パートを2社掛け持ちすると社会保険はどうなる?週20時間・二以上事業所勤務と保険料の仕組みを解説

社会保険

パートを2社掛け持ちしている場合、「社会保険は収入の多い会社だけで入ればよいのか」「片方を週20時間未満にすればよいのか」「2社分の社会保険料を二重に払うのか」など、判断が難しくなります。

重要なのは、健康保険・厚生年金の加入要件は、原則として勤務先ごとに判定するという点です。A社とB社の労働時間を単純に足して週20時間を超えたから、直ちに両社で加入するという仕組みではありません。

一方、A社とB社の双方で加入要件を満たした場合には「好きな会社だけを選んで加入する」という扱いにはならず、二以上事業所勤務の手続きが必要になります。保険料の仕組みも通常の1社勤務とは異なるため、順番に整理していきます。

まずA社とB社それぞれで社会保険の加入要件を確認する

パート・アルバイトの社会保険加入では、まず正社員等の所定労働時間・所定労働日数の4分の3以上かを確認します。4分の3以上なら原則として健康保険・厚生年金の加入対象です。日本年金機構も、パートタイマーであっても1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上なら加入すると案内しています。[参照:日本年金機構 年金に加入する]

4分の3未満でも、一定規模以上の事業所で働く短時間労働者には別の加入基準があります。2026年時点では、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で、週の所定労働時間が20時間以上、学生ではないなどの条件を満たす短時間労働者が対象となります。

したがって「月80時間を超えたか」だけで加入・非加入を判断するのは正確ではありません。雇用契約上の週所定労働時間、勤務先の規模、通常の労働者との労働時間・日数の比較などを会社ごとに確認する必要があります。

月80時間を超えたら即加入ではない|週20時間の考え方

よく「月80時間を超えると社会保険」という話がありますが、短時間労働者の労働時間要件は基本的に「週の所定労働時間20時間以上」です。月単位で定められている場合には所定労働時間を週換算して判定するため、単純な80時間という数字だけでは決まりません。

さらに、契約上は週20時間未満でも実際の労働時間が増え続ける場合があります。日本年金機構は、実際の労働時間が連続する2カ月で週20時間以上となり、その状態が引き続き続いている、または続くと見込まれる場合、3カ月目の初日に資格を取得する扱いを示しています。この判定で週20時間を月換算する場合の目安は約86.7時間です。[参照:日本年金機構 短時間労働者Q&A]

つまり、ある月だけ偶然88時間働いたから翌月すぐ社会保険へ加入する、という単純なものではありません。一方で、契約を月80時間未満としていても恒常的に実労働時間が加入基準を超えているなら、実態に基づいて加入対象になる場合があります。

A社で週16時間なのに6年間社会保険へ加入している場合は確認が必要

以前は週20時間程度働いていたものの、その後6年間ほど週16時間・月70時間程度になっているにもかかわらず社会保険へ加入し続けているケースでは、現在の加入資格がどの基準に基づいているのかを勤務先へ確認したほうがよいでしょう。

単純に「一度社会保険へ入ったら、勤務時間が減っても永久に加入したまま」という制度ではありません。一方で、勤務先での雇用契約や労働日数、事業所の状況など、時間数だけでは分からない事情がある可能性もあります。

そのため「週16時間だからA社の社会保険を自分の判断で抜ける」と考えるのではなく、A社の人事・給与担当者に、現在どの加入要件によって被保険者資格が継続しているのかを確認するのが先です。必要であれば年金事務所にも確認できます。

B社でも加入要件を満たしたらA社かB社を自由に選ぶわけではない

A社ですでに健康保険・厚生年金へ加入している状態で、B社でも独立して加入要件を満たすようになった場合、「A社の社会保険を残してB社では入らない」「給料の高いB社だけへ切り替える」と本人の希望だけで決められるわけではありません。

A社とB社の双方で被保険者となる要件を満たす場合には、二以上事業所勤務の扱いになります。日本年金機構も、兼業・副業などで複数の適用事業所に勤務する場合には本人による手続きが必要と案内しています。[参照:日本年金機構 複数の事業所で勤務するとき]

逆に、B社で加入要件を満たしていないのであれば、A社で社会保険に入っているという理由だけでB社も自動的に社会保険加入になるわけではありません。ここが掛け持ち勤務を理解するうえで重要なポイントです。

2社とも加入対象になった場合の「二以上事業所勤務」とは

2社それぞれで社会保険の加入要件を満たす場合、本人は主たる事業所となる「選択事業所」を選び、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出することになります。

ただし、選択事業所を決めたからといって、その会社の給与だけを基準に保険料が決まるわけではありません。日本年金機構によると、二以上の事業所で勤務する人の標準報酬月額は、各事業所から受ける報酬月額を合算して決定されます。[参照:日本年金機構 算定基礎届の記入・提出ガイドブック]

そして決定した保険料を、各事業所から受ける報酬の割合によって按分します。そのため「2社でそれぞれ独立した健康保険料・厚生年金保険料を満額で二重払いする」というイメージとは異なります。

月12万円+18万円なら保険料はどう考える?

