就職して給与から社会保険料が引かれているのに、資格確認書や資格情報のお知らせが届かず、マイナポータルにも国民健康保険しか表示されない場合は注意が必要です。「給与から社会保険料が引かれている=健康保険への加入手続きが確実に完了している」とは限らないからです。
また、会社の健康保険へ加入した場合でも、国民健康保険の脱退手続きが自動的に完了するとは限りません。厚生労働省は、国民健康保険を脱退するときは14日以内に市町村の国保窓口へ関係書類を提出するよう案内しています。[参照:厚生労働省 国民健康保険の加入・脱退について]
何カ月も会社の健康保険資格を確認できないうえ、国保の滞納や預金差押えの可能性まで生じている場合は、会社からの書類を待ち続けるのではなく、年金事務所・加入予定の健康保険者・市区町村の国保窓口へそれぞれ確認することが重要です。
まず「社会保険に本当に加入済みか」を確認する
最初に確認すべきなのは、会社が健康保険・厚生年金保険の資格取得手続きを実際に行っているかです。会社が適用事業所の従業員を健康保険・厚生年金保険へ加入させる場合、事業主が被保険者資格取得届を提出します。日本年金機構も資格取得届などの社会保険手続きを事業所が行うものとして案内しています。[参照:日本年金機構 事業所向けオンラインサービス]
給与明細で健康保険料や厚生年金保険料らしき金額が毎月控除されているにもかかわらず、長期間にわたって資格情報が確認できない場合は、会社へ「社会保険に入っていますか」とだけ質問するのではなく、資格取得年月日、加入している健康保険の名称、記号・番号、資格取得届の処理状況を具体的に確認すると状況を整理しやすくなります。
なお、日本年金機構には、厚生年金保険料を給与から天引きしていたにもかかわらず、事業主による資格関係の届出や納付が明らかでないケースについて記録訂正を行う制度もあります。給与から控除されていることだけを根拠に手続き完了と判断しないことが大切です。[参照:日本年金機構 厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等]
マイナポータルが国保のままなら放置しない
現在はマイナ保険証を利用する仕組みとなっており、マイナポータルから本人の健康保険資格情報を確認できます。厚生労働省もマイナポータルで資格情報を確認できることを案内しています。[参照:厚生労働省 資格確認方法について]
就職から相当期間が経過しているにもかかわらず、そこに会社の健康保険ではなく国民健康保険だけが表示されているなら、資格取得手続きが正常に完了しているかを確認する必要があります。ただし、マイナポータルの表示だけから資格取得届が未提出だと断定することも避けるべきです。
会社が加入しているのが協会けんぽなのか健康保険組合なのかも確認しましょう。加入先が分かれば、資格情報についてどこへ問い合わせるべきか明確になります。
社会保険の証明書が一切なくても国保を辞められる?
国民健康保険からの脱退手続きでは、一般に新しく加入した健康保険の資格取得日を確認できる資料が求められます。厚生労働省は、国保を脱退するときには市町村の窓口へ関係書類を提出する必要があり、具体的な必要書類や申請方法は各市町村などで確認するよう案内しています。
そのため、新しい健康保険へ加入したことを証明できる資料が一切ない状態で、申告だけにより国保を脱退できるかは自治体の確認方法によります。「書類がないから絶対に不可能」とも「口頭だけで必ず脱退できる」とも一律には言えません。
まず住んでいる市区町村の国保窓口へ事情をそのまま説明し、「勤務先から社会保険料は控除されているが、資格確認書・資格情報のお知らせ・資格取得証明書がなく、マイナポータルも国保のままである」と伝えてください。そのうえで、自治体側で確認可能なのか、何を取得すれば手続きできるのかを確認するのが確実です。
会社には健康保険資格取得証明書などを具体的に依頼する
会社へ何度も問い合わせても話が進まない場合は、「保険証が欲しい」ではなく、必要な情報・書類を具体的に依頼するのがポイントです。従来の健康保険証は新規発行されない仕組みになっているため、「保険証がまだ来ない」という表現では社内で話が噛み合わないこともあります。
確認したいのは、健康保険の資格取得年月日、保険者名、資格情報のお知らせや資格確認書の状況、必要に応じて健康保険資格取得を証明できる書類です。マイナ保険証を持つ人には、医療保険者から「資格情報のお知らせ」が交付される仕組みです。[参照:厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用に関するQ&A]
社長が不在で分からないと言われる場合でも、給与計算や社会保険手続きを担当している人、社会保険労務士などの外部委託先がないか確認します。給与から何の名目で、いつから、いくら控除されているのか分かる給与明細は保管しておきましょう。
資格取得日が昨年10月まで遡れば国保料はどうなる?
