国民年金保険料は毎年度変わるため、「10年後には月2万5000円くらいになるのでは」と考える人もいるでしょう。一方、支払う保険料が上がれば、将来受け取る老齢基礎年金の満額も同じ割合で増えるのかという疑問も生じます。
2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は月額17,920円で、老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの場合で月額70,608円です。[参照:厚生労働省 令和8年4月の制度変更]
ただし、2036年ごろの保険料が2万5000円になるか、満額の年金が何円になるかを現在の時点で正確に決めることはできません。保険料と年金額は物価・賃金などに応じて改定される仕組みであり、将来の経済状況によって名目額が変わるからです。
2026年度の国民年金保険料は月17,920円
まず現在の数字を基準にすると分かりやすくなります。厚生労働省によると、2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。
国民年金保険料には、法律上定められた保険料額に賃金変動を反映する仕組みがあります。そのため「今後ずっと17,920円」という制度ではなく、毎年度の金額が変化します。
ここで重要なのは、保険料が上昇すること自体をそのまま「負担だけが増えている」と解釈しないことです。物価や賃金が上昇すれば、同じ1万円でも実質的な価値が変わるため、将来の金額は名目額と実質的な購買力を分けて考える必要があります。
10年後に月2万5000円になる可能性はある?
2026年度の17,920円から2036年度に25,000円になると仮定すると、10年間で約39.5%の上昇です。単純計算では、毎年平均約3.4%ずつ複利で増えると、おおむねこの水準になります。
例えば毎年2%ずつ増えると仮定すれば、17,920円は10年後に約21,850円になります。毎年3%なら約24,080円、毎年3.4%程度なら約25,000円です。
| 仮定する年間上昇率 | 17,920円から10年後の概算 |
|---|---|
| 1% | 約19,800円 |
| 2% | 約21,850円 |
| 3% | 約24,080円 |
| 約3.4% | 約25,000円 |
これは制度上の公式予測ではなく、単純な複利計算による例です。したがって「2036年には2万5000円になる」と断定することはできませんが、今後の賃金・物価動向によっては名目額が2万円を大きく超えること自体はあり得ます。
保険料が2万5000円なら年金満額も比例して増えるわけではない
ここで間違えやすいのが、「保険料が約40%上がれば、老齢基礎年金も約40%上がる」という考え方です。国民年金の保険料額と老齢基礎年金額は、単純な比例関係ではありません。
老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳までの40年間の納付状況などに基づいて計算され、満額そのものについても賃金や物価の変動、年金額改定の仕組みなどが関係します。
さらに公的年金には、現役世代の減少や平均余命の伸びなどを踏まえて給付水準を調整する「マクロ経済スライド」という仕組みがあります。そのため保険料の名目額だけを使って将来の受給額を計算することはできません。厚生労働省は少なくとも5年ごとに財政検証を行い、長期的な年金財政と給付水準を確認しています。[参照:厚生労働省 将来の公的年金の財政見通し]
10年後の国民年金満額はいくらになりそう?
2026年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの場合で月70,608円です。これを出発点として、仮に名目額が毎年一定割合で増えるという単純計算をすると将来額のイメージをつかめます。
例えば年1%で10年間増えるなら約78,000円、年2%なら約86,000円、年3%なら約94,900円です。ただし、これは「その金額になる」という年金制度上の予測ではありません。
| 仮の年間増加率 | 10年後の月額イメージ |
|---|---|
| 0% | 約70,600円 |
| 1% | 約78,000円 |
| 2% | 約86,100円 |
| 3% | 約94,900円 |
実際の年金額には毎年度の改定ルールやマクロ経済スライドなどが作用します。そのため2036年度の満額について、現在の制度から「月○万円」と一点予測するのは難しいのが実情です。
年金が月9万円になっても生活が今より豊かとは限らない
将来の年金を考える際に最も重要なのが、名目額と実質的な価値を区別することです。例えば現在7万円の年金が将来9万円になれば、数字だけを見ると約2万円増えています。
しかし、その間に物価も大幅に上昇していれば、9万円で買える商品やサービスの量は現在の7万円とそれほど変わらない可能性があります。逆に物価上昇が小さいのに年金額が増えれば、実質的な購買力は高くなります。
厚生労働省の2024年財政検証でも、将来の年金について名目金額だけではなく、物価上昇率で割り戻した実質的な年金額や現役世代の所得との比較などを使って検証しています。[参照:厚生労働省 給付水準の将来見通し]
2024年財政検証では複数の経済シナリオが示されている
公的年金の将来については、厚生労働省が2024年に財政検証を実施しています。将来の人口や経済には不確実性があるため、一つの未来だけを予測するのではなく、経済成長などについて複数のケースを設定しています。
例えば厚生労働省の資料では、2024年度のモデル年金の所得代替率は61.2%で、マクロ経済スライドによる調整後の最終的な所得代替率は、成長型経済移行・継続ケースで57.6%、過去30年投影ケースでは50.4%などとされています。[参照:厚生労働省 年金財政の仕組みと財政検証]
つまり将来の年金は「少子高齢化だから必ず○円になる」と単純には予測できません。人口、就業者数、賃金、物価、運用収益、経済成長など複数の要素が長期的な給付水準に影響します。
将来設計では「保険料2万5000円」より実質負担を見る
10年後の家計を考える場合、「国民年金保険料が月2万5000円になるか」という数字だけを気にするより、その時点の収入に対してどの程度の負担なのかを見るほうが実用的です。
例えば現在の月収25万円で保険料約1万8,000円と、将来の月収35万円で保険料2万5,000円では、名目上の保険料は大きく違いますが、収入に占める割合は近くなります。逆に賃金がほとんど増えず保険料だけが上昇すれば負担感は強くなります。
受給側も同様で、「将来は月8万円か9万円か」だけではなく、その時代の家賃、食費、光熱費、医療費などに対してどの程度の購買力を持つのかを見ることが大切です。
まとめ:10年後に2万5000円はあり得るが、現時点では確定していない
2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。ここから10年間、単純に年3.4%程度ずつ上昇すると約2万5000円になるため、2036年ごろに名目上2万5000円程度となることは計算上あり得ますが、現在決まっている金額でも公式予測でもありません。
老齢基礎年金の満額も同様で、2026年度は月70,608円ですが、10年後の金額を現在から正確に予測することはできません。仮に年2%程度の名目増加が10年間続けば単純計算では月8万6,000円程度になりますが、実際には年金額の改定ルールやマクロ経済スライドなどが影響します。
将来の年金を考えるときは「保険料が何円、満額が何円」という名目額だけではなく、賃金や物価との関係、つまり実質的な負担と購買力を見ることが重要です。今後も少なくとも5年ごとに行われる財政検証や、厚生労働省・日本年金機構が毎年度発表する正式な保険料・年金額を確認していくのが確実です。

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