親の扶養に入りながら複数のアルバイトを掛け持ちしていると、「今月はA社の有給休暇で8万円、B社の給与で5万円、合計13万円になるから社会保険に加入しなければならないのでは?」と不安になることがあります。
しかし、健康保険・厚生年金保険への加入判定は、原則としてA社とB社の給与を単純合算して「月13万円だから加入」と決める仕組みではありません。短時間労働者の社会保険加入要件は、それぞれの勤務先ごとに判断します。厚生労働省も、複数の勤務先で働く場合、社会保険の加入要件を満たすかどうかは各事業所単位で判定し、複数社の月額賃金や労働時間を合算して加入判定しないと案内しています。[参照]
一方で、親の健康保険の「扶養に入り続けられるか」という判定では、複数の勤務先から得る収入を含めて年間収入を考える必要があります。つまり、「自分の勤務先で社会保険に加入する条件」と「親の扶養から外れる条件」は別問題です。ここを分けて考えることが重要です。
- 有給8万円+別バイト5万円=13万円だけで社会保険加入にはならない
- 2026年9月時点のアルバイトの社会保険加入要件
- 社会保険の8.8万円判定は「今月実際にもらった総額」だけを見るものではない
- 掛け持ちではA社とB社をそれぞれ判定する
- 有給休暇でもらう給与も「収入がなかった」ことにはならない
- 親の健康保険の扶養ではA社とB社の収入を合わせて考える
- 月13万円になった1回だけで直ちに扶養から外れるとは限らない
- ただし今後も毎月13万円前後なら扶養は要注意
- 「税金の扶養」と「健康保険の扶養」も別物
- 具体例:A社の有給8万円とB社5万円だけならどう考える?
- 確認すべきなのは給与額だけではなく4つの項目
- まとめ:月13万円になっただけでは社会保険加入とは決まらない
有給8万円+別バイト5万円=13万円だけで社会保険加入にはならない
社会保険の加入について、掛け持ち先A社で8万円、B社で5万円を受け取ったからといって、それを合計して13万円とし、「8.8万円を超えたので社会保険加入」と判断するわけではありません。
厚生労働省は、社会保険の適用要件について事業所ごとに判断すると明示しています。例えばA社で週15時間、B社で週10時間働いており、どちらも単独では加入要件を満たさない場合、合計25時間働いていても、単純に合算して短時間労働者として社会保険加入になるわけではありません。[参照]
したがって、ある月だけA社の有給休暇分8万円とB社の給与5万円を受け取ったという事実だけでは、社会保険加入の有無は判断できません。A社とB社それぞれについて、労働契約上の週所定労働時間や会社規模などを確認する必要があります。
2026年9月時点のアルバイトの社会保険加入要件
2026年9月時点では、正社員の週所定労働時間・月所定労働日数の4分の3以上働く人は、原則として会社の健康保険・厚生年金保険の加入対象です。それより短い働き方でも、一定規模以上の企業で働く短時間労働者は加入対象になることがあります。
2026年9月時点で、従業員数51人以上の対象企業に勤務する短時間労働者については、主に次の条件を確認します。[参照]
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 原則として学生ではない
- 勤務先が対象となる企業規模に該当する
なお、所定内賃金月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月に撤廃予定です。したがって、2026年10月以降は制度変更後の最新条件を確認する必要があります。[参照]
社会保険の8.8万円判定は「今月実際にもらった総額」だけを見るものではない
短時間労働者の「月額8.8万円以上」という条件は、単純に給与明細の手取りや、ある1か月だけ実際に振り込まれた金額を見るものではありません。原則として雇用契約などに基づく所定内賃金で判断します。
例えば普段はA社で週10時間しか働いておらず、月の所定内賃金が5万円程度の人が、退職前などにまとまった有給休暇を取得して一時的に8万円受け取ったとしても、その1回の支払額だけで「月額8.8万円の条件を満たした」とは限りません。
逆に、雇用契約上すでに週20時間以上・月額8.8万円以上の所定内賃金となっていて、その他の条件も満たしているのであれば、実際のある月の給与が少なかったとしても加入対象になることがあります。[参照]
掛け持ちではA社とB社をそれぞれ判定する
例えばA社とB社で次のように働いているとします。
| 勤務先 | 週所定労働時間 | 月額の所定内賃金 | 加入判定のイメージ |
|---|---|---|---|
| A社 | 15時間 | 8万円 | 短時間労働者の週20時間要件を満たさない |
| B社 | 10時間 | 5万円 | 週20時間要件を満たさない |
この場合、合計すると週25時間、月13万円ですが、社会保険加入条件は各事業所ごとに判断するため、「25時間・13万円」と合算して加入判定するわけではありません。
一方、A社だけで週20時間以上などの条件をすべて満たしていれば、A社で社会保険加入になる可能性があります。さらにA社とB社の両方でそれぞれ加入要件を満たしている場合には、両方の事業所で被保険者となり、所定の「二以上事業所勤務」の手続きが必要になります。厚生労働省によると、その場合は複数の事業所からの報酬を合算して標準報酬月額を決定します。[参照]
有給休暇でもらう給与も「収入がなかった」ことにはならない
有給休暇は、休んだ日について賃金が支払われる制度です。そのため、親の健康保険の扶養判定などで収入を考える場面では、「実際には働いていない日だから収入に含めなくてよい」と考えることはできません。
例えばA社から有給休暇分として8万円の給与を受け取り、B社から5万円の給与を受け取れば、その月に給与として13万円を得ているという事実自体はあります。
ただし、社会保険加入判定では先ほど説明した通り、13万円という実支給額だけで加入が決まるわけではありません。「社会保険加入の判定」と「扶養の年間収入判定」を混同しないようにしましょう。
