円 終了
中高齢寡婦加算 原則なし 635,500円
遺族厚生年金 受給 原則継続

2026年度額をそのまま使った単純比較では、遺族基礎年金1,091,100円が終了する一方、中高齢寡婦加算635,500円が始まるため、差額は年455,600円です。12か月で割ると約37,967円なので、概算では月3万8,000円程度の減少に相当します。

例えば現在の遺族厚生年金が仮に年60万円だったとすると、子が対象年齢の間は「遺族基礎年金約109.1万円+遺族厚生年金60万円」という構成です。対象年齢終了後は「遺族厚生年金60万円+中高齢寡婦加算約63.6万円」という構成になるイメージです。

ただし、これは制度を理解するためのモデル計算です。実際に切り替わる年度には年金額の改定が行われる可能性があるため、翌年度も2026年度とまったく同じ金額になるとは限りません。

20歳の子どもは遺族基礎年金の「子」に含まれる?

もう一人の子が20歳の場合、通常は遺族基礎年金の対象となる「子」には含まれません。原則は18歳になった年度の3月31日までだからです。

障害年金の障害等級1級または2級に該当する状態であれば20歳未満まで対象になる制度がありますが、「20歳未満」ですから20歳に達した後はこの年齢要件からも外れます。

したがって、成人した上の子が同居している、大学に通っている、経済的に扶養しているといった事情だけで、下の子の年齢到達後も母親の遺族基礎年金が継続するわけではありません。

夫の厚生年金加入が16年でも遺族厚生年金はなくならない?

「夫は厚生年金に16年しか加入していなかった」という場合、25年に満たないことから遺族厚生年金が少なくなったり終了したりするのではないかと心配になることがあります。しかし、厚生年金加入16年という数字だけで判断することはできません。

遺族厚生年金には複数の受給要件があります。例えば、厚生年金の被保険者である間に死亡した場合や、厚生年金加入中に初診日のある病気・けがが原因で初診日から5年以内に死亡した場合などがあります。保険料納付要件などもあるため、死亡時の加入状況が重要です。

さらに、日本年金機構によると、一定の受給要件に基づく遺族厚生年金では、報酬比例部分を計算するときに厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満なら、300月とみなして計算する仕組みがあります。したがって「実加入16年だから遺族厚生年金も16年分しか計算されない」とは限りません。[参照] 日本年金機構「遺族厚生年金の年金額」

16年という加入期間で中高齢寡婦加算が付かないケースもある?

中高齢寡婦加算には少し複雑な例外があります。日本年金機構は、老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金の受給資格期間を満たした夫が死亡したことによる遺族厚生年金については、原則として夫の厚生年金被保険者期間が20年以上であることを中高齢寡婦加算の条件としています。

一方、夫が厚生年金加入中に死亡した場合などは扱いが異なります。そのため「16年だから中高齢寡婦加算は絶対にもらえない」と一律に判断するのも正しくありません。

すでに遺族厚生年金と遺族基礎年金を受給している家庭で今後の金額を確認するときは、「夫の厚生年金加入期間」だけでなく、どの受給要件によって現在の遺族厚生年金が決定されているのかを確認することが重要です。

高校卒業ではなく「18歳になった年度の3月31日」がポイント

子どもの遺族年金について「高校卒業まで」と説明されることがありますが、法律上の基準は学校への在籍そのものではありません。原則として18歳になった年度の3月31日までです。

そのため、3月上旬に卒業式があったからその日で終了するわけではありません。また、高校卒業後に大学や専門学校へ進学したから22歳まで延長されるという制度でもありません。

逆に、何らかの事情で高校に通っていなくても、年齢などの要件を満たしていれば対象になる可能性があります。「高校生かどうか」よりも「18歳到達年度末」という基準で考えると分かりやすくなります。

2028年から遺族厚生年金が変わるが、すでに受給している人は?

2025年に成立した年金制度改正では、遺族厚生年金について大きな見直しが行われ、2028年4月から段階的に施行される予定です。このニュースを見て、「40代の妻の遺族厚生年金も5年間で終了するのでは」と心配するケースがあります。

しかし厚生労働省は、改正前から遺族厚生年金を受け取っている人は今回の有期給付化の影響を受けないと明示しています。また、2028年度に40歳以上になる女性も今回の有期給付化の影響を受けないケースとして示されています。[参照] 厚生労働省「令和7年改正法による遺族年金の見直しについて」

したがって、すでに2025年など改正施行前から遺族厚生年金を受給している40代の妻について、2028年になった途端に新制度の「原則5年間」に変更されるという理解は適切ではありません。

年金額を正確に知るなら年金事務所で確認するのが確実

遺族年金は、年齢だけから最終的な受給額を計算することが難しい制度です。夫の死亡時の厚生年金加入状況、標準報酬、加入期間、死亡原因と初診日、妻の年齢、子の年齢などによって結果が変わります。

特に確認したいのは、現在届いている「年金額改定通知書」などに記載された遺族基礎年金と遺族厚生年金の内訳です。現在の総振込額だけを見るのではなく、どの年金がいくら支給されているのかを分けて確認すると、子の年齢到達後の変化を把握しやすくなります。

年金事務所へ相談するときは、「子が18歳到達年度末を迎えた後、遺族基礎年金が終了した場合の年金見込額」と「中高齢寡婦加算が開始されるか」を確認すると話が早くなります。日本年金機構の年金相談窓口も利用できます。[参照] 日本年金機構「全国の相談・手続き窓口」

まとめ|子どもの卒業後は「子の加算だけが消える」とは限らない

子どもが18歳になった年度の3月31日を迎え、ほかに対象となる子がいない場合、母親が受け取っていた遺族基礎年金は原則として終了します。2026年度額で対象となる子が1人なら、遺族基礎年金は基本額847,300円+子の加算243,800円=年1,091,100円です。

ただし、妻が40歳以上65歳未満で所定の条件を満たしていれば、遺族基礎年金終了後に遺族厚生年金へ中高齢寡婦加算が付く可能性があります。2026年度の中高齢寡婦加算は年635,500円なので、典型的な1人っ子のケースを現在額で単純比較すると、差は年455,600円、月換算で約3万8,000円です。

つまり、「高校卒業後に遺族年金がほとんどなくなる」とも、「子の加算24万円程度だけ減る」とも一概にはいえません。遺族基礎年金が終了し、遺族厚生年金+中高齢寡婦加算という構成へ移る可能性がある、と理解するのがポイントです。

また、夫の厚生年金加入期間が16年であっても、それだけを理由に遺族厚生年金や中高齢寡婦加算の可否を判断することはできません。死亡時に厚生年金加入中だったかなど、現在の遺族厚生年金がどの受給要件によって認定されているかが重要です。具体的な次年度の金額については、現在の年金証書や年金額改定通知書を用意したうえで年金事務所に確認するのが最も確実です。

※本記事は2026年8月時点の公的資料をもとに一般的な制度を解説したものです。年金額は毎年度改定される可能性があり、個別の受給資格・支給額は加入記録や受給権発生事由などによって異なります。

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