退職後に国民健康保険へ加入すると、前年の所得を基準に保険料(税)が計算されるため、現在は無職・療養中で収入がほとんどなくても大きな負担になることがあります。特に、パワハラや病気などを理由に退職したにもかかわらず、離職票では自己都合退職となっている場合、国民健康保険の軽減を受けられるのか分かりにくいところです。
国民健康保険には、特定受給資格者・特定理由離職者を対象とする全国的な軽減制度があります。一方、この制度の対象にならなくても、病気や失業によって所得が大幅に減少した人を対象とする自治体独自の減免制度が利用できる場合があります。したがって、離職理由コードだけを見て諦めるのではなく、制度を分けて確認することが重要です。
この記事では、パワハラや疾病による退職と離職理由、国民健康保険の非自発的失業者向け軽減、雇用保険の受給資格がない場合の考え方、市区町村で確認したい減免制度まで整理します。
国民健康保険には「非自発的失業者の軽減制度」がある
倒産・解雇などによる特定受給資格者や、一定の特定理由離職者には、国民健康保険料(税)を軽減する制度があります。対象になると、保険料を計算する際に前年の給与所得を30%として扱う仕組みになっています。
厚生労働省が示している対象の離職理由コードは、特定受給資格者の11・12・21・22・31・32、特定理由離職者の23・33・34です。詳しくは厚生労働省の資料を確認できます。[参照:厚生労働省「非自発的失業者の国民健康保険料(税)を軽減」]
たとえば前年に会社員として給与所得が300万円あった人が対象になった場合、単純に300万円をそのまま保険料計算に使うのではなく、給与所得を90万円として扱います。そのため、条件に該当すれば国保負担が大きく下がる可能性があります。
離職理由コード33・34なら誰でも国保が軽減されるわけではない
注意したいのは、離職理由コード33・34という言葉だけが独立して国民健康保険の減額条件になっているわけではないことです。厚生労働省のQ&Aでは、国保の非自発的失業者軽減について、雇用保険の基本手当の受給手続き後に交付される雇用保険受給資格者証等の離職理由が所定のコードになっている人を対象として案内しています。[参照:厚生労働省 雇用保険Q&A]
自治体の案内でも同様です。例えばさいたま市では、非自発的失業者の軽減について「雇用保険の受給資格のある方」で、雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の離職理由コードが対象番号であることを条件としています。[参照:さいたま市 国民健康保険税の軽減(非自発的失業者)]
つまり、雇用保険の加入期間が足りず基本手当の受給資格そのものがない場合、離職理由だけを33・34相当に変更すれば全国共通の国保軽減を当然に受けられる、とは考えない方が安全です。まず自分に雇用保険の受給資格があるのかを確認する必要があります。
病気やパワハラで退職しても「単なる自己都合」とは限らない
一方で、「自分で退職届を出したのだから、どのような事情があっても普通の自己都合退職になる」という理解も正確ではありません。ハローワークでは、退職に至った具体的な事情によって特定受給資格者または特定理由離職者に該当する場合があります。
ハローワークの案内では、正当な理由のある自己都合離職の一つとして、体力不足、心身の障害、疾病、負傷などによって離職した場合が挙げられています。[参照:ハローワーク 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲]
さらに厚生労働省は、上司や同僚などから故意の排斥、著しい冷遇、嫌がらせなどを繰り返し受けたことによって離職したケースについて、一定の要件を満たせば特定受給資格者に該当し得ると説明しています。会社が離職票に自己都合と記載しただけで、あらゆるケースの法的な離職理由が自動的に確定するわけではありません。ハローワークが本人の主張、証拠書類、事業主側の主張などを確認して判断します。[参照:厚生労働省 雇用保険Q&A]
パワハラ・疾病による退職では証拠を整理しておく
離職理由について確認する場合は、「パワハラだった」と口頭で説明するだけでなく、退職に至った経緯を示す資料を整理しておくことが重要です。会社側の記載と本人の主張が異なる場合には、客観的な資料が判断材料になります。
