家賃、電気・ガス・水道、携帯料金など生活に必要な費用以外は、新聞を購読せず、AmazonプライムやNetflixなどの動画サブスクにも加入せず、民間の生命保険にも入っていないという家計があります。毎月自動的に引き落とされる支出をできるだけ持たない生活スタイルです。
現在の日本では、新聞を購読しない人や、有料サービスを必要なときだけ契約する人は増えていると考えられる一方、「あらゆる固定費・サブスクを契約しない人」が一貫して増加していることを示す公的統計はありません。実際、新聞の発行部数は大幅に減っていますが、動画配信サービスはむしろ普及しています。生命保険についても単身世帯と家族世帯で加入状況が大きく異なります。
つまり現代の特徴は「みんな固定費を持たなくなった」というより、昔から当たり前だった固定契約を一度見直し、自分が価値を感じるサービスだけにお金を払う人が増えたと捉えるほうが実態に近いでしょう。本記事では新聞、NHK、生命保険、動画配信サービスなどの最新データを見ながら、固定費を最小限にする生活がどの程度珍しいのかを解説します。
- 新聞を取らない世帯は明確に増えている
- 一方でAmazonプライムやNetflixなどのサブスク利用者は増えている
- 「サブスクなし」は少数派でも、特別に珍しいわけではない
- 動画サブスクには「契約しっぱなし」を見直す動きもある
- 生命保険に入っていない人は、世帯構成によって珍しさが大きく違う
- 生命保険は「固定費だから解約」ではなく必要保障額で判断する
- NHKは一般的な「任意のサブスク」とは少し違う
- 固定費を最小限にする人が増えやすくなった理由
- 固定費が少ない家計はかなり強い
- ただし「固定費ゼロ」をゲーム化しすぎる必要はない
- 固定費を見直すなら「月額」ではなく年間額を見る
- 固定費が少ない人ほど気を付けたい支出もある
- 今の時代は「みんなと同じ契約を持つ必要がない」
- まとめ|固定費を絞る人は珍しくなくなったが、サブスク利用自体はむしろ広がっている
新聞を取らない世帯は明確に増えている
固定費の中でも、長期的な減少傾向が数字ではっきり確認できるのが新聞です。日本新聞協会の統計によると、一般紙とスポーツ紙を合わせた新聞発行部数は2000年には約5,372万部でしたが、2025年には約2,487万部まで減少しています。
1世帯あたりの部数も低下しており、2025年は0.42部です。単純に「新聞を取っている世帯率」を意味する数字ではありませんが、紙の新聞を定期購読することが以前ほど一般的ではなくなっていることは明確です。
背景には、スマートフォンでニュースを読めるようになったことがあります。ポータルサイト、ニュースアプリ、SNS、新聞社のウェブサイトなどから無料または低コストで情報を得られるため、毎月数千円を紙の新聞へ払う必要性を感じない人も増えています。
一方でAmazonプライムやNetflixなどのサブスク利用者は増えている
新聞とは反対に、動画配信系のサブスクリプションはかなり普及しています。したがって「今の人は月額サービスそのものを避けるようになった」とまではいえません。
ICT総研が2025年に実施した調査では、定額制動画配信サービスの利用率は31.8%でした。有料動画サービスの利用者数についても、2025年の約3,890万人から2027年には約4,120万人まで増えると予測しています。
別の調査でも、定額制動画配信サービスの利用は2010年代後半から大きく拡大しています。つまり、紙の新聞など従来型の固定契約をやめる一方で、Netflix、Amazon Prime Video、Disney+など自分が頻繁に利用するデジタルサービスには月額料金を払うという家計も多いわけです。
[参照] ICT総研「2025年 有料動画配信サービス利用動向に関する調査」
「サブスクなし」は少数派でも、特別に珍しいわけではない
動画サブスクが普及しているとはいえ、全員が利用しているわけではありません。ICT総研の2025年調査では、動画配信サービス利用者の中でも無料サービス利用が多く、有料の定額制動画配信サービスを利用していない人も相当数います。
YouTube、TVer、ABEMAの無料部分など、料金を払わなくても大量の映像コンテンツを視聴できるため、「テレビも有料動画サービスもほとんど必要ない」という生活は十分成立します。
例えば月額600円、1,000円、1,500円のサービスを3つ契約すると月3,100円、年間では3万7,200円になります。利用頻度が低ければ、この金額を旅行、外食、投資、貯蓄などへ回したいと考える人がいても不思議ではありません。
現在は「サブスクを契約する人が増えた」のと同時に、「使わないサブスクを持たないことへの抵抗も小さくなった」時代と考えると分かりやすいでしょう。
動画サブスクには「契約しっぱなし」を見直す動きもある
サブスク市場が成長すると、反対に「サブスク疲れ」「固定費を増やしすぎた」という問題も出てきます。数百円のサービスでも、複数契約すると年間ではかなりの金額になるからです。
