年金を受給していた親や家族が亡くなった場合、遺族が行う手続きの一つに年金に関する死亡手続きがあります。厚生年金では死亡届が必要なケースについて原則10日以内と案内されているため、死亡直後は葬儀などで忙しい中、急いで準備しなければならないと感じることもあるでしょう。
ところが、死亡届を市区町村へ提出しても戸籍への死亡事項の記載がすぐに完了するとは限りません。そのため、年金の手続きに戸籍抄本などが必要だと思って役所へ行ったものの、まだ死亡が戸籍に反映されていないというケースがあります。
ここでは、日本年金機構が公表している情報をもとに、年金受給者が亡くなった際の死亡手続き、戸籍への反映が間に合わない場合に確認したい書類、未支給年金との関係まで整理します。
年金受給者が亡くなると年金を受ける権利はなくなる
公的年金を受給している人が亡くなると、その人自身が年金を受け取る権利はなくなります。そのため、必要な場合には日本年金機構へ「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出します。
死亡届が必要な場合、日本年金機構は厚生年金などについて10日以内、国民年金について14日以内に届け出るよう案内しています。提出先は原則として年金事務所または街角の年金相談センターです。障害基礎年金や遺族基礎年金のみを受給していた場合など、手続き先が市区町村になるケースもあります。
ただし、現在は重要な例外があります。日本年金機構に亡くなった人のマイナンバーが収録されている場合、年金受給権者死亡届は原則として提出不要とされています。したがって、まず「そもそも死亡届の提出が必要なケースなのか」を確認することが大切です。
日本年金機構の最新案内は[参照]年金を受けている方が亡くなったとき(日本年金機構)で確認できます。
戸籍に死亡がまだ反映されていなくても戸籍だけが証明書ではない
死亡手続きを急いでいるときに戸籍抄本を取得しようとしても、役所側の処理が完了しておらず、死亡の記載がまだ反映されていないことがあります。この場合に押さえておきたいのが、死亡の事実を証明する書類は戸籍抄本だけではないという点です。
日本年金機構は、年金受給権者死亡届に添付する「死亡の事実を明らかにできる書類」の例として、次のような書類を案内しています。
- 住民票の除票
- 戸籍抄本(亡くなった日より後に交付されたもの)
- 市区町村長に提出した死亡診断書・死体検案書などのコピー
- 死亡届の記載事項証明書
つまり、戸籍への反映を待つ以外にも手続きに利用できる書類が存在します。また、日本年金機構に亡くなった人のマイナンバーが収録されている場合には、死亡事実を証明する書類自体が不要となる場合もあります。
実際にどの書類で受理されるかは個別の状況によって確認が必要なため、戸籍がまだ更新されていない場合は、期限が過ぎるまで待つのではなく、年金事務所へ連絡し「死亡届は提出が必要か」「現在用意できる書類で手続き可能か」を確認するのが確実です。
「10日以内なのに戸籍が取れない」ときの考え方
厚生年金について「10日以内」という期限を見ると、10日以内に戸籍の更新から書類の取得、年金事務所への提出まですべて完了させなければならないと焦りがちです。しかし、遺族側ではコントロールできない行政処理の時間もあります。
そのような場合に、戸籍が完成するまで何もしないという対応はおすすめできません。まず年金事務所へ事情を伝え、必要な手続きと代替できる添付書類を確認するのが実務的です。死亡診断書等のコピーなど、手元にある書類で対応できる可能性があります。
例えば、死亡届を市役所へ提出した翌日に年金の手続きを始めようとしたところ、戸籍にはまだ死亡事項が記載されていなかったとします。この場合、「戸籍が完成するまで数週間待とう」と自己判断するのではなく、年金事務所へ連絡し、死亡診断書のコピーや住民票の除票などで対応できるか確認する流れが安全です。
なお、死亡届が必要にもかかわらず手続きが遅れ、死亡日の翌日以後の期間について本来受け取れない年金が振り込まれた場合、その分について後から返還が必要になることがあります。
年金は死亡した瞬間から全額もらえなくなるわけではない
年金の死亡手続きで混同しやすいのが「死亡後に振り込まれた年金は全部返さなければならない」という考え方です。公的年金は原則として亡くなった月の分まで支給対象となります。
