退職したら社会保険を抜ける手続きはどうする?健康保険・厚生年金の資格喪失と国保への切り替えを解説

社会保険

会社やアルバイト先を退職すると、それまで勤務先で加入していた健康保険・厚生年金から外れることになります。「社会保険を抜けるために本人が複雑な手続きをするのでは」と思われがちですが、退職に伴う健康保険・厚生年金の資格喪失手続きは、基本的に勤務先が行います。

一方、退職後に国民健康保険へ加入する場合や、国民年金への切り替えが必要な場合は本人側の手続きがあります。「会社の社会保険を抜ける手続き」と「退職後の保険へ入り直す手続き」は分けて考えると分かりやすくなります。

また、退職すれば常に国民健康保険が一番得になるとは限りません。保険料だけでなく、任意継続、家族の扶養、健康保険独自の給付なども含めて確認してから切り替えることが大切です。

退職すると社会保険の資格は原則として翌日に喪失する

会社の健康保険・厚生年金に加入している人が退職した場合、原則として退職日の翌日が資格喪失日になります。例えば9月30日付で退職するなら、10月1日から勤務先の健康保険は利用できません。

退職に伴う「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」は、原則として事業主が日本年金機構へ提出します。つまり、従業員本人が年金事務所へ行って勤務先の社会保険を解約する、という手続きではありません。

退職後に会社側の手続きが遅れている場合は、勤務先の人事・本社などへ確認する方法があります。店舗勤務の場合でも、社会保険の実務を店舗責任者ではなく本社や給与担当部署、社会保険労務士などが処理しているケースがあります。

本人が退職時にすることは意外と少ない

退職する本人については、勤務先から交付されている資格確認書がある場合には返却が必要です。協会けんぽも、退職後は在職中の資格確認書を使用できないと案内しています。[協会けんぽ・退職後の資格確認書参照]

マイナ保険証を利用している場合でも、健康保険の資格そのものは退職によって切り替わります。「マイナンバーカードだから退職後も以前の会社の健康保険が続く」という仕組みではありません。

本人にとって重要なのは、会社の社会保険を自分で解約することより、退職後にどの健康保険へ加入するのかを決めて必要な手続きをすることです。

退職後の健康保険には主に3つの選択肢がある

協会けんぽでは、退職後の健康保険として「健康保険の任意継続」「国民健康保険」「家族の健康保険の被扶養者」という主な3つの選択肢を案内しています。[協会けんぽ・退職後の健康保険参照]

国民健康保険を選ぶ場合は、住所地の市区町村で加入手続きをします。勤務先の社会保険を抜けたことが分かる資格喪失証明書などを求められることがあるため、退職前後に必要書類を確認しておくとスムーズです。

家族が会社員などで、その健康保険の被扶養者になるための条件を満たす場合は、家族の勤務先を通して扶養の手続きをする選択肢もあります。収入などの認定条件があるため、誰でも自由に選べるわけではありません。

国民健康保険のほうが必ず安いわけではない

「退職したら国保のほうが得」と考える前に、実際の保険料を比較しておくことが重要です。国民健康保険料は市区町村や前年所得、世帯構成などによって異なります。

特に退職直後は現在の収入が少なくても、前年に給与所得が多かった場合には、その前年所得を基準として国民健康保険料が算定され、想像より高くなることがあります。一方、一定の離職理由に該当する人などには国保保険料の軽減制度が利用できる場合があります。

協会けんぽの任意継続では、在職中は会社と折半していた健康保険料を原則として本人が全額負担するため高く感じることがあります。ただし上限があり、扶養家族について追加の保険料が発生しないなど、条件によっては国保より有利になることもあります。[協会けんぽ・国保との違い参照]

任意継続を選ぶなら20日以内という期限に注意

協会けんぽの健康保険を任意継続する場合、資格喪失日の前日までに継続して2か月以上の被保険者期間があることなどが条件となり、原則として退職日の翌日から20日以内に申し込みます。[協会けんぽ・任意継続の加入条件参照]

そのため「とりあえず国保の金額を調べてから考えよう」と長期間放置すると、任意継続を選択できる期限を過ぎる可能性があります。退職が決まった段階で、市区町村に国保の概算額を問い合わせ、任意継続の保険料と比較しておく方法が現実的です。

例えば一人暮らしで扶養家族がいない人と、配偶者や子どもを健康保険の扶養に入れていた人では有利な制度が変わる可能性があります。単純に月額保険料だけでなく世帯全体で比較します。

健康保険と厚生年金は別々に考える必要がある

会社の社会保険には健康保険だけでなく厚生年金も含まれます。退職によって厚生年金の資格を失い、20歳以上60歳未満で次の会社の厚生年金へすぐ加入しない場合などには、国民年金第1号被保険者への切り替えが必要になることがあります。

