病気やけがで仕事を休んでいる途中に数日だけ出勤した場合、「それまでの待期期間がリセットされるのか」「出勤後にもう一度3日間待たなければならないのか」「出勤した日以外の欠勤日は傷病手当金を受け取れるのか」と迷いやすいところです。
傷病手当金では、最初に連続する3日間の「待期」を完成させることが重要です。いったん待期が完成した後に途中で出勤日があっても、それだけを理由に同じ傷病について待期3日間を最初からやり直すわけではありません。その後も同じ傷病によって労務不能であり、給与など他の支給要件を満たす日については支給対象になり得ます。
ただし、最終的な支給可否は単なる勤務表だけでは決まりません。医師による労務不能期間の意見、事業主が証明する勤務・給与状況などをもとに保険者が審査します。ここでは協会けんぽの公表資料を基準に仕組みを整理します。
傷病手当金は最初の「連続3日間」が待期になる
協会けんぽによると、傷病手当金を受けるには、業務外の病気やけがで療養中であること、仕事に就けないこと、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業期間について十分な給与を受けていないことなどの要件があります。[参照:全国健康保険協会 傷病手当金]
最初の連続3日間は「待期」と呼ばれ、この3日間そのものには傷病手当金は支給されません。待期完成後、4日目以降で支給要件を満たした労務不能日が対象となります。
重要なのは、待期には有給休暇や土日・祝日などの公休日も含めることができる点です。また、勤務時間中に業務外の病気やけがによって仕事ができなくなり早退した場合、その日を待期初日として数えられる場合があります。
早退→有給→有給なら待期が完成する可能性がある
例えば8月12日に出勤したものの、業務外の病気によって仕事ができなくなり早退し、その後8月13日・14日を有給休暇で休んだケースを考えてみます。
協会けんぽの資料では、労務不能となった初日に早退した場合、その早退日を待期期間の初日として数えられることが示されています。また、有給休暇も待期に含めることができます。そのため、条件を満たしていれば「8月12日=早退、13日=有給、14日=有給」という連続3日間で待期が完成する可能性があります。[参照:全国健康保険協会 傷病手当金概要]
この場合、15日以降については待期完成後の期間として考えることになります。ただし、有給休暇などによって傷病手当金以上の給与が支払われる日は、原則として傷病手当金そのものは支給されません。
待期完成後に出勤しても待期をやり直すとは限らない
傷病手当金で特に誤解されやすいのが、療養期間の途中で出勤したケースです。「1日でも出勤したら待期3日間がリセットされる」と考えてしまうことがありますが、待期がすでに完成しているケースでは考え方が異なります。
協会けんぽの資料にも、待期完成後に出勤日を挟み、その後の労務不能日について傷病手当金の支給対象となる例が示されています。つまり、待期完成後に何日か出勤したからといって、同じ傷病について再び3日間の待期を完成させなければならないわけではありません。
したがって「休み→休み→休み」で待期完成後、「出勤→出勤→再び同じ傷病で休業」となったケースでは、出勤後の休業について新たな待期3日を設けるという単純な扱いにはなりません。
8月19日・20日に出勤した場合はどう考える?
具体例として、8月12日から療養が始まり、12日早退、13日・14日有給、その後も休業し、19日・20日だけ臨時出勤、21日以降再び休業したケースを考えてみます。
12日から14日までで待期が完成していると認められれば、15日以降は支給対象期間になり得ます。ただし19日・20日は実際に仕事をしているため、その2日について通常は「仕事に就くことができない」という傷病手当金の支給要件を満たさず、支給対象にはなりません。
一方、19日・20日に出勤したことだけを理由として、21日から再び待期3日間を設定するわけではありません。同じ肺炎・胸膜炎による療養が継続し、21日以降について医師が労務不能と認め、その他の要件も満たしていれば、21日以降は支給対象になり得ます。
| 日付 | 勤務状況の例 | 傷病手当金の考え方 |
|---|---|---|
| 8/12 | 病気で早退 | 条件を満たせば待期1日目 |
| 8/13 | 有給 | 待期2日目にできる |
| 8/14 | 有給 | 待期3日目・待期完成の可能性 |
| 8/15以降 | 公休・有給・欠勤など | 待期完成後。給与と労務不能の状況により判定 |
| 8/19・20 | 出勤 | 通常は傷病手当金の支給対象外 |
| 8/21以降 | 再び休業 | 同じ傷病による労務不能なら支給対象になり得る |
なお、この表は制度を理解するための例です。実際には医師の意見や給与支払い状況などを含めて保険者が審査するため、表の日付だけから支給を確定することはできません。
有給休暇や公休日は「待期」と「支給」で扱いが違う
有給休暇は待期3日間には含められます。しかし待期完成後の支給期間では、給与が支払われているかどうかが問題になります。
傷病手当金は病気やけがによって働けず、十分な給与を受けられない期間の生活保障を目的とする制度です。そのため、有給休暇を取得して通常の給与が支払われ、その額が傷病手当金の日額以上なら、その日は傷病手当金が支給されません。給与が傷病手当金より少なければ、条件に応じて差額が支給される仕組みです。[参照:全国健康保険協会 傷病手当金Q&A]
一方、公休日については、待期完成後であっても、療養のため労務不能の状態が継続しているなど支給要件を満たせば対象になり得ます。「もともと仕事が休みの日だから傷病手当金も必ず対象外」というわけではありません。
申請期間を8月21日からに限定する必要はある?
