手取り月収が約21万円の夫婦2人暮らしでは、家賃・食費・通信費・保険・医療費などを支払いながら、どの程度貯蓄や投資に回せていればよいのでしょうか。家計は単純に支出額の大小だけで判断するのではなく、固定費、変動費、臨時支出、貯蓄・投資を分けて考えることが重要です。
例えば、手取り21万1,000円、月間支出20万493円、月1万507円の黒字という夫婦2人の家計をモデルケースとして考えてみます。さらにNISA5,000円、iDeCo5,000円をすでに支出として計上している場合、実際には毎月1万円を資産形成に回したうえで現金も約1万円残せています。数字を整理すると、単に「余裕が1万円しかない家計」と見るのとは少し違った姿が見えてきます。
手取り21万1,000円・支出20万493円の家計を診断
まず確認したいのが収支です。手取り21万1,000円に対して支出が20万493円なら、計算上の黒字は1万507円です。手取りに対する現金黒字率は約5%となります。
ただし、この支出にはNISA5,000円とiDeCo5,000円が含まれています。これらは一般的な食費や家賃のように消費してなくなるお金ではなく、資産形成に振り向けているお金です。そのため、家計管理上は「生活費」と「貯蓄・投資」を分けて集計したほうが実態を把握しやすくなります。
この例では、NISAとiDeCoを除いた生活関連の支出は19万493円です。現金として残った1万507円に投資額1万円を加えると、月間では合計2万507円、手取りの約9.7%を「消費せずに残したお金」と見ることもできます。ただし、iDeCoは原則として一定年齢まで自由に引き出せないため、普通預金と同じ意味での貯蓄ではありません。
最初に見るべきなのは家賃と通信費などの固定費
家計改善では食費を細かく削る前に、まず固定費を確認するのが基本です。モデルケースでは家賃4万4,330円で、手取り21万1,000円に対して約21%です。一般論として見ても家計を強く圧迫する水準ではなく、むしろ抑えられている部類と考えられます。
通信費についても、ネット3,773円、スマートフォン2台で2,470円なら合計6,243円です。夫婦2人分としてかなりコンパクトです。毎月数千円しか使っていない項目をさらに数百円削るより、年間で発生する大きな支出を管理するほうが家計改善への効果は大きくなります。
月508円のサービスについても、それ自体が必要であり、解約すると日常的に利用しているサービスに支障が出るのであれば、金額だけを理由に解約する必要はありません。節約では「有料だから切る」のではなく、「支払額に対して利用価値があるか」で判断することが大切です。
食費約6万円は高い?夫婦2人なら中身を分けて考える
食費5万9,784円は手取り収入の約28%を占め、この家計では比較的大きな項目です。ただし、そのうち外食費が6,160円なら、自炊などに使った食費は約5万3,624円です。外食を極端に繰り返して家計が膨らんでいるわけではありません。
食費については単純に「6万円だから高い」と判断するより、米、肉、魚、野菜、飲料、菓子、日用品など何が含まれているかを確認します。特に近年は食品価格が変動しているため、過去の家計目安だけを基準に無理な削減目標を設定すると、生活の満足度を大きく落とす可能性があります。
例えば月5万9,784円から5,000円だけ減らすことを目標にするなら、1日当たりでは約160円です。買い物回数を減らす、食品ロスを確認する、飲料や菓子など単価の高い項目だけをチェックするといった方法なら、食事の質を大きく落とさず改善できる可能性があります。
医療費や仕事用品は通常月の生活費と分けて管理する
家計簿を1か月だけ見て判断するときに注意したいのが、毎月同じ金額が発生しない支出です。例えば仕事用の靴8,638円が毎月必要になるわけではないなら、その月だけの特別費として扱ったほうが適切です。
医療費1万4,010円についても、継続的に発生する費用なのか、一時的な受診が重なった月なのかで家計への影響が変わります。必要な受診を家計改善のために削るのではなく、継続的な支出なら最初から毎月の予算として確保しておく考え方が現実的です。
例えば年間で衣類・仕事用品に6万円、家電や家具に6万円、冠婚葬祭などに6万円かかると仮定すれば、合計18万円です。これを12か月で割り、毎月1万5,000円を「特別費積立」として確保しておけば、突然の出費でその月の家計が赤字になったように見える問題を減らせます。
