70代で公的年金が年間150万円あり、さらにアルバイトをする場合、「いくらまでなら住民税非課税を維持できるのか」は少し複雑です。特に、公的年金等控除110万円、住民税の基礎控除43万円、給与所得控除など、性質の異なる数字を足して考えてしまうと計算を間違えやすくなります。
結論からいうと、年金150万円から公的年金等控除110万円を引いて40万円になる、という部分は基本的に正しいものの、「あと15万円だけアルバイトできる」とは限りません。アルバイト代が給与として支払われる場合、その収入にも給与所得控除があるからです。
さらに住民税の非課税基準は自治体や本人・扶養親族等の状況によって異なります。「基礎控除43万円」と「住民税非課税になる所得限度額」も同じものではありません。ここでは単身・扶養親族なしの70代を中心に、考え方を整理します。
年金150万円なら年金所得は原則40万円になる
65歳以上で、公的年金等以外の所得が1,000万円以下の場合、公的年金等の収入が330万円未満なら公的年金等控除は110万円です。国税庁も、65歳以上で公的年金等110万円超330万円未満の場合の公的年金等に係る雑所得を「収入金額-110万円」としています。[参照:国税庁]
したがって、公的年金収入が年間150万円なら、基本的な計算は150万円-110万円=40万円です。この40万円が公的年金等に係る雑所得となります。
ここで重要なのは、150万円そのものを住民税の非課税限度額と比較するのではなく、公的年金等控除を差し引いた後の「所得」を使うことです。
アルバイト15万円なら所得が15万円増えるとは限らない
アルバイト先と雇用契約を結び、給与としてお金を受け取る場合には「給与所得控除」があります。つまり、アルバイト収入15万円がそのまま所得15万円として年金所得40万円に加算されるわけではありません。
令和7年度税制改正により給与所得控除の最低保障額は65万円へ引き上げられています。そのため給与収入が65万円以下で、ほかに給与収入がなければ、基本的には給与所得は0円になります。
例えば年金収入150万円に加えてアルバイト給与が15万円なら、年金所得は40万円、給与所得は0円となるため、単純な合計所得は40万円です。アルバイト給与が50万円でも、給与所得控除の範囲内であれば給与所得は0円です。
したがって「年金所得40万円で非課税限度額まであと15万円だから、アルバイトも15万円まで」という計算は、アルバイトが給与所得である場合には正しくありません。
「110万円+43万円=153万円まで非課税」でもない
もう一つ混同されやすいのが「公的年金等控除110万円+基礎控除43万円=153万円」という考え方です。公的年金等控除110万円と住民税の基礎控除43万円は確かに存在する数字ですが、単純に足して「年金153万円まで住民税非課税」と判断するものではありません。
公的年金等控除は、年金の収入から所得を計算するための控除です。一方、基礎控除は所得から課税所得を計算する段階で使われる所得控除です。計算上の役割が異なります。
さらに「住民税が非課税になるか」を判定する非課税限度額には、基礎控除43万円とは別のルールがあります。そのため、住民税非課税を維持したい場合に「110万円+43万円」だけを使って上限を計算するのは適切ではありません。
住民税非課税の所得限度額は自治体と家族構成で確認する
個人住民税には所得割と均等割等があり、非課税となる基準は自治体の条例や扶養親族等の人数などによって確認する必要があります。単身・扶養親族なしの場合、合計所得金額が45万円以下などを均等割の非課税基準としている自治体がありますが、自治体によって確認が必要です。
例えば、住民税の非課税限度額が合計所得45万円以下となる自治体で、年金所得が40万円なら、給与以外の所得が5万円増えれば限度額に近づきます。しかし、アルバイトが給与なら給与所得控除を適用して「給与所得」を計算してから年金所得と合算します。
また、配偶者や扶養親族がいる場合、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親に該当する場合などには別の非課税基準が適用されることがあります。
住民税非課税世帯を維持することが重要な場合は、住所地の市区町村の住民税非課税基準を確認することが不可欠です。国税庁も、個人住民税の具体的な取扱いについては市区町村へ確認するよう案内しています。[参照:国税庁]
アルバイトが「給与」ではない場合は計算が変わる
注意したいのは、働いて受け取るお金が必ず給与所得になるわけではないことです。会社や店舗に雇用されて時給・日給で働く一般的なアルバイトなら通常は給与ですが、業務委託やシルバー人材センターなどの場合は雑所得等として扱われることがあります。
例えば給与収入なら給与所得控除を利用できますが、業務委託の報酬の場合は原則として「収入-必要経費」で所得を計算します。給与所得控除65万円をそのまま使えるわけではありません。
なお、シルバー人材センターの配分金など一定の収入には「家内労働者等の必要経費の特例」が適用できる場合があります。国税庁も、公的年金150万円とシルバー人材センターからの収入を組み合わせた具体的な計算例を公開しています。[参照:国税庁]
したがって、「アルバイトで年間○万円まで」という上限を計算する前に、その収入が給与所得なのか、雑所得・事業所得などなのかを確認する必要があります。
住民税非課税を外れると税金以外にも影響する場合がある
高齢者の場合、住民税非課税かどうかは住民税そのものだけの問題ではありません。医療・介護などの各種制度で「住民税非課税世帯」が負担区分の判定に使われることがあります。
例えば国民健康保険や後期高齢者医療制度の高額療養費、介護保険料、介護サービスの自己負担などでは、所得や世帯の課税状況によって負担区分が変わる場合があります。
さらに「本人の住民税が非課税」と「住民税非課税世帯」は同じ意味ではありません。住民税非課税世帯という場合、原則として同じ世帯にいる対象者全員の課税状況が問題になります。
アルバイトを始める場合は、住民税が数千円増えるかどうかだけでなく、現在利用している医療・介護・給付制度の所得区分に影響しないかも確認しておくと安心です。
まとめ:年金150万円なら「アルバイトはあと15万円まで」とは限らない
70代で公的年金収入が年間150万円の場合、公的年金等以外の所得が1,000万円以下であれば、公的年金等控除110万円を差し引いて年金所得が40万円になるという考え方は基本的に正しいものです。
しかし、そこから「非課税限度額まであと15万円だから、アルバイトは15万円まで」と考えるのは正確ではありません。雇用契約による一般的なアルバイトなら給与所得控除があるため、給与収入と給与所得は同じ金額ではないからです。
また、「公的年金等控除110万円+基礎控除43万円=153万円まで非課税」という単純計算も適切ではありません。公的年金等控除、基礎控除、住民税の非課税限度額はそれぞれ役割が異なります。
正しい順序は、①年金収入から公的年金等控除を引いて年金所得を計算する、②アルバイト収入から給与所得控除等を適用して給与所得を計算する、③それらを合算した所得を住所地の住民税非課税基準と比較する、という流れです。
特に70代では住民税非課税かどうかが医療・介護などの負担区分にも関係する場合があります。年金150万円に加えていくらまで働けるかを正確に知りたい場合は、年齢、世帯構成、扶養親族の有無、アルバイトの契約形態と年間給与見込みを伝え、住所地の市区町村の住民税担当窓口で試算してもらうのが確実です。


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