金利上昇局面では、数年前に契約した定期預金を途中解約し、より金利の高い個人向け国債へ乗り換えるべきか迷うことがあります。特に1,000万円のようなまとまった金額では、年0.数%の違いでも数年間で数十万円の差になるため、金利だけを見ると乗り換えが魅力的に見えます。
2026年8月募集の個人向け国債は、変動10年(第197回)の初回適用利率が年1.87%(税引前)、固定5年(第185回)が年2.06%(税引前)です。1.2%の定期預金より現在の表面金利は高くなっています。[参照:財務省 現在募集中の個人向け国債]
ただし、「1.2%から2.06%になるから解約したほうが得」と単純には判断できません。定期預金を2年目で解約した場合の中途解約利率、国債を何年間保有する予定なのか、変動10年の将来金利などを分けて考える必要があります。
2026年8月の個人向け国債は変動10年1.87%・固定5年2.06%
2026年8月29日時点で募集されている個人向け国債は、変動10年が第197回債、固定5年が第185回債です。募集期間はいずれも2026年8月6日から8月31日、発行日は9月15日となっています。
| 商品 | 税引前年利 | 税引後年利 | 金利タイプ |
|---|---|---|---|
| 現在の定期預金 | 1.20% | 約0.956% | 固定 |
| 個人向け国債 変動10年 第197回 | 1.87% | 1.4901095% | 半年ごとに変動 |
| 個人向け国債 固定5年 第185回 | 2.06% | 1.6415110% | 5年間固定 |
固定5年の2.06%は満期まで変わりません。一方、変動10年の1.87%は最初の半年間に適用される利率であり、その後は半年ごとに見直されます。そのため、変動10年について10年間の受取利息を現時点で確定計算することはできません。
なお「国債」には市場で価格が変動する通常の利付国債もありますが、ここでは個人が比較しやすい個人向け国債の変動10年・固定5年を対象にしています。
1,000万円なら1年間の税引後利息はいくら違う?
1,000万円をそれぞれの金利で運用した場合を単純計算してみます。預貯金や国債の利子には原則20.315%の税金がかかるため、手取り額では税引後金利で比較するのが分かりやすくなります。
| 商品 | 1年間の税引前利息 | 1年間の税引後利息の目安 |
|---|---|---|
| 定期預金 年1.2% | 120,000円 | 約95,622円 |
| 変動10年 初回1.87% | 187,000円 | 約149,011円 |
| 固定5年 2.06% | 206,000円 | 約164,151円 |
現在の金利だけで比較すると、固定5年は1.2%定期より1年間で税引前86,000円、税引後では約68,529円多くなります。1,000万円になると0.86ポイントの金利差は無視できない金額です。
変動10年についても初回1.87%がそのまま1年間続くと仮定した単純比較なら、1.2%定期との差は税引後で年間約53,389円です。ただし実際には半年ごとに利率が変わるため、この金額が将来も続くとは限りません。
残り3年間だけ比較するとどのくらい差が出る?
5年定期の2年目で、残り期間がおおむね3年あるケースを考えてみます。現在の1.2%定期をそのまま残り3年間保有すると、単純計算した税引前利息は36万円、税引後では約28万7,000円です。
一方、1,000万円を年2.06%の固定5年へ移し、そのうち最初の3年間だけを比較すると、税引前では61万8,000円、税引後では約49万2,000円相当です。単純な金利差は3年間で税引後約20万6,000円になります。
変動10年が仮に現在の年1.87%から3年間まったく変化しなかったと仮定すれば、3年間の税引後利息は約44万7,000円となり、1.2%定期より約16万円多くなります。しかし、これはあくまで「1.87%が3年間続く」という仮定であり、実際の変動10年の利率は半年ごとに変わります。
最大のポイントは現在の定期預金の中途解約条件
ここまでの比較だけで定期預金を解約するのは早計です。最も重要なのが、現在契約している5年定期を2年目で解約すると、これまでの利息がどう扱われるかです。
定期預金は一般に満期前に解約すると、契約時の年1.2%ではなく、その金融機関が定める中途解約利率が適用されることがあります。金融機関や商品によって計算方法は異なるため、契約内容を確認しなければ乗り換えによる本当の損得は計算できません。
例えば乗り換えによって今後20万円程度多く利息を得られるとしても、中途解約によって過去2年間の受取予定利息が大きく減れば、その損失を回収するまで時間がかかります。銀行には「今日1,000万円の定期を中途解約した場合、税引前・税引後でいくら受け取れるか」を具体的に確認すると比較しやすくなります。
変動10年と固定5年はどちらを選ぶべき?
