輸出企業はなぜ仕入れで払った消費税分を受け取れる?専門用語なしで小学生にもわかる仕組みを解説

税金

輸出企業と消費税の話では、難しい税金用語が続くことで「輸出企業だけが特別にお金をもらっている」「外国へ売ると国から補助金が出る」といった誤解が生じることがあります。しかし基本の考え方はそれほど複雑ではありません。日本の消費税は、基本的に日本国内で商品やサービスを使う人に負担してもらう税金です。外国で使われる商品を外国へ売るときには日本の消費税を上乗せしません。一方、その商品を作るため日本国内で材料などを買ったときには消費税分を含む代金を支払っています。そのままにすると、日本で消費されない商品なのに途中で日本の消費税分が残ってしまうため、最後にその差を精算する仕組みになっています。これが輸出企業と消費税を理解する最も大切なポイントです。この記事では難しい専門用語をできるだけ避け、100円の商品や110円の材料を例にして仕組みを説明します。

まず一言で説明すると「外国で食べるお菓子に日本の消費税を残さないため」

小学生向けに一言で説明するなら、「外国で使う物には日本の消費税をかけないので、作る途中で日本国内に支払った消費税分も最後に残らないようにするため」です。

例えば日本のお菓子会社が、お菓子をアメリカのお店へ輸出するとします。そのお菓子を最終的に食べるのはアメリカにいる人です。そのため、日本で消費される物にかかる日本の消費税を、その販売価格に上乗せしない仕組みになっています。

国税庁も、消費税は国内で消費される商品やサービスについて負担を求める税金であり、外国で消費される輸出品には消費税をかけないという考え方を示しています。[参照:国税庁 輸出取引の免税]

110円で材料を買って外国へ商品を売る例で考える

数字を使うとさらに分かりやすくなります。ある会社がお菓子を作る材料を日本の会社から買ったとします。材料本体の価格を100円、日本国内でその購入に含まれる消費税分を10円として、合計110円を支払ったとします。

その材料を使って完成したお菓子を日本国内で販売するなら、お菓子を買う人からも消費税を含む代金を受け取ります。そして会社は、売ったときに受け取った分と、材料などを買ったときに支払った分を比べて国との間で精算します。

ところが完成したお菓子を外国へ輸出する場合、日本の消費税は販売価格に上乗せしません。つまり、材料購入時には日本国内で10円分を支払っているのに、外国への販売時には日本の消費税分を受け取っていないという状態になります。

その10円をそのままにすると何が起こる?

先ほどの例で、材料を買ったときの10円分をそのまま会社負担にするとどうなるでしょうか。

最終的にお菓子を食べるのは外国の消費者なのに、お菓子を作る途中で日本の消費税分10円が商品価格の中に残ることになります。すると「日本国内で消費される物に負担してもらう」という消費税の基本的な考え方と合わなくなってしまいます。

そこで、輸出品を作るため国内で商品・材料・サービスなどを購入した際に支払った消費税分について、一定の条件のもとで税務上の精算を行います。輸出企業へのご褒美としてお金を渡しているのではなく、日本で消費されない商品から日本の消費税分を取り除くための精算と考えると分かりやすくなります。

日本で売る会社と外国へ売る会社を比べてみる

同じ100円の材料から商品を作り、200円で販売する2社を単純化して比較してみます。ここでは分かりやすくするため税率10%だけを使い、その他の経費は考えません。

項目 日本で販売する会社 外国へ輸出する会社
材料本体 100円 100円
材料購入時に含まれる消費税分 10円 10円
商品の本体価格 200円 200円
販売時の日本の消費税分 20円 0円

国内販売の会社は、商品を買った日本の消費者から20円分を受け取り、材料購入時には10円分を支払っています。その差である10円分を国との間で精算するイメージです。

輸出会社の場合、外国への販売時には日本の消費税分が0円なのに、材料購入時には10円分を支払っています。そこで、この10円分が会社の負担として残らないように国との間で精算します。

お店同士でバケツリレーをしていると考えると分かりやすい

消費税の仕組みは、お金の入ったバケツを会社から会社へそのまま渡しているわけではありませんが、イメージとして「日本国内で商品が進むたびに調整し、最後に国内の消費者が負担する」と考えると理解しやすくなります。

例えば材料会社、製造会社、小売店、日本の消費者という順番で商品が動けば、各会社で売買が行われながら最終的には日本で商品を買った消費者が負担します。途中の会社が何重にも同じ税金を負担し続ける仕組みにはなっていません。

ところが最後が「外国の消費者」なら、日本国内でそのバケツを受け取る最後の消費者が存在しません。そのため輸出する段階では日本の消費税を付けず、それ以前の国内取引で会社側に残っている分も精算するわけです。

なぜ外国のお客さんから日本の消費税を取らないの?

