卵巣嚢腫の腹腔鏡手術を受けたあと、民間の医療保険や県民共済へ給付金を請求する際、「手術は何点なのか」「入院給付日額の何倍もらえるのか」が気になることがあります。
卵巣嚢腫の摘出で行われる代表的な腹腔鏡手術は、診療報酬上の「K888 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 2 腹腔鏡によるもの」として算定されるケースがあり、診療報酬点数は25,940点です。ただし、実際にどの手術コードが算定されたかは、病名だけでは確定できません。
卵巣を部分的に切除した場合、焼灼術を行った場合、癒着剥離などを同時に行った場合など、実際の術式によって診療報酬上のコードが変わることがあります。また同時に複数の手術を実施した場合も、単純にすべての手術点数を足すとは限りません。そのため、保険会社へ請求する際に最も確実なのは、病院の診療明細書に記載された手術名・手術コード・手術点数を確認することです。
一方、県民共済については、現在の代表的な生命共済・医療特約などでは、昔の民間医療保険でよく見られた「入院日額×10倍・20倍・40倍」といった単純な倍率方式ではなく、診療報酬の手術点数がどの区分に入るかによって手術共済金額が決まる仕組みが採用されています。本記事では、卵巣嚢腫の腹腔鏡手術の点数と、民間医療保険・県民共済の給付金を確認する方法を整理します。
※本記事は2026年8月時点の厚生労働省および全国生活協同組合連合会・各県民共済の公開情報をもとに一般的な仕組みを解説しています。実際の給付額は手術日、加入時期、商品、コース、特約、約款、病院が算定した術式によって異なります。最終的な支払可否・金額は加入先へご確認ください。
- 卵巣嚢腫の腹腔鏡手術で代表的なのはK888
- 「右は嚢腫摘出、左は焼灼」なら必ず25,940点とは限らない
- 左右両方を処置したから手術点数が2倍になるわけではない
- 診療報酬の「25,940点」は医療費25万9,400円に相当する
- 民間医療保険の手術給付金は大きく2タイプある
- 保険会社へ伝えるなら「卵巣嚢腫」より手術コードを確認する
- 県民共済は「何倍」という方式ではないの?
- 県民共済では診療報酬点数の区分で給付額が変わる
- 県民共済でも加入時期によって規定が違う可能性がある
- 左右で複数の手術を受けても県民共済が2件分出るとは限らない
- 入院給付金は手術給付金とは別に受け取れる場合がある
- 領収書の「手術」欄の点数と給付判定用の点数は同じとは限らない
- 病院の支払額から手術点数を逆算するのは難しい
- 給付金のおおよその金額を知るための確認手順
- まとめ|卵巣嚢腫の腹腔鏡摘出は25,940点が代表例。県民共済は点数区分で確認する
卵巣嚢腫の腹腔鏡手術で代表的なのはK888
卵巣嚢腫などの卵巣腫瘍を腹腔鏡で摘出した場合、代表的な診療報酬コードとしてK888「子宮附属器腫瘍摘出術(両側)」があります。
厚生労働省の診療報酬点数表では、K888は開腹と腹腔鏡に分けられており、腹腔鏡によるものは25,940点とされています。
| 診療報酬コード | 手術名 | 点数 |
|---|---|---|
| K888-1 | 子宮附属器腫瘍摘出術・開腹によるもの | 17,080点 |
| K888-2 | 子宮附属器腫瘍摘出術・腹腔鏡によるもの | 25,940点 |
卵巣嚢腫の腹腔鏡下摘出術でK888-2が算定されているのであれば、医療保険の「手術料の診療報酬点数」に関係する契約では、この25,940点が重要な数字になります。
「右は嚢腫摘出、左は焼灼」なら必ず25,940点とは限らない
注意したいのは、「卵巣嚢腫の腹腔鏡手術をした」という情報だけでは実際の手術点数を断定できないことです。
例えば卵巣については、K887「卵巣部分切除術」という別の手術コードがあります。腹腔鏡による卵巣部分切除術は18,810点です。また、多嚢胞性卵巣に対する腹腔鏡下多嚢胞性卵巣焼灼術にはK887-4というコードがあり、24,130点が設定されています。
| 代表的な術式 | コード | 点数 |
|---|---|---|
| 子宮附属器腫瘍摘出術・腹腔鏡 | K888-2 | 25,940点 |
| 卵巣部分切除術・腹腔鏡 | K887-2 | 18,810点 |