健康保険について国保へ切り替えたからといって、年金まで自動的にすべて処理されるとは考えないほうが安全です。住所地の市区町村や年金事務所で、自分に必要な手続きを確認します。

また、障害年金を受給している場合でも、現在どの年金制度の被保険者になるかという問題と、すでに決定された障害年金を受給することは別の制度上の問題です。個別の受給状況によって扱いが異なるため、年金事務所へ確認するのが確実です。

社会保険には国保にはない給付もある

健康保険について「医療機関での自己負担割合が同じならメリットがない」と感じることがありますが、会社員の健康保険には国民健康保険とは異なる給付があります。代表的なものが傷病手当金です。

傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けず、給与を受けられないなど一定の条件を満たした場合に支給される制度です。また、条件を満たせば退職後も資格喪失後の継続給付を受けられる場合があります。[協会けんぽ・傷病手当金参照]

そのため、社会保険と国保は「病院で安くなるか」だけで比較せず、保険料と給付内容の両方を見る必要があります。現在療養中だったり、退職前から仕事を休んでいたりする場合には、特に傷病手当金の条件を確認してから退職することが重要です。

退職を伝えても会社が手続きをしてくれない場合はどうする?

退職そのものと社会保険の資格喪失手続きは別問題です。退職日が正式に確定すれば、その日を基準として会社が社会保険の資格喪失手続きを行います。

店舗責任者との意思疎通が難しい場合は、口頭だけに頼らず、会社の人事部・総務部・本社など正式な窓口へ退職の意思と希望退職日を記録が残る方法で伝えることも考えられます。雇用契約が期間の定めのない契約なのか、有期契約なのかによって退職に関する法律上の扱いも異なるため、就業規則と雇用契約書も確認しておきます。

社会保険の資格喪失処理について不明点があれば、年金事務所へ相談できます。退職後の健康保険については、加入していた健康保険の保険者や住所地の市区町村へ問い合わせると、それぞれ必要な手続きを確認できます。

資格喪失証明書がないときはどうする?

国民健康保険へ切り替える際、市区町村から健康保険の資格喪失を確認できる書類を求められることがあります。会社から書類がなかなか届かないと、国保の手続きを進めにくい場合があります。

協会けんぽは、国民健康保険加入時に資格喪失証明などが必要な場合、日本年金機構で証明を発行できることを案内しています。[協会けんぽ・退職後の手続き参照]

会社側の対応が遅れているからといって、そのまま何か月も無保険状態として放置するのは避けましょう。市区町村の国保窓口へ事情を説明し、現在手元にある退職日を確認できる書類などで何ができるか相談するのが安全です。

退職翌日から以前の健康保険は使わない

注意したいのが、退職後も以前の勤務先の資格情報で医療機関を受診してしまうケースです。退職日の翌日以降は、その会社の健康保険資格は原則としてありません。

協会けんぽでは、資格喪失後に以前の資格確認書などを使って受診した場合、協会けんぽが負担した医療費の返還を求められることがあると案内しています。[協会けんぽ・退職後の受診について]

退職直後に病院へ行く予定がある場合は、新しい健康保険への切り替え途中であることを医療機関へ伝え、どのように精算するか確認してください。

退職前に確認しておくとスムーズな項目

退職日が決まったら、まず会社へ「健康保険資格喪失証明書をいつ受け取れるか」を確認しておくと国保への切り替えがスムーズです。離職票や源泉徴収票など、退職後に必要になる書類についても確認しておきます。

次に、市区町村へ国民健康保険料の概算を問い合わせます。同時に協会けんぽなどへ任意継続した場合の保険料も確認すれば、どちらが経済的か比較できます。

さらに、退職後すぐ別の勤務先で社会保険へ加入する場合は国保への加入が不要になることもあります。「退職=必ず国保」ではなく、退職翌日以降の状況によって加入先を決めることがポイントです。

まとめ|退職時の社会保険資格喪失は基本的に会社が手続きする

会社を正式に退職した場合、健康保険・厚生年金の資格は原則として退職日の翌日に喪失します。資格喪失届を日本年金機構へ提出するのは基本的に事業主であり、本人が複雑な「社会保険の解約手続き」をする仕組みではありません。

一方、本人には退職後の健康保険を選ぶ手続きがあります。国民健康保険へ加入する、健康保険を任意継続する、条件を満たして家族の扶養に入るという選択肢があり、厚生年金から外れる場合には国民年金の手続きが必要になるケースもあります。

退職することと、退職後に国保を選ぶことは別の手続きです。会社とのやり取りが難しい場合でも、退職日と資格喪失の処理状況を確認し、必要に応じて本社・人事担当、年金事務所、市区町村の国保窓口へ直接相談できます。国保が必ず安いとも限らないため、退職前に任意継続との保険料比較や傷病手当金などの給付条件まで確認しておくと、切り替え後の思わぬ負担を避けやすくなります。

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