労災で4か月休業すると翌年の住民税は安くなる?休業補償給付の非課税と税金・社会保険への影響を解説

税金、年金

仕事中や通勤中の負傷・疾病によって長期間仕事を休み、労災保険から休業(補償)等給付を受けた場合、「この給付金は所得になるのか」「翌年の住民税は下がるのか」という疑問が生じます。

結論からいうと、労災保険の休業(補償)等給付は原則として非課税です。そのため、4か月休業してその間の給与が減り、代わりに労災の休業給付を受けていたのであれば、通常はその年の課税対象となる給与所得が少なくなり、結果として翌年度の住民税が前年より安くなる可能性があります。

ただし、「休業給付を受けたから住民税が直接割引される」という仕組みではありません。給与、賞与、会社から受け取った金銭、各種所得控除などを含めた1年間の所得状況によって最終的な税額が決まります。ここでは、4月から7月まで4か月程度労災で休業したケースを例に整理します。

労災の休業(補償)等給付は所得税・住民税の課税対象にならない

労災保険では、業務災害や通勤災害による傷病の療養のため働けず、賃金を受けられないなどの要件を満たした場合、休業(補償)等給付を受けられます。厚生労働省によると、休業4日目から、原則として休業1日につき給付基礎日額の60%に相当する休業(補償)等給付と、20%に相当する休業特別支給金が支給されます。[参照] 厚生労働省「休業(補償)等給付の計算方法」

重要なのは、これを通常の給料と同じように課税所得へ加算するわけではないことです。国税庁も、労働基準法による休業補償などの各種補償金を非課税として説明しています。労災保険給付についても、労働者保護の観点から非課税とされています。[参照] 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」

したがって、労災の休業給付として受け取った金額を、そのまま給与収入に足して所得税や住民税を計算するわけではありません。

翌年の住民税が安くなる可能性がある理由

個人住民税の所得割は、基本的に前年の所得を基に計算されます。そのため、ある年に長期間休業して課税対象となる給与が大きく減れば、その影響は翌年度の住民税に現れることになります。

例えば、通常なら1月から12月まで勤務して年収480万円だった人が、4月から7月まで休業し、その期間について会社から通常の給与を受けず、代わりに非課税となる労災の休業給付を受けたとします。この場合、休業によって実際の年間給与収入が前年より大幅に少なくなれば、給与所得も低くなるため、翌年度の住民税も低くなる可能性が高くなります。

ただし、単純に「4か月休んだから住民税が3分の1減る」という計算にはなりません。給与所得控除や基礎控除、社会保険料控除、扶養控除などを反映して課税所得を計算するためです。また、賞与や副業、不動産所得など別の課税所得があれば、それらも影響します。

「休業給付が非課税」と「年間所得が減る」は分けて考える

ここは特に誤解しやすいところです。労災の休業給付が非課税だからといって、必ず翌年度の住民税が大幅に安くなるとは限りません。

ポイントになるのは、休業したことによって課税対象となる給与が実際にどれだけ減ったかです。会社から休業期間中にも給与や課税対象となる手当などが支給されていれば、それらについては内容に応じて通常の給与所得等として扱われます。

反対に、4か月間ほぼ給与がなく、その生活費の多くを非課税の労災給付で補っていたのであれば、前年より課税対象の給与収入がかなり少なくなることがあります。この場合は翌年度の住民税が下がる方向に作用します。

具体例|4月から7月まで休業した場合はどうなる?

分かりやすくするため、毎月の給与が30万円で賞与などを考慮しない単純な例を考えてみます。通常どおり12か月勤務すれば年間給与は360万円です。

一方、4月から7月までの4か月間は会社から給与が支払われず、1~3月と8~12月の8か月だけ給与を受け取ったと仮定すると、単純計算した給与収入は240万円です。そして休業中に受け取った労災保険の休業給付は、原則としてこの240万円に給与として加算するものではありません。

つまり、生活のために実際に受け取った「給与+労災給付」の合計額と、税金を計算するときの「課税対象となる収入」は一致しないことがあります。これが翌年度の住民税が下がる可能性がある大きな理由です。

※上記は仕組みを説明するための単純化した例です。実際の給与所得・住民税額は賞与、休業中の給与、各種所得、所得控除、自治体の税率・制度などによって異なります。

所得税にも影響する?

休業によってその年の課税対象給与が減れば、所得税にも影響します。所得税はその年の所得に対して課税されるため、年間の給与所得が少なくなれば、一般的には所得税の負担も小さくなる方向に働きます。

会社員の場合、毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末調整で年間の税額を精算するのが一般的です。休業から復職して年末まで同じ会社に勤務している場合などは、通常は会社が年末調整を行います。

一方、休業をきっかけに退職した、年末調整を受けていない、副業所得がある、医療費控除など確定申告で適用したい控除がある、といった場合には確定申告が関係することがあります。労災給付そのものを給与として申告するのではなく、その他の所得や控除について申告が必要かを確認します。

社会保険料は住民税とは仕組みが違う

「収入が減るなら健康保険料や厚生年金保険料もすぐ安くなるのでは」と考えやすいのですが、会社員の社会保険料は所得税・住民税とは別のルールで決まります。

健康保険・厚生年金保険の保険料は原則として標準報酬月額を基に計算されます。そのため、労災で休業して給与の支給がなくなったからといって、住民税と同じ仕組みで自動的に翌月から保険料がゼロになるわけではありません。