| 腹腔鏡下多嚢胞性卵巣焼灼術 | K887-4 | 24,130点 |
| 子宮附属器癒着剥離術・腹腔鏡 | K886-2 | 21,370点 |
また、「左側を焼いた」という説明が、診療報酬上のK887-4に該当するとは限りません。K887-4は多嚢胞性卵巣に対する特定の術式です。嚢腫の処置の一環として電気凝固などを行っただけなら、別の手術として独立して算定されないこともあります。
医師から受けた「摘出した」「焼いた」という説明と、保険請求で使用される診療報酬上の手術名称は必ずしも一致しません。そのため、診療明細書で実際に算定された手術名を見ることが重要です。
左右両方を処置したから手術点数が2倍になるわけではない
卵巣は左右にあるため、「右側を摘出して左側も処置したなら手術点数が2倍になるのでは」と考えることがあります。しかし、必ずしもそうではありません。
K888の正式名称には「子宮附属器腫瘍摘出術(両側)」とあります。この「両側」という表記がある手術は、左右それぞれについて単純に所定点数を2回加算するものではありません。
また、一度の手術中に複数種類の処置を行った場合には、診療報酬上の併施ルールがあります。手術の組み合わせによっては一方のみを算定したり、一定割合を加算したりするため、25,940点+別手術の点数という単純計算ができないケースがあります。
医療保険会社側でも、一度の手術で複数の手術を受けた場合の給付方法を約款で定めています。複数の手術給付金が重複して支払われるとは限らないため、最終的には病院の手術コードと保険約款の両方を確認します。
診療報酬の「25,940点」は医療費25万9,400円に相当する
公的医療保険の診療報酬は、原則として1点=10円で計算されます。そのため25,940点なら、手術料としては25万9,400円に相当します。
ただし、患者が窓口で25万9,400円を全額支払うという意味ではありません。健康保険の自己負担割合が適用されますし、入院では高額療養費制度の対象になる場合もあります。
また入院費の総額には、手術料だけでなく麻酔、検査、薬剤、入院料、食事など多数の項目が含まれます。一方、民間医療保険や県民共済が「手術点数」を基準にする場合、保険会社が見るのは医療費全体の総点数ではなく、原則として対象手術そのものの手術料の点数です。
例えば請求書の総医療費が100万円相当だったとしても、「10万点の手術をした」という意味にはなりません。手術給付金の区分を確認するには手術項目そのものを見る必要があります。
民間医療保険の手術給付金は大きく2タイプある
民間の医療保険では、契約時期や商品によって手術給付金の計算方法が異なります。大きく分けると、「入院給付日額に倍率を掛ける方式」と「診療報酬点数などによって金額を区分する方式」があります。
従来型の倍率方式
以前からある医療保険では、手術の種類によって入院給付日額の10倍、20倍、40倍などを支払う商品があります。
例えば入院給付日額5,000円で20倍の対象手術なら、手術給付金は10万円という計算です。
現在多い公的医療保険連動型
近年の医療保険には、公的医療保険制度で手術料の算定対象となる手術を広く保障し、入院中なら日額の20倍、外来なら5倍などとする商品や、診療報酬点数を一定の区分に分けて給付額を決める商品があります。
「手術の給付金は点数によって変わる」と説明されている契約なら、病院が算定した手術料の点数がどの給付区分に該当するかを見ることになります。
保険会社へ伝えるなら「卵巣嚢腫」より手術コードを確認する
給付金の概算を知りたいときには、保険会社へ単に「卵巣嚢腫の腹腔鏡手術でした」と伝えるより、診療明細書を手元に置いて問い合わせたほうが正確です。
明細書に「K888」「子宮附属器腫瘍摘出術(腹腔鏡によるもの)」などと記載されていれば、その内容を伝えます。診療明細書にコードがなく手術名だけ記載されている場合は、その名称をそのまま伝えればよいでしょう。
保険会社へは「この手術名・手術コードの場合、私の契約では手術給付金はいくらになりますか」と問い合わせると、契約内容に基づいた金額を案内してもらえる場合があります。
なお、保険会社が診断書などを確認して最終査定するため、電話で案内された金額は確定額ではないことがあります。
県民共済は「何倍」という方式ではないの?