消費税は「どこの国で消費されるか」という考え方が重要な税金です。日本からアメリカへ自動車を輸出し、アメリカでその車が使われるなら、日本での最終消費ではありません。

もし日本が輸出時に日本の消費税まで付ければ、日本国外で消費される商品にも日本の税負担が残ることになります。さらに輸入先の国では、その国の税制に基づいて輸入時や販売時に税金がかかることがあります。

国税庁は、輸出する商品の販売について日本の消費税を免除する理由を、消費税が国内で消費される物に負担を求める「内国消費税」であるためと説明しています。[参照:国税庁 輸出取引の免税]

輸出企業だけ特別に得している制度なの?

ここでよく出る誤解が、「輸出企業は国から消費税分をもらえるのだから、それだけ利益が増えて得をしている」というものです。

先ほどの例では、輸出会社は材料を買うときに110円を実際に支払っています。そのうち10円分を税務上精算することによって、結果として材料本体100円を基準とした状態へ戻しています。最初から支払っていなかった10円をボーナスとして新しくもらっている、という説明ではありません。

したがって制度の基本的な目的は、「輸出企業に利益を与えること」ではなく、「日本国外で消費される商品に日本の消費税分を残さないこと」です。

もっと簡単な「100円玉」の例

さらに単純化してみましょう。太郎くんが外国で売るおもちゃを作るため、日本のお店で材料を買い、その中に10円分の日本の税金が含まれていたとします。

完成したおもちゃは外国の人に売ります。外国の人から日本の消費税10円を受け取ることはありません。

すると太郎くんだけが、日本では最終的に使われないおもちゃについて10円分を抱えたままになります。それでは「日本で使う人が負担する」というルールにならないため、その10円分について最後に国との間で精算する、というイメージです。

国内販売もしている企業なら差し引きした結果で決まる

現実の大企業は、輸出だけをしているとは限りません。日本国内でも商品を売り、同時に海外へも輸出している企業が多数あります。

例えば国内販売によって消費税分を100万円受け取り、材料・部品・設備・広告などの国内購入で80万円分を支払っているなら、その差をもとに税務上の精算をします。この場合には受け取った側の金額の方が大きいため、企業から国へ納める金額が生じます。

一方、輸出の割合が非常に大きく、国内での購入に含まれていた消費税分が、国内販売で受け取った消費税分より大きければ、反対方向の精算になることがあります。これが「輸出が多い企業ほど国からお金を受け取るケースが生じやすい」理由です。

輸出企業なら必ず大金を受け取れるわけではない

輸出をしている企業なら無条件で、売上の10%相当を国から受け取れるわけではありません。輸出売上そのものに対して10%のお金を支給する制度ではないからです。

金額に影響するのは、国内でどの程度の商品・材料・設備・サービスなどを購入し、その中にどれだけ消費税分が含まれていたか、国内販売もどれだけ行っているかなどです。

また税務上の処理には法律上の要件があり、輸出を証明する書類や、国内での購入に関する帳簿・請求書などを適切に保存する必要があります。単に「海外の人に売った」と主張すれば国からお金が支払われるという仕組みではありません。[参照:国税庁 輸出取引の免税]

材料代だけではなく会社の経費も関係することがある

輸出商品を作るために国内で支払うものは、材料や部品だけとは限りません。事務用品、広告宣伝、外注サービスなど、事業のためさまざまな支払いがあります。

国税庁も、輸出取引に対応する国内での購入には、商品などの棚卸資産だけでなく、事務用品の購入、広告宣伝費などの経費が含まれる場合があると説明しています。[参照:国税庁]

そのため、実際の税額計算は「100円で材料を買って200円で輸出した」という小学生向けの例より複雑です。ただし根本にある考え方は同じです。

仕入先が受け取った消費税分まで消えるわけではない

もう一つ誤解されやすいのが、「輸出企業にお金が戻るなら、材料会社が国へ納める分まで帳消しになるのでは」という疑問です。

材料会社と輸出会社は別々の事業者です。材料会社は自社の売上と自社の購入を基に自社の税額を計算し、輸出会社は輸出会社で自社の取引を基に計算します。

輸出会社側で税務上の精算が行われるからといって、材料会社の売上そのものがなかったことになるわけではありません。それぞれの取引段階で別々に計算されます。

「企業が消費税をポケットに入れている」という説明も正確ではない

消費税については、「企業は客から預かった税金をそのまま国へ渡しているだけ」という説明と、「消費税は預り金ではない」という説明が対立することがあります。

制度を理解する際には、こうした言葉の論争だけに入るより、国内販売に対応する金額と、事業者が国内で商品・サービスを購入したときに含まれていた金額を基に、事業者自身の納付額を法律に従って計算すると理解する方が実態に近くなります。

