一人暮らしを始めると、毎日の自炊に卓上IHクッキングヒーターを使うか、備え付け・据え置きの都市ガスコンロを使うかで迷うことがあります。卓上IHは消費電力が1,000~1,400W程度の商品も多いため、家電の表示だけを見ると「かなり電気代が高いのでは」と感じやすいでしょう。
しかし、1,400Wという数字は最大火力で1時間使い続けた場合の消費電力です。実際の調理では沸騰後に火力を落としたり、短時間で加熱を終えたりするため、毎回その電力を使い続けるわけではありません。
一人暮らしの一般的な自炊なら、卓上IHだけが極端に高コストになるとは限りません。都市ガスとの比較では、料金単価だけでなく熱効率、調理時間、ガスの基本料金をすでに負担しているかまで考えることが重要です。
卓上IHの電気代は「消費電力×使用時間」で計算できる
卓上IHの電気代は、おおまかに「消費電力量(kWh)×電力量料金」で計算できます。例えば最大消費電力1,400WのIHを最大出力で30分使用すると、1.4kW×0.5時間=0.7kWhです。
仮に電気料金を31円/kWhとして単純計算すると、0.7kWh×31円で約22円になります。1時間なら約43円です。ただし31円/kWhは家電の電気代を比較するときによく使われる目安単価で、実際の請求単価ではありません。契約する電力会社、燃料費調整額などによって実負担は変わります。
さらに実際の料理では1,400Wをずっと維持するとは限りません。例えば最初だけ強火で沸騰させ、その後700W相当に落として煮るなら平均消費電力は低下します。そのため「1,400WのIHだから1時間使うたび必ず約43円」と考える必要はありません。
毎日自炊すると月の電気代はいくら増える?
分かりやすい例として、調理中の平均消費電力を800W、1日45分使用すると仮定します。0.8kW×0.75時間=0.6kWhなので、31円/kWhなら1日約19円、30日で約558円です。
平均1,000Wで毎日1時間使う場合なら、単純計算で1日約31円、30日で約930円です。もちろん炒め物中心なら使用時間は短くなり、煮込み料理を頻繁に作れば長くなります。
一人分の朝食・夕食などを作る程度なら、卓上IHの調理だけで毎月何千円も電気代が増えるとは限らず、数百円~1,000円前後に収まる使い方も十分考えられます。ただし実際の金額はIHの出力と使用時間、契約単価によって変わります。
都市ガスコンロとIHは単価だけでは比較できない
都市ガスコンロの費用はガス使用量と契約先の料金単価によって決まります。一方、IHは電気料金によって決まるため、「1kWhと1立方メートル」をそのまま比較しても意味がありません。
さらに違うのが熱の伝わり方です。ガスコンロは炎によって鍋を加熱するため、熱の一部が周囲へ逃げます。IHは対応する鍋自体を電磁誘導で発熱させるため、投入したエネルギーを調理に利用しやすい特徴があります。
そのため、電気のエネルギー単価がガスより高く見えても、実際の料理に必要なコスト差は単純な単価差ほど大きくならない場合があります。IHとガスを比較するときは、料金単価だけで「ガスのほうが絶対安い」「IHのほうが絶対安い」と決めないことが大切です。
一人暮らしなら「ガスの基本料金」が意外に重要
一人暮らしでは、調理そのものの料金よりガス契約全体を見る必要があります。都市ガスには一般に基本料金があり、ガスをほとんど使わなくても契約しているだけで一定額がかかります。
ただし給湯器がお風呂・シャワー・洗面・キッチンのお湯に都市ガスを使用している物件なら、どのみちガス契約は必要です。この場合、IHへ変更してもガスの基本料金はなくならないため、比較するのは主に調理で増える従量料金です。
反対に給湯も電気で、ガスを料理にしか使わない住宅なら話が変わります。卓上IHに統一して都市ガス契約そのものを不要にできるなら、ガス基本料金を含めた年間コストではIHが有利になる可能性があります。
自炊が多い人でも卓上IHは十分実用的
一人暮らしで自炊をよくする場合でも、1口の卓上IHで対応できる料理はかなりあります。パスタをゆでる、味噌汁を作る、フライパンで肉や野菜を炒める、鍋料理をするといった日常的な調理は可能です。