県民共済については、現在の代表的な生命共済や医療特約などでは、手術共済金を診療報酬の手術点数の区分によって決める仕組みが採用されています。
全国生活協同組合連合会の「ご加入のしおり」では、対象手術について「手術を受けた時点における医科診療報酬点数表による手術料の診療報酬点数に応じて手術共済金を支払う」と定めています。麻酔や薬剤などの診療報酬点数は含みません。
したがって、現在の制度では「日額の20倍だから○万円」というより、何点の手術だったかによって、あらかじめ決められた共済金額へ当てはめると理解するのが分かりやすいでしょう。
県民共済では診療報酬点数の区分で給付額が変わる
県民共済の手術共済金は、加入しているコースや年齢などによって金額が異なります。例えば生命共済の一部コース・特約では、手術料の診療報酬点数に応じて段階的に共済金額が設定されています。
公開されている規定の例では、5,000点以上15,000点未満、15,000点以上30,000点未満、30,000点以上といった区分が設けられ、それぞれ支払額が変わる仕組みがあります。
仮に卵巣嚢腫の腹腔鏡手術がK888-2の25,940点として扱われるなら、「15,000点以上30,000点未満」の区分に該当します。ただし、実際にいくら受け取れるかは加入している県民共済の商品・コース・加入時期・年齢によって異なります。
例えばあるコースでは同区分が10万円でも、別のコースや年齢帯では金額が異なることがあります。したがって「25,940点だから県民共済から必ず10万円」と一律に断定することはできません。
県民共済でも加入時期によって規定が違う可能性がある
共済や保険の商品内容は制度改正によって変更されることがあります。都道府県民共済では2024年4月にも手術保障制度の改正が行われ、従来対象外だった一部の低点数手術が新しく保障対象となる変更などが実施されています。
そのためインターネット検索で古いブログや過去のQ&Aを見ると、「1,400点未満は対象外」「手術は○倍」という現在とは異なる情報が見つかることがあります。
実際の給付では自分が加入している契約に適用される「ご加入のしおり」「共済事業約款」が基準です。県民共済のマイページや加入証書でコース名を確認し、その都道府県民共済へ直接問い合わせるのが最も確実です。
左右で複数の手術を受けても県民共済が2件分出るとは限らない
今回のように片側で嚢腫摘出、もう片側でも別の処置を受けた場合、「手術共済金を2回分もらえるのか」と考えることがあります。
県民共済の公式FAQでは、1回の手術の中で複数種類の手術を受けた場合や、1日のうちに複数回の手術を受けた場合について、最も支払金額が高い1種類の手術を受けたものとみなして手術共済金を支払うという取扱いが案内されています。
そのため、右側と左側に異なる処置が行われたとしても、同一の手術・同一日の処置であれば、それぞれの手術共済金を単純に合算できるとは限りません。
[参照] 県民共済「手術共済金はどんな場合に支払われますか?」
入院給付金は手術給付金とは別に受け取れる場合がある
腹腔鏡手術で数日入院した場合、医療保険・県民共済では手術給付金だけでなく入院給付金も支払対象になる可能性があります。
例えば入院日額5,000円の医療保険で5日間の対象入院なら、単純化すると入院給付金は2万5,000円です。これに手術給付金が加わります。
県民共済についても、加入コースに病気入院の保障があれば、所定の条件に基づいて入院共済金と手術共済金が支払われる場合があります。
そのため給付金の総額を知りたい場合は、「手術で何万円出るか」だけではなく、入院日数、女性疾病の特約、先進医療特約など他の保障が付いていないかも確認しておくとよいでしょう。
領収書の「手術」欄の点数と給付判定用の点数は同じとは限らない