オリコンが2025年に定額制動画配信サービス利用者を対象に行った調査では、月額料金の値上げについて「継続が負担に感じる」という回答が7割を超えました。サービスを利用する人の間でも、料金に対する意識が高まっていることが分かります。
そのため現在では、「Netflixは見たい作品がある月だけ」「スポーツのシーズン中だけ契約」「見終わったら解約」といった使い方も合理的です。サブスクリプションだからといって何年間も契約し続ける必要はありません。
生命保険に入っていない人は、世帯構成によって珍しさが大きく違う
生命保険については「入っていない人が増えている」と単純には言えません。生命保険文化センターの2024年度調査では、生命保険・個人年金保険を含む加入率は2人以上世帯で89.2%でした。
一方、単身世帯の加入率は45.6%です。つまり単身世帯では過半数が同調査上の生命保険に加入していないことになります。
| 世帯 | 生命保険・個人年金保険の加入率 |
|---|---|
| 2人以上世帯 | 89.2% |
| 単身世帯 | 45.6% |
これは合理的な面もあります。扶養する配偶者や子どもがいる人と、扶養家族がいない単身者では、死亡時に必要な保障額が大きく違うからです。
[参照] 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」
生命保険は「固定費だから解約」ではなく必要保障額で判断する
新聞や動画サブスクは不要なら解約しても生活上の大きなリスクは通常ありませんが、保険は少し性質が異なります。万一の大きな損失を家計で吸収できるかというリスク管理の商品だからです。
例えば独身で扶養家族がなく、十分な預貯金があり、公的医療保険の内容も理解している人なら、大きな死亡保障を必要としない場合があります。一方、小さな子どもがいて主な収入を一人が担っている家庭なら、その人が死亡した場合の収入減少をどう補うかを考える必要があります。
したがって、「保険に入っていない=節約上級者」「保険に入っている=無駄遣い」とは判断できません。住宅ローンの団体信用生命保険、勤務先の保障、公的年金の遺族給付、貯蓄額なども含めて必要保障額を考えることが重要です。
固定費削減で最も大切なのは、契約数をゼロにすることではなく、支払っている金額に対して必要な価値があるかを判断することです。
NHKは一般的な「任意のサブスク」とは少し違う
NHK受信料については、NetflixやAmazonプライムなどの任意契約型サブスクリプションと同じ感覚で扱わないほうが正確です。
2026年現在、NHKの放送を受信できるテレビなどの設備を設置している場合や、所定の操作を行ってNHK ONEの受信契約が必要なインターネット配信の利用を開始した場合には、受信契約が必要になります。
一方、NHK公式ではスマートフォンやパソコンを所有しているだけでは受信契約の対象にならないと明記されています。テレビを持たず、対象となるインターネット配信の受信も開始していない場合は事情が異なります。
そのため「NHKに入らない」という表現より、自分のテレビ等の設置状況やNHK ONEの利用状況に照らして受信契約が必要か確認するのが正確です。
固定費を最小限にする人が増えやすくなった理由
現代では、固定費を持たずに生活するハードルそのものが下がっています。以前は新聞を取らなければ情報を得にくい、テレビがなければ映像コンテンツを楽しみにくい、といった事情がありました。
現在はスマートフォン一台あれば、無料ニュース、YouTube、TVer、無料マンガ、SNS、無料通話など多数のサービスを利用できます。娯楽や情報収集のために必ず月額契約を持たなければならない時代ではありません。
またオンラインサービスは契約・解約が簡単なので、必要な期間だけ課金することもできます。「一度契約したサービスを何十年も持ち続ける」という従来型の固定費から、必要に応じてON・OFFする支出へ変わってきています。
物価上昇によって家計負担が増えたことも、定期支出を見直す理由になります。毎月500円の固定費でも10個あれば5,000円、年間6万円です。小さな月額料金ほど気付きにくいため、家計見直しでは固定費が優先されやすくなります。
固定費が少ない家計はかなり強い
固定費を少なくすると、単に毎月の支出が減るだけではありません。収入が減ったときにも家計を調整しやすくなるというメリットがあります。
例えば手取り25万円で、家賃・光熱費・通信費など必要固定費が10万円の人と、そこへ保険・新聞・動画・音楽・ジム・各種会員費が5万円加わって固定費15万円になっている人を比較します。
前者なら収入が一時的に減った場合でも、食費や娯楽費を調整して対応しやすいでしょう。後者は何もしなくても毎月15万円が出ていくため、家計の自由度が小さくなります。
| 支出 | 固定費が少ない例 | 固定費が多い例 |
|---|---|---|
| 家賃・住宅費 | 70,000円 | 70,000円 |
| 光熱費 | 15,000円 | 15,000円 |