会社の健康保険への資格取得が正式に確認されれば、その資格取得日以降は原則として国民健康保険の加入対象ではありません。厚生労働省も「他の医療保険(健康保険)に加入している方」は国民健康保険の加入対象外としています。
例えば昨年10月1日付で会社の健康保険資格を取得していたことが確認できた場合には、その資格関係に基づいて国保の脱退処理と保険料・税の再計算が行われることになります。具体的な精算方法や還付・未納額との充当などは自治体によって確認が必要です。
逆に、会社が社会保険料を給与から控除していても資格取得届そのものが処理されていなければ、単純に「昨年10月から国保ではなかった」と自己判断することはできません。だからこそ資格取得日の確認が最優先になります。
国保が未納なら資格問題とは別にすぐ納付相談する
「いずれ社会保険へ切り替わって国保料が取り消されるはず」と考えて国保の請求を放置するのは危険です。国保側では脱退を確認できない間、加入状態に基づいた請求や滞納処理が続く可能性があります。
国民健康保険法には滞納した保険料に対する督促についての規定があります。厚生労働省の指導監査に関する通知でも、督促・催告後も滞納が続くケースについて差押え等の対応が示されています。[参照:国民健康保険法]
社会保険の資格確認が未解決でも、市区町村の国保収納担当へ「会社で社会保険料を控除されており資格関係を確認中である」と説明し、納付・徴収について相談してください。資格担当と収納担当が別部署になっている自治体もあります。
口座から差し押さえられたような場合は銀行と自治体へ確認する
銀行口座から突然一定額が動いていたとしても、それだけで国民健康保険による差押えだったと断定はできません。まず通帳・インターネットバンキングの取引表示を確認し、金融機関へ「この出金・差押えを行った債権者はどこか」を問い合わせます。
国保が原因だと分かった場合には、市区町村の収納・滞納整理担当へ直ちに連絡し、社会保険資格を確認中である事情を説明します。通知がまだ届いていないという理由だけで何もせず待つより、差押えの有無と対象債権を自分から確認したほうが状況を早く整理できます。
また世帯の国保料・国保税は世帯主宛てに請求される仕組みが関係する場合があります。そのため、実際に社会保険へ加入するのが子であっても、国保の納付義務者や請求名義が親になっているケースがあります。誰の資格に対する未納なのか、何年度・何期分なのかまで確認してください。
このケースで進めるべき順番
社会保険料が給与から控除されているのに資格が確認できず、国保まで滞納している場合は、会社から書類が届くのを待つだけではなく複数の窓口へ並行して確認するのが現実的です。
- 給与明細を確認し、健康保険料・厚生年金保険料がいつからいくら控除されているか記録する
- 会社へ健康保険の保険者名、資格取得年月日、資格取得届の処理状況を文書やメールなど記録の残る方法で確認する
- 加入先が協会けんぽ等であれば資格確認方法を確認し、厚生年金について不明点があれば年金事務所へ相談する
- 市区町村の国保資格担当へ、社会保険加入を証明する書類がない事情を説明して必要な手続きを確認する
- 同時に国保の収納担当へ滞納状態を説明し、徴収・納付について相談する
- 口座の差押えが疑われる場合は銀行へ債権者を確認し、該当する自治体等へ問い合わせる
特に「給与から何カ月も社会保険料が引かれているのに資格記録が確認できない」という点は放置しないことが重要です。日本年金機構では、法人事業所など一定条件を満たす事業所には健康保険・厚生年金保険への加入義務があることを案内しています。[参照:日本年金機構 事業所に関する手続き]
まとめ
国民健康保険から会社の健康保険へ切り替えるには、まず会社の健康保険について資格取得が実際に完了しているか、資格取得日はいつなのかを確定させることが重要です。給与から社会保険料が天引きされているという事実だけでは、国保の脱退手続きを完了できるとは限りません。
資格確認書などが一切なく、マイナポータルも国保のままという状態が長期間続いているなら、会社だけへの問い合わせで止めず、年金事務所・加入予定の健康保険者・市区町村の国保窓口へ確認してください。資格取得日が遡って確認されれば、それに基づいて国保の資格と保険料を整理することになります。
また国保が滞納状態にあり、すでに口座差押えの可能性まである場合は、社会保険の問題が解決するまで待ってはいけません。国保の資格担当と収納担当へ事情を伝えるとともに、銀行へ差押えを行った債権者を確認し、資格問題と滞納問題を並行して整理することが重要です。


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