配偶者が厚生年金20年以上でも加給年金はもらえる?特別支給がない昭和44年生まれ妻のケースを解説

年金

加給年金について調べると、「配偶者が厚生年金に20年以上加入していると支給されない」という説明と、「20年以上加入していても、配偶者自身の老齢厚生年金の受給権が発生するまでは支給される」という説明があり、どちらが正しいのか分かりにくいことがあります。

結論から整理すると、配偶者に厚生年金の加入期間が20年以上あるという事実だけで、直ちに加給年金が支給停止になるわけではありません。現在の制度で重要なのは、20年以上の加入期間がある配偶者が、対象となる老齢厚生年金などを「受け取る権利」を持っているかどうかです。

したがって、妻が昭和44年生まれで特別支給の老齢厚生年金の対象ではなく、65歳前の繰上げ受給もしないのであれば、単に厚生年金加入期間が20年以上あるという理由だけで、夫が65歳になった時点からの加給年金が当然に支給停止になる、という理解は正確ではありません。もちろん夫自身の厚生年金加入期間、生計維持関係、妻の年齢など、加給年金そのものの要件を満たすことが前提です。

加給年金とはどのような制度なのか

加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が原則20年以上ある人が65歳になって老齢厚生年金を受けられるようになった際、一定の条件を満たす65歳未満の配偶者や子を生計維持している場合に老齢厚生年金へ加算される制度です。

いわば公的年金における「家族手当」に近い性格があります。ただし、単に結婚していて配偶者が65歳未満なら必ず支給されるものではなく、厚生年金の加入期間や生計維持関係などの要件があります。[参照:日本年金機構「加給年金額と振替加算」]

2026年度の配偶者に対する加給年金額は年額243,800円が基本額で、受給者本人の生年月日に応じて特別加算があります。昭和18年4月2日以後生まれの受給者の場合、特別加算を含む合計は年額423,700円です。

「妻が厚生年金20年以上なら加給年金なし」は説明不足

ネット上でよく見かける「配偶者が厚生年金に20年以上加入していたら加給年金はもらえない」という説明は、重要な条件が省略されています。

日本年金機構は、配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金を受け取る権利があるときなどには、配偶者加給年金額が支給停止になると説明しています。[参照:日本年金機構]

つまり、「20年以上加入していること」と「20年以上の加入期間を基礎とする老齢厚生年金の受給権がすでに発生していること」は同じではありません。この違いが今回のようなケースを理解する最大のポイントです。

「受給資格」と「受給権」は分けて考える

年金制度では、日常的に使われる「受給資格」という言葉が混乱の原因になることがあります。

例えば57歳の人が厚生年金へ25年間加入していたとしても、通常の老齢厚生年金は原則65歳からです。「将来65歳になれば受け取れるだけの加入記録がある」ことと、「現在すでに老齢厚生年金を受け取る権利が発生している」ことは別です。

加給年金の支給停止を判断するときは、単純な加入年数ではなく、配偶者側に対象となる老齢厚生年金の受給権が発生しているかを見る必要があります。

昭和44年生まれの女性には通常の「特別支給の老齢厚生年金」がない

特別支給の老齢厚生年金は、老齢厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げる過程で設けられた経過的な制度です。

女性の場合、通常の特別支給の老齢厚生年金の対象となるのは昭和41年4月1日以前生まれまでです。昭和41年4月2日以後生まれの女性については、この経過措置が終了しています。[参照:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の引上げについて」]

したがって昭和44年生まれの妻は、一般的なケースでは60歳台前半に特別支給の老齢厚生年金を受ける世代ではありません。繰上げ請求をしなければ、通常の老齢厚生年金の受給権が発生するのは65歳です。

夫が昭和37年、妻が昭和44年生まれの場合を時系列で考える

具体例として、夫が昭和37年生まれ、妻が昭和44年生まれで、妻にはすでに20年以上の厚生年金加入期間があるケースを考えます。

夫が65歳になった時点では、妻はおおむね57~58歳です。妻は昭和44年生まれなので通常の特別支給の老齢厚生年金はありません。また65歳まで年金を繰上げないのであれば、この時点では妻の通常の老齢厚生年金の受給権はまだ発生していません。

したがって、夫が加給年金そのものの条件を満たしているのであれば、妻の厚生年金加入期間が20年以上あるという理由だけで、夫が65歳になった当初から加給年金が停止されることにはなりません。

妻が65歳になるまで加給年金が支給される可能性がある

このケースでは、妻が65歳になるまでの期間について、夫の老齢厚生年金に配偶者加給年金が加算される可能性があります。

例えば夫が2027年に65歳になり、妻が2034年に65歳になるのであれば、その他の条件が変わらない限り、この間が配偶者加給年金の対象期間になり得ます。

ただし実際の開始月・終了月はそれぞれの誕生日や年金の受給権発生日などによって決まるため、「丸7年間」と単純には断定できません。個別の年金記録については年金事務所で確認するのが確実です。

では「20年以上なら支給停止」というルールはいつ効いてくる?

