就労継続支援A型(A型作業所)で働いている場合、「福祉サービスを利用しているから厚生年金には入れないのでは?」と思われることがあります。しかし、A型作業所で働いていること自体は、厚生年金に加入できない理由にはなりません。就労継続支援A型は原則として事業所と利用者が雇用契約を結んで働く制度で、雇用契約を結んだ利用者は労働者として扱われます。厚生労働省も、A型について「雇用契約等に基づき就労する者」を対象とするサービスと説明しています。[参照]そのため、厚生年金に加入するかどうかは月給が20万円あるかどうかだけではなく、勤務時間、勤務日数、事業所の社会保険適用状況などによって決まります。条件を満たしていれば、A型作業所でも健康保険・厚生年金への加入対象になります。
就労継続支援A型は原則「雇用契約を結んで働く」制度
就労継続支援にはA型とB型がありますが、社会保険を考えるうえでは両者の違いが重要です。
A型では、原則として事業所と利用者が雇用契約を締結します。厚生労働省の基準でも、就労継続支援A型事業者は原則として利用者と雇用契約を締結しなければならないと定められています。[参照]
さらに厚生労働省は、雇用契約を締結したA型利用者について「労働基準法等労働関係法規の適用を受ける労働者に該当する」としています。[参照]したがって、「障害福祉サービスの利用者だから厚生年金の対象外」という仕組みではありません。
月給20万円弱なら厚生年金に入れる、とは単純には決まらない
厚生年金の加入条件で大切なのは、給料の金額だけではありません。月給が19万円でも勤務時間が非常に短ければ対象にならない場合がありますし、逆に月給がそれより低くても勤務条件を満たせば加入対象になる場合があります。
まず確認するのが、同じ事業所の一般社員と比較した勤務時間・勤務日数です。日本年金機構によると、一般社員の週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方がおおむね4分の3以上の従業員は、原則として健康保険・厚生年金の加入対象になります。[参照]
この「4分の3基準」を満たす場合には、事業所の従業員数が51人以上かどうかという短時間労働者向けの企業規模要件を気にする前に、通常の被保険者として加入対象になる可能性があります。
勤務時間が正社員の4分の3未満でも厚生年金に入る場合がある
一般社員の4分の3未満しか働いていない人でも、「短時間労働者」として健康保険・厚生年金へ加入する制度があります。
2026年9月時点では、厚生年金の被保険者数が常時51人以上の企業等で働き、一般社員の4分の3基準に届かない人でも、原則として次の条件を満たせば加入対象になります。[参照]
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8万8,000円以上
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 原則として学生ではない
例えばA型作業所で週25時間勤務し、所定内賃金が月19万円、長期勤務予定で、勤務先が短時間労働者の社会保険適用対象事業所なら、厚生年金・健康保険の加入対象となる可能性が高くなります。
月給20万円弱なら「8万8,000円」の条件は通常クリアする
短時間労働者の現行基準には所定内賃金月8万8,000円以上という条件があります。そのため月給が20万円弱で、その大部分が通常の所定内賃金であれば、この金額条件だけを見ると十分に上回っています。
ただし、判定に使う「所定内賃金」にはすべての給与が含まれるわけではありません。賞与、残業代、休日・深夜労働の割増賃金、通勤手当など、一部は8万8,000円判定から除かれます。[参照]
もっとも、通常の基本給だけで月20万円近くあるのであれば、賃金要件よりも週何時間働いているか、事業所が何人規模なのかを確認する方が重要です。
2026年10月には短時間労働者の賃金要件が撤廃予定
社会保険の適用範囲は現在拡大が進められています。日本年金機構では、最低賃金以上で週20時間以上働けば8万8,000円以上となる状況を踏まえ、短時間労働者の月額8万8,000円以上という賃金要件を2026年10月に撤廃予定と案内しています。[参照]
さらに企業規模要件も段階的に縮小され、2027年10月からは厚生年金被保険者数36人以上、2029年10月からは21人以上、2032年10月からは11人以上の企業等へ対象が広がり、最終的には企業規模要件が撤廃される予定です。[参照]
したがって、現在は事業所規模の関係で短時間労働者として加入対象になっていない人でも、今後制度改正によって対象になる可能性があります。
A型作業所が小規模なら厚生年金に入れないこともある?
