定年退職後、65歳から老齢年金を受け取りながらアルバイトを続ける場合、「配偶者の健康保険の扶養にいつまで入れるのか」が気になるところです。特に年金と給与の両方があると、どちらの収入を基準にするのか分かりにくくなります。
協会けんぽなど健康保険の被扶養者については、60歳以上の人は原則として年間収入180万円未満が一つの基準で、老齢年金も収入に含まれます。したがって、65歳の配偶者なら基本的には「年金+アルバイトなどの収入」を合わせて確認します。
ただし、180万円だけを見ればよいとは限りません。アルバイト先で本人が健康保険・厚生年金の加入条件を満たした場合は、収入が180万円未満でも配偶者の扶養ではなく自分の勤務先の社会保険へ加入することがあります。2026年現在の制度をもとに整理します。
65歳の健康保険の扶養は「年収180万円未満」が基本
日本年金機構によると、健康保険の被扶養者となるための年間収入基準は通常130万円未満ですが、60歳以上の場合は年間収入180万円未満となります。[参照:日本年金機構]
夫婦が同居している場合は、原則として被扶養者となる人の年間収入が被保険者、つまり扶養する側の年間収入の2分の1未満であることも基準になります。ただし、半分以上でも扶養する側の収入を上回らず、生計維持の中心が扶養する側だと認められる場合には被扶養者となることがあります。
重要なのは、ここでいう180万円が税法上の所得や手取り額ではないことです。健康保険独自の「収入」で判定されるため、所得税の配偶者控除などとは分けて考える必要があります。
年金とアルバイト代は合算して判定する
健康保険の扶養判定では給与だけでなく、公的年金も収入に含まれます。日本年金機構は、被扶養者の収入には給与のほか、公的年金、雇用保険の失業等給付、健康保険の傷病手当金なども含まれると案内しています。[参照:日本年金機構]
例えば65歳で年間の年金見込み額が140万円、アルバイトの年間給与見込みが30万円なら、単純な合計は170万円です。ほかの要件も満たしていれば180万円未満の範囲に収まります。
一方、年金が150万円、給与が40万円なら合計190万円となり、原則的な180万円未満の基準を超えます。「年金は別枠で、アルバイトだけ180万円未満ならよい」という仕組みではありません。
| 年間の年金見込み | 給与見込み | 合計 | 180万円基準 |
|---|---|---|---|
| 120万円 | 40万円 | 160万円 | 基準内 |
| 140万円 | 30万円 | 170万円 | 基準内 |
| 150万円 | 30万円 | 180万円 | 「未満」ではない |
| 150万円 | 50万円 | 200万円 | 基準超過 |
実際の認定では夫婦の生計状況なども確認されるため、表はあくまで収入基準を理解するための例です。
「去年180万円未満だったか」ではなく今後の見込み収入で考える
健康保険の年間収入は、単純に1月から12月までの確定した収入を後から見るものではありません。日本年金機構は、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額で判断すると説明しています。[参照:日本年金機構]
そのため、アルバイト収入が月によって変わる場合は「12月になって年間180万円を超えたら初めて扶養を外れる」とは限りません。勤務時間の増加などによって、今後1年間の年金と給与を合わせた収入が継続的に180万円以上になると見込まれた時点で、扶養資格を確認する必要があります。
なお、2026年4月からは労働契約で定められた賃金を基準に被扶養者認定を行う新たな取扱いがありますが、これは「ほかの収入が見込まれない」ことなどが条件です。年金収入がある65歳の人の場合、この給与収入だけを使う特例がそのまま利用できるとは限りません。[参照:日本年金機構]
180万円未満でもアルバイト先の社会保険に入る場合がある
もう一つ重要なのが、勤務先で本人が健康保険・厚生年金の加入対象になるケースです。この場合、配偶者の扶養の180万円基準とは別に考えなければなりません。
例えば通常の労働者の所定労働時間・所定労働日数の4分の3以上働く場合など、社会保険の加入要件を満たせば本人が勤務先の健康保険へ加入します。また短時間労働者についても、2026年8月現在、一定規模以上の企業で週20時間以上、所定内賃金月額8万8,000円以上などの要件を満たすと社会保険の加入対象になります。[参照:厚生労働省]
なお、いわゆる「106万円の壁」の賃金要件は2026年10月に撤廃予定と厚生労働省が案内しています。今後さらに企業規模要件も段階的に縮小されるため、働き方によっては扶養の180万円に届く前に勤務先の社会保険へ加入する可能性があります。
つまり「年金+給与が180万円未満だから必ず妻の扶養に残れる」とは限らず、勤務先で本人の社会保険加入義務が発生していないかも確認する必要があります。
収入が増えたら協会けんぽから連絡が来るまで待ってよい?
協会けんぽでは被扶養者資格が現在も適正かどうかを確認するため、毎年度、被扶養者資格の再確認を実施しています。過去の再確認では、一定額を超える課税収入が確認された人などが対象となり、被扶養者状況リストが勤務先の事業主へ送付されています。[参照:協会けんぽ]
しかし、「基準を超えても協会けんぽから連絡が来るまでは扶養のままでよい」という意味ではありません。協会けんぽは、就職や一定の収入超過などにより被扶養者の条件を満たさなくなった場合、その都度、被扶養者の解除手続きが必要と案内しています。[参照:協会けんぽ]
したがって、年金額が確定した、勤務時間が増えた、給与水準が上がったなどの変化があれば、連絡を待つのではなく、扶養している配偶者の勤務先の社会保険担当者へ相談するのが確実です。
実際に確認するときは年金額と雇用契約を用意する
扶養を継続できるか確認するときは、まず65歳以降の年金の年間見込み額を確認します。年金振込額の手取りだけではなく、年金額が分かる年金額改定通知書などを確認するとよいでしょう。
次にアルバイトについて、時給だけではなく所定労働時間、所定労働日数、月額賃金、賞与・手当などが分かる雇用契約書や労働条件通知書を確認します。月ごとの勤務が不規則なら、その事情も勤務先へ伝えます。
そして「年金+今後見込まれる給与等」が180万円未満か、妻の収入との生計維持要件を満たすか、さらにアルバイト先自身の社会保険加入対象にならないかという順番で確認すると整理しやすくなります。
最終的な被扶養者認定は保険者が行うため、境界に近い場合には自己計算だけで判断せず、妻の勤務先または加入している協会けんぽ支部へ確認することが重要です。
まとめ:65歳の扶養は年金と給与を合わせて原則180万円未満が目安
65歳で年金を受け取りながらアルバイトをする配偶者が健康保険の扶養に入る場合、基本となる収入基準は年間180万円未満です。老齢年金も収入に含まれるため、年金とアルバイト給与などを合算して考えます。
例えば年金140万円と給与30万円なら170万円ですが、年金150万円と給与40万円なら190万円です。また180万円ちょうども「180万円未満」ではない点に注意が必要です。
さらに、同居する夫婦では原則として被扶養者の収入が扶養する側の収入の2分の1未満であることなど、生計維持の要件もあります。加えて、アルバイト先で本人が社会保険の加入要件を満たせば、180万円未満でも勤務先の健康保険へ加入する場合があります。
協会けんぽからの連絡を待って判断するのではなく、年金開始や勤務条件の変更によって扶養要件を外れる見込みが生じた時点で、妻の勤務先の社会保険担当者へ確認することが大切です。
年金額、雇用契約書・労働条件通知書、妻の収入状況をそろえて確認すれば、「180万円の壁」と勤務先での社会保険加入の両方を含めて判断しやすくなります。


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