子どものために用意された70万円を、大学進学などで必要になるまで運用したいと考える家庭は少なくありません。普通預金に置いたままでは増えにくいため、全世界株式型の投資信託、いわゆる「オルカン」やビットコインなどへ投資したくなることもあるでしょう。
ただし、教育資金の運用で最初に考えたいのは「何が一番増えそうか」ではありません。その70万円をいつ使う予定なのか、そして必要な時期に値下がりしていても困らないお金なのかが最も重要です。
小学校高学年から大学進学までは長く見ても6~8年程度です。株式投資としては決して十分に長い期間とは限らないため、教育費の全額を値動きの大きな資産へ投入するのではなく、使う時期から逆算して現金と投資を組み合わせる考え方が現実的です。
教育資金は「使う時期が決まっているお金」という点が重要
老後資金と教育資金には大きな違いがあります。老後資金なら市場が大きく下落したときに取り崩し時期を調整できる場合がありますが、大学の入学金や授業料は「相場が回復するまで数年待つ」という対応が難しい支出です。
例えば70万円を株式型投資信託へ投資し、大学入学直前に相場が30%下落すれば、単純計算では評価額は約49万円になります。将来的に回復したとしても、入学金を払うタイミングに間に合わなければ教育資金としては困ります。
金融庁も、株式や投資信託を利用した資産形成では長期・積立・分散投資がリスクを抑えながら資産形成するための有効な選択肢の一つと説明しています。一方、過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。[参照:金融庁 長期・積立・分散投資の考え方]
オルカンなら教育資金70万円を全部入れても大丈夫?
一般に「オルカン」と呼ばれる商品は、世界各国の株式へ広く分散投資するタイプの投資信託を指して使われることが多い言葉です。一つの企業や一つの国だけへ集中投資するより地域・企業を分散できることは大きな特徴です。
ただし、世界中へ分散されていることと元本保証は別問題です。世界的な株安になれば全世界株式型ファンドも大きく値下がりする可能性があります。数年後に70万円全額を確実に必要とするのであれば、全額を株式へ投資することには相応のリスクがあります。
一方、大学費用は別途用意できており、この70万円について「値下がりしても教育計画には影響しない」「10年以上保有することもできる」という状況なら、全世界株式型などの低コストな分散型投資信託を長期資産形成の候補として検討する余地は大きくなります。
ビットコインを教育資金の中心にするのは慎重に
ビットコインには大幅な値上がりを期待する人がいる一方、価格変動も非常に大きいという特徴があります。金融庁も暗号資産について、法定通貨ではなく、価格が変動して急落により損失が生じる可能性があると注意喚起しています。[参照:金融庁 暗号資産の利用者のみなさまへ]
教育資金との相性を考えると、この価格変動の大きさが問題になります。70万円が大きく値上がりする可能性がある一方、子どもの進学直前に大幅下落する可能性も受け入れなければなりません。
「夢を見てビットコイン」という資金と、「数年後に子どもの進学で必要になる70万円」は分けて考えるのが基本です。暗号資産へ投資する場合でも、教育費とは別に失っても生活・進学計画へ影響しない余裕資金から検討するほうがリスク管理として分かりやすいでしょう。
70万円を「守るお金」と「増やすお金」に分ける方法もある
教育資金だからといって70万円すべてを現金にするか、反対にすべて投資するかの二択で考える必要はありません。使用時期と家計の余力に応じて、元本変動を避けたい部分と長期運用できる部分へ分ける方法があります。
例えば70万円のうち50万円は預金などで確保し、残り20万円だけを全世界株式型の投資信託などへ回す方法があります。この場合、株式市場が下落しても教育資金全体への影響をある程度限定できます。
逆に、教育費として別に十分な預貯金があり、この70万円を大学卒業後まで使わない可能性が高い家庭なら、投資へ回す割合を増やす考え方もできます。正解の比率は「70万円」という金額そのものではなく、家庭全体の金融資産と今後必要になる教育費によって変わります。
| 選択肢 | 値動き | 教育資金としての考え方 |
|---|---|---|
| 普通預金・定期預金 | 小さい | 近い将来に確実に使う資金向き |