妻が65歳になると、通常は妻自身に老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権が発生します。そしてそもそも配偶者加給年金は、原則として対象配偶者が65歳になると終了します。

また65歳になる前であっても、20年以上の厚生年金加入期間がある妻が老齢厚生年金を繰上げ請求して受給権を発生させる場合には、加給年金の支給停止との関係を確認する必要があります。

つまり「20年以上」という数字だけを見るのではなく、20年以上の厚生年金期間を基礎とする老齢厚生年金の受給権がいつ発生するのかを見ることが重要です。

2022年4月の制度改正がネット情報を分かりにくくしている

加給年金について検索すると説明が食い違う大きな原因の一つが、2022年4月に行われた支給停止ルールの改正です。

改正前は、配偶者に20年以上の加入期間を基礎とする老齢厚生年金などの受給権があっても、在職老齢年金などによってその年金が全額支給停止されている場合には、一定の場合に加給年金が支給されていました。

2022年4月以降は、配偶者に対象となる老齢厚生年金などを受け取る権利があれば、実際に全額支給停止となっていて受け取っていなくても、原則として加給年金は支給停止となりました。[参照:日本年金機構「令和4年4月から年金制度が改正されました」]

2022年改正は「20年加入した瞬間に停止」という意味ではない

この制度改正を読んで、「妻が20年厚生年金に入った瞬間、夫の加給年金がなくなる」と誤解するケースがあります。

しかし日本年金機構の説明は、「被保険者期間が20年以上ある老齢厚生年金を受け取る権利がある場合」というものです。単に加入期間が240月へ到達しただけで、まだ年齢要件などを満たしておらず老齢厚生年金の受給権が発生していない人まで直ちに支給停止する、という説明ではありません。

昭和44年生まれで特別支給の老齢厚生年金がない妻については、この点が特に重要になります。

2つのネット情報の違いを整理するとこうなる

説明 評価
妻が厚生年金に20年以上加入していれば無条件で加給年金は出ない 条件を省略しすぎており不正確
妻が20年以上加入していても、対象となる老齢厚生年金の受給権がまだなければ直ちには停止しない 制度の説明としてより正確
妻に20年以上の老齢厚生年金の受給権が発生したが、在職で全額停止なら加給年金は出る 2022年4月以降は原則誤り
妻が65歳になれば配偶者加給年金は終了する 原則そのとおり

「加入期間20年」と「年金の受給権」をセットで確認すれば、ネット上の説明がなぜ違って見えるのか理解しやすくなります。

妻が65歳前に繰上げ受給すると状況が変わる可能性がある

昭和44年生まれの女性でも、一定の要件を満たせば60歳以降65歳未満で老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰上げ請求できます。[参照:日本年金機構]

繰上げ請求をすると、本来65歳で発生する老齢年金を前倒しして受給することになります。その結果、20年以上の加入期間を持つ配偶者側に老齢厚生年金の受給権が発生し、夫の加給年金に影響する可能性があります。

そのため「妻は65歳まで繰上げ受給しない」という条件は、今回のケースでは重要です。将来繰上げを検討する場合は、妻自身の年金減額だけでなく夫の加給年金への影響も含め、事前に年金事務所で試算するのが安全です。

妻が現在も会社員として厚生年金へ加入していても、それだけでは停止しない

妻が20年以上厚生年金へ加入し、現在も会社員として働いている場合でも、「働いていること」「厚生年金へ加入していること」自体が配偶者加給年金の停止理由になるわけではありません。

妻が65歳未満で、まだ対象となる老齢厚生年金の受給権が発生していなければ、20年以上加入しているだけで自動的に停止するものではありません。

ただし加給年金には生計維持要件もあるため、妻の収入・所得など別の条件は確認する必要があります。

加給年金には生計維持要件もある

配偶者加給年金の対象となるには、受給者本人によって生計を維持されている配偶者であることが必要です。

日本年金機構では、生計維持について原則として生計を同じくしていることに加え、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満であることなどを基準としています。将来おおむね5年以内にこの基準を下回る見込みがある場合の取り扱いもあります。[参照:日本年金機構「生計維持とは」]

したがって妻自身が働いていることは直ちに問題ではありませんが、非常に高い収入がある場合には別途確認が必要です。

夫自身にも厚生年金20年以上などの要件がある

配偶者側の条件だけでなく、加給される本人側にも要件があります。

基本的には、老齢厚生年金を受ける本人に厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あることが必要です。一定の中高齢者特例が適用される場合を除けば、この240月という加入期間が基本になります。

