2026年7月に国内販売が始まった軽EV「BYD RACCO(ラッコ)」について、「自動車保険がかなり高い」という話を目にすることがあります。しかし、発売直後の現時点で「ラッコは他の軽自動車より異常に保険料が高い車」と一律に断定するのは適切ではありません。
自動車保険の金額は車種だけでは決まらず、年齢、等級、運転者の範囲、使用目的、年間走行距離、免許証の色、車両保険の有無、保険会社などによって大きく変わります。さらにラッコは発売されたばかりの新型車なので、長期間にわたる事故・修理実績がまだ蓄積されていません。
一方で、ラッコは一般的な低価格の軽自動車とは異なり、200万円を超える新車価格のEVです。そのため、特に車両保険を付けた見積もりでは「思っていたより高い」と感じる可能性があります。ここでは、ラッコの保険料を判断するときに知っておきたい仕組みを整理します。
BYDラッコの保険料が「異常に高い」とは現時点では断定できない
BYD RACCOは2026年7月28日に発売されたばかりです。BYDの公式発表によると、日本の軽自動車規格に合わせて専用設計された軽EVで、200、300 Plus、300 Premiumの3グレードが用意されています。[参照] BYD Auto Japan「BYD RACCO国内販売開始」
したがって、発売から約1か月の2026年8月時点では、何年も販売されている軽自動車のような豊富な保険実績はありません。「事故が非常に多いから保険料が高騰している」といった説明をするには時期が早すぎます。
特定の見積もりが高かったことと、その車種の保険料が一般的に異常に高いことは別問題です。ネット上で「年間○万円だった」という情報を見つけても、契約条件が違えば単純比較はできません。
自動車保険には「型式別料率クラス」がある
任意の自動車保険を理解するときに重要なのが「型式別料率クラス」です。損害保険料率算出機構では、自動車の型式ごとのリスクを評価し、保険料率を区分しています。[参照] 損害保険料率算出機構「型式別料率クラス検索」
現在、自家用普通・小型乗用車は1~17、自家用軽四輪乗用車は1~7のクラスに分けられています。数字が大きいほど保険料率が高くなり、対人賠償、対物賠償、人身傷害、車両保険について、それぞれクラスが設定されます。
軽自動車については2025年から従来の3クラスから7クラスへ細分化されました。損害保険料率算出機構によれば、軽自動車では隣り合うクラスの保険料率の差がおよそ1.1倍、クラス1とクラス7ではおよそ1.7倍の差になります。[参照] 型式別料率クラスの仕組み
新発売のラッコは長期の事故実績がまだない
型式別料率クラスは、その型式についての保険データなどをもとに毎年見直されます。つまり、同じ車を無事故で所有していても、その型式全体の事故・保険実績などによって翌年以降の料率クラスが変化する可能性があります。
一方、損害保険料率算出機構の検索システムでは、「未発売・発売して間もない型式」について検索できない場合があることも明記されています。新型車は既存車ほど十分な実績データが蓄積されていないためです。
ラッコは2026年7月28日発売なので、現時点ではまさに登場直後のモデルです。したがって今後、契約件数や事故・修理の実績が蓄積されるにつれて、型式ごとのリスク評価も更新されていくことになります。
ラッコが高く感じられる理由の一つは車両価格
ラッコは軽自動車ですが、車両価格は必ずしも安くありません。メーカー希望小売価格は、RACCO 200が214万5,000円、300 Plusが239万8,000円、300 Premiumが249万7,000円です。[参照] BYD RACCO公式サイト
例えば、100万円台前半の軽自動車と約250万円のラッコを比較して「同じ軽なのに保険料が違う」と考えると、特に車両保険部分で違いが出ても不思議ではありません。車両保険は自分の車の損害を補償するものなので、車両価額などが保険料に影響します。
ただし、車両価格が高いから任意保険全体が必ず比例して高くなるわけではありません。対人・対物・人身傷害・車両保険にはそれぞれ異なるリスク要素があり、契約者自身の条件も加わるためです。
「EVだから保険料が高い」と単純化するのも注意
ラッコについては「EVだから修理代が高く、そのため保険も高い」という説明を見かける可能性があります。EVでは駆動用バッテリーや高電圧部品など、ガソリン車とは異なる部品を搭載しているため、事故時の修理費は確かに保険料を考えるうえで重要な要素です。
ラッコはBYDのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載し、バッテリーを車体構造の一部として利用するCTB(Cell to Body)などのEV専用技術を採用しています。一方で、こうした構造を理由に「ラッコは事故を起こすと必ず高額修理になる」と現時点で決めつけることはできません。
保険料率は単純に「EVかガソリン車か」だけで決まるものではなく、型式ごとの保険実績や車両特性、ユーザー層などを含めて評価されます。損害保険料率算出機構も、料率クラスが高いこと自体は「安全性能が低い自動車」という意味ではないと説明しています。
新型車ではAEB割引の対象になる場合もある