特に注意したいのは、産前産後休業・育児休業には社会保険料の免除制度がありますが、業務災害による一般的な労災休業について同じような一律の社会保険料免除制度があるわけではないという点です。休業中の社会保険料を会社へどのように支払うかについては勤務先に確認しておくと安心です。

翌年の住民税以外に変わる可能性があるもの

年間の所得が下がると、住民税だけでなく、所得額を基準として判定される各種制度に影響することがあります。ただし、制度ごとに「給与収入」「所得」「課税所得」「住民税非課税判定」など参照する数字が異なるため、一律には判断できません。

例えば、自治体が所得に応じて設定している負担軽減制度、保育料・教育関係の制度、各種給付制度などでは前年所得や住民税額を判定基準としている場合があります。年間給与が大きく下がれば、翌年度以降の判定結果が変わるケースがあります。

一方で、社会保険料や会社独自の福利厚生、賞与、退職金、有給休暇などはそれぞれ別のルールです。「所得が減ったから全部の負担が下がる」と考えるのではなく、項目ごとに確認することが重要です。

住民税が安くなるのはいつから?

会社員の住民税は、一般的には前年1月から12月までの所得を基に計算された税額を、その翌年6月から翌々年5月まで給与から徴収する特別徴収が行われます。

例えば2026年4月から7月まで労災で休業し、2026年の課税対象給与が減った場合、その影響が基本的に現れるのは2027年度の住民税です。給与から特別徴収される会社員なら、通常は2027年6月以降の住民税に反映されます。

そのため、休業中や復職直後に支払っている住民税が高く感じられても不思議ではありません。その時点で払っている住民税は、原則として前年の所得を基に算定されたものだからです。

今年の住民税は休業してもすぐには安くならない

労災休業で現在の収入が大きく減っていると、「今月から住民税も下げてほしい」と感じることがあります。しかし、住民税は前年所得を基準とするため、今年の給与が減少したことが現在納付中の税額へ即座に反映される仕組みではありません。

このため、休業によって手元の収入が減った一方で、前年の通常勤務時の所得を基準とした住民税の支払いが続き、家計負担が一時的に重く感じられることがあります。

納付が難しくなった場合には、放置するのではなく、居住する市区町村の住民税担当窓口へ早めに相談することが大切です。自治体や事情によって利用できる制度・対応が異なるため、個別確認が必要です。

源泉徴収票を確認すると状況が分かりやすい

翌年度の住民税への影響を考えるうえで役立つのが、その年の源泉徴収票です。まず「支払金額」を前年の源泉徴収票と比較すると、労災休業によって課税対象となる年間給与がどの程度減ったのか把握しやすくなります。

さらに「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」などを見ることで、単なる手取り額ではなく、税計算上の所得がどのように変化したか確認できます。

例えば前年と扶養人数などの条件がほぼ同じで、年間給与だけが大きく減っていれば、翌年度の住民税が下がる可能性は高いと考えられます。ただし正確な金額を知りたい場合には、市区町村の税務担当窓口や税理士などに確認するのが確実です。

労災の休業給付は給与の約80%という点にも注意

厚生労働省によると、休業(補償)等給付は原則として給付基礎日額の60%、これに休業特別支給金20%が加わり、合計では給付基礎日額の80%相当となります。[参照] 厚生労働省「各労災保険給付の支給事由と内容」

ただし、「いつもの手取り給与のちょうど80%が振り込まれる」という意味ではありません。基準となるのは給付基礎日額であり、通常は事故発生日以前3か月間に支払われた賃金を基礎とした平均賃金を基に計算されます。

また業務災害の場合、休業初日から3日目までは待期期間となり、労災保険から休業補償給付が支給されるのは4日目からです。最初の3日については、事業主に労働基準法上の休業補償義務があります。[参照] 厚生労働省「1日でも会社を休んだら休業(補償)等給付をもらえるのですか」

まとめ|4か月の労災休業で給与が減れば翌年度の住民税は下がる可能性が高い

労災保険から支給される休業(補償)等給付は原則として非課税です。したがって、休業給付として受け取った金額を通常の給与と同じように所得へ加えて所得税・住民税を計算するわけではありません。

4月から7月までの4か月間休業し、その間の給与が支払われなかった、または大幅に減ったのであれば、年間の課税対象となる給与所得も前年より低くなることが考えられます。その結果、翌年度の住民税は前年より安くなる可能性があります。

ただし、税額は休業月数だけで決まるわけではありません。賞与、休業中に会社から受け取った給与・手当、副業などの他の所得、扶養状況、社会保険料や生命保険料などの所得控除によって結果は変わります。

また、所得税はその年の所得減少によって負担が軽くなる可能性がある一方、会社員の健康保険・厚生年金保険料は別の仕組みで計算されるため、労災休業だけを理由として自動的に免除されるとは限りません。年末に源泉徴収票を確認し、翌年度の住民税については市区町村、社会保険料については勤務先の人事・給与担当者へ確認すると、具体的な金額を把握しやすくなります。

※本記事は2026年8月時点の制度・公的情報を基にした一般的な解説です。個別の税額や社会保険の取扱いは、勤務状況、給与の支給内容、加入制度、自治体などによって異なります。

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