したがって「夫が65歳、妻が65歳未満」というだけでは加給年金を受けられるとは限りません。本人の年金記録も合わせて確認する必要があります。

妻が65歳になると夫の加給年金は終了する

配偶者加給年金は、対象となっている妻が65歳になると原則として終了します。

以前の世代では、その後に妻自身の老齢基礎年金へ「振替加算」が付く仕組みがあり、夫側の加給年金から妻側の年金へ加算が移るような形になるケースがありました。

しかし、現在の比較的若い世代では振替加算そのものがありません。ここも今回の昭和44年生まれの妻について重要なポイントです。

昭和44年生まれの妻には振替加算は原則つかない

振替加算の対象になるのは、原則として大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた人です。昭和41年4月2日以後生まれの人は振替加算額がゼロとなっています。[参照:日本年金機構「加給年金額と振替加算」]

昭和44年生まれはこの対象より後の世代なので、妻が65歳になって夫の加給年金が終了した後、「その金額が妻の振替加算として引き継がれる」と考えない方がよいでしょう。

つまり家計の年金収入を将来計算する際には、妻が65歳になるタイミングで夫の加給年金がなくなり、妻自身の老齢基礎年金・老齢厚生年金が始まる、という形で見るのが基本です。

具体例|夫65歳・妻58歳、妻の厚生年金加入25年なら

例えば夫65歳、妻58歳で、妻にはすでに厚生年金25年の加入実績があるとします。妻は昭和44年生まれで、特別支給の老齢厚生年金はなく、繰上げ受給もしないとします。

この場合、妻が厚生年金へ25年加入しているからという理由だけで、夫の加給年金が最初から支給停止になるわけではありません。妻はまだ通常の老齢厚生年金の受給権が発生する65歳に達していないためです。

夫側の20年以上の厚生年金期間、生計維持など他の要件を満たしていれば、妻が65歳になるまで配偶者加給年金の対象となり得ます。そして妻が65歳になれば加給年金は終了します。

「年金を受け取っていない」だけでは判断できない点に注意

逆方向の誤解にも注意が必要です。「妻は実際には年金を1円も受け取っていないから、加給年金は必ず出る」という判断も現在の制度では正しくありません。

2022年4月以降は、配偶者が20年以上の加入期間を基礎とする老齢厚生年金等の受給権を持っていれば、在職老齢年金などで実際の支給額が0円でも原則として加給年金は停止します。[参照:日本年金機構「令和4年4月から加給年金の支給停止の規定が見直されました」]

したがって判断基準は「実際に入金されているか」ではなく、「対象となる年金の受給権があるか」です。

年金事務所へ確認するときは質問の仕方が重要

個別確認をする際には、「妻が20年以上加入していますが加給年金は出ますか」だけではなく、生年月日と受給状況を含めて伝えると正確な回答を得やすくなります。

例えば「夫は昭和37年生まれで65歳から老齢厚生年金を請求予定。妻は昭和44年生まれで厚生年金加入240月以上。ただし特別支給の老齢厚生年金はなく、65歳まで繰上げ請求もしない予定。この場合、夫の65歳から妻の65歳まで配偶者加給年金の対象になるか」と確認します。

年金事務所では実際の加入記録を確認できるため、ネットの記事よりも個別事情に即した判断ができます。

まとめ|20年以上「加入」だけでは停止せず、配偶者の老齢厚生年金の「受給権」がポイント

加給年金について「妻が厚生年金へ20年以上加入していたら無条件で支給されない」とする説明は、正確には条件を省略しすぎています。

日本年金機構が示している支給停止条件は、配偶者が20年以上の被保険者期間を基礎とする老齢厚生年金などを受け取る権利がある場合です。2022年4月以降は、その年金が在職などによって全額支給停止されていても、受給権があれば原則として加給年金は停止します。[参照:日本年金機構]

一方、昭和44年生まれの女性は通常の特別支給の老齢厚生年金の対象世代ではありません。65歳前に繰上げ請求をしないのであれば、単に厚生年金加入期間が20年以上になっているだけで、65歳前から通常の老齢厚生年金の受給権が発生するわけではありません。

したがって、夫が昭和37年生まれ、妻が昭和44年生まれで、妻が65歳まで繰上げ受給しないケースでは、夫側の加入期間や生計維持などの要件を満たしていれば、夫が65歳になってから妻が65歳になるまで加給年金を受けられる可能性がある、という理解が制度上は適切です。

妻が65歳になると夫の配偶者加給年金は原則終了します。また昭和44年生まれの妻は振替加算の対象世代ではないため、その後に加給年金相当額が妻の年金へそのまま移るわけでもありません。

年金は加入記録や過去の共済期間、繰上げ請求の有無などによって個別判断が変わることがあります。実際の請求前には、夫婦それぞれの基礎年金番号に基づく記録を年金事務所で確認し、「妻の20年以上の加入期間」ではなく「妻に対象となる老齢厚生年金の受給権がいつ発生するか」を確認することが最も確実です。

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