一人暮らしの食費が月5万円と聞くと、「高い」「自炊すればもっと安くできる」と感じる人もいます。しかし、家計の健全性は食費という一つの項目だけでは判断できません。同じ食費5万円でも、毎月赤字になる人と十分な貯蓄を続けられる人では意味がまったく違います。
特に社会人の場合、食事には栄養を取るだけでなく、忙しい日の家事を減らす、自由時間を確保する、仕事後の楽しみにするといった価値もあります。食費5万円が高いかどうかは平均額だけでなく、手取り収入に対する割合、固定費、貯蓄額、本人が食事から得ている満足度まで含めて考えることが重要です。
一人暮らしで食費5万円は平均と比べて高いのか
総務省の家計調査では、単身世帯について食料への支出が継続的に集計されています。ただし、この「食料」には自炊用の食材だけでなく、外食なども含まれるため、単純に「自炊なら○万円が普通」と比較できる統計ではありません。
また単身世帯の統計には若い会社員だけでなく、幅広い年齢・職業の人が含まれます。居住地域や勤務形態によっても食生活は異なるため、平均値は家計を考える参考にはなっても、個人の適正額を決める基準ではありません。
月5万円なら1日平均では約1,667円です。朝食、昼食、夕食、飲料などをすべて含むと極端に大きな金額とはいえない一方、毎日自炊する人と比べれば高くなりやすい水準です。
手取り25万円なら食費5万円は収入の20%
手取り25万円に対して食費5万円なら、手取り収入の20%を食事に使っている計算です。数字だけを見れば小さくはありませんが、残り20万円をどのように使っているかによって評価は大きく変わります。
例えば食費5万円に加えて、毎月の娯楽費や衣服費、車の維持費、ローンなどが膨らみ、ほとんど貯金できていないなら見直す余地があります。一方、食費以外を抑えて十分な貯蓄・資産形成ができているなら、食費5万円だけを理由に「使いすぎ」と判断する必要性は低くなります。
家計管理では「食費はいくらか」より、最終的に毎月いくら残せているかを見るほうが実態を把握しやすくなります。
毎月11万円を貯金・投資できる家計なら見え方は大きく変わる
例えば手取り25万円から食費5万円を使い、さらに親へ2万円を仕送りしながら毎月11万円を貯金・投資できているとします。この場合、貯金・投資だけで手取りの44%に相当します。
数字を単純化すると、25万円から食費5万円、仕送り2万円、貯金・投資11万円を引いても7万円残ります。この7万円の範囲で住居費や光熱費などを負担できているかは確認が必要ですが、少なくとも「食費5万円」という数字だけを取り出して浪費と判断することはできません。
特に家賃補助、社宅、実家からの支援などで住居費が低い場合には、高い貯蓄率を維持しながら特定の趣味に多く使う家計も成立します。家計は費目ごとの平均値に合わせる競技ではありません。
Uber Eatsは食事代だけでなく「時間を買う」支出でもある
デリバリーを頻繁に利用すれば、自炊より食費が高くなるのは当然です。料理そのものの価格に加えて、配達料やサービス料などが発生することがあるためです。
一方、自炊にも買い物、献立決め、調理、食器洗い、キッチンの掃除などの時間が必要です。仕事から疲れて帰宅した人にとって、デリバリーにはそれらを省略できる価値があります。
例えば自炊によって月2万円節約できても、そのため毎日30~60分を使い、本人が強い負担を感じるなら、「月2万円で自由時間と楽しみを買う」という選択もできます。節約額だけでなく、時間・疲労・満足度まで含めて費用対効果を考えることが大切です。
「自炊なら半額」は必ずしも全員に当てはまらない
自炊中心にすれば食費を大きく減らせる可能性はあります。しかし、一人暮らしでは食材を使い切れず廃棄したり、調味料を一から揃えたりすることもあります。また、忙しくて結局作れず、購入した食材と外食の両方にお金を使うケースもあります。
自炊が得意で、まとめ買い・作り置き・冷凍保存を無理なく続けられる人なら大幅な節約が可能です。逆に料理が負担になる人は、スーパーの総菜、冷凍食品、テイクアウトなどを組み合わせるほうが長続きする場合があります。
したがって「自炊すれば必ず半額」というより、自分が継続できる方法で、満足度を大きく下げずに支出を管理できるかを考えるほうが現実的です。
他人の食費が安くても家計全体が安いとは限らない
月の食費を2万~3万円に抑えている人でも、その分を旅行、飲み会、ゲーム、服、車、推し活などに使っていることがあります。反対に食事が趣味なら、娯楽費をほとんど使わず食費に予算を集中させることもできます。
