21歳のフリーターが収入を増やすとき、「親の扶養から外れたくない」「自分にかかる税金もできるだけ抑えたい」と考えることがあります。しかし、現在は昔からよく知られている「年収103万円」だけを基準に働くと、必要以上に収入を抑えてしまう可能性があります。
特に19歳以上23歳未満の子については近年制度改正が行われ、親の所得税に関する扶養と健康保険の扶養の基準が変わっています。さらに2026年分の所得税についても基礎控除・給与所得控除などが改正されています。
重要なのは「税金上の扶養」「健康保険の扶養」「本人の所得税・住民税」「勤務先での社会保険加入」を別々に考えることです。すべてに共通する一つの「扶養の壁」があるわけではありません。
まず「103万円まで」という考え方は現在の制度では古い
かつて年収103万円が強く意識されたのは、給与所得控除55万円と所得税の基礎控除48万円を合わせた金額などが関係していました。しかし税制改正によって給与所得控除や基礎控除の金額が変わったため、現在も「とにかく103万円以下ならよい」と考えるのは適切ではありません。
国税庁によると、2025年分から給与所得控除の最低保障額は65万円へ引き上げられ、さらに2026年度税制改正では2026年分から給与所得控除の最低保障額や基礎控除などが再び見直されています。[参照:国税庁 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等]
したがって、昔の情報を基に「103万円を1円でも超えれば大損する」と考える必要はありません。ただし、所得税がかからない金額と親の扶養を維持できる金額は同じではないため、次のように分けて確認します。
21歳は税制上「19歳以上23歳未満」の特別な年代
21歳で親と生計を一にしている場合、年齢上は所得税の「特定扶養親族」または「特定親族特別控除」が関係する年代です。19歳以上23歳未満は、一般の扶養親族とは異なる扱いがあります。
2026年分について、給与収入だけの場合は年収136万円以下であれば、所得要件を満たす限り親は特定扶養親族として63万円の扶養控除を受けられます。これは2026年度税制改正で、扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下、給与収入だけの場合は136万円以下へ引き上げられたためです。[参照:国税庁 令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし]
さらに19歳以上23歳未満には「特定親族特別控除」があります。この仕組みにより、一定の収入を超えた瞬間に親の所得控除がゼロになるのではなく、子の所得に応じて控除を受けられる範囲が設けられています。
税金上の扶養と健康保険の扶養は基準が違う
ここが最も間違えやすいところです。親の所得税を計算するときの扶養控除と、親が会社員などの場合の健康保険の被扶養者制度は別制度です。
健康保険については、2025年10月1日から、扶養認定を受ける人が19歳以上23歳未満であり配偶者ではない場合、年間収入要件が従来の130万円未満から150万円未満へ変更されました。21歳の子であれば年齢要件に該当する可能性があります。[参照:日本年金機構 19歳以上23歳未満の被扶養者認定]
ただし「150万円未満なら必ず親の健康保険に入れる」という意味ではありません。同居の場合の生計維持関係など、収入以外の被扶養者認定要件もあります。また加入している健康保険組合等で確認が必要になる場合があります。
21歳なら「150万円未満」が一つの重要ラインになる
親が会社員で、その健康保険の被扶養者になっている21歳の子であれば、現在は健康保険の年間収入要件である150万円未満が非常に重要です。
例えば給与収入が年間145万円程度で、ほかの被扶養者要件も満たしているのであれば、以前の「130万円の壁」だけを見て働く時間を減らす必要がない可能性があります。一方、年間収入が150万円以上になる見込みなら、健康保険の扶養から外れる可能性を確認する必要があります。
なお健康保険の収入判定は、所得税のように単純に1月1日から12月31日までの確定した給与総額だけを見る仕組みとは限りません。今後の年間収入見込みなどで判断されるため、「12月に調整すれば必ず大丈夫」と考えず、親の勤務先または加入している健康保険へ確認することが重要です。
勤務先の社会保険に加入する条件は「年収だけ」では決まらない
もう一つ注意したいのが、自分自身が勤務先の健康保険・厚生年金へ加入するケースです。「親の扶養に入りたいから社会保険への加入を断る」という選択が常にできるわけではありません。
2026年8月時点では、通常の労働者の4分の3以上働く人は原則として社会保険の加入対象です。また一定規模以上の企業で働く短時間労働者についても、週の所定労働時間20時間以上、学生ではないことなどの要件を満たすと加入対象になります。現在は51人以上の企業が企業規模要件の対象で、今後さらに段階的な拡大が予定されています。[参照:厚生労働省 パート・アルバイトの社会保険適用]