| 全世界株式型投資信託 | 大きい | 長期間使わない余裕資金で検討 |
| ビットコイン等の暗号資産 | 非常に大きくなり得る | 教育資金の中心にするには慎重な判断が必要 |
一括投資か積立かも考えておく
投資すると決めた場合でも、70万円を一度に投入する必要はありません。例えば投資予定額を数回に分けて購入する方法もあります。
一括投資では、購入直後に値上がりすれば資金全体が早く市場に参加できる一方、購入直後に大幅下落する可能性もあります。積立・分割購入では購入時期を分散できるため、「たまたま高値の日に全額買った」というリスクを和らげることができます。ただし、分割すれば必ず一括投資より高い利益になるわけではありません。
金融庁も積立投資について、一括投資と比較して高値づかみなどのおそれの軽減が期待できると説明しています。教育資金のように損失への心理的抵抗が大きいお金なら、投資額そのものを抑えたうえで購入時期も分散する方法は検討しやすいでしょう。
NISAを使う場合も「非課税=安全」ではない
保護者自身の長期資産形成として投資する場合、条件を満たせばNISAを利用する選択肢があります。NISAは投資による利益を一定の制度内で非課税にする仕組みですが、投資商品の元本を保証する制度ではありません。
したがって「NISAでオルカンを買えば教育資金として安全」ということにはなりません。NISA口座で保有していても、株式市場が下落すれば投資信託の評価額は下がります。
また、親から渡された70万円については、誰から誰への資金移転だったのかによって税務上の扱いを確認したほうがよい場合があります。特に他の贈与も含めて金額が大きくなるケースでは、投資方法とは別に贈与税などの確認もしておくと安心です。
進学が近づいたら投資割合を減らす考え方もある
教育資金を投資する場合に重要なのが出口です。小学校高学年の現在はまだ時間があっても、高校3年生になれば大学の受験料、入学金、授業料、一人暮らしの初期費用などが現実的な支出として近づいてきます。
そのため、投資を始めたら大学入学直前まで株式100%で保有し続けなければならないわけではありません。必要になる時期が近づくにつれて一部を売却し、預金へ移して必要額を確保していく方法があります。
例えば「大学入学時に最低70万円必要」と決めたなら、高校進学後など一定の時点から徐々に現金化する方法が考えられます。相場が好調なときでも欲張りすぎず、必要なお金を予定どおり確保することが教育資金運用では重要です。
70万円の運用先を決める前に確認したい3つのこと
具体的な金融商品を選ぶ前に、「いつ使うのか」「最低いくら残っていなければ困るのか」「70万円以外に教育資金がいくらあるのか」を整理すると判断しやすくなります。
例えば「6年後に必ず70万円全額必要で、他に教育資金がほとんどない」のであれば、増やすことより元本を守る重要性が高くなります。一方、「大学費用は別に準備済みで、この70万円は15年以上使わなくてもよい」という状況なら、長期分散投資を選択しやすくなります。
つまり同じ70万円でも、家庭によって適切な運用方法はまったく違います。商品の人気ランキングから決めるより、最悪のタイミングで値下がりしたときに子どもの進路へ影響するかを基準に考えると判断しやすくなります。
まとめ:教育資金70万円は「増やす」より先に使う時期を考える
子どもが小学校高学年で、数年後の進学に使う可能性がある70万円なら、全額をオルカンなどの株式型投資信託やビットコインへ投資する前に、必要時期と許容できる損失額を決めることが重要です。
全世界株式型投資信託は国や企業を広く分散でき、長期資産形成では有力な選択肢になり得ますが、数年間で元本割れする可能性はあります。ビットコインはさらに大きな価格変動が起こり得るため、数年後に必要になる教育費の中心として保有する場合は特に慎重な判断が必要です。
教育費の他の準備状況を確認したうえで、絶対に必要な部分は預金などで確保し、長期間使わなくてもよい部分だけを分散投資へ回す方法が現実的です。「70万円を何に投資するか」ではなく、「70万円のうち、いくらなら値下がりしても子どもの進学に影響しないか」から考えることが、教育資金を運用する際の重要な出発点になります。


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