例えばAさんが食費2万5,000円、娯楽費4万円なら合計6万5,000円です。Bさんが食費5万円、娯楽費5,000円なら合計5万5,000円です。「食費」という項目だけを見るとAさんのほうが倹約家ですが、生活全体の支出では逆転します。
このため他人と比較するときは、「食費が何万円」という一項目だけでは十分ではありません。家賃や車、通信費、保険、交際費などを含めた総支出を見る必要があります。
食事を趣味として考えるなら娯楽費の一部でもある
映画が好きな人は映画館に行き、旅行が好きな人は交通費や宿泊費を使います。それと同様に、おいしいものを食べることが日々の楽しみなら、一般的な生活費としての食費と趣味・娯楽としての食費が重なっていると考えられます。
例えば最低限の食生活なら月3万円で済む人が、好きな料理やデリバリーを楽しむため5万円使っている場合、差額2万円を「趣味代」と捉えることもできます。毎月2万円の趣味費は、それ自体が異常な金額とはいえません。
節約の目的はすべての支出を最低額にすることではなく、自分にとって優先順位の低い支出を減らし、大切なものへお金を回すことでもあります。
ただし高い貯蓄率でも確認しておきたいポイント
毎月十分に貯金できていても、生活防衛資金がない状態で投資へ資金を集中させている場合は注意が必要です。病気、失業、引っ越し、家電の故障など突然の出費に備えて、すぐ使える預貯金も確保しておくと安心です。
また食事にお金をかけることと、栄養バランスが良いことは別です。デリバリー中心の場合でも、野菜、たんぱく質、塩分などを意識してメニューを選ぶことはできます。節約のためではなく健康維持という観点から食生活を見直す価値はあります。
さらに新卒時は家賃補助などが手厚くても、転職や引っ越しで固定費が上がる可能性があります。食費5万円を絶対額として固定するより、収入や固定費が変わったときに家計全体を再計算できる状態にしておくことが重要です。
無理にUber Eatsをやめなくても節約の余地はある
食事が毎日の楽しみなら、デリバリーを全面的にやめて自炊へ切り替える必要はありません。「満足度をあまり落とさず少しだけ安くする」という方法もあります。
例えば週5回のデリバリーのうち1回だけテイクアウトやスーパーの総菜にする、飲み物だけ自宅で用意する、まとめて注文できるメニューを選ぶなどです。月5万円を2万5,000円まで削るのではなく、4万5,000円程度に下げるだけでも年間6万円の差になります。
ただし、その6万円より「毎日好きなものを注文できる生活」の価値を高く感じるなら、現在の予算を維持する選択もあります。十分な貯蓄ができている家計では、こうした満足度と将来資金のバランスで判断できます。
食費を見直すべきサインは金額より家計の状態
食費5万円を見直したほうがよいのは、生活費が足りず毎月クレジットカードの支払いに追われる、リボ払いやカードローンを利用する、必要な貯金ができない、デリバリーを惰性で注文して満足していない、といった状態になったときです。
反対に、生活費を問題なく支払い、緊急用の預金も確保し、将来に向けた貯蓄・投資を続け、それでも食事を楽しむ余裕があるなら、食費だけを平均値まで削る必要性は高くありません。
「平均より高い」と「家計として高すぎる」は同じ意味ではありません。平均値は参考資料として使い、最終的には自分の収入と支出から判断するのが合理的です。
まとめ|食費5万円より「何にお金を使いたいか」で考える
社会人の一人暮らしで月5万円の食費は、自炊中心の人と比べれば高く見えることがあります。しかし、手取り25万円の中から十分な貯金・投資を続けられているなら、食費だけを切り取って浪費と評価するのは適切ではありません。
特に食事が趣味で、旅行・買い物・飲み会など他の娯楽費を抑えているなら、食費の一部を「生活費+趣味費」と考えることができます。自炊による節約にもメリットはありますが、デリバリーによって時間と休息を確保することにも価値があります。
大切なのは「一人暮らしの食費は○万円以内」という他人の基準ではなく、固定費を支払い、生活防衛資金を確保し、将来のための貯蓄を続けたうえで、自分が満足できるところへお金を配分することです。食費5万円を楽しみながら家計全体が黒字なら、それも十分に成立するお金の使い方といえるでしょう。

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