所得税の確定申告を税理士に依頼した場合、「提出する確定申告書に税理士の署名や名前が入るのか」と疑問に思うことがあります。特に自分で作成した申告書と、税理士が代理で作成・提出した申告書の違いは分かりにくいところです。
現在の制度では、昔のような意味で税理士本人の「署名押印」が必須という説明は正確ではありません。一方、税理士が税務書類を作成した場合には、税理士法に基づき、その税務書類に税理士の氏名などを記載する仕組みがあります。
また、確定申告書を作成してもらうだけなのか、e-Taxによる代理送信まで依頼するのかによって手続きの見え方も変わります。ここでは税理士へ確定申告を依頼した場合の氏名表示や代理申告の仕組みを整理します。
税理士が確定申告書を作成すると税理士の氏名等が記載される
税理士法では、税理士または税理士法人が他人の求めに応じて税務書類を作成した場合、その書類に税理士の氏名などを記載しなければならないことが定められています。
国税庁も税理士制度について、税理士の業務として税務代理、税務書類の作成、税務相談などを案内しています。[参照:国税庁 税理士制度に関するQ&A]
したがって、納税者本人が自分で申告書を作成し、税理士に一般的な相談をしただけの場合と、税理士へ正式に申告書作成を依頼した場合では扱いが異なります。
現在は「署名押印」ではなく氏名等の記載がポイント
以前の税理士法では、税理士が作成した税務書類について「署名押印」という表現が使われていました。そのため現在でも「税理士に頼むと申告書へ税理士が署名する」と説明されることがあります。
しかし、押印義務の見直しに伴って税理士法も改正されています。現在は、税務書類を作成した税理士について氏名等を記載するという仕組みになっています。そのため「税理士が紙の申告書へ必ず手書きでサインして印鑑を押す」というイメージとは異なります。
「税理士の署名が入るのか」という疑問については、「正式に税理士が作成した申告書なら税理士の氏名等が記載されるが、現在は手書きの署名・押印が必須という意味ではない」と理解すると分かりやすいでしょう。
確定申告書には税理士に関する欄がある
所得税の確定申告書には、税理士が関与した場合に税理士の情報を記載するための欄があります。国税庁が公開している確定申告書の様式でも税理士に関する記載欄を確認できます。[参照:国税庁 所得税及び復興特別所得税の確定申告書等]
税理士へ申告書作成を正式に依頼した場合には、このような税理士に関する情報を含めて申告手続きが行われます。
一方、知り合いの税理士にちょっと質問した、計算方法だけ相談した、申告書の内容を一般的に確認してもらったというだけで、必ずその税理士が「申告書を作成した税理士」として記載されるわけではありません。実際にどこまで業務を依頼したかが重要です。
e-Taxで税理士が代理送信する場合はどうなる?
現在は確定申告をe-Taxで提出するケースも多く、税理士が納税者に代わって電子申告を行うこともできます。この場合、紙の申告書に税理士が手書きで署名して提出するという形ではありません。
e-Taxには税理士が納税者の申告等データを代理送信する仕組みがあります。税理士が代理送信する場合には、電子申告の手続きの中で税理士が関与していることが扱われます。[参照:国税庁 e-Tax 税理士及び税理士法人等向けQ&A]
そのため、税理士に依頼したのに紙面上で「手書きのサインが見当たらない」というだけで、税理士が関与していないと判断することはできません。電子申告では紙とは異なる方法で本人確認や代理送信が行われます。
税理士に依頼すると税務署からの連絡も全部税理士に行く?
税理士へ確定申告を依頼すると、税務代理も併せて依頼することがあります。税務代理とは、税務官公署に対する申告等について納税者を代理・代行する税理士業務です。
税務代理を行う場合には「税務代理権限証書」を税務署へ提出する仕組みがあります。国税庁は税務代理権限証書の様式や記載方法を公開しています。[参照:国税庁 税務代理権限証書]
ただし、税理士に申告を頼んだからといって、あらゆる税務署からの連絡が無条件ですべて税理士だけに届くという意味ではありません。どの税目・手続きについて代理権限を委任しているのかなどによって扱いが変わるため、契約時に確認しておくと安心です。
税理士に頼めば申告内容の責任もすべて税理士になる?
税理士が申告書を作成した場合でも、「税理士に任せたから納税者本人には一切責任がない」と考えるのは適切ではありません。申告する所得や取引について正確な資料を税理士へ提供することが重要です。
例えば売上100万円を税理士へ伝えず、その資料も渡していなければ、税理士が把握していない取引まで自動的に申告書へ反映できるわけではありません。銀行口座、売上資料、経費の領収書、源泉徴収票、控除証明書など、申告に必要な資料を漏れなく提供する必要があります。
申告書が完成したら、税理士に任せきりにせず、売上・所得・所得控除・税額などの主要項目について説明を受け、自分でも内容を確認しておくことが大切です。
税理士が作成したことが税務署に分かるメリットは?
税理士の氏名が記載されていることは、「税務署が申告内容を無条件で信用する」「税務調査を受けなくなる」という意味ではありません。税理士が作成した申告書であっても、必要に応じて内容の確認や税務調査が行われる可能性があります。
一方、税理士が正式に関与していれば、申告内容について確認事項が生じた場合などに、委任された範囲で税理士が税務署とのやり取りをサポートできることがあります。
さらに税理士法には、一定の書面を申告書へ添付する「書面添付制度」もあります。これは単に申告書へ税理士名を記載することとは別の制度なので、「税理士名がある=書面添付済み」とは限りません。
税理士へ依頼する前に確認しておきたいこと
確定申告を税理士へ依頼する場合には、料金だけでなく業務範囲を確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
- 申告書の作成まで依頼するのか
- e-Taxによる代理送信まで含まれるのか
- 税務代理権限証書を提出するのか
- 税務署から問い合わせがあった場合の対応は料金に含まれるのか
- 税務調査への立会いは別料金なのか
- 申告後に申告書控えや電子申告の受信通知を受け取れるのか
特に「確定申告代行」という言葉だけでは、記帳から申告書作成、代理送信、その後の税務署対応まで含まれているのか分かりません。依頼前に業務範囲を明確にしておくことが重要です。
まとめ:税理士が確定申告書を作成すれば氏名等が記載される
税理士へ正式に確定申告書の作成を依頼した場合、税理士法に基づいて、その税務書類には作成した税理士の氏名等が記載されます。
ただし、現在は「紙の申告書に税理士が必ず手書きで署名し、印鑑を押す」という意味での署名押印ではありません。e-Taxで税理士が代理送信する場合もあるため、紙の申告書だけを見て判断しないことがポイントです。
また、税理士への相談だけなのか、申告書作成を依頼するのか、税務代理やe-Tax代理送信まで任せるのかによって税理士の関与方法は異なります。依頼時には「申告書作成・代理送信・税務署対応のどこまで含まれるのか」を確認し、申告後には申告書の控えや電子申告の受信通知なども受け取って保管しておくと安心です。

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