年金は後払いで支給されるため、死亡時点で本人がまだ受け取っていない年金が残っていることがあります。このような年金については、一定の要件を満たす遺族が「未支給年金」として請求できる場合があります。
例えば、親が年金を受給している途中で亡くなり、死亡した月までの年金の一部がまだ振り込まれていなかった場合、その年金が単純に消滅するとは限りません。亡くなった人と生計を同じくしていた一定の遺族が未支給年金を請求できる制度があります。
死亡届だけでなく「未支給年金」の手続きも確認する
年金受給者が亡くなったときは、年金を止めることだけに意識が向きがちですが、遺族にとっては未支給年金の確認も重要です。日本年金機構では、未支給年金を受け取れる遺族がいる場合、「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」によって死亡の手続きと未支給年金の請求を行えるようにしています。
未支給年金を受け取れる可能性がある遺族には順位があり、亡くなった人と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他一定の3親等内の親族が対象となり得ます。
未支給年金を請求する場合には、亡くなった人と請求者との続柄を確認する書類などが必要になります。この場面では戸籍関係書類が必要になることがあるため、死亡届そのものの手続きと未支給年金請求に必要な書類を分けて考えることがポイントです。
詳しい必要書類や対象となる遺族については[参照]年金受給権者死亡届兼未支給年金・未支払給付金請求書について(日本年金機構)で確認できます。
戸籍が反映されていないときに進めたい手順
親が亡くなった直後で戸籍への死亡記載がまだ完了していない場合は、まず亡くなった人が受給していた年金の種類や基礎年金番号が分かる資料を確認します。年金証書や年金振込通知書などが残っていれば、相談時に役立ちます。
次に、最寄りの年金事務所へ連絡し、亡くなった人のマイナンバーが日本年金機構に収録されているため死亡届が不要となるケースかどうか、死亡届が必要なら現在準備できる書類で手続き可能かを確認します。
- 亡くなった人の年金証書や基礎年金番号が分かる資料を探す
- 死亡届が必要なケースか年金事務所へ確認する
- 戸籍が未反映であることを伝える
- 住民票の除票、死亡診断書等のコピー、死亡届の記載事項証明書など利用可能な書類を確認する
- 未支給年金がある場合は、その請求に必要な書類も確認する
戸籍ができるまで何もせず待つのではなく、現在の状況を年金事務所へ伝えて手続きを進めることが重要です。
死亡後に年金が振り込まれてもすぐ使わない
死亡情報と年金の支払い処理には時間差があるため、亡くなった後に本人名義の口座へ年金が振り込まれることがあります。ただし、振り込まれたからといって、その全額を自由に使ってよいとは限りません。
死亡した月までの分については未支給年金として遺族が受け取れる可能性がありますが、死亡後の期間に対応する過払い分が発生していれば返還が必要になる場合があります。そのため、手続きが整理される前に口座から引き出して生活費などへ充てることは避けたほうが安全です。
「死亡後に振り込まれた=すべて返還」「死亡後に振り込まれた=すべて遺族のもの」のどちらとも限らないため、年金事務所の案内に従って処理することが大切です。
まとめ|戸籍の反映を待つだけでなく年金事務所へ早めに相談する
年金受給者が亡くなった場合、死亡届が必要なケースでは厚生年金等は原則10日以内、国民年金は14日以内とされています。ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されている受給者については、死亡届が原則不要となっています。
また、死亡届が必要でも、死亡を証明する書類は戸籍抄本だけではありません。住民票の除票、死亡診断書等のコピー、死亡届の記載事項証明書などが利用できる場合があります。そのため、役所で戸籍を取得しようとして「まだ死亡が反映されていない」と言われても、そこで手続きが完全に止まるとは限りません。
さらに、亡くなった月までの年金で本人が受け取っていないものについては、一定の遺族が未支給年金として請求できる可能性があります。死亡手続き、未支給年金、必要書類は個々の受給状況によって異なるため、戸籍への反映が間に合わない場合ほど早めに年金事務所へ事情を伝え、利用できる書類を確認することが確実です。


コメント