自動車保険で長年無事故を続けて20等級になっていても、事故で保険を使用すると翌年の保険料が大きく上がることがあります。「年間5万円台だったのに、更新見積もりが9万円台になった」というケースも、金額だけを見て異常に高いとは判断できません。
その理由は、事故後には単に等級が下がるだけではなく、一定期間「事故有」の割増引率が適用されるためです。さらに車両保険、車の型式別料率クラス、年齢条件、保険会社の料率改定なども保険料へ影響します。
20等級で駐車中の他車へ接触し、対物賠償などを使った事故が一般的な3等級ダウン事故に該当するなら、翌年は原則17等級となり、事故有係数適用期間は3年になります。したがって更新時の保険料が大幅に上昇すること自体は珍しい仕組みではありません。
20等級で3等級ダウン事故を起こすと翌年は17等級になる
一般的なノンフリート自動車保険には1~20等級があり、事故の有無によって翌年度の等級が変化します。無事故なら原則1等級上がりますが、すでに20等級なら上限の20等級を維持します。
一方、他の車へ衝突して対物賠償保険を使用したような事故は、通常は3等級ダウン事故として扱われます。20等級からなら翌年度は17等級です。日本損害保険協会も、保険金の支払いを受ける一般的な事故では1事故につき3等級下がる仕組みを説明しています。[参照:日本損害保険協会 自動車保険の等級]
ただし事故には、3等級ダウン事故のほか1等級ダウン事故やノーカウント事故もあります。実際の事故区分は契約内容と保険金の支払内容によって決まるため、更新案内に記載された「次契約の等級」と「事故有係数適用期間」を確認することが第一歩です。
保険料が上がるのは「17等級になるから」だけではない
事故後の保険料を理解するときに非常に重要なのが「事故有係数」です。同じ17等級でも、無事故で17等級になった人と、事故によって20等級から17等級になった人では割引率が同じではありません。
日本損害保険協会が掲載している等級別割増引率の例では、20等級・無事故の割引率が63%であるのに対し、17等級・事故有では44%となっています。つまり事故前の20等級と事故後の17等級では、保険料計算上の割引がかなり縮小します。[参照:日本損害保険協会 等級別割増引率例]
そのため「3等級しか下がっていないのに、なぜこんなに高くなるのか」と感じることがあります。実際には20等級→17等級という数字の変化と、無事故係数→事故有係数という2つの変化が重なっているのです。
年間5.4万円から9.2万円への上昇はあり得る範囲
年間保険料が5万4,000円から9万2,000円になると、3万8,000円の増額です。比率では約70%の上昇になるため、契約者として「高すぎるのでは」と感じるのは自然でしょう。
しかし、この数字だけから保険会社の計算がおかしいとは判断できません。20等級・無事故から17等級・事故有へ変化するだけでも割引率が大きく変わるうえ、更新時にはその他の料率変更が同時に反映される場合があります。
例えば、事故前の5万4,000円へ単純に「3等級分」を足して9万2,000円になっているわけではありません。自動車保険は基礎となる保険料に契約条件や各種料率・割引などを反映して算出されるため、前年保険料との単純な比例計算では確認できないのです。
事故有係数は原則3年間続く
一般的な3等級ダウン事故を1件起こした場合、事故有係数適用期間は3年です。その後に事故を起こさなければ、翌年以降は等級が1つずつ上がりながら事故有係数適用期間が1年ずつ減っていきます。
| 時期 | 等級のイメージ | 事故有係数適用期間 |
|---|---|---|
| 事故前 | 20等級 | 0年 |
| 事故後1年目 | 17等級 | 3年 |
| 事故後2年目 | 18等級 | 2年 |
| 事故後3年目 | 19等級 | 1年 |
| その次 | 20等級 | 0年 |
途中で新たな事故がなければ、このように時間をかけて元の状態へ戻っていくのが基本的なイメージです。事故有係数が適用される期間については、損害保険料率算出機構も3等級ダウン事故1件につき3年間と説明しています。[参照:損害保険料率算出機構 自動車保険参考純率]