むしろ問題になりやすいのは電気代より「1口しかないこと」です。例えばパスタをゆでながらソースを作る、味噌汁と炒め物を同時進行するといった調理ができないため、自炊に慣れている人ほど不便に感じる可能性があります。
電子レンジや電気ケトル、炊飯器を併用すると解決しやすくなります。例えばお湯を電気ケトルで先に沸かし、IHではフライパン料理を進めるなど、家電を分担させれば1口でも効率よく調理できます。
卓上IHではブレーカーにも注意する
一人暮らしの部屋では契約アンペアやコンセントの容量にも注意が必要です。1,400Wの卓上IHは100Vなら約14Aを使用するため、同じ回路で電子レンジや電気ケトルなど消費電力の大きい家電を同時使用するとブレーカーが落ちる可能性があります。
例えば1,400WのIHと1,200W程度の電気ケトルを同時に使えば、それだけで大きな電力になります。部屋全体の契約容量だけでなく、同じコンセントや同一回路へ負荷が集中しないよう注意が必要です。
また卓上IHは原則として壁のコンセントへ直接接続し、メーカーが禁止している延長コードや電源タップでの使用は避けます。高出力家電なので、取扱説明書に記載された電源条件を確認して使用することが安全面でも重要です。
IH対応の鍋・フライパンか確認する
卓上IHを購入するときに忘れやすいのが調理器具です。IHでは使用できる材質や鍋底の形状・大きさに条件があり、これまでガスコンロで使っていた鍋がすべてそのまま使えるとは限りません。
一般的には鉄や鉄鋳物、IH対応表示のあるステンレス製品などが候補になりますが、機種によって対応範囲が異なります。アルミ鍋や銅鍋などを利用できない一般的な卓上IHもあります。
本体価格だけでなく、IH対応フライパンや鍋を買い直す費用まで含めて比較すると現実的です。すでにIH対応調理器具を持っているなら、この初期費用は抑えられます。
IHとガスは料理のしやすさにも違いがある
IHのメリットは、天板が平らで掃除しやすく、炎が出ないことです。吹きこぼれても五徳を外して洗う必要がなく、天板を拭くだけで済む機種が多いため、一人暮らしでは扱いやすいでしょう。
一方、ガスコンロには鍋を選びにくく、直火ならではの調理ができる利点があります。自炊経験が多く、強い火力で中華鍋を振りたい人などはガスのほうが使いやすい場合があります。
卓上IHには一定時間操作しない場合の自動停止や、鍋を外した場合の検知機能などを搭載した製品もあります。ただし安全装置があるから事故が起こらないわけではなく、揚げ物などでは各製品の指定油量・調理モードなどを守る必要があります。
光熱費を比較するなら1か月実測するのが最も確実
電気・都市ガスの料金は地域や契約プランによって異なるため、全国共通で「卓上IHのほうが毎月○円高い」と断定することはできません。自炊頻度によっても結果が変わります。
すでに卓上IHを持っているなら、1か月使って電気使用量を確認する方法が最も確実です。電力会社の会員ページやアプリで日別・時間帯別の使用量を確認できる契約なら、自炊を始める前後で比較しやすくなります。
ガスコンロとの比較でも、都市ガス会社の実際の基本料金・従量料金を使って計算するのが正確です。ネット上の平均料金だけで判断するより、自分の契約内容を見るほうが実生活に近い答えになります。
まとめ|一人暮らしの卓上IHは電気代を過度に心配しなくてよい
卓上IHは1,000~1,400W程度の高出力家電ですが、最大出力を一日中使うものではありません。一人暮らしで毎日数十分~1時間程度自炊する使い方なら、IHだけを理由に電気代が極端に高くなるとは限りません。
都市ガスコンロとの優劣は、電気・ガスの契約単価、調理時間、熱効率、ガスの基本料金をすでに支払っているかによって変わります。給湯にも都市ガスを使う住宅なら調理をIHにしてもガス基本料金は残りますが、ガスをキッチンでしか使わない住宅ならIHへ一本化することで基本料金をなくせる可能性があります。
自炊をよくする一人暮らしでは、料金差だけでなく、1口で足りるか、手持ちの鍋が対応しているか、電子レンジなどとの同時使用でブレーカーに問題がないかも重要です。一般的な家庭料理が中心なら卓上IHは十分現実的な選択肢なので、最終的には自宅の電気・都市ガスの実際の料金プランを使って比較するのが確実です。


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