産休に入ると、健康保険料や厚生年金保険料などの負担がどうなるのかは、給与明細だけを見ても分かりにくいものです。特に、産休開始後に振り込まれた給与から社会保険料が控除されていると、「産休中は社会保険料が免除されるはずなのに、なぜ引かれているの?」と疑問に感じることがあります。
この疑問を整理するには、給与の「何月分か」だけではなく、産前産後休業を開始した日、社会保険料の対象月、会社が当月徴収・翌月徴収のどちらを採用しているか、給与が実際に支払われた期間を分けて考えることが重要です。また、健康保険・厚生年金保険と雇用保険では保険料の仕組みそのものが異なります。
産休中は健康保険料・厚生年金保険料が免除される
会社の健康保険・厚生年金保険に加入している人が産前産後休業を取得した場合、事業主が所定の申し出を行うことで、産前産後休業期間に対応する健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。免除されるのは本人負担分だけではなく、事業主負担分も含まれます。
日本年金機構によると、産前産後休業とは原則として、出産の日(出産が予定日より後になった場合は出産予定日)以前42日、多胎妊娠の場合は98日から、出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間をいいます。
重要なのは、単に「妊娠している期間」や「会社を休んでいる期間」なら自動的にすべて免除されるという意味ではないことです。会社側から産前産後休業取得者の申し出が行われ、その対象期間について免除が適用されます。制度については日本年金機構の案内[参照]で確認できます。
社会保険料が免除されるのは「産休開始日の属する月」から
産前産後休業期間の健康保険料・厚生年金保険料については、原則として産前産後休業を開始した日の属する月から、産前産後休業が終了する日の翌日が属する月の前月までが免除期間となります。
例えば、8月1日から正式に産前産後休業を開始したケースでは、条件を満たして会社が手続きを行えば、原則として8月分から健康保険料・厚生年金保険料の免除対象になります。
ここで注意したいのが、「8月に振り込まれた給与から社会保険料が引かれている=8月分の保険料を取られた」とは限らないことです。給与から社会保険料をいつ控除するかは会社の給与計算方法によって見え方が変わります。
産休後の給与から社会保険料が引かれていても間違いとは限らない
社会保険料は月単位で発生しますが、給与から控除するタイミングにはずれが生じることがあります。代表的なのが「翌月徴収」です。例えば7月分の社会保険料を8月に支給する給与から控除する会社があります。
この場合、8月1日から産休に入って8月分の社会保険料が免除になっていても、8月に振り込まれる給与から7月分の健康保険料・厚生年金保険料が控除されることがあります。そのため、給与明細に社会保険料の控除があるという事実だけでは、免除が適用されていないとは判断できません。
例えば「毎月20日締め・25日払い」の会社でも、賃金計算期間と社会保険料の徴収対象月が完全に一致しているとは限りません。給与明細に「健康保険」「厚生年金」と記載されている場合は、それが何月分の保険料なのかを給与担当者に確認すると整理しやすくなります。
7月31日まで勤務して8月1日から産休の場合を具体例で整理
出産予定日が9月12日で、7月31日まで勤務し、8月1日から産前産後休業に入ったケースを考えてみます。8月1日が正式な産休開始日であれば、健康保険料と厚生年金保険料については、原則として8月分から免除対象になると考えられます。
一方で、8月25日に振り込まれた給与が7月21日から7月31日までの勤務に対する日割り給与だった場合、その給与自体は産休開始前に働いた分の賃金です。さらに会社が社会保険料を翌月徴収していれば、その給与から控除されている社会保険料が7月分ということもあります。
したがって「8月に受け取った給与なのだから社会保険料はゼロになるはず」と単純には判断できません。確認するときは、給与の支給日よりも控除された社会保険料が何月分なのかを見ることがポイントです。
雇用保険料は健康保険・厚生年金とは仕組みが違う
もう一つ間違えやすいのが雇用保険料です。産休中の健康保険料・厚生年金保険料が免除される制度と、給与に対して計算される雇用保険料は別の仕組みです。
雇用保険料の労働者負担分は、基本的に雇用保険料の対象となる賃金が支払われれば、その賃金額に応じて計算されます。そのため、産休に入った後の給与支給であっても、産休前に働いた期間に対応する賃金などが支払われていれば、雇用保険料が控除されることがあります。
逆に、休業していて会社から対象となる賃金がまったく支給されない期間については、給与から差し引く雇用保険料も通常は発生しません。年度ごとの雇用保険料率については厚生労働省の雇用保険料率の案内[参照]で確認できます。
社会保険料の免除には会社側の手続きが必要
産前産後休業中の健康保険料・厚生年金保険料の免除は、従業員本人が毎月申請するものではなく、事業主が日本年金機構へ「産前産後休業取得者申出書」を提出することで行われます。
そのため、給与明細を確認して本来免除されると思われる月の健康保険料・厚生年金保険料が控除され続けている場合は、会社の人事・総務・給与担当者へ確認するのが確実です。確認するときは「産休だからなぜ引かれているのか」だけでなく、「この給与明細で控除されている健康保険料と厚生年金保険料は何月分ですか」「産前産後休業取得者申出書は提出済みですか」と具体的に聞くと話が早く進みます。
なお、免除期間は健康保険・厚生年金保険料を実際に負担しなくても、厚生年金については保険料を納めた期間として将来の年金額に反映されます。単なる未納扱いになる制度ではありません。
給与明細で確認しておきたいポイント
産休開始前後の給与明細を確認するときは、支給額だけを見るのではなく、給与計算の対象期間と各控除項目を確認することが大切です。
- 正式な産前産後休業開始日はいつか
- 健康保険料は何月分が控除されているか
- 厚生年金保険料は何月分が控除されているか
- 会社が当月徴収と翌月徴収のどちらを採用しているか
- 雇用保険料の対象となった賃金はいくらか
- 産前産後休業取得者申出書が会社から提出されているか
特に「○月分給与」という会社独自の呼び方だけで判断すると混乱しやすいため、給与の対象期間・社会保険料の対象月・実際の支給日を別々に確認することが重要です。
控除内容に疑問がある場合は、まず会社の給与担当部署へ問い合わせ、それでも解決しない場合は加入している健康保険の保険者や年金事務所などに確認するとよいでしょう。
まとめ:産休開始後に社会保険料が引かれていたら「何月分か」を確認しよう
産前産後休業を取得すると、事業主の申し出によって対象期間の健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。原則として産休開始日の属する月から免除対象となるため、8月1日に産休を開始した場合は8月分から免除対象となるのが基本です。
ただし、8月に支給された給与から社会保険料が控除されていても、それが7月分の保険料であれば矛盾しません。また、産休前に働いた期間の賃金が後から支給された場合には、雇用保険料が控除されることもあります。
産休中の給与明細で疑問が生じたときは、「いつ振り込まれた給与か」だけではなく、「社会保険料が何月分なのか」「どの期間の賃金なのか」を確認することが解決への近道です。制度や手続きは変更される場合があるため、最終的には日本年金機構[参照]や勤務先の担当部署で最新情報を確認してください。


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