大学生がアルバイトをするときに悩みやすいのが、いわゆる「扶養の壁」です。特に近年は制度改正が続き、「150万円」「160万円」といった異なる金額を目にするため、どこまで働いてよいのか分かりにくくなっています。
重要なのは、扶養には税金・健康保険・勤務先独自の家族手当など、別々の制度があるという点です。さらに「本人に税金がかかる年収」と「親の扶養から外れる年収」も同じとは限りません。大学生の場合に確認したいポイントを、2026年時点の制度を踏まえて整理します。
大学生の「扶養」は1種類ではない
まず押さえておきたいのは、「年収○万円までなら扶養」という一つの共通ルールが存在するわけではないことです。一般に扶養の話では、少なくとも親の所得税上の控除、親の健康保険の被扶養者、自分自身にかかる税金、親の勤務先が支給する家族手当を分けて考える必要があります。
例えば、健康保険の扶養に入れる年収基準を満たしていても、親の会社が独自に支給している家族手当の条件を満たさなくなることがあります。反対に、税制上は親が一定の控除を受けられても、健康保険では扶養から外れるケースもあります。
そのため、「友人はもっと稼げると言っていた」「親の会社では160万円と聞いた」といった違いが生じても不思議ではありません。まず何の制度についての上限なのかを確認することが、扶養を理解する第一歩です。
19歳以上23歳未満は健康保険の150万円基準が重要
親が会社員などで健康保険に加入しており、その被扶養者になっている大学生の場合、年齢によって重要な基準があります。2025年10月1日以降、扶養認定を受ける人が19歳以上23歳未満で、被保険者の配偶者ではない場合、健康保険の年間収入要件は原則150万円未満となりました。
年齢については、原則としてその年の12月31日時点で判定されます。19歳になる年から22歳になる年までが対象となり、23歳になる年以降は通常の130万円未満という基準に戻る点にも注意が必要です。
さらに健康保険では、単純に1月から12月までに実際に受け取った金額だけを見るとは限りません。今後1年間の収入見込みなどによって判断される制度だからです。2026年4月からは、一定の条件を満たす場合、労働条件通知書などに記載された賃金から見込まれる年間収入によって認定する取り扱いも始まっています。
150万円ちょうどではなく「150万円未満」
ここで意外に見落とされやすいのが「未満」という表現です。健康保険について19歳以上23歳未満の特例を利用する場合、原則的な収入要件は150万円以下ではなく150万円未満です。
また、親と別居している学生の場合には、収入だけではなく親からの仕送りとの関係など、別の認定条件もあります。年収だけを見て自動的に被扶養者になれるわけではありません。
「160万円」という数字は何を意味するのか
扶養について調べていると160万円という数字も出てきますが、これは150万円の健康保険の基準とは別の話です。2025年分の所得税では、給与収入だけでほかに所得がない人について、給与所得控除と基礎控除の関係から給与収入160万円以下なら原則として本人の所得税がかからないという目安がありました。
ただし、税制は2026年にも改正されています。2026年分では基礎控除や給与所得控除などがさらに見直されているため、「160万円」という数字だけを固定的な壁として覚えるのはおすすめできません。
そして最も大切なのは、本人に所得税がかからない金額と、親の健康保険の扶養に入っていられる金額は別ということです。本人の所得税の計算上は問題がなくても、健康保険では150万円未満という収入要件に抵触する可能性があります。
親の所得税では大学生向けの「特定親族特別控除」がある
19歳以上23歳未満の子については、親の所得税にも重要な制度があります。従来は子どもの収入が一定額を超えると親の扶養控除が一気に受けられなくなることが問題になっていましたが、2025年分から特定親族特別控除が創設されています。
この制度では、大学生年代の子どもの所得が従来の扶養控除の基準を超えた場合でも、一定範囲なら親が所得に応じた控除を受けられます。さらに2026年分は給与所得控除などの改正により、給与収入だけの場合の金額換算も変わっています。
つまり、「子どもがある金額を1円超えた瞬間、親の税負担が大幅に増える」という単純な仕組みではありません。税金について判断するときは、学生本人の所得税だけでなく、親が扶養控除または特定親族特別控除をどの程度受けられるのかまで確認する必要があります。
勤労学生ならいくらまで稼げる?