分かりやすくするため、A社から社会保険上の報酬月額12万円、B社から18万円を受け取り、両社とも社会保険の加入対象になったと仮定します。この場合、二以上事業所勤務では基本的に12万円+18万円=30万円という合算した報酬を基礎に標準報酬月額が決定されます。

例えば単純化してA社40%、B社60%の報酬割合なら、算出された保険料もその割合を基礎に各事業所へ按分されます。実際の標準報酬月額は等級表に当てはめて決定するため、単純に30万円へ料率を掛けた数字と完全に一致するとは限りません。

また健康保険料率は加入する健康保険によって異なり、40歳以上65歳未満では原則として介護保険料も関係します。そのため「B社が月18万円なら保険料は○円」と、年齢や加入先が不明なまま正確な金額を出すことはできません。厚生年金保険料については、標準報酬月額・標準賞与額に保険料率を掛け、事業主と被保険者が折半して負担する仕組みです。[参照:日本年金機構 厚生年金保険のしくみ]

「保険料を安くするためにどの会社で入るか」という選択ではない

社会保険は、本人が最も保険料の安くなる勤務先を自由に選択して加入・脱退する制度ではありません。それぞれの勤務先で法律上の加入要件を満たすかどうかによって資格が決まります。

したがって、A社だけ加入要件を満たしてB社が満たさないならA社のみ、B社だけ満たすならB社のみ、両社で満たすなら二以上事業所勤務、という順番で考えるのが基本です。

A社 B社 基本的な扱い
加入要件を満たす 満たさない A社で加入
満たさない 加入要件を満たす B社で加入
加入要件を満たす 加入要件を満たす 二以上事業所勤務の手続き
満たさない 満たさない 勤務形態や他の制度上の扱いを確認

保険料を抑えるためだけに実態と異なる労働時間にしたり、加入要件を満たしているのに届出をしなかったりすることは避ける必要があります。

手取りではなく「社会保険上の報酬」で考える

もう一つ注意したいのが、「A社の手取り12万円」「B社の手取り17~19万円」という数字だけでは社会保険料を正確に計算できないことです。社会保険では手取り額ではなく、給与や一定の手当などを含む報酬を基礎として標準報酬月額を決めます。

手取り額は所得税、住民税、社会保険料などが引かれた後の金額なので、同じ手取り18万円でも社会保険上の報酬月額は人によって違います。保険料を試算するには、A社・B社それぞれの給与明細で総支給額と手当の内訳を確認する必要があります。

また、社会保険加入によって本人負担が増える一方、厚生年金の加入期間・標準報酬は将来の老齢厚生年金額にも反映されます。単純に「今月の手取りが最も多くなる働き方」だけで比較するのではなく、保障や将来の年金も含めて考えることが大切です。

最初にA社とB社へ確認したい4項目

掛け持ち勤務で社会保険の扱いを整理する場合は、まず両社の給与・人事担当者へ同じ項目を確認すると判断しやすくなります。

  • 現在の週所定労働時間と月所定労働時間
  • 正社員等の4分の3基準に該当するか
  • 短時間労働者の社会保険適用対象となる事業所か
  • 現在の働き方を続けた場合、社会保険の資格取得・喪失が必要になるか

特にA社については、週16時間程度になってから約6年間社会保険を継続しているのであれば、「現在はどの資格要件によって加入しているのか」を確認する価値があります。

B社についても「80時間を超えた月がある」と伝えるだけでなく、雇用契約上の所定労働時間と、直近数カ月の実労働時間を確認してもらうとよいでしょう。両社で加入対象になる可能性がある場合には、年金事務所へ二以上事業所勤務の手続きを含めて相談すると確実です。

まとめ:掛け持ちパートは「どこで入れば安いか」より各社の加入資格を先に確認する

2社掛け持ちのパート勤務では、A社とB社それぞれについて社会保険の加入要件を判定することが出発点です。A社で社会保険に加入しているからB社では加入しなくてよい、あるいはB社の収入が多いから自由にB社へ切り替えられる、という仕組みではありません。

契約上は週20時間未満でも、実際の労働時間が週20時間以上に相当する状態が連続して続く場合には資格取得が必要になるケースがあります。また、双方で加入要件を満たした場合には二以上事業所勤務となり、両社の報酬を合算して標準報酬月額を決定し、保険料を報酬割合に応じて各事業所へ按分するのが基本です。

したがって、具体的な判断では「A社週16時間・B社月80時間前後」という時間だけでなく、両社の所定労働時間、事業所規模、正社員との労働時間・日数の比較、総支給額、年齢、加入する健康保険を確認する必要があります。まず両社の人事担当者へ現在の加入資格を確認し、双方で対象になる可能性があれば年金事務所へ相談するのが最も確実です。

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