輸出についても同じで、外国の客から日本の消費税分を受け取っていないため、国内購入時に発生していた分との関係を税務上整理するという仕組みです。

輸出品に日本の消費税を残したら日本企業が不利になる

仮に輸出商品にも国内での税負担をそのまま残した場合を考えてみましょう。日本企業が海外へ100万円の商品を輸出するとき、日本国内の税負担が商品のコストとして上乗せされることになります。

海外市場では、他国企業の商品と競争します。輸出国の国内消費向け税金が商品価格に残ったままでは、輸出商品の価格がその分高くなりやすくなります。

そのため、外国で消費される物について輸出国側の消費にかかる税を外す考え方は、日本企業だけに特別な利益を与えるというより、「消費された場所で負担する」という考え方と整合させるための仕組みとして理解できます。

「輸出売上の10%を政府がプレゼントする制度」ではない

最もシンプルに否定しておきたい誤解が、「100億円輸出した会社には政府が10億円をプレゼントする」という理解です。

輸出販売時の日本の消費税が0だからといって、輸出売上高へ単純に10%を掛けた金額を受け取れるわけではありません。会社が国内で商品・原材料・設備・サービスなどを購入した際の状況や、国内での課税対象となる売上などを含めて計算します。

「輸出額に応じた補助金」ではなく、「日本国内で消費されない物について、国内取引の途中に含まれていた消費税分が企業の負担として残らないよう整理する制度」と理解すると、かなり誤解が少なくなります。

小学生に30秒で説明するならこうなる

難しい税金用語を全部抜いて説明すると、次のようになります。

「日本の消費税は、日本で買って使う人が負担する税金です。会社がおもちゃを作るため日本で材料を買うと、その代金には消費税分が入っています。でも、そのおもちゃを外国の人に売るときは、日本の消費税を付けません。そうすると会社だけが材料を買ったときの消費税分を持ったままになってしまいます。外国で使う物なのに日本の消費税が残るのはおかしいので、最後に国と会社でその分を精算します。」

これだけで基本的な理由は説明できます。税法上の細かな計算方法を理解するにはさらに知識が必要ですが、「なぜそういう仕組みが存在するのか」という疑問への答えはこの考え方で十分つかめます。

よくある誤解を整理

よくある理解 実際の考え方
輸出企業だけ特別に国から補助金をもらえる 輸出額に応じた補助金ではなく、国内で消費されない商品に日本の消費税分を残さないための税務上の精算
輸出額の10%をそのまま受け取れる 輸出額×10%を支給する制度ではない
外国の客が払った日本の消費税を企業が受け取る 通常の輸出販売では外国の客へ日本の消費税を上乗せしない
輸出企業なら必ずお金を受け取れる 国内販売や国内での購入状況などによって計算結果は変わる
何も証明しなくても輸出と言えばよい 輸出を証明する書類など一定の要件が必要

消費税の議論では、制度の一部分だけを切り取ると「企業への優遇」にも「企業が税金を預かっているだけ」にも見えてしまいます。まず商品の流れを最初から最後まで追って考えることが大切です。

まとめ:輸出企業が国内で払った消費税分を受け取れるのは「外国で使う物に日本の消費税を残さないため」

輸出企業と消費税の仕組みを最も簡単に説明すると、「日本で使われない商品には日本の消費税をかけない。そのため、輸出商品を作る途中で国内の材料などに含まれていた消費税分も、会社の負担として残らないよう最後に精算する」ということです。

例えば材料本体100円と消費税分10円で110円を支払い、その材料で作った商品を外国へ販売したとします。外国への販売には日本の消費税を上乗せしません。そのままでは国内で支払った10円分だけが会社側に残るため、所定のルールに従って国との間で精算します。

国税庁も、輸出取引について日本の消費税をかけない理由を、消費税が国内で消費される商品やサービスについて負担を求める税金だからと説明しています。[参照:国税庁 輸出取引の免税]

したがって、「輸出したご褒美として国が税金をプレゼントする制度」ではありません。また「輸出額の10%をそのまま受け取る制度」でもありません。国内販売で受け取る消費税分、国内で材料・設備・サービスなどを購入した際に含まれる消費税分などを合わせて計算した結果、輸出割合が大きい企業では国から企業へお金が動くケースが生じる、という仕組みです。

小学生向けなら、「日本で食べないお菓子には日本の消費税を残さない。そのお菓子を作る材料に日本の消費税分が入っていたら、最後にその分をきれいにする」と覚えると、制度の目的を理解しやすいでしょう。

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