なお、実際の保険料が毎年この表のように一定割合で下がるとは限りません。保険会社の料率改定や型式別料率クラス、補償内容なども影響するためです。
車両保険150万円も更新保険料へ影響する
車両保険へ加入している場合、対人・対物賠償だけの契約より保険料は高くなります。車両保険金額が150万円だから一律でいくら上乗せされるというものではなく、車種、型式、補償範囲、免責金額などによって変わります。
特に普通・小型乗用車では、車の型式ごとの事故実績に基づく「型式別料率クラス」が設定されています。日本損害保険協会によると、対人、対物、人身傷害等、車両保険ごとに料率クラスが設定され、毎年見直されます。[参照:日本損害保険協会 型式別料率クラス]
つまり前年とまったく同じ車に乗っていても、その型式全体の事故実績などによって料率クラスが変われば保険料が変化することがあります。今回の値上げの全額が自分の事故だけによるものとは限りません。
更新見積もりで確認したいポイント
9万2,000円という金額が妥当かを確認するには、前年の保険証券と更新見積書を横に並べて比較するのが効果的です。総額だけではなく、条件が変わっていないかを確認します。
- 前年20等級から17等級になっているか
- 事故有係数適用期間が3年になっているか
- 車両保険金額と補償範囲
- 車両保険の免責金額
- 年齢条件・運転者限定
- 年間走行距離や使用目的
- 人身傷害の保険金額
- 付帯している特約
- 型式別料率クラスの変化
特に「前年と同条件ならいくら」「事故がなかった場合ならいくら」という2種類の試算を保険会社や代理店へ依頼すると、事故による増額分を把握しやすくなります。
更新時に保険会社を変更すれば20等級へ戻せる?
保険料が高くなったからといって、別の保険会社へ乗り換えれば事故前の20等級として契約できるわけではありません。損害保険会社等の間では、適切な等級継承のため前契約の等級や事故情報などを確認する制度があります。[参照:日本損害保険協会 無事故・事故確認制度]
そのため、事故歴を隠して他社へ新規契約することで事故有係数をリセットするという考え方はできません。
ただし、同じ17等級・事故有という条件でも保険会社によって最終的な保険料は異なります。更新時に複数社で同一条件の見積もりを取り、比較すること自体は有効です。
少額事故では「保険を使うか」の判断も重要
事故の修理・賠償額が比較的小さい場合には、保険を使用することで受け取れる保険金より、事故後数年間の保険料増加額のほうが大きくなるケースがあります。
日本損害保険協会も、少額の保険金を請求する場合、翌年以降に支払う保険料の増加額が受取保険金を上回る場合があると説明しています。[参照:日本損害保険協会 少額事故と保険利用]
事故が発生した時点では、相手車の修理費などが確定する前に自己負担と保険使用のどちらが得か判断するのは難しいこともあります。今後少額事故が発生した場合には、保険会社へ「保険を使った場合と使わなかった場合の今後数年間の保険料差」を試算してもらってから判断するとよいでしょう。
まとめ:20等級から事故後に5.4万円→9.2万円は仕組み上十分あり得る
20等級の契約で駐車中の車へ接触し、保険を使用した事故が一般的な3等級ダウン事故に該当する場合、翌年は原則として17等級となり、さらに3年間は事故有係数が適用されます。
年間5万4,000円から9万2,000円への上昇は約70%と大きいものの、この金額だけを理由に「異常に高い」「計算ミス」とは判断できません。20等級・無事故から17等級・事故有へ変わる影響に加え、車両保険150万円、型式別料率クラス、年齢・運転者条件、各社の料率改定などが重なっている可能性があります。
まず更新見積書で「17等級」「事故有係数適用期間3年」になっているかを確認し、保険会社へ事故がなかった場合との差額を試算してもらうと値上がりの内訳を把握しやすくなります。そのうえで車両保険の免責金額や不要な特約を見直し、同一補償条件で複数社の見積もりを比較するのが合理的です。


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