A型事業所には小規模な事業所も多いため、ここが実際の判断で重要になります。
例えば一般社員が週40時間働いている事業所で、自分は週20時間勤務だったとします。40時間の4分の3は30時間なので、週20時間では4分の3基準に届きません。
この場合、2026年9月時点では短時間労働者の適用要件を見ることになります。勤務先が厚生年金被保険者51人以上の企業等であれば、週20時間以上などの条件を満たして加入対象になる可能性があります。一方、51人未満の小規模事業者で、任意に短時間労働者へ社会保険を適用する手続きもしていない場合には、週20時間働いて月給が20万円近くあっても、現在の制度では厚生年金の対象にならない場合があります。
「A型事業所の利用者だから入れない」と説明されたら確認したい
もし勤務先から単に「A型だから厚生年金はありません」と説明された場合は、それだけでは正確な説明とはいえません。
A型では雇用契約を結んだ利用者は労働者です。社会保険への加入可否は、A型という福祉サービスの名称ではなく、勤務時間・勤務日数と事業所の適用条件などから判断します。
勤務先へ確認するときは、「厚生年金に入れますか?」だけではなく、「一般社員の所定労働時間は週何時間ですか」「私は4分の3基準に該当しますか」「法人全体の厚生年金被保険者数は何人ですか」「短時間労働者の社会保険適用事業所ですか」と聞くと状況を整理しやすくなります。
具体例で見るA型作業所と厚生年金
例えば一般社員の所定労働時間が週40時間で、A型利用者が週30時間働いているとします。30時間は40時間の4分の3なので、勤務日数の条件も満たしていれば、通常の被保険者として厚生年金・健康保険の対象となる可能性があります。この場合、51人以上という企業規模要件は基本的な判断ポイントではありません。
一方、週25時間勤務なら40時間の4分の3には達しません。ただし勤務先が厚生年金被保険者51人以上の企業等で、週20時間以上、月額賃金要件、雇用期間、学生ではないという条件を満たせば、短時間労働者として加入対象になる可能性があります。
さらに週15時間しか働いていなければ、4分の3基準にも短時間労働者の週20時間基準にも届かないため、月給が高かったとしても原則としてこの基準から厚生年金へ加入することにはなりません。
厚生年金に加入すると健康保険にも加入するのが基本
短時間労働者の社会保険適用では、通常は厚生年金だけを選んで加入するのではなく、健康保険とセットで加入します。
加入すると給与から本人負担分の健康保険料・厚生年金保険料などが天引きされ、事業主も原則として保険料の一部を負担します。そのため額面給与が20万円近くあっても、社会保険加入後は手取り額がその分少なくなります。
一方で厚生年金へ加入した期間・報酬は将来の老齢厚生年金に反映されるほか、一定の場合には障害厚生年金や遺族厚生年金など被用者年金としての保障にもつながります。
自分が加入対象か分からない場合は年金事務所でも確認できる
勤務先へ聞いても説明が分からない場合は、最寄りの年金事務所へ相談する方法があります。
その際には、雇用契約書や労働条件通知書などを手元に用意し、週の所定労働時間、月の所定労働日数、月給、勤務先の法人名・事業所名などを伝えると確認しやすくなります。
日本年金機構では厚生年金への加入手続き自体は事業主が行うと案内しています。[参照]本来加入対象であるにもかかわらず手続きされていない疑いがある場合も、年金事務所に相談できます。
まとめ:A型作業所でも条件を満たせば厚生年金に加入できる
就労継続支援A型だから厚生年金に加入できない、というルールはありません。A型は原則として雇用契約に基づいて働く制度で、雇用契約を結んだ利用者は労働者として労働関係法令の適用を受けます。[参照]
月給が20万円弱ある場合、賃金だけを見れば短時間労働者の現行の月額8万8,000円要件を通常は大きく上回ります。しかし、厚生年金への加入可否は給料だけでは決まりません。
まず、一般社員と比べて週の所定労働時間・月の所定労働日数が4分の3以上なら、原則として厚生年金・健康保険への加入対象です。4分の3未満の場合でも、2026年9月時点では、厚生年金被保険者51人以上の企業等で週20時間以上、月額8万8,000円以上、2か月を超える雇用見込み、原則学生ではないなどの条件を満たせば、短時間労働者として加入対象になります。[参照]
したがって月給20万円弱のA型勤務で確認すべきなのは、「給料が高いか」ではなく「週何時間働いているか」「一般社員の4分の3以上か」「勤務先が何人規模の社会保険適用事業所か」という点です。勤務先にこの3点を確認すれば、自分が厚生年金の対象になるかかなり明確になります。
なお短時間労働者の適用範囲は今後さらに拡大される予定で、月額8万8,000円という賃金要件は2026年10月に撤廃予定、企業規模要件も2027年10月以降段階的に縮小されます。現在対象外であっても今後加入対象になる可能性があるため、制度改正後の勤務先からの案内にも注意しておくとよいでしょう。


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