「勤労学生」という言葉も扶養と混同されやすい制度です。勤労学生控除は、学生本人の所得税を計算するときに利用できる所得控除であり、親の健康保険の扶養上限を引き上げる制度ではありません。
2026年分の税制では、勤労学生に該当するための合計所得金額の要件が89万円以下に引き上げられています。給与収入だけの場合には、おおむね163万円以下に相当します。ただし、給与以外の所得がある場合などには別の要件も確認する必要があります。
したがって、「勤労学生だから163万円まで健康保険の扶養に入れる」という理解は正しくありません。税金の勤労学生控除と健康保険の150万円未満という基準は、別々に判定します。
交通費は年収に入る?税金と社会保険で扱いが違う
アルバイト先から交通費が支給されている場合も注意が必要です。税金では、一定の要件を満たす通勤手当には非課税となる範囲があります。そのため、給与明細の振込総額をそのまま所得税上の給与収入として考えるとは限りません。
一方、健康保険の収入判定では、通勤手当などの諸手当も含めて考える必要があります。日本年金機構も、2026年4月以降の労働契約内容による被扶養者認定について、労働基準法上の賃金を基準とし、諸手当や賞与を含むことを案内しています。
例えば、アルバイトの給与が年間145万円で交通費が年間8万円支給されるケースでは、「給与だけなら150万円未満だから大丈夫」と即断するのは危険です。健康保険については勤務条件や交通費を含めた収入の取り扱いを、親が加入している健康保険へ確認するのが確実です。
「親の会社によって上限が違う」と言われる理由
友人同士で扶養について話すと、「うちは150万円」「うちは160万円」「もっと稼いでも大丈夫」といった違いが出ることがあります。その理由の一つが、会社独自の家族手当・扶養手当です。
家族手当は税法上の扶養控除そのものではなく、勤務先の就業規則や賃金規程などに基づいて会社が支給するものです。そのため、「健康保険の被扶養者であること」「年間収入が○万円未満であること」「大学生であること」など、企業ごとに条件が設定されている場合があります。
例えば、法律上の健康保険では扶養を継続できる収入でも、親の会社の家族手当だけ終了することがあります。逆に会社が比較的緩い条件を設定しているケースもあります。この部分は友人の家庭と比較しても答えが出ないため、親から勤務先の人事・給与担当者へ確認してもらう必要があります。
大学生がアルバイトの年収を決めるときの確認順序
扶養を維持しながらアルバイトをする場合、「結局いくらまでなら絶対に得か」という一つの数字を探すより、制度ごとに確認するほうが安全です。
| 確認項目 | 主なポイント |
|---|---|
| 親の健康保険 | 19歳以上23歳未満なら原則年間収入150万円未満。交通費などを含む収入の扱いにも注意 |
| 親の所得税 | 扶養控除・特定親族特別控除への影響を確認 |
| 学生本人の所得税 | 基礎控除・給与所得控除・勤労学生控除などを確認 |
| 住民税 | 所得税とは非課税基準が異なるため別途確認 |
| 親の会社の家族手当 | 勤務先独自の収入基準がないか確認 |
特に「150万円までなら一番得」「160万円までなら何も変わらない」と一括りにすることはできません。何を優先するかによって、意識すべき年収ラインが変わります。
シフトを増やす予定がある場合は、毎月の基本給だけでなく、残業代、各種手当、賞与、交通費なども確認しておくと安心です。年末になって初めて計算するより、数か月ごとに年収見込みを更新したほうが調整しやすくなります。
まとめ:大学生の扶養は「150万円」「160万円」だけで判断しない
大学生の扶養が分かりにくい最大の理由は、税金・健康保険・勤労学生控除・会社独自の家族手当という複数の制度が、「扶養」という同じ言葉で語られていることです。
19歳以上23歳未満では、健康保険について原則年間収入150万円未満という基準が重要です。一方、160万円などの数字は主に所得税の計算から出てくる金額であり、健康保険の扶養基準とは意味が異なります。また2026年分は所得税制度の改正も行われているため、古い「103万円の壁」などの情報だけで判断しないことも大切です。
さらに交通費についても、税金では一定額まで非課税でも、社会保険上の収入では扱いが異なることがあります。最終的には、税金は国税庁の最新情報、健康保険は親が加入している健康保険組合や協会けんぽ、家族手当は親の勤務先にそれぞれ確認すると確実です。大学生のアルバイトでは「一つの年収ライン」ではなく、どの制度の条件を守りたいのかを整理して働く金額を決めることが重要です。

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