国民健康保険には、所得が一定基準以下の世帯について保険料・保険税の負担を軽くする「低所得者の軽減制度」があります。一般に「7割軽減」「5割軽減」「2割軽減」と呼ばれる制度ですが、判定基準は単純な年収だけではなく、世帯の前年所得、国保加入者数、給与所得者等の人数によって決まります。
たとえば40歳以上の大人1人と中学生1人の2人世帯でも、大人が給与所得者なのか自営業なのか、世帯主が誰なのかによって判定に使われる数字が変わります。ここでは2026年度(令和8年度)の基準をもとに、2人世帯ではどの程度の所得・給与年収が目安になるのかを具体的に整理します。
国民健康保険の7割・5割軽減とは
国民健康保険では、前年の世帯所得が一定額以下の場合、保険料・保険税のうち主に均等割などの定額部分が7割、5割または2割軽減される仕組みがあります。「国保の料金全体が必ず7割引きになる」という意味ではない点が重要です。
国保には所得に応じて計算される所得割と、加入者ごとに課される均等割などがあります。低所得世帯への法定軽減は、このうち均等割等を軽減する制度です。そのため、7割軽減に該当しても最終的な国保負担額そのものが通常の3割になるとは限りません。
2026年度の軽減判定基準は、7割軽減が「43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)」、5割軽減が「43万円+31万円×被保険者等の数+10万円×(給与所得者等の数-1)」です。厚生労働省による制度改正では、2026年度から5割軽減の人数加算額が30万5,000円から31万円へ引き上げられています。[参照:厚生労働省]
40歳以上の大人1人・中学生1人なら所得基準はいくら?
40歳以上の大人1人と中学生1人の2人がともに国民健康保険へ加入しているとします。さらに、収入があるのは大人1人だけで、その人が給与所得者という一般的なケースを考えます。
給与所得者等が1人の場合、「10万円×(給与所得者等の数-1)」は0円になります。そのため2026年度の7割軽減の所得基準は43万円以下です。
5割軽減については国保加入者が2人なので、43万円+31万円×2人=105万円以下が所得基準となります。つまり、このモデルケースでは世帯の軽減判定所得が43万円以下なら7割軽減、43万円を超えて105万円以下なら原則として5割軽減の範囲になります。
| 軽減割合 | 2人世帯の所得基準 | 給与収入だけの場合の概算目安 |
|---|---|---|
| 7割軽減 | 43万円以下 | 約108万円以下 |
| 5割軽減 | 105万円以下 | 約170万円以下 |
| 2割軽減 | 157万円以下 | 約222万円前後以下が一つの目安 |
上表の給与収入は、大人1人だけに給与収入があり、中学生に所得がないケースを単純化した概算です。実際の判定では所得の種類や世帯構成などによって変わるため、「年収がこの金額なら必ず軽減される」と考えるのではなく、所得基準を中心に確認する必要があります。
「年収」と「所得」は同じではないので注意
国民健康保険の軽減制度で特に間違えやすいのが、年収と所得を同じものとして考えてしまうことです。会社員やパート・アルバイトの場合、給与として受け取った年間金額がそのまま軽減判定所得になるわけではありません。
給与所得の場合は、給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。たとえば給与収入170万円の場合、給与所得控除65万円を前提とすると給与所得は105万円となります。そのため、2人国保世帯で給与所得者が1人というモデルでは、2026年度の5割軽減基準105万円と一致する計算になります。
同様に給与収入108万円なら、給与所得控除65万円を差し引いた給与所得は43万円です。このため、給与のみで生活する大人1人と所得のない中学生1人という条件なら、給与収入約108万円が7割軽減の一つの目安になります。
2人家族だから必ず「43万円・105万円」になるわけではない
国保の軽減判定では、単に「家族が2人だから2人分」と考えることはできません。判定対象には国保加入者のほか、世帯主の所得が関係することがあり、国保から後期高齢者医療制度へ移った特定同一世帯所属者が人数に含まれるケースもあります。
たとえば親子2人暮らしでも、子どもだけが国保で親が勤務先の健康保険に加入しているケースと、親子とも国保に加入しているケースでは条件が異なります。また、国保に加入していない世帯主の所得が軽減判定に含まれる場合もあるため注意が必要です。
2026年度について、さいたま市も7割軽減を「43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)」、5割軽減を「43万円+31万円×被保険者数等+10万円×(給与所得者等の数-1)」として案内しています。[参照:さいたま市 国民健康保険税の軽減]
40歳以上の場合は介護納付金分も関係する
40歳以上65歳未満の国保加入者には、通常の医療給付費分・後期高齢者支援金等分に加えて介護納付金分も国民健康保険料・税として課されます。そのため、40歳未満の人と比較すると国保の請求額が高くなることがあります。
ただし、「40歳以上だから7割・5割軽減の所得基準そのものが大きく変わる」という仕組みではありません。40歳という年齢は主に介護納付金分の計算に影響します。さいたま市でも40歳以上65歳未満の加入者には介護分が賦課されることが案内されています。[参照:さいたま市 国民健康保険税の計算]
中学生については40歳未満なので介護納付金分はありません。一方、均等割の軽減判定では国保加入者として人数に含まれるため、親子2人とも国保なら5割・2割軽減の基準額を計算するときの人数に影響します。
軽減されるか確認するときのポイント
国民健康保険の軽減を確認するときは、まず前年1月から12月までの所得を確認します。2026年度(令和8年度)の国保であれば、原則として2025年中の所得をもとに判定されます。
次に、国保に加入している人数、世帯主の所得、給与所得者等の人数を確認します。会社員・パートなどの給与収入だけであれば比較的計算しやすい一方、自営業の事業所得、不動産所得、株式等の所得などがある場合は単純な給与年収換算では判断できません。
また、所得が少なくても所得情報が自治体で確認できなければ軽減判定ができない場合があります。収入がゼロの場合を含め、自治体から所得申告を求められている場合には申告を済ませておくことが重要です。
自治体によって最終的な国保額が違う理由
低所得世帯に対する7割・5割・2割という法定軽減の所得基準は全国的な制度ですが、国民健康保険料・税そのものの計算方法や料率は自治体によって異なります。そのため、同じ年収・同じ家族構成でも住んでいる市区町村によって実際の年間負担額が同じになるとは限りません。
さらに国保では、所得割率や均等割額、自治体によっては平等割などの設定にも違いがあります。「7割軽減に該当するか」と「年間の国保はいくらになるか」は別の計算だと考えると理解しやすいでしょう。
正確な金額を知りたい場合は、住所地の市区町村公式サイトにある国民健康保険料・税の試算ページを利用するか、国保担当窓口へ前年の収入・所得と世帯構成を伝えて確認するのが確実です。
まとめ:2人国保世帯なら7割は所得43万円、5割は所得105万円が一つの目安
2026年度(令和8年度)に、40歳以上の大人1人と中学生1人の2人とも国民健康保険に加入し、給与所得者が大人1人だけというケースでは、7割軽減は世帯の軽減判定所得43万円以下、5割軽減は105万円以下が基本的な目安です。
給与収入だけで考えると、給与所得控除65万円を前提に、7割軽減は年収約108万円以下、5割軽減は年収約170万円以下が概算の目安になります。ただし、これは条件を単純化したモデルケースであり、世帯主やほかの所得の有無などによって結果は変わります。
国保の軽減は「年収」ではなく世帯の「軽減判定所得」を基準に判断することがポイントです。年度ごとに基準額が改正されることもあるため、最終的にはその年度の住所地の市区町村が公表している国民健康保険の軽減基準を確認してください。


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