夫婦のお小遣いは減らすべきなのか
モデルケースでは夫のお小遣い1万円、妻のお小遣い1万5,000円、夫婦共通の娯楽費6,900円で、合計3万1,900円です。ここは削減候補に見えやすい一方、家計管理では金額だけで判断しないほうがよい項目です。
お小遣いには、各自が家計に細かく説明せず自由に使えるお金という役割があります。夫婦で納得して決めた金額であり、家計全体が赤字になっていないなら、必ずしも削減する必要はありません。
むしろ重要なのは「何が小遣いで、何が家計費なのか」を決めることです。例えば個人的な飲食や趣味は小遣い、2人で出掛けた費用は共通娯楽費、といったルールを決めれば家計簿の数字も比較しやすくなります。
NISAとiDeCoを続けながら現金も貯める
NISA5,000円、iDeCo5,000円を毎月積み立てている場合、年間投資額は12万円です。さらに毎月1万507円の黒字をそのまま預金できれば、単純計算では年間約12万6,000円の現金を追加できます。
ただし、投資信託などは価格変動があり、必要なときに元本割れしている可能性があります。また、iDeCoには原則として一定年齢まで引き出せないという大きな特徴があります。そのため、生活防衛資金まで投資へ回してしまわないことが重要です。
特に夫婦の生活費を主に1人の収入でまかなっている家庭では、病気、休職、失業などで収入が止まった場合への備えを厚めに考える選択肢があります。すでにまとまった金融資産がある場合でも、そのうちいくらが普通預金などすぐ使える資金なのかを確認しておきましょう。
資産285万円なら「総額」より内訳を確認する
35歳で資産285万円という数字だけを見て、多い・少ないと断定することにはあまり意味がありません。世帯人数、収入、住宅、自動車、借入、今後の子どもの予定、働き方などによって必要資産額が大きく変わるからです。
重要なのは285万円の内訳です。例えば全額が現預金なら緊急時への対応力は高くなります。一方、大部分が投資商品やすぐ引き出せない資産なら、別途生活防衛資金を用意する必要性が高くなります。
仮に毎月の最低生活費を18万円とすると、6か月分なら108万円、12か月分なら216万円です。何か月分を現金で確保するかに絶対的な正解はありませんが、まず生活防衛資金の目標額を決め、その超過分について長期投資を検討すると家計設計が分かりやすくなります。
月1万円の黒字だけでは見えない「年間収支」を作る
この家計で最も注意したいのは、月間収支そのものより年間収支です。月1万507円の黒字なら年間では約12万6,000円ですが、自動車関連費、家電の故障、帰省、旅行、冠婚葬祭、税金など月々の家計簿に現れない支出が年間15万円発生すれば、実質的には赤字になります。
そこで、少なくとも3~6か月程度家計簿を継続し、「通常月の生活費」と「年間の特別費」を分けて確認すると精度が上がります。1か月だけ仕事用品や医療費が多かったのであれば翌月以降は黒字が拡大する可能性がありますし、反対にまだ計上されていない年払い費用があれば黒字は縮小します。
家計簿では毎月1円単位まで節約すること以上に、年間で収入より支出・特別費・資産形成の合計がどうなっているかを把握することが重要です。
まとめ|固定費は抑えられているため、次は年間収支と生活防衛資金を確認
手取り21万1,000円に対して支出20万493円、さらにその中でNISAとiDeCoへ合計1万円を回している家計なら、少なくとも提示された1か月については赤字家計ではありません。家賃や通信費も比較的抑えられており、固定費を大幅に削減しなければならない構造には見えません。
一方、現金として残る金額は月約1万円なので、毎月発生しない大きな出費まで含めた年間収支を確認する必要があります。食費は改善余地を探しやすい項目ですが、必要な医療費や生活の満足度まで無理に削るのではなく、食品ロスや買い方などから少額ずつ改善するほうが継続しやすいでしょう。
最終的には、①生活費、②特別費、③生活防衛資金、④NISAなどの投資、⑤iDeCoなど長期間引き出せない資産を分けて管理すると、家計の安全性がかなり見えやすくなります。1か月の黒字額だけに一喜一憂せず、半年から1年間の収支と資産残高が増えているかを定期的に確認することが、無理のない家計管理につながります。


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