定期生命保険の満期をきっかけに新しい生命保険へ申し込んだところ、複数社から引受不可となったり、通常より高い保険料を条件として提示されたりすることがあります。また、インターネット上で申込画面へ進めない、募集担当者から提案を受けられないといったケースもあり、「なぜ申込みすらできないのか」と疑問を感じることもあるでしょう。
生命保険は、希望すれば誰でも同じ条件で加入できる商品ではありません。保険会社は健康状態、年齢、保障額、保険期間、過去・現在の治療状況などを踏まえて引受判断を行います。ただし、「審査で引受不可」と「申込手続きへ進めないこと」は必ずしも同じ意味ではありません。
複数社で断られた場合ほど、健康上の査定、商品上の申込条件、募集担当者・代理店側の事情などを分けて整理することが重要です。
生命保険には「危険選択」という仕組みがある
生命保険では、多数の加入者が保険料を負担し、死亡や病気など一定の事由が発生した人へ保険金・給付金を支払います。そのため保険会社は、申込者のリスクを一定の基準で評価して契約を引き受ける「危険選択」を行っています。
金融庁の保険会社向け監督指針にも「危険選択」が明記され、告知項目についても保険会社が危険選択を行うために必要なものに限定することが求められています。[参照:金融庁 保険会社向けの総合的な監督指針]
したがって、過去に同じ保険会社と問題なく契約していたことや、一度も保険金を請求しなかったことだけで、新しい契約の引受けが保証されるわけではありません。15年前に加入できた人でも、現在の年齢・健康状態・希望する保障内容を基に新規契約として判断されます。
持病があると必ず生命保険に入れないわけではない
持病や通院歴があっても、一律に生命保険へ加入できないわけではありません。病名だけではなく、発症時期、治療内容、服薬、検査結果、合併症、入院・手術歴、経過などによって判断が変わる可能性があります。
その結果は大きく分けて、通常条件での承諾、特別条件付きでの承諾、延期、引受不可などになることがあります。保険会社によって商品設計や引受基準が異なるため、同じ健康状態でもA社では不可、B社では条件付きで可能ということはあり得ます。
金融庁も、病歴などを告知して契約する場合には、免責事由の追加や保険料の割増といった特別条件が付く場合があると案内しています。[参照:金融庁 金融サービス利用者相談室]
保険料1.3倍・1.5倍などの提示は「条件付きで引受可能」という意味
通常保険料では引き受けられないものの、割増保険料を支払うことを条件に契約できる場合があります。これは一般に特別条件付きの引受けの一種です。
例えば通常の月額保険料が1万円の商品について1.3倍という条件なら月額約1万3,000円、1.5倍なら約1万5,000円というイメージです。ただし、実際の保険料や条件は各社の正式な査定結果を確認する必要があります。
条件付き承諾は「審査に落ちた」のではなく、保険会社が一定の条件ならリスクを引き受けられると判断した状態です。割増保険料のほか、商品によっては特定部位・疾病に関する条件などが提示される場合もあるため、契約前に何が通常契約と違うのかを確認しましょう。
「他社へ申し込んだことがある」だけで全社NGになるわけではない
生命保険では、不正利用や過大な保障を防止する目的などから契約情報を確認する仕組みがあります。金融庁の監督指針でも、死亡保険について他の契約を含めた保険金額が過大ではないか確認し、慎重な引受判断を行う体制が求められています。[参照:金融庁 保険会社向けの総合的な監督指針]
しかし、単純に「他社へ一度申し込んだ経験がある人は生命保険に加入できない」という一般ルールがあるわけではありません。他社への申込状況が話題になった場合には、何の情報を基に、どの商品について、どのような理由で申込みまたは引受けができないのかを個別に確認する必要があります。
短期間に多数の高額な死亡保障へ申し込む場合などには、保険会社が慎重な確認を行うことがあります。一方で、他社へ申し込んだという事実だけから「今後どの保険会社にも入れない」と考える必要はありません。
申込画面の「ロック」は医学的な引受拒否とは限らない
インターネット型の商品で申込画面へ進めない、システム上手続きを開始できないといった状態は、正式な医務査定を受けた結果の引受不可とは区別して考える必要があります。