途中に19日・20日の出勤があるからといって、申請期間そのものを必ず8月21日からにしなければならないとは限りません。むしろ療養期間を実態に沿って申請し、出勤日や有給日、欠勤日、給与支給状況を正確に記載・証明してもらうことが重要です。
例えば8月12日から9月7日まで同じ傷病による療養期間として医師が労務不能期間を証明できる場合でも、事業主側の証明では実際の勤務状況や給与支払い状況が反映されます。そのうえで、待期期間、出勤日、給与が支給された日などを保険者が確認して支給額を決定します。
ただし、医師がどの期間を労務不能として証明できるかは診療状況によります。診断書に「8月12日~9月7日」と書かれていることと、傷病手当金支給申請書の療養担当者記入欄で同じ期間がそのまま労務不能と証明されることは必ずしも同義ではありません。申請前に勤務先の担当者と医療機関へ確認すると確実です。
「診断書の療養期間=必ず支給される期間」ではない
傷病手当金では医師の診断書だけで支給日が決定するわけではありません。協会けんぽは、仕事に就くことができない状態について、療養担当者の意見等を基に被保険者の仕事内容なども考慮して判断するとしています。
例えば医師から9月7日まで療養するよう指示されていても、その期間中に実際に通常勤務した日があれば、その勤務日は原則として労務不能日としての支給対象にはなりません。一方で、その出勤を挟んだだけで前後の休業期間がすべて不支給になるわけでもありません。
このため、勤務実績を事実どおり申請することが重要です。「出勤した2日があるから、それ以前を申請から外す」と自己判断するより、実際の療養期間・勤務状況を記載して保険者の審査を受けるほうが制度に沿った方法です。
申請前に確認しておきたいポイント
傷病手当金を申請するときは、まず加入している健康保険が協会けんぽなのか、健康保険組合なのかを確認します。基本的な制度は健康保険法に基づきますが、具体的な書類の案内などは加入先へ確認するのが確実です。
勤務先には、8月12日の早退、13日・14日などの有給、19日・20日の出勤、それ以外の欠勤・公休日について正確に証明してもらいます。医療機関には、実際に労務不能だったと判断できる期間について傷病手当金支給申請書の療養担当者記入欄を記載してもらいます。
協会けんぽでは傷病手当金支給申請書と記入方法を公開しています。申請権は支給対象となる日ごとに翌日から2年で時効となるため、必要以上に急いで不完全な申請をする必要はありませんが、勤務状況が確定したら早めに手続きを進めるとよいでしょう。[参照:全国健康保険協会 傷病手当金支給申請書]
まとめ
傷病手当金では、最初に連続3日間の待期を完成させる必要があります。病気によって勤務途中で早退した日は条件を満たせば待期初日になり、有給休暇や公休日も待期へ含めることができます。
いったん待期が完成した後に19日・20日など数日間出勤しても、それだけで待期がリセットされるわけではありません。出勤した日は通常支給対象外ですが、その後に同じ傷病によって再び労務不能となり、給与などその他の要件も満たす休業日は傷病手当金の対象になり得ます。
したがって、途中に出勤日がある場合も「出勤後だけを申請すればよい」と自己判断するのではなく、実際の療養期間と勤務・給与状況を正確に申請することが大切です。最終的な支給対象日は医師・事業主の証明を踏まえて加入している健康保険が審査するため、具体的な日付について不安がある場合は申請前に保険者へ確認すると確実です。


コメント