親の健康保険の扶養ではA社とB社の収入を合わせて考える
ここで注意が必要なのが親の健康保険の扶養です。自分の勤務先で社会保険の加入要件を満たさなくても、収入が増えれば親の健康保険の被扶養者から外れる可能性があります。
日本年金機構では、原則として被扶養者の年間収入が130万円未満であることなどを要件としています。ただし、2025年10月1日以降、扶養される人が19歳以上23歳未満であり、配偶者ではない場合は年間収入要件が150万円未満に引き上げられています。学生であること自体は条件ではありません。[参照]
| 年齢など | 健康保険の年間収入要件の基本 |
|---|---|
| 19歳以上23歳未満・親などの扶養・配偶者ではない | 150万円未満 |
| 上記以外の60歳未満 | 原則130万円未満 |
| 60歳以上または一定の障害者 | 原則180万円未満 |
年齢の判定はその年の12月31日時点で行われます。例えばその年の12月31日に20歳であれば、原則として150万円未満という収入要件が適用されます。[参照]
月13万円になった1回だけで直ちに扶養から外れるとは限らない
「9月だけ13万円稼いだから、130万円÷12=約10万8,333円を超えて扶養から外れる」と単純に考える必要もありません。健康保険の扶養は、原則として今後の年間収入の見込みなどによって判断されます。
さらに2026年4月1日以降、日本年金機構は給与収入のみの場合について、労働条件通知書などに記載された契約上の賃金から見込まれる年間収入が基準未満で、他の収入もないなど一定の条件を満たせば、原則として被扶養者として認定する新しい取り扱いを開始しています。[参照]
そのため、退職に伴う有給消化などで9月だけ一時的に給与が多くなったものの、今後の契約上の年収見込みが扶養基準未満であるケースでは、「1か月13万円だった」という事実だけで必ず扶養から外れるとは言えません。
ただし今後も毎月13万円前後なら扶養は要注意
一方、毎月13万円程度の給与をA社とB社から継続的に得る予定なら話は変わります。13万円×12か月なら単純計算で年156万円です。
60歳未満で通常の130万円基準が適用される人なら、年156万円の見込みは基準を超えます。また19歳以上23歳未満で150万円基準が適用される場合でも、156万円は150万円を超えます。
したがって、「9月だけ13万円」なのか、「今後も毎月13万円程度になる契約なのか」は非常に重要です。親の扶養を維持したい場合は、親が加入している健康保険組合や協会けんぽに年間収入の見込みを確認するのが確実です。
「税金の扶養」と「健康保険の扶養」も別物
扶養という言葉には、健康保険上の被扶養者だけでなく、所得税・住民税に関する税法上の扶養もあります。これらは収入基準や計算方法が異なります。
そのため、「親の扶養内で働いている」と言っても、税金では扶養対象だが健康保険では扶養から外れる、あるいはその逆になるケースもあります。
社会保険について確認するときは、「税金の扶養ですか?」ではなく、「親の会社の健康保険の被扶養者になっています」と伝えた方が、勤務先や健康保険へ相談するときに話が通じやすくなります。
具体例:A社の有給8万円とB社5万円だけならどう考える?
例えばA社を退職するため9月前半に11日分の有給休暇を消化し、その給与が約8万円、9月後半にB社で働いて約5万円を受け取ったとします。9月の給与収入は合計約13万円です。
この場合、まずA社とB社それぞれについて社会保険加入要件を確認します。どちらも単独では週20時間以上などの要件を満たしていなければ、単純に「8万円+5万円=13万円」と合算して短時間労働者の社会保険加入になるわけではありません。
次に親の健康保険の扶養については、今後の労働契約や年間収入見込みを確認します。9月だけ有給消化によって一時的に13万円になり、今後はB社の月5万円程度のみというケースと、今後も毎月13万円程度稼ぐケースでは判断が異なります。
確認すべきなのは給与額だけではなく4つの項目
掛け持ちアルバイトで社会保険や扶養が気になる場合は、次の4点を整理すると判断しやすくなります。
- A社で契約上、週何時間働くことになっているか
- B社で契約上、週何時間働くことになっているか
- A社・B社それぞれの企業規模や社会保険の適用状況
- 今後1年間にA社・B社から得ると見込まれる給与収入の合計
特に退職前の有給消化で一時的に給与が増えただけなら、その事情も親の加入する健康保険へ伝えるとよいでしょう。給与明細だけでなく、退職日やB社の労働条件通知書などを用意しておくと状況を説明しやすくなります。
まとめ:月13万円になっただけでは社会保険加入とは決まらない
A社の有給休暇分8万円とB社の給与5万円を受け取り、9月だけ合計13万円になったとしても、その13万円を単純合算して「社会保険加入」と判断するわけではありません。健康保険・厚生年金保険の加入要件は、原則として勤務先ごとに判定します。
2026年9月時点では、短時間労働者の場合、対象となる企業で週20時間以上、所定内賃金月額8.8万円以上、2か月を超える雇用見込み、原則学生ではないことなどが主な条件です。A社とB社のどちらかが単独でこの条件を満たすかを確認する必要があります。
一方、親の健康保険の扶養については掛け持ち先の給与を含めた年間収入が重要です。原則130万円未満ですが、19歳以上23歳未満で親などの扶養に入る人は、2025年10月以降は原則150万円未満です。2026年4月以降は、一定の場合に労働契約上の年間収入見込みを使って扶養認定する取り扱いも始まっています。
「今月13万円だった」という数字だけで社会保険加入や扶養脱退を決めることはできません。まずA社・B社それぞれの週所定労働時間と雇用契約を確認し、親の扶養については親が加入している健康保険へ今後の年間収入見込みを伝えて確認するのが確実です。

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