| 通信費 | 5,000円 | 5,000円 |
| 保険・新聞・各種サブスク | 0円 | 30,000円 |
| 固定費合計 | 90,000円 | 120,000円 |
特に早期リタイアや転職、独立などを考える場合には、「資産をいくら持っているか」だけでなく、毎月必ず出ていく金額を小さくしておくことにも大きな意味があります。
ただし「固定費ゼロ」をゲーム化しすぎる必要はない
固定費を削ることにはメリットがありますが、契約しているものが少ないほど優秀というわけではありません。
例えば月1,000円の動画サービスを毎日2時間楽しんでいる人なら、1時間あたりの娯楽費はかなり小さくなります。反対に年に数回しか使わないサービスへ毎月1,000円払っているなら見直す価値があります。
同じように月8,000円のスポーツジムでも週5回利用して健康維持につながっている人と、月1回しか行かない人では価値が全く違います。
家計管理では「固定費だから悪い」のではなく、支払額に対する利用頻度と満足度を見るのが合理的です。
固定費を見直すなら「月額」ではなく年間額を見る
サブスクが増えやすい理由の一つは、月額料金が小さく見えることです。「月980円なら安い」と感じても、年間では11,760円です。
例えば新聞4,000円、動画サービス1,500円、Amazonプライム相当600円前後、音楽サービス1,000円、保険10,000円を毎月支払えば、月額合計は1万7,000円前後になります。年間にすると20万円を超えます。
もちろん全部必要なら問題ありません。しかし年間20万円と表示されると、「本当に毎年20万円分使っているだろうか」と判断しやすくなります。
固定費の棚卸しでは、各サービスについて「月額×12」で年間コストを出し、過去3カ月で何回利用したかを確認すると、残すものと解約するものを判断しやすくなります。
固定費が少ない人ほど気を付けたい支出もある
定額サービスがほとんどない家計でも、必ずしも支出全体が少ないとは限りません。固定費がない代わりに、外食、旅行、ネット通販、ゲーム課金などの変動費が大きい場合もあります。
例えばサブスクが月0円でも毎月ネット通販で5万円使う人と、サブスク月5,000円でもその他の買い物が少ない人では、後者のほうが総支出が少ない可能性があります。
そのため家計を見る場合は、固定費の少なさだけでなく年間の手取り収入に対して最終的にいくら残っているかを見ることが大切です。
逆に固定費が少なく、変動費もコントロールできているなら、収入の一部を貯蓄やNISAなどの資産形成へ回しやすい家計になります。
今の時代は「みんなと同じ契約を持つ必要がない」
以前は新聞、固定電話、テレビ、生命保険などを家庭で契約することがある意味で標準的な生活モデルでした。しかし現在ではライフスタイルがかなり細分化しています。
テレビを持たずYouTubeやTVerだけを見る人もいれば、テレビと複数の動画サービスを使う人もいます。生命保険についても、単身者と子育て世帯では必要性が違います。
そのため「周囲のみんなが契約しているから自分も」という理由で固定費を増やす必要はありません。反対に、他人が契約していないからという理由で、自分に必要なサービスまで解約する必要もありません。
現代の家計では「何を契約するのが普通か」より、「自分の生活にその固定費以上の価値があるか」を基準にするほうが合理的です。
まとめ|固定費を絞る人は珍しくなくなったが、サブスク利用自体はむしろ広がっている
新聞、動画サブスクなどを契約せず、家賃・光熱費・通信費を中心に生活するスタイルは、現在では特別に珍しいものではありません。特に新聞は発行部数が2000年から2025年までに半分以下となっており、定期購読をしない生活は大きく広がっています。
一方で、NetflixやAmazon Prime Videoなどの定額制動画サービスは普及しているため、「日本人全体がサブスクをやめる方向に進んでいる」とまではいえません。むしろ昔ながらの固定契約から、自分が価値を感じるデジタルサービスへ支出先が移っていると見るほうが実態に近いでしょう。
生命保険についても、2024年度調査では2人以上世帯の加入率が89.2%なのに対し、単身世帯は45.6%です。必要な保障は家族構成によって大きく異なるため、加入していないことだけで珍しいとは判断できません。
またNHKについては一般的な任意サブスクとは制度が異なり、テレビ等の受信設備の設置やNHK ONEの対象サービスの利用開始状況によって受信契約の必要性が決まります。
結局のところ、現在増えているのは「何も契約しない人」というより、昔から当たり前とされていた固定費をそのまま払い続けず、自分が実際に使うものだけ選んで契約する人だと考えるのが適切です。家賃・光熱費・通信費以外にほとんど固定費がなく、それで生活上困っていないのであれば、無理に周囲へ合わせて固定費を増やす必要はありません。

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