2026年8月募集分だけを見ると固定5年の2.06%が変動10年の初回1.87%を上回っています。そのため「現在確定している金利を5年間固定したい」という目的なら、固定5年は分かりやすい選択肢です。[参照:財務省 固定5年 第185回債]
一方、変動10年は半年ごとに適用利率が見直されます。今後さらに市場金利が上昇すれば受取利息が増える可能性がありますが、反対に金利が低下すれば適用利率も下がる可能性があります。つまり将来の金利上昇へ対応できることが変動10年の特徴です。
「固定5年2.06%と変動10年1.87%のどちらが最終的に得か」は、今後の金利推移が分からない以上、現時点では確定できません。固定5年は現在の金利を確定させる商品、変動10年は将来の金利変動を受け入れる商品と考えると整理しやすいでしょう。
個人向け国債も1年間は自由に換金できない
個人向け国債は換金性にも特徴があります。財務省によると、変動10年・固定5年・固定3年はいずれも、原則として発行後1年間は中途換金できません。発行後1年を経過すれば国による買取で中途換金できます。
ただし中途換金すると、原則として「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」に相当する金額が差し引かれます。したがって、数か月後に使う可能性のある生活資金まで国債へ移すのは適切ではありません。[参照:財務省 個人向け国債の中途換金]
定期預金から国債へ乗り換える際には、「利率が高いか」だけでなく、いつ資金が必要になる可能性があるのかも考える必要があります。
1,000万円全部を一度に乗り換える必要はない
定期預金か固定5年か変動10年かを一つに決められない場合、資金を分ける方法もあります。例えば定期預金の中途解約による不利益が小さいことを確認したうえで、500万円を固定5年、500万円を変動10年にするという考え方です。
固定5年部分では現在の年2.06%を5年間確保し、変動10年部分では将来の金利上昇に対応できます。逆に今後金利が低下した場合には固定5年部分の2.06%が維持されます。
また1,000万円すべてが当面使わない余裕資金とは限りません。数年以内に住宅購入、リフォーム、車の買い替え、教育費など大きな支出が予定されているなら、その資金まで長期間の商品へ移さないことも重要です。
乗り換え前にこの3つの数字を確認する
今回のようなケースでは、まず現在の金融機関から①今日解約した場合の受取額、②満期まで保有した場合の受取額、③中途解約に適用される利率の3点を確認します。これが分からなければ正確な比較はできません。
次に国債側について、購入予定月の実際の募集金利を確認します。個人向け国債は毎月発行されているため、翌月には利率が変わる可能性があります。2026年8月分の固定5年2.06%、変動10年1.87%という数字は、その募集回についての条件です。
最後に「あと何年間この1,000万円を使わないのか」を決めます。現在の定期は残り約3年なのに対し、新たな固定5年を購入すればそこから5年間、変動10年なら満期は10年間です。単純な利息総額だけを比べると運用期間が違ってしまうため、同じ期間で比較することが重要です。
まとめ:金利だけなら国債が上だが、中途解約の損失を含めて判断する
2026年8月募集の個人向け国債は、変動10年の初回利率が年1.87%、固定5年が年2.06%です。そのため現在保有している年1.2%の定期預金と表面金利だけを比較すれば、どちらの個人向け国債も高くなっています。
1,000万円で残り3年間を単純比較すると、1.2%定期と2.06%固定5年の金利差は税引後で約20万6,000円です。ただし、固定5年はそこから5年間保有する商品であり、変動10年の将来利率も確定していません。さらに現在の定期を途中解約すると中途解約利率が適用される可能性があります。
したがって最初に確認すべきなのは「1,000万円の定期を今解約した場合、実際にいくら受け取れるか」です。その金額と満期まで持った場合の受取額を確認したうえで、国債へ乗り換えた場合の利息増加分が中途解約による不利益を上回るかを比較すると、合理的に判断できます。


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