国民健康保険税(国保税)の納付書を確認したところ、同じ期・同じ納期限なのに金額の違う納付書が2通あり、しかも一方は父などの世帯主名義、もう一方は自分名義になっていることがあります。この場合、「高いほうだけ払えばよい」「2枚とも払うべき」と金額だけで判断するのは危険です。
国民健康保険は世帯単位で取り扱われる仕組みがあり、原則として世帯主が納税義務者になります。一方、年度途中の国保加入・脱退や世帯主変更、税額変更などがあると、新旧の納付書が手元に残ることもあります。
同じ期・同じ納期限の納付書が2種類ある場合は、どちらかを自己判断で捨てたり、金額の高いほうだけ支払ったりせず、市区町村の国民健康保険担当・国保税担当へ通知書番号などを伝えて、有効な納付書を確認するのが確実です。
国民健康保険税は「加入者本人宛て」とは限らない
国民健康保険税を理解するときに重要なのが「世帯主」です。国保税を採用する自治体では、国民健康保険の被保険者がいる世帯について、原則として世帯主が納税義務者となります。
さらに、世帯主本人が会社の健康保険や後期高齢者医療制度などに加入していて国保加入者ではなくても、同じ世帯に国保加入者がいる場合には、その世帯主が国保税の納税義務者として扱われることがあります。これは一般に「擬制世帯主」と呼ばれる仕組みです。厚生労働省も、国保の被保険者ではない者が世帯主となり、世帯員に国保被保険者がいる世帯を「擬制世帯」と説明しています。[参照:厚生労働省 国民健康保険実態調査・用語の解説]
そのため、実家暮らしで住民票上の世帯主が父、子が個人事業主になって国保へ加入したケースでは、父自身が国保加入者でなくても父名義で国保税の通知が届くことがあります。「父名義だから父自身の国保税」とは限らない点が重要です。
父名義の納付書に子の国保税が含まれることもある
国保税は、単純に「父の保険料」「子の保険料」という形で一人ずつ別々に請求されるとは限りません。同一世帯に複数の国保加入者がいる場合、加入者の所得や人数などを基に世帯の国保税額が計算され、それを納税義務者である世帯主へ通知する仕組みが基本です。
例えば、父が会社の健康保険等に加入していて、住民票上は父が世帯主、同じ世帯の子だけが国保へ加入しているとします。この場合、父が国保に入っていなくても、父名義の納税通知書に子の国保税が記載されることがあります。
厚生労働省の国民健康保険税条例準則でも、国保の被保険者資格がない世帯主であっても、世帯内に国保被保険者がいる場合には、その世帯主を国保被保険者である世帯主とみなして国保税を課す仕組みが示されています。[参照:厚生労働省 国民健康保険税条例準則]
それでは本人名義の納付書があるのはなぜ?
問題になるのが、父名義だけでなく子本人名義の納付書もあり、しかも同じ期・同じ納期限になっているケースです。この状況だけを見て「同じ国保税を二重請求された」と断定することはできません。
考えられる原因の一つが、年度途中の資格・世帯情報の変更です。例えば国保への加入、脱退、世帯主の変更、国保上の世帯主変更、転居、所得情報の修正などによって国保税額が再計算されることがあります。
国保税条例準則でも、賦課期日後に世帯主の国保資格が変化した場合や、世帯に新しく国保被保険者が加わった場合などについて、月割りで税額を変更する仕組みが定められています。[参照:厚生労働省 国民健康保険税条例準則]
その結果、変更前の納付書と変更後の納付書が両方手元に残っている可能性があります。自治体によっては変更通知と新しい納付書が送られ、古い納付書を使用しないよう案内されることもあるため、通知書本文まで確認する必要があります。
「高いほうだけ払えばいい」は危険
2種類の納付書があり、一方が5,000円ほど高いからといって、高いほうが最新版とは限りません。金額の大小だけでは、どちらが有効な納付書なのか判断できないからです。
例えば、当初の税額が3万円だったものの、資格変更によって2万5,000円へ減額され、新しい納付書が発行されることも考えられます。逆に加入期間や所得情報の変更によって増額されるケースもあります。
また、同じ「第3期」「第4期」などの表記でも、それは必ずしも特定の1か月分を意味するものではありません。国保税の年間額を自治体が定める複数の納期へ分割しているためです。したがって「同じ第○期だから完全に同じ請求」とも限りません。
