国民年金保険料は資産が多くても全額免除できる?無収入・預貯金がある場合の所得審査を解説

年金

国民年金保険料の免除を考えるとき、「収入はないけれど預貯金や株などの資産はある」というケースがあります。国民年金の保険料免除制度では、単純に銀行口座の残高だけを見て免除の可否が決まるわけではありません。

日本年金機構が案内する一般的な国民年金保険料の免除制度では、本人・配偶者・世帯主の前年所得がそれぞれ一定基準以下かどうかが重要な審査基準です。そのため、預貯金などの資産を多く保有していることだけを理由に、直ちに全額免除の対象外になる仕組みではありません。

ただし、「今月の収入がゼロなら全額免除」という意味でもありません。前年所得、配偶者や世帯主の所得、資産から生じた所得などを確認する必要があります。

国民年金の全額免除は基本的に「資産額」ではなく「所得」で審査される

日本年金機構によると、国民年金保険料の免除制度では、本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定額以下の場合や、失業などによって保険料を納めることが経済的に困難な場合に、申請して承認されることで全額または一部の保険料が免除されます。[参照:日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度]

一般的な所得審査について、日本年金機構が示す全額免除の所得基準は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」です。例えば扶養親族等が0人なら、計算上の基準額は67万円となります。

ここで重要なのは、公式の一般的な免除基準が「預貯金○万円以下」といった資産残高基準ではなく、前年所得を基準として示されている点です。そのため、銀行預金が多いという事実だけから全額免除できないとは判断できません。

「資産がある」と「所得がある」は別の話

免除制度を理解するうえでは、資産と所得を分けて考えることが大切です。例えば、過去に働いて貯めた現金1,000万円を銀行口座に持っている場合、その1,000万円という残高そのものが今年の給与所得になるわけではありません。

一方、その資産から利子、配当、株式・投資信託等の売却益、不動産収入などが発生している場合には話が変わります。所得の種類や課税関係によって免除審査上の所得に影響する場合があるため、「働いていない=所得ゼロ」とは限りません。

例えば会社を退職して給与収入がなくても、賃貸物件から不動産所得がある人と、預貯金を取り崩して生活しているだけの人では所得状況が異なります。資産額ではなく、審査対象となる所得がいくらなのかを確認することがポイントです。

現在無収入でも前年に働いていた場合は注意

国民年金保険料の免除審査では「現在の月収」だけを確認するわけではありません。原則として対象年度に対応する前年所得が審査されます。

例えば2026年度(令和8年度)の免除対象期間は2026年7月から2027年6月までで、審査対象は2025年(令和7年)中の所得です。[参照:日本年金機構 国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間]

したがって2026年になって仕事を辞め、現在の給与収入が0円になっていても、2025年に十分な所得があった場合には通常の所得基準だけでは全額免除にならないことがあります。「毎月の収入がない」という現在の状態と、免除審査に使われる前年所得は分けて考える必要があります。

本人だけでなく配偶者・世帯主の所得も審査される

国民年金保険料の免除申請で特に間違えやすいのが、本人の所得だけで判断されるわけではないことです。一般的な免除制度では、本人・配偶者・世帯主それぞれの前年所得が基準を満たす必要があります。

例えば本人が無収入でも、同居する親が世帯主で高い所得を得ている場合には、本人の所得が低いという理由だけでは全額免除が認められないことがあります。また配偶者については別世帯であっても所得審査の対象となります。[参照:日本年金機構 免除・納付猶予申請書の電子申請]

そのため「本人は無職だから免除になるはず」と考えるのではなく、家族関係と世帯主を含めて確認する必要があります。

50歳未満なら「納付猶予」という選択肢もある

20歳以上50歳未満で学生ではない場合には、国民年金保険料の納付猶予制度を利用できる可能性もあります。納付猶予では、本人と配偶者の前年所得が一定以下であることが審査されます。

全額免除との大きな違いの一つは、納付猶予では世帯主の所得を審査しないことです。そのため、本人の所得は低いものの親である世帯主の所得が高く、免除制度を利用できないケースでも、本人・配偶者の所得要件を満たせば納付猶予が認められる可能性があります。

ただし年金額への反映方法も異なります。全額免除期間は一定割合が老齢基礎年金額へ反映される一方、納付猶予期間は受給資格期間には算入されますが、追納しなければ老齢基礎年金額には反映されません。単に「今払わなくてよい」という点だけで選ばないことが重要です。

失業した場合には特例免除を利用できることがある

前年には給与所得があったものの、その後失業して現在は無収入という場合には、失業等による特例免除を利用できる可能性があります。

日本年金機構によると、失業・倒産・事業廃止などの事実を確認できた場合には、失業等をした本人について前年所得にかかわらず審査する特例があります。前年に働いていたため通常の所得基準を超えている人にとって重要な制度です。

ただし、失業した本人以外の配偶者・世帯主については所得要件が残る場合があります。離職票など必要書類も関係するため、退職後の免除申請では年金事務所や市区町村の国民年金窓口へ相談すると確実です。

全額免除になると将来の年金はどうなる?

国民年金保険料の全額免除が承認された期間は、単なる「未納」とは扱いが異なります。受給資格期間へ算入されるほか、2009年4月以降の全額免除期間については、全額納付した場合の2分の1が老齢基礎年金額へ反映されます。

例えば40年間すべて保険料を納付した場合と、40年間すべて全額免除だった場合では、将来受け取る老齢基礎年金額に差が生じます。そのため、資産に余裕があり保険料を問題なく納付できる場合には、将来の年金額まで含めて免除申請をするか考えることも大切です。

免除の承認を受けた期間については、一定の条件で後から保険料を追納して将来の年金額を増やす制度もあります。免除を利用する場合は、現在の負担だけでなく長期的な影響も確認しておきましょう。

まとめ:資産が多いだけで全額免除が否定されるわけではない

国民年金保険料の一般的な免除制度では、預貯金などの資産を多く持っているという事実だけで全額免除が一律に否定される仕組みではなく、本人・配偶者・世帯主の前年所得が重要な審査基準になります。

ただし、現在の月収が0円だから必ず全額免除になるわけでもありません。前年に給与所得があった場合、資産から不動産所得や売却益などが発生している場合、配偶者・世帯主に所得がある場合などは審査結果に影響します。また失業した場合には特例制度、50歳未満なら納付猶予制度を利用できる可能性があります。

資産があり現在無収入というケースでは、「資産総額」だけを伝えて自己判断するのではなく、申請年度、前年所得、配偶者・世帯主の所得、失業の有無を整理し、日本年金機構の年金事務所または市区町村の国民年金窓口で確認するのが確実です。

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