病院の領収書には、「入院料」「医学管理」「投薬」「手術」「麻酔」などの欄があり、それぞれ点数・金額がまとめて表示されることがあります。
ここで注意したいのが、領収書の「手術」欄に表示された数字をそのまま保険会社の手術給付金判定へ使用できるとは限らないことです。手術欄には加算などが含まれている場合があるためです。
県民共済は、手術共済金の基準となる点数について「手術料の診療報酬点数」で判断し、麻酔や薬剤などの点数は含めないと説明しています。
そのため手元の領収書だけでは判断できない場合には、診療明細書の手術名称を確認するか、病院へ「診療報酬上の手術コードを知りたい」と問い合わせる方法があります。
病院の支払額から手術点数を逆算するのは難しい
例えば退院時の自己負担額が8万円だったとしても、「3割負担だから手術は約2万6,000点だった」と逆算することはできません。
入院費には手術料以外に入院基本料、麻酔、検査、画像診断、薬剤などが含まれ、高額療養費制度や限度額適用の影響も受けます。
さらに食事代や差額ベッド代など、公的医療保険とは別の費用が含まれることもあります。そのため、支払った金額と手術点数は一対一では対応しません。
手術給付金の概算には、領収額ではなく正式な術式名・手術コードを使うのが正確です。
給付金のおおよその金額を知るための確認手順
実際に保険金・共済金を請求する前に概算を確認したい場合は、次の順番で調べると効率的です。
- 診療明細書の手術欄を見る
- 「K888」などの手術コードまたは正式な手術名を確認する
- 民間医療保険の証券・契約内容を確認する
- 手術給付金が診療報酬点数連動型か倍率型か確認する
- 県民共済の加入コース名を確認する
- 加入先へ手術名・手術日・入院日数を伝えて問い合わせる
例えば診療明細書が「K888 子宮附属器腫瘍摘出術(腹腔鏡によるもの)」となっていれば、25,940点であることを前提に、加入保険の商品説明書にある点数区分へ当てはめることができます。
一方、「卵巣部分切除術」など別の名称が記載されているなら、その手術の点数で判定します。自分で術式を推測するより、明細書を見るだけでかなり正確になります。
まとめ|卵巣嚢腫の腹腔鏡摘出は25,940点が代表例。県民共済は点数区分で確認する
卵巣嚢腫を腹腔鏡で摘出する手術では、代表的な診療報酬コードとしてK888-2「子宮附属器腫瘍摘出術(腹腔鏡によるもの)」25,940点があります。その術式として病院が算定しているのであれば、点数連動型の医療保険では25,940点を基準に給付区分を確認できます。
ただし、卵巣嚢腫の手術だから必ずK888-2になるわけではありません。卵巣部分切除術、癒着剥離術など別の手術として算定される場合もあり、左右で複数の処置を受けても各点数を単純に合計するとは限りません。
また県民共済については、現在の代表的なコースでは昔ながらの「入院日額の○倍」という単純な倍率表ではなく、実際に受けた手術の医科診療報酬点数が何点かによって手術共済金の区分を決める仕組みになっています。
K888-2の25,940点であれば「15,000点以上30,000点未満」の区分になる制度がありますが、その区分で実際に何万円支払われるかは加入コース・年齢・加入時期などによって異なります。そのため県民共済については「25,940点なら必ず○万円」と一律には判断できません。
最も確実なのは、退院時にもらった診療明細書で正式な手術名またはKコードを確認することです。その内容を民間医療保険会社と県民共済へ伝えれば、請求前でも給付額の目安を案内してもらえる場合があります。入院給付金や女性疾病特約などが付いている場合は手術給付金とは別に対象になる可能性もあるため、併せて確認するとよいでしょう。


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