具体的には、医師の診断書・受診記録、会社のコンプライアンス窓口へ相談したメール、相談受付の記録、上司とのメールやチャット、会社への申告書、退職届の写し、パワハラと体調悪化の時系列を記録したメモなどが考えられます。資料によって必ず特定受給資格者等になるわけではありませんが、退職理由を説明する重要な材料になります。
例えば「3月に上司の言動について社内窓口へ申告→4月に医療機関を受診→医師から就労継続が困難との診断→改善されず5月に退職」というように、出来事を日付順にまとめると事情を説明しやすくなります。
雇用保険の受給資格がなくても市役所への相談には意味がある
ここが特に重要です。非自発的失業者向けの国保軽減制度を利用できないことと、国民健康保険について一切の減免を受けられないことは同じではありません。国保には自治体の条例等に基づく別の減免制度が設けられていることがあるためです。
例えば、さいたま市では「事業廃止や病気等で所得が激減した場合」の国民健康保険税の減免制度を設けています。前年と比較して世帯所得が著しく減少した場合について所得割を減額する制度で、退職証明書、診断書、給与明細などが必要書類の例として示されています。[参照:さいたま市 国民健康保険税の減免]
これは一例であり、減免の条件・所得基準・申請期限・必要書類は自治体によって異なります。そのため、「雇用保険の加入期間が足りないので離職者軽減は無理だった」と判断して終わらせず、住民票のある市区町村の国民健康保険担当窓口へ相談する価値があります。
市役所では何を相談すればよい?
窓口では難しい法律用語を使う必要はありません。「病気で退職して現在無職であり、前年より収入が大幅に減っています。非自発的失業者の軽減以外に利用できる国民健康保険料の減免制度はありますか」と伝えれば、該当する制度を確認してもらいやすくなります。
その際には、国民健康保険料の納付書、離職票、退職証明書、本人確認書類、前年の所得が分かる書類、現在の収入が分かる書類、診断書などを用意しておくとスムーズです。ただし必要書類は自治体によって異なるため、訪問前に国保担当課へ電話で確認するのがおすすめです。
また、減免制度には「申請日以降の納期分が対象」など申請時期に関する条件が設定されていることがあります。保険料を滞納してから相談するのではなく、支払いが難しいと分かった段階で早めに相談することが大切です。
国保の負担が厳しいときに確認する順番
退職後の国民健康保険料が高く、支払いが難しい場合には、一つの制度だけに絞らず順番に確認すると整理しやすくなります。
- 雇用保険の受給資格の有無を確認する
- 受給資格がある場合は離職理由についてハローワークへ確認する
- 非自発的失業者の国保軽減の対象になるか市区町村へ確認する
- 対象外なら所得減少・疾病・生活困窮などを理由とする自治体独自の減免制度を確認する
- 減免が難しくても納付相談や分割納付等が可能か確認する
特に「コード33・34にできなければ終わり」と考えないことがポイントです。全国共通の失業者軽減と自治体独自の所得減少等による減免は別制度なので、それぞれ確認する必要があります。
まとめ:受給資格がなくても国保の減免相談はしておくべき
国民健康保険の非自発的失業者向け軽減では、特定受給資格者・特定理由離職者であることに加え、雇用保険の受給資格との関係が重要になります。雇用保険加入期間が不足して受給資格がない場合、離職理由コード33・34だけを目的に手続きを進めても、この全国共通の軽減制度を利用できない可能性があります。
一方、疾病やパワハラを背景にした退職が常に「単なる自己都合」と扱われるわけでもありません。疾病によるやむを得ない退職や一定の嫌がらせ・著しい冷遇による退職については、雇用保険上、特定理由離職者や特定受給資格者に該当する余地があります。
そして最も見落としたくないのが、雇用保険の受給資格がなくても、病気や失業による所得減少を理由とした自治体独自の国保減免を受けられる可能性があることです。市区町村の国民健康保険窓口への相談は「最後の手段」ではなく、制度上ごく通常の確認先です。現在治療中で収入が大幅に減少している場合は、納期限を迎える前に、住んでいる自治体へ「非自発的失業者軽減以外の減免制度も含めて確認したい」と相談することが現実的な第一歩になります。


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