考えられる事情としては、年齢・商品・過去の申込手続き・重複処理・一定期間内の再申込みに関するシステム上の制御などがあります。ただし、画面がロックされている理由を外部から推測して断定することはできません。
この場合は「健康上の理由で引受不可なのか」「一定期間経過後なら再申込みできるのか」「別の商品・対面手続きなら申込みできるのか」を保険会社の問い合わせ窓口へ確認するのが確実です。画面表示だけから永久的な加入拒否と判断しないことが大切です。
募集担当者から「提案しない」と言われた場合は審査とは別問題
生命保険では、保険会社による「契約を引き受けるか」という判断と、営業担当者や代理店が「商品を提案・募集するか」という段階があります。この二つは同じものではありません。
例えば、過去に提案を断ったことを理由として担当者から再提案を受けられなかったとしても、それだけで保険会社の医学的な引受審査に不合格になったことを意味するとは限りません。そもそも正式な申込み・査定まで進んでいないのであれば、「審査NG」と「募集・提案を受けられなかったこと」を分けて考える必要があります。
対応に納得できない場合には、その担当者だけで判断せず、保険会社のお客様相談窓口などへ「会社として申込みできないのか、それとも担当者・募集経路上の判断なのか」を確認すると整理しやすくなります。
複数社へ申し込む前に「事前相談」を活用する
持病がある人が生命保険を探す場合、手当たり次第に正式申込みを繰り返すより、健康状態と希望保障を整理してから各社の取扱いを確認する方法があります。複数社を扱う保険代理店などへ相談する場合も、各社の引受基準が同じではないことを前提に候補を絞ると効率的です。
相談時には病名だけでなく、「いつ診断されたか」「現在の治療内容」「服薬名」「直近の検査結果」「入院・手術歴」「経過観察の頻度」などを整理しておくと話が進めやすくなります。健康診断や人間ドックの結果が求められる商品なら、その資料も準備します。
なお、加入したいからといって病歴や服薬などを少なく申告するのは避けなければなりません。金融庁も、告知書には正確に回答する必要があり、事実と異なる告知をすると告知義務違反として保険金が支払われない場合があると注意喚起しています。[参照:金融庁]
割増保険料の保険に入る前に必要保障額を再計算する
条件付きで加入できる会社が見つかった場合でも、「入れるから最大限加入する」と決める必要はありません。特に定期死亡保険では、現在本当に必要な死亡保障額を計算し直すことが重要です。
例えば子どもが独立している、住宅ローンの団体信用生命保険がある、十分な預貯金がある、配偶者にも収入があるなど、以前より必要保障額が減っていることがあります。逆に扶養家族が多い場合などは一定の保障を維持する必要性が高いでしょう。
割増保険料が付く場合には、「保険金額を少し下げて保険料負担を抑える」「死亡保障を優先して医療保障は別に考える」など、家計全体で組み直す方法もあります。生命保険は加入できる最大額ではなく、必要なリスクを必要な金額だけカバーするという視点が大切です。
まとめ:生命保険の「審査NG」と「申込不可・提案不可」は分けて考える
生命保険への加入が厳しく感じられる最大の理由は、保険会社が契約時に健康状態などを基に危険選択を行っているためです。過去に問題なく契約を満了していても、新しい契約では現在の年齢・健康状態・保障内容などによって改めて判断されます。
一方で、申込画面がロックされることや、募集担当者から再提案を受けられないことまで、すべて「持病による審査落ち」と考えるのは適切ではありません。医学的な引受判断、商品・システム上の申込制限、募集担当者・代理店側の対応を切り分け、それぞれ理由を確認することが重要です。
また、ある会社で引受不可でも、別会社では割増保険料などの特別条件付きで加入できることがあります。複数社で結果が異なること自体は不自然ではありません。条件付き契約を提示された場合には、通常契約との違い、割増期間、保障内容、総支払保険料を確認し、現在必要な死亡保障額を再計算したうえで比較すると判断しやすくなります。

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