育児休業に入って給与収入が減ると、貯金が数百万円あっても「育児休業給付が入るまで生活できるだろうか」「子どもが生まれるまでにもっと貯めるべきだったのでは」と不安になりやすいものです。特に双子の場合、おむつやミルク、衣類、ベビー用品などの支出が同時に発生するため、家計への影響も気になるところでしょう。
ただし、育休中の家計を判断するときに重要なのは、貯金額だけを他の家庭と比較することではありません。現在の現預金、配偶者の収入や貯蓄、毎月の生活費、住宅ローンなどの固定費、育児休業給付、児童手当、復職予定時期までをまとめて確認する必要があります。
この記事では、育休中に700万円前後の貯金がある家庭を例に、復職まで資金が持つか確認する方法や、双子家庭で考えておきたい支出、育児休業給付が入るまでの資金管理について解説します。
育休中に貯金700万円は少ない?金額だけでは判断できない
最初に押さえておきたいのは、「出産までに夫婦それぞれ1,000万円を貯めるのが普通」という一般的な基準はないということです。必要な貯蓄額は、住宅費、世帯収入、子どもの人数、雇用状況、実家からの支援などによって大きく異なります。
例えば、本人名義の預貯金が700万円あり、さらに配偶者にも別の貯蓄がある家庭と、700万円が世帯の全金融資産で配偶者の収入もない家庭では、同じ「貯金700万円」でも家計の安全度はまったく違います。
そのため、育休中は「700万円で十分か」という見方よりも、復職までに毎月いくら現金が減るのかを計算した方が実用的です。
復職までの資金は簡単な計算で確認できる
基本的には「現在使える現預金+復職までの収入・給付-復職までの支出」で確認します。ここで重要なのは、投資信託や株式など値動きのある資産ではなく、当面の生活費としてすぐ使える普通預金などを中心に考えることです。
例えば、復職まで8か月あり、育児関連費を含めた世帯支出が月30万円、配偶者の手取り収入などが月25万円なら、単純計算した毎月の不足額は5万円です。8か月なら40万円なので、さらに臨時支出を加えて必要な現金を考えます。
逆に毎月15万円の赤字が続く家庭なら、8か月で120万円減ります。同じ700万円の貯金でも、この「月間赤字額」によって状況は大きく変わります。
育児休業給付金が入るまでの「つなぎ資金」を確保する
会社員など雇用保険の要件を満たす人が育児休業を取得した場合、育児休業給付金の対象になることがあります。厚生労働省によると、育児休業給付金は原則として育児休業開始から180日目までは休業開始時賃金日額を基礎とした67%、181日目以降は50%の給付率で計算されます。実際の金額には上限などがあり、勤務先から育休期間中に賃金が支払われる場合などには給付額が変わることがあります。[参照:厚生労働省 育児休業等給付Q&A]
また、育児休業等給付は非課税で、一定の要件を満たす育児休業中は社会保険料の免除もあります。そのため「給与がなくなる=それまでの手取りが丸ごと不足する」と単純計算する必要はありません。
一方で注意したいのが、給付金を受け取るタイミングと日々の支払いタイミングにはズレが生じる可能性があることです。住宅ローン、クレジットカード、食費、光熱費などは待ってくれないため、給付金をまだ受け取っていない期間を乗り切れる現金を普通預金などに確保しておくことが大切です。
2025年4月から出生後休業支援給付金もスタート
2025年4月には「出生後休業支援給付金」も創設されています。一定の条件を満たした場合、最大28日間について従来の育児休業給付等の67%に13%が上乗せされ、合計80%となります。社会保険料免除や非課税を考慮すると、厚生労働省は手取り10割相当と説明しています。[参照:厚生労働省 育児休業等給付について]
適用には育休取得期間などの条件があるため、全員が自動的に80%になるわけではありません。勤務先の人事・労務担当者やハローワークに、自分の場合の対象期間と見込み額を確認しておくと家計計画を立てやすくなります。
双子の場合は児童手当も2人分を家計に入れて考える
育児期間の収入を考える際には児童手当も確認しておきましょう。現在の児童手当制度では、3歳未満の児童について原則として1人あたり月額15,000円が支給されます。第3子以降については金額が異なります。[参照:こども家庭庁 児童手当制度のご案内]
例えば双子が第1子・第2子に当たるケースなら、制度上の月額は2人合計で3万円となります。ただし児童手当は毎月振り込まれるのではなく、原則として偶数月に2か月分ずつ支給される仕組みです。
したがって家計簿では月3万円相当の収入として考えることはできますが、実際の銀行口座への入金タイミングとは分けて管理する方が安全です。
双子育児で予算を多めに見ておきたい支出
双子だからといって、すべての費用が単純に2倍になるわけではありません。住宅費やインターネット料金、家具など家族で共用できる支出がある一方、おむつ、ミルク、衣類など人数に比例しやすい費用もあります。
特に最初の数か月は予定していなかったベビー用品を買い足すことがあります。「ベビー用品はすでに全部そろえた」と考えるより、追加購入用の予備費を設定しておく方が安心です。
| 支出 | 家計管理のポイント |
|---|---|