さらに厚生労働省は、短時間労働者についての月額8.8万円以上という賃金要件を2026年10月に撤廃予定と案内しています。そのため、今後は従来いわれてきた「106万円の壁」だけで社会保険加入を判断する考え方も変わっていきます。
「シフト調整すれば社会保険に入らなくていい」とは限らない
社会保険は本人が自由に加入・非加入を選択する制度ではありません。法律上の加入要件を満たせば、原則として事業主が資格取得の手続きを行う必要があります。
契約上の所定労働時間を週20時間未満にするなど、結果として加入要件を満たさない働き方になることはあります。しかし、実際には加入要件を満たしているのに「入りたくないから入らない」という扱いにはできません。
フリーターの場合は学生除外も基本的にありません。そのため収入を増やすなら、年収だけでなく勤務先の従業員規模、雇用契約上の週所定労働時間、フルタイム従業員との勤務時間・日数の比較まで確認する必要があります。
本人の所得税・住民税と親の扶養は別問題
本人に税金がかかるかどうかも別に考えます。給与収入が一定額を超えると本人の所得税や住民税が発生する可能性がありますが、税金は通常「基準を1円超えたら収入全体に高額な税率がかかる」という仕組みではありません。
また所得税と住民税では基礎控除や非課税基準などが異なります。住民税については自治体や本人・世帯の条件によって非課税となる基準が異なる場合があるため、全国一律の「この年収なら住民税ゼロ」とだけ考えないほうが安全です。国税庁も、所得税がかからない収入水準であっても居住する市区町村によって住民税がかかる場合があると案内しています。[参照:国税庁 家族と税]
そのため「税金を1円も払わないこと」を目的に勤務時間を大幅に減らすより、税・社会保険を支払った後の手取り額まで比較したほうが合理的な場合があります。
21歳フリーターが確認したい年収ラインを整理
給与収入だけで、2026年12月31日時点で19歳以上23歳未満に該当するケースを大まかに整理すると、次のようになります。ただし勤務先の社会保険加入条件は年収だけでは判定できません。
| 目安 | 主な意味 |
|---|---|
| 103万円 | かつて広く使われた目安。現在の制度ではこれだけを基準にする必要はない |
| 136万円以下 | 2026年分で給与のみなら、所得要件上は親の特定扶養親族として扶養控除を受けられる範囲の目安 |
| 150万円未満 | 19歳以上23歳未満の子について、健康保険の被扶養者認定における年間収入要件の目安 |
| 150万円以上 | 親の健康保険の扶養から外れる可能性を特に確認したい水準 |
| 週20時間以上 | 一定の勤務先では本人が社会保険へ加入する重要な条件 |
「親の健康保険の扶養を維持する」という目的なら、21歳では150万円未満が重要ですが、それだけで社会保険に入らずに済むとは限りません。勤務先で自分が社会保険の加入要件を満たせば、親の扶養より勤務先での加入が優先されます。
扶養内にこだわるか、社会保険に入って収入を増やすかも比較する
月数千円の税金を避けるために何十万円もの収入を減らしてしまえば、結果として自由に使えるお金が少なくなる場合があります。特に21歳で今後フルタイム勤務へ移行する可能性があるなら、扶養から外れること自体を「損」と決めつける必要はありません。
勤務先の社会保険へ加入すれば保険料負担が発生する一方、厚生年金の加入期間となり、健康保険にも傷病手当金など一定の給付があります。単純な手取り額だけでなく保障も含めて比較する必要があります。
扶養内を希望する場合は、まず親の勤務先に「21歳の子の健康保険の被扶養者収入要件」を確認し、自分の勤務先には「現在の雇用契約で社会保険の加入対象になるか」を確認すると整理しやすくなります。
まとめ:21歳なら103万円だけを基準に働く必要はない
21歳のフリーターについては、現在も「103万円以内でなければ親の扶養から外れる」と考えるのは正確ではありません。税制改正によって扶養親族の所得要件が変わり、19歳以上23歳未満には特定親族特別控除も設けられています。
さらに健康保険では、19歳以上23歳未満の子について2025年10月から年間収入要件が原則150万円未満へ引き上げられています。ただし勤務先で社会保険の加入要件を満たせば、自分自身で健康保険・厚生年金へ加入することになるため、150万円未満なら無条件に親の扶養を維持できるわけではありません。
したがって最適な年収は「103万円」という一つの数字では決まりません。2026年に21歳で給与収入だけなら、親の税制上の扶養、健康保険の150万円未満という基準、自分の勤務先における週所定労働時間などをそれぞれ確認し、最終的には税・社会保険料を差し引いた手取りと将来の保障を含めて働き方を決めることが大切です。


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