まず2通の納税通知書を並べて確認する
自治体へ問い合わせる前に、2通の書類を並べて比較しておくと確認がスムーズです。納付書だけでなく、一緒に送付された納税通知書や税額決定・変更通知書も用意します。
- 年度が同じか
- 納税義務者の氏名
- 通知書番号・整理番号など
- 通知日・発行日
- 年税額
- 各期の納付額
- 納期限
- 「変更」「更正」などの記載
- 国保加入者として誰が計算対象になっているか
特に「通知日」は重要です。後から届いた通知書が税額変更後のものなら、以前届いた納付書の扱いについて説明が記載されていることがあります。
ただし、通知日が新しいからといって自己判断で古い納付書を破棄するのではなく、不明なら自治体へ確認します。誤った納付書を使用すると、その後に充当・還付などの手続きが必要になる場合があります。
個人事業主になった時期と国保加入日も確認する
会社員から個人事業主になった場合、「会社から健康保険料が引かれなくなった日」と国民健康保険の資格取得日は必ずしも表現上同じものではありません。退職等によって勤務先の健康保険資格を喪失し、その後国保へ加入したのであれば、資格取得日に基づいて国保の負担が計算されます。
そのため、去年の夏から個人事業主になったケースでは、国保の資格取得年月日を確認することも大切です。手続きが遅れていた場合などには、加入すべき時点まで遡って保険税が計算され、複数期分の納付書がまとめて届くこともあります。
納付書が何枚もまとめて届いたからといって、直ちに誤請求とは限りません。年度途中の加入や税額変更では、残っている納期へ税額が振り分けられることがあります。
父が定年したことだけでは父名義の納付書が誤りとは判断できない
父が2年ほど前に定年している場合でも、「父の収入ならこんなに国保税が高いはずがない」という理由だけで父名義の納付書を無効とは判断できません。
父が国保加入者なら父自身の所得等が計算に関係しますし、父が国保加入者でなくても世帯主として納税通知書の宛名になる場合があります。また、同一世帯に複数の国保加入者がいれば、それらを含めた世帯単位の税額として通知されることがあります。
国保税の計算方法や料率・税率、納期などは自治体によって異なります。そのため「父なら○円程度」「個人事業主なら○円程度」といった感覚だけで、どちらの納付書が正しいかを判断することはできません。
二重払いを防ぐため自治体にはこう確認する
もっとも確実なのは、住んでいる市区町村の国民健康保険担当または国保税担当へ問い合わせることです。その際、2通の納付書を手元に置いて電話するか、窓口へ両方持参すると話が早くなります。
「同じ年度・同じ第○期・同じ納期限で、父名義○円と自分名義○円の納付書があります。両方有効ですか。それとも一方が変更前の納付書ですか」と確認すれば、自治体側で課税記録を照合できます。
支払うべき納付書が特定できるまでは、「高いほうだけ」「父名義だけ」「自分名義だけ」と推測して支払うのではなく、納期限前に自治体へ確認するのが最も安全です。すでにどちらかを支払っている場合も、その事実を伝えて二重納付や未納扱いになっていないか確認しましょう。
まとめ:同じ期の国保税納付書が2通あっても金額だけで判断しない
国民健康保険税は原則として世帯主が納税義務者となるため、実際の国保加入者が子であっても、住民票上の世帯主である父名義の納税通知書が届くことがあります。父本人が国保加入者ではない「擬制世帯主」のケースもあるため、父名義だから父自身の保険料とは限りません。
一方、父名義と本人名義で、同じ期・同じ納期限の納付書が2種類存在する場合には、世帯主や資格の変更、税額の更正などによって新旧の納付書が混在している可能性がありますが、実際の理由は自治体の課税記録を確認しなければ特定できません。
したがって、高いほうだけを支払うという判断は避け、2通の納税通知書・納付書をそろえて市区町村へ確認するのが正解です。年度、通知書番号、発行日、納税義務者、年税額、各期の金額を伝え、「どちらが現在有効な納付書か」を確認してから支払えば、二重払いと未納の両方を防ぎやすくなります。


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