| おむつ・おしりふき | 双子では消費ペースが速いため月予算を確保 |
| ミルク | 授乳方法によって支出が大きく変わる |
| 衣類 | 成長が早いため買い過ぎに注意 |
| ベビーカー・チャイルドシート | 高額な初期費用として別枠管理 |
| 医療・交通費 | 通院や移動に備えて予備費を設定 |
| 住宅ローン・家賃 | 育休中も変わらない固定費として最優先 |
育児用品を細かく節約すること以上に、住宅ローン、自動車、保険、通信費などの固定費を含めた世帯全体の毎月の支出額を把握することが重要です。
700万円で復職まで持つかをシミュレーションする方法
例えば手元資金が680万円あり、復職まで8か月と仮定します。毎月の世帯支出が35万円、配偶者の給与や各種給付を平均すると月25万円相当なら、毎月の不足額は約10万円です。
このケースなら8か月の不足額は約80万円です。さらに家電の故障、医療費、冠婚葬祭などに50万円の予備費を見込んでも、単純計算では約130万円を準備すれば復職まで対応できる計算になります。
もちろん実際には育児休業給付の金額や入金時期、住宅ローン、配偶者の収入、賞与などによって結果は変わります。そのため、次のように3パターン程度で試算すると判断しやすくなります。
| ケース | 毎月の赤字 | 8か月の取り崩し額 |
|---|---|---|
| 支出を抑えられた場合 | 5万円 | 40万円 |
| 標準ケース | 10万円 | 80万円 |
| 支出が増えた場合 | 20万円 | 160万円 |
このように計算すると「700万円しかない」という漠然とした不安を、「復職まで最大160万円程度取り崩す可能性がある」と具体的な数字に置き換えられます。
「出産前に1,000万円必要」という情報に振り回されない
SNSや知人の話では「子どもが生まれる前に500万円必要」「夫婦それぞれ1,000万円は必要」など、さまざまな金額が出てきます。しかし家庭によって収入、住居費、住宅ローン残高、教育方針、親からの援助、子どもの人数が違う以上、一律の正解はありません。
例えば貯金1,000万円でも住宅ローンやその他の固定費が大きく毎月30万円を取り崩す家庭と、貯金500万円でも配偶者の収入だけで生活費をほぼ賄える家庭なら、後者の方が育休期間中の資金繰りが安定している場合があります。
見るべきなのは周囲の貯金額ではなく、自分の家庭のキャッシュフローです。
育休中は投資より生活防衛資金を優先する選択肢もある
NISAなどで資産形成をしている家庭でも、育休中は普段より多めに現預金を残しておく考え方があります。株式や投資信託は必要なときに価格が下落している可能性があるため、数か月以内に使う予定のお金まで投資に回すのは慎重に考える必要があります。
特に双子育児では突発的な支出も考えられます。復職までに必要な生活費に加えて、数か月分の生活費や臨時支出用のお金を普通預金などですぐ使える状態にしておくと、給付金の入金が想定より遅れた場合にも対応しやすくなります。
復職して給与収入が安定した後、余裕資金を確認してから投資額を戻す方法でも遅くありません。
育休中に確認しておきたい家計チェックリスト
復職までの資金計画を立てるときは、まず以下の項目を一度書き出してみましょう。
- 現在すぐ使える預貯金はいくらあるか
- 配偶者の毎月の手取り収入はいくらか
- 育児休業給付金の見込み額はいくらか
- 給付金の申請状況はどうなっているか
- 児童手当はいくら受け取れるか
- 住宅ローン・家賃など固定費はいくらか
- 食費・光熱費・通信費はいくらか
- 双子の育児用品に毎月いくら必要か
- 復職まであと何か月あるか
- 家電故障などに備える予備費はいくら確保するか
この数字が分かれば、「復職までに必要な金額=毎月の不足額×残り月数+臨時支出用の予備費」という形で、おおよその必要資金を計算できます。
育児休業給付については制度改正もあるため、最新の条件や自分の受給見込み額は勤務先やハローワークで確認するのが確実です。厚生労働省には育児休業中の給付金を確認できる試算ツールも用意されています。[参照:厚生労働省 産休・育休中の経済的支援かんたん試算ツール]
まとめ:貯金額の平均ではなく復職までの収支で判断しよう
育休中の家計では「貯金700万円は多いか少ないか」「出産時に1,000万円必要なのか」といった金額だけを比較しても、十分かどうかは判断できません。大切なのは、現在の現預金、配偶者の収入、育児休業給付、児童手当、毎月の固定費、双子の育児費、復職までの期間をまとめて確認することです。
特に育児休業給付を受け取るまでの期間は、住宅ローンや生活費を支払えるだけの「つなぎ資金」を現金で確保しておくことが重要です。給付金を含めても毎月赤字になる場合には、その赤字額に復職までの月数を掛ければ、必要な取り崩し額をかなり具体的に把握できます。
双子育児では予定外の支出も起こり得るため、計算上ぎりぎりまで使うのではなく予備費も残しておきましょう。周囲の「出産までに○○万円必要」という数字より、自分たちの家庭のキャッシュフローを確認することが、育休期間を安心して乗り切るための現実的な家計管理につながります。


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