30代で資産形成が進んでくると、次に悩みやすいのが「現金と投資資産をどのくらいの割合で持つべきか」という問題です。たとえば総資産2000万円のうち、現金1500万円、NISAや日本株などの投資資産500万円なら、現金75%・投資25%という配分になります。
ただし、現金比率が高いから悪い、株式比率が高いから良いという単純な正解はありません。年齢だけでなく、年間支出、今後の住宅購入や結婚などの予定、収入の安定性、投資経験、どこまで値下がりに耐えられるかによって適切な資産配分は変わります。ここでは、30代でまとまった金融資産を持つ人が資産配分を考える際のポイントを具体例とともに整理します。
現金1500万円・投資500万円はどのような資産配分か
現金1500万円と投資資産500万円を保有している場合、金融資産の合計は2000万円です。単純計算すると、現金75%、投資資産25%という構成になります。
| 資産 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 現金・預金 | 1500万円 | 75% |
| NISA・日本株など | 500万円 | 25% |
| 合計 | 2000万円 | 100% |
これは比較的現金を厚めに持った資産配分です。そのため株価が大幅に下落しても総資産への影響を抑えやすい一方、長期間使う予定のない現金まで大量に保有している場合には、インフレによって実質的な購買力が低下する可能性があります。
重要なのは「現金1500万円は多すぎるか」と考えることではなく、その1500万円に何の役割を持たせているのかを確認することです。
まず生活防衛資金と近い将来使うお金を分ける
資産配分を考える際、最初に投資へ回さないお金を決めます。その代表が生活防衛資金です。病気、失業、転職、家電の故障など予想外の出来事が起きても生活を維持できるよう、普通預金など流動性の高い資産として確保します。
必要額は生活環境によって異なります。たとえば毎月の生活費が25万円なら、1年分は300万円です。会社員で収入が比較的安定している人と、自営業者や収入変動の大きな職業の人では、必要と考える金額も変わります。
さらに、数年以内に使う予定のお金も株式など値動きの大きい資産とは分けて考えるのが基本です。住宅購入の頭金、車の購入費、結婚費用、留学費用、転職期間中の生活費などが該当します。
たとえば「生活防衛資金300万円+5年以内に使う予定のお金500万円」が必要なら、800万円を現金等で確保し、それを超える部分について長期投資へ回すか検討する、という考え方ができます。
年間400万円貯蓄できる人は資産配分を調整しやすい
資産配分では現在の金融資産だけでなく、毎年どれくらい新しい資金を追加できるかも重要です。仮に年間400万円を継続して貯蓄・投資に回せるなら、現在2000万円の金融資産に対して年間20%相当の新規資金が加わる計算になります。
このようにキャッシュフローが大きい場合、現在の現金を一度に大量投資しなくても、これから入ってくる資金の配分を変えるだけで徐々にポートフォリオを調整できます。
たとえば現金1500万円をそのまま維持しつつ、今後の年間400万円のうち300万円を投資、100万円を現金として積み上げる方法もあります。既存資産を大きく動かさないため、投資額を急激に増やすことへの心理的負担も抑えやすくなります。
投資割合を増やす前に「暴落したらいくら減るか」を計算する
株式への適切な投資割合を考えるときには、「何%投資するか」よりも実際に何百万円減る可能性があるのかで考えると分かりやすくなります。
たとえば株式等500万円を保有し、その価格が40%下落した場合、単純化すれば200万円の含み損です。一方、投資資産を1200万円まで増やして同じ40%の下落が起きれば、480万円の含み損になります。
| 投資資産 | 40%下落した場合の減少額 |
|---|---|
| 500万円 | 約200万円 |
| 800万円 | 約320万円 |
| 1200万円 | 約480万円 |
| 1500万円 | 約600万円 |
実際の値動きは商品によって異なりますが、このようなストレステストは有効です。「600万円減っても長期保有を続けられる」と思える人と、「200万円の含み損でも眠れなくなりそう」という人では、適切な投資比率は当然違います。
