自動車事故で任意保険を使うと気になるのが、翌年以降の保険料に影響する「ノンフリート等級」です。相手の車の修理費だけでなく、修理期間中の代車・レンタカー費用なども保険から支払われると、「支払額が大きいほど等級も大きく下がるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、一般的な自動車保険の等級ダウンは、保険会社が支払った金額の大きさではなく、基本的に保険を使用した事故の種類・内容と事故件数によって決まります。そのため、数万円の保険金でも3等級下がるケースがある一方、高額な保険金が支払われても、それだけを理由に4等級、5等級と下がる仕組みではありません。
ここでは、自動車保険の等級が下がる基準、3等級ダウン事故・1等級ダウン事故・ノーカウント事故の違い、修理費や代車費用との関係を整理します。
自動車保険の等級ダウンは「支払われた金額」ではなく事故の種類で決まる
個人が一般的な任意自動車保険に加入すると、「ノンフリート等級別割引・割増制度」が適用されます。等級は原則として1~20等級に区分され、数字が大きいほど保険料の割引率が高くなる仕組みです。
1年契約で事故がなく保険を使用しなければ、通常は翌年度に1等級上がります。一方、保険を使用する事故が発生すると、その事故の内容によって3等級ダウン、1等級ダウン、またはノーカウントとして扱われます。
重要なのは、「保険会社が100万円支払ったから3等級、300万円支払ったから5等級」という計算ではないことです。例えば同じ3等級ダウン事故であれば、保険会社から支払われる保険金が比較的少額であっても高額であっても、基本的な等級ダウン数は同じです。日本損害保険協会でもノンフリート等級制度について案内されています。[参照]
3等級ダウン事故とは?相手の車を壊した事故などが代表例
一般的な交通事故で対人賠償保険・対物賠償保険・車両保険などを使用すると、3等級ダウン事故になるケースがあります。例えば、自分の不注意で別の車に衝突し、相手の車の修理代を対物賠償保険から支払ったケースなどです。
仮に現在15等級で、3等級ダウン事故を1件起こして保険を使用した場合、基本的には翌年度の等級は12等級になります。さらに3等級下がるだけでなく、「事故有係数適用期間」が設定されるため、同じ12等級でも無事故の場合より低い割引率が適用される期間があります。
保険会社の案内でも、事故1件につき次年度のノンフリート等級が原則として3つまたは1つ下がり、対人賠償・対物賠償・車両保険などの請求が保険料に影響する主な例として示されています。[参照]
修理費とレンタカー代が高額になっても等級ダウン数は増える?
相手の車を損傷させた事故では、修理代だけでなく、必要性や相当性などの条件を満たせば修理期間中の代車費用などが損害として問題になることがあります。その結果、事故1件について保険会社が支払う総額が大きくなるケースもあります。
例えば、相手車両の修理費が40万円、認められた代車費用が10万円だった場合と、修理費が100万円、代車費用が20万円だった場合を考えてみます。どちらも同じ1件の対物事故として3等級ダウン事故に該当するのであれば、支払額が50万円か120万円かという違いだけで等級ダウン数が増えるわけではありません。
逆に注意したいのは、保険金が少額なら等級への影響も小さいとは限らない点です。例えば数万円程度の損害でも、3等級ダウン事故として保険を使用すれば、原則として3等級ダウンとなります。そのため、小規模な損害では保険を使った場合の保険料増加額と、自費で支払う場合の金額を比較して判断することがあります。
1等級ダウン事故になるケースもある
自動車保険を使用した事故がすべて3等級ダウンになるわけではありません。事故原因や補償内容によっては「1等級ダウン事故」に分類されます。
日本損害保険協会では、盗難や台風、洪水、高潮などによって車両保険の保険金を受け取った場合などについて、1事故につき1等級下がるケースとして説明しています。[参照]
例えば現在15等級の人が1等級ダウン事故で保険を使用した場合、翌年度は原則14等級となります。また、1等級ダウン事故では通常、事故有係数適用期間が1年加算されます。実際の事故区分は契約している保険商品の約款・重要事項説明書などで確認する必要があります。
保険を使っても等級が下がらない「ノーカウント事故」もある
さらに、自動車保険には保険金を受け取っても等級ダウン事故として数えられない「ノーカウント事故」があります。
ノーカウント事故だけであれば、その事故によって更新後のノンフリート等級が下がることはなく、事故有係数適用期間にも加算されません。保険会社も、ノーカウント事故について「保険金を受け取っても更新後のノンフリート等級に影響しない事故」と説明しています。[参照]
どの補償がノーカウントになるかは契約内容によって確認が必要です。「保険金を受け取った=必ず等級が下がる」と考えるのではなく、保険会社へ事故区分を確認することが大切です。
「事故有係数適用期間」も保険料に大きく影響する
等級ダウンを理解するときは、等級の数字だけではなく「事故有係数適用期間」も確認しておきましょう。事故有係数適用期間とは、事故によって通常より低い割引率が適用される期間を示すものです。
一般的に3等級ダウン事故1件では3年間、1等級ダウン事故1件では1年間が事故有係数適用期間に加算されます。そのため、例えば20等級から3等級ダウンして17等級になった場合、単純に「17等級になった」だけではなく、一定期間は事故有の17等級として保険料が計算されることになります。
この仕組みがあるため、事故後の保険料負担は1年間だけとは限りません。保険会社では事故有係数適用期間について、3等級ダウン事故では3年間、1等級ダウン事故では1年間と案内しています。[参照]
少額事故では「保険を使うか」の比較も重要
等級ダウンが保険金額に比例しないことから、特に損害額が小さい事故では保険を使うかどうかが重要になります。例えば修理費が5万円なのに、保険を使用した結果、数年間の保険料増加額がそれを上回るのであれば、自費で対応した方が金銭的には有利になる可能性があります。
ただし、対人事故や相手方との示談交渉を伴う事故などでは、単純に修理金額だけで判断できません。事故直後には軽微に見えても後から損害が判明することもあるため、自己判断で保険会社への事故連絡を省略するのではなく、まず事故を報告したうえで相談するのが安全です。
保険会社に「この事故で保険を使用すると何等級になりますか」「翌年以降の保険料はいくらくらい増えますか」と確認し、保険を使った場合と使わなかった場合の総負担額を比較すると判断しやすくなります。
まとめ:等級ダウンの基準は金額より「事故の区分」
自動車保険のノンフリート等級は、基本的に事故で支払われた修理費や代車費用の金額に比例して下がる仕組みではありません。重要なのは、その事故が3等級ダウン事故、1等級ダウン事故、ノーカウント事故のどれに分類されるかです。
そのため、相手車両の修理費に加えて代車・レンタカー費用などが発生し、保険会社の支払額が大きくなったとしても、それだけを理由に等級がさらに何段階も下がるわけではありません。一方、少額の事故でも3等級ダウン事故として保険を使用すれば、原則として3等級下がる点には注意が必要です。
実際の事故区分や翌年度の等級、事故有係数適用期間は、加入している保険会社・商品・補償内容によって確認する必要があります。事故後に保険を使うか迷った場合は、保険会社や代理店に「保険を使用した場合の次年度等級と保険料」を具体的に試算してもらってから判断するとよいでしょう。


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