新型車について知っておきたい制度の一つがAEB(衝突被害軽減ブレーキ)割引です。損害保険料率算出機構によると、発売後約3年以内など保険実績が十分に蓄積されていない型式では、AEBによるリスク軽減効果が型式別料率クラスに十分反映されていないことがあります。
そこで一定の条件を満たす型式では、AEB装着車について保険料を割り引く仕組みがあります。ただし、実際にラッコの契約へどの割引が適用されるかは、契約する保険会社と保険始期、型式などによって確認する必要があります。
つまり、新しいEVだから一方的に不利になるとは限りません。安全装備や保険商品の設計によって保険料が抑えられる要素もあるため、最終的には実際の見積もりで判断するのが確実です。
同じラッコでも保険料は人によって大きく違う
自動車保険では、車種以外の条件も保険料を大きく左右します。代表的なのがノンフリート等級です。長期間無事故で20等級になっている人と、新規6等級から契約する人では、同じラッコでも保険料は大きく異なります。
さらに、運転者年齢条件、本人限定・家族限定などの運転者範囲、年間走行距離、使用目的、免許証の色、居住地域、車両保険の条件、免責金額、各種特約などによっても変化します。
| 保険料に影響する主な項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| ノンフリート等級 | 新規契約か、既存契約から車両入替するか |
| 年齢条件 | 若年運転者を含むか |
| 運転者の範囲 | 本人のみ・家族など誰が運転するか |
| 車両保険 | 付帯するか、補償範囲や免責額をどうするか |
| 型式別料率クラス | 対人・対物・人身傷害・車両それぞれのクラス |
| 保険会社 | 同じ条件でも会社ごとに保険料が異なる |
したがって、「ラッコの保険は年間○万円」と一つの数字を提示しても、別の人にそのまま当てはめることはできません。
本当に高いか調べるなら同条件で他車と比較する
ラッコの保険料が高いかどうかを判断する最も確実な方法は、同一人物・同一補償条件で他の軽自動車と見積もりを比較することです。
例えば「20等級・本人限定・同じ年齢条件・対人対物無制限・人身傷害同額・同程度の車両保険」という条件を固定し、ラッコと購入候補の軽自動車を比較します。これなら車両変更による保険料の差がかなり分かりやすくなります。
特にすでに自動車保険へ加入している場合は、保険会社や代理店に「現在の契約をBYD RACCOへ車両入替した場合の年間保険料はいくらになるか」と試算してもらうのが実用的です。購入契約をする前でも、型式など必要な情報が揃っていれば見積もりできる場合があります。
比較するときは「総額」と「車両保険部分」を分ける
見積もりが高かった場合には、年間保険料だけを見るのではなく、どの補償が金額を押し上げているか確認すると原因を判断しやすくなります。
例えば車両保険なしでは他車との差が小さいのに、車両保険を付けると差が大きくなるなら、車両補償部分が主な要因と考えられます。反対に対人・対物なども含めて大きな差が出る場合は、型式別料率クラスなど別の要素も確認する価値があります。
ただし、保険料を安くする目的だけで必要な補償を外すのは本末転倒です。新車の軽EVを購入する場合は、万一の全損や高額修理に自費で対応できるかまで含めて車両保険の必要性を考えることが重要です。
「BYDだから高い」という説明にも注意が必要
輸入車ブランドであることだけを理由に「BYDは保険が高い」と決めつけるのも正確ではありません。型式別料率クラスはメーカー名だけではなく、それぞれの型式について設定される仕組みです。
さらにラッコは海外で販売されている車をそのまま輸入したモデルではなく、日本の軽自動車規格に合わせて新設計されたモデルです。そのため、他のBYD車の保険料をそのままラッコへ当てはめることもできません。
今後販売台数が増えれば、実際の事故頻度、損害額、修理実績などのデータも蓄積されていきます。将来の料率クラスが上がるか下がるかは、その実績を見なければ分かりません。
まとめ|BYDラッコの保険は「異常に高い」と決めつけず実見積もりで確認
BYD RACCOは2026年7月28日に発売されたばかりの軽EVです。2026年8月時点では発売から間もないため、長期間の保険実績を根拠として「ラッコは異常に保険料が高い車」と断定できる状況ではありません。
一方、ラッコの価格は214万5,000円~249万7,000円で、一般的な低価格帯の軽自動車より車両価格が高くなるケースがあります。そのため車両保険を含めた見積もりでは、比較対象によって「軽自動車としては高い」と感じる可能性があります。
また、自家用軽四輪乗用車には1~7の型式別料率クラスがあり、対人・対物・人身傷害・車両保険それぞれのリスクが保険料へ反映されます。ただし、実際の保険料には等級、年齢、運転者範囲、車両保険、保険会社など多数の条件が影響します。
購入を検討している場合は、ネット上の「高い・安い」という評判より、現在加入している保険会社などにラッコの型式を伝え、実際の条件で車両入替見積もりを出してもらうのが最も確実です。
そのうえで、同じ補償内容の国産軽自動車や軽EVと年間保険料を比較すれば、「ラッコだから本当に高いのか」「車両価格や車両保険が原因なのか」「契約者自身の条件によるものなのか」を切り分けて判断できます。


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