NISAと日本株を一括りにせず中身を見ることも重要
NISAは金融商品の名称ではなく、一定の条件のもとで投資による利益が非課税になる制度です。そのため「NISA500万円」という情報だけでは、実際にどの程度分散されているかは判断できません。
たとえばNISAで世界各国の株式に幅広く投資するインデックスファンドを保有している場合と、日本の個別株数銘柄だけを保有している場合では、同じ500万円でもリスクの性質が大きく異なります。
日本株についても、勤務先と同じ業界の株式に資産が集中していると、景気悪化時に「給与・雇用」と「投資資産」が同時に影響を受ける可能性があります。資産額だけではなく、国・業種・銘柄などへの集中度まで確認することが大切です。
現金を持ちすぎることにもリスクがある
現金は価格変動が小さく、必要なときすぐ使えるという非常に大きなメリットがあります。一方で、長期間ではインフレの影響を受けます。預金残高の数字が減らなくても、物価が上昇すれば同じ金額で購入できる商品やサービスは少なくなります。
たとえば現在100万円で購入できるものが将来120万円になれば、100万円という預金残高自体は変わらなくても購買力は低下しています。このため、10年、20年以上使わないことが明確な資金まで全額現金で保有することにも別のリスクがあります。
もっとも、だからといって余剰現金をすべて株式へ移す必要があるわけではありません。投資経験が浅い場合は、新規資金を利用して徐々に投資比率を調整する方法もあります。
30代の資産配分はライフプランから逆算する
「30代なら株式○%」という目安だけで資産配分を決めるのはおすすめできません。同じ30代でも、数年以内に住宅を購入する人と、当面大きな支出予定がない人では必要な現金額がまったく違うからです。
資産を「①緊急時に必要なお金」「②数年以内に使うお金」「③10年以上使わないお金」の3つに分けると整理しやすくなります。①と②は安全性と流動性を重視し、③についてNISAなどを利用した長期・積立・分散投資を検討するという考え方です。
また、年間貯蓄額が大きい人ほど将来の新規資金によって資産配分を変更できます。そのため、現在の現金を急いで投資へ移す必要があるとは限りません。
資産配分を決めるときのチェックポイント
現金と投資資産のバランスに迷った場合は、次の項目を順番に確認すると判断しやすくなります。
- 毎月の生活費はいくらか
- 生活防衛資金を何か月分確保したいか
- 5年程度以内に予定している大きな支出はいくらか
- 投資資産が30~50%下落しても保有を続けられるか
- 投資先が特定の国・業種・銘柄へ集中していないか
- 毎年どれくらい新規資金を投資できるか
- 10年以上使わない資金はいくらあるか
特に「株価が下落したとき、自分が実際にどう行動するか」は重要です。理論上の期待収益率が高い資産配分でも、暴落時に怖くなって売却してしまえば計画通りの運用にはなりません。
金融庁も資産形成において長期・積立・分散投資の重要性を案内しています。制度やNISAについて確認する場合は、金融庁の公式情報を参照するとよいでしょう。[参照]
まとめ:現金比率だけでは良し悪しを判断できない
現金1500万円、NISA・日本株500万円という資産構成は、計算上では現金75%・投資25%となり、比較的現金を厚く持った配分です。しかし、それだけを理由に「バランスが悪い」と判断することはできません。
住宅購入など近い将来の支出予定があれば現金を多く持つ合理性があります。一方、大きな支出予定がなく、長期間使わない資金が多い場合には、インフレへの備えや長期的な資産形成という観点から投資割合を検討する余地があります。
大切なのは年齢や他人の資産配分を基準にするのではなく、「いつ使うお金なのか」「どの程度の損失まで耐えられるのか」を基準に現金と投資を分けることです。年間の貯蓄余力が大きい場合には、新しく貯まる資金を利用して少しずつ理想の配分へ近づける方法も有力です。なお、具体的な金融商品の選択や投資額については、自身の家計・ライフプラン・リスク許容度を確認したうえで判断し、必要に応じて独立した立場の専門家へ相談すると安心です。


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