給与明細や確定申告を確認すると、所得税は0円なのに住民税だけが課税されていることがあります。一見すると同じ所得にかかる税金なので不思議に感じますが、所得税と住民税は別の税金であり、税率だけでなく、基礎控除などの所得控除額、非課税になる基準、課税される時期も異なります。
特に大きな理由は、所得税が0円になる所得水準と、住民税が非課税になる所得水準が同じではないことです。そのため、所得税では控除によって課税所得が0円になっても、住民税では課税対象となるケースがあります。
また、所得税は基本的にその年の所得に対して課税されるのに対し、住民税は前年の所得をもとに翌年度に課税されます。この時間差によって「今は収入が少ないのに住民税だけ引かれている」という現象が起きることもあります。
この記事では、所得税が0円でも住民税が発生する仕組みについて、2026年時点の制度を踏まえながら、給与収入の具体例、基礎控除の違い、均等割・所得割、前年課税の仕組みまで整理します。
- 所得税と住民税はそもそも別の税金
- 所得税0円でも住民税がかかる最大の理由は非課税ラインの違い
- 具体例|給与収入120万円なら所得税0円でも住民税が発生することがある
- 所得税と住民税では基礎控除額が違う
- 所得税だけ基礎控除が拡大されても住民税が同じように下がるとは限らない
- 住民税には「所得割」と「均等割」がある
- 住民税の非課税基準と基礎控除は同じものではない
- 住民税は前年の所得に対して翌年課税される
- 今年の所得税が0円でも前年の収入が多ければ住民税がかかる
- 退職後に住民税の請求が来るのも同じ理由
- 所得税と住民税では扶養控除などの金額も異なる
- 所得税の税率と住民税の税率も違う
- 給与から所得税が引かれていない=年間所得税が絶対0円とは限らない
- アルバイト・パートでは「110万円前後から住民税」を意識することがある
- 2026年分以降は住民税の非課税ラインも変化する
- 住民税がいくらかかるかは所得だけでは決まらない
- 住民税には森林環境税もあわせて請求される
- 具体例|前年は会社員、今年は無職の場合
- 具体例|アルバイト年収130万円の場合
- 住民税が高いと感じたら通知書の「所得年度」を確認する
- 所得税0円なのに住民税が高すぎると思った場合の確認方法
- 所得税と住民税の違いを一覧で比較
- まとめ|所得税と住民税は「税金がかかり始めるライン」と課税時期が違う
所得税と住民税はそもそも別の税金
所得税と住民税は、どちらも個人の所得に関係する税金ですが、納める相手が異なります。
所得税は国へ納める「国税」です。一方、個人住民税は都道府県や市区町村へ納める「地方税」です。
国税庁も、所得税を国税、個人住民税を地方税として分類しています。そのため計算方法や控除額、非課税基準などが完全に同じである必要はありません。
所得税0円でも住民税がかかる最大の理由は非課税ラインの違い
給与収入だけの人を例にすると分かりやすくなります。2026年度の住民税について、横浜市では給与収入が110万円以下で、扶養親族がいないなど一定の条件の場合、住民税が非課税になる例が示されています。
一方、所得税では2025年分以後の制度改正によって給与所得控除や基礎控除が拡大され、一定の所得層では給与収入160万円以下なら所得税がかからないケースがあります。
つまり、例えば給与収入が120万円や130万円程度の場合、条件によっては所得税は0円なのに、住民税は課税されるということが起こります。
所得税の課税最低ラインのほうが住民税の非課税ラインより高いため、その間の収入帯では「所得税0円・住民税あり」になりやすいという仕組みです。
[参照] 横浜市「アルバイト収入と税金はどのように関わっているのでしょうか」
具体例|給与収入120万円なら所得税0円でも住民税が発生することがある
扶養親族がいない給与所得者で、年間給与収入が120万円だったケースを考えます。
2026年度住民税の計算では、給与収入が一定額以下の場合、給与所得控除の最低保障額は65万円です。120万円から65万円を差し引くと給与所得は55万円になります。
横浜市の例では、住民税が非課税となる合計所得金額の基準は45万円以下です。そのため給与所得55万円なら非課税基準を10万円上回り、住民税が発生する可能性があります。
一方、所得税では給与所得控除に加えて所得税独自の基礎控除を差し引くため、所得税の課税所得が0円になり、所得税そのものは発生しないケースがあります。
所得税と住民税では基礎控除額が違う
所得税と住民税には、所得から一定額を差し引く「基礎控除」がありますが、その金額は同じではありません。
2026年度課税の個人住民税では、合計所得金額2,400万円以下の場合の基礎控除は43万円です。
一方、所得税では2025年分以降、所得金額に応じて基礎控除額が見直されており、低所得層では住民税より大きな基礎控除が適用される仕組みになっています。
この控除額の違いも、所得税では課税所得が0円になるのに住民税では所得が残る理由の一つです。
所得税だけ基礎控除が拡大されても住民税が同じように下がるとは限らない
近年のいわゆる「年収の壁」見直しでは、所得税の基礎控除が大きく変更されています。
しかし、住民税については所得税とまったく同じ基礎控除額へ変更されたわけではありません。横浜市も、所得税の基礎控除改正について「基礎控除の改正は所得税のみ」であり、住民税の基礎控除には同様の改正がないと案内しています。
このためニュースなどで「○万円まで所得税がかからない」と聞いても、それがそのまま「○万円まで住民税もかからない」という意味にはなりません。
住民税には「所得割」と「均等割」がある
所得税は基本的に課税所得へ税率を掛けて計算しますが、住民税には主に「所得割」と「均等割」という仕組みがあります。
所得割は、前年の所得から各種所得控除を差し引いた課税所得などをもとに計算する部分です。
一方、均等割は所得金額に比例するのではなく、一定以上の所得がある人へ定額で課税される部分です。さらに現在は森林環境税も個人住民税とあわせて徴収されます。
そのため所得が比較的少なく、住民税の所得割が小さい場合でも、非課税基準を超えていれば一定額の負担が生じることがあります。
住民税の非課税基準と基礎控除は同じものではない
「住民税の基礎控除が43万円だから、所得43万円までは非課税」と考えることがありますが、厳密には基礎控除と住民税の非課税判定は別の仕組みです。
住民税には、所得割や均等割を課税しないための「非課税限度額」が設定されています。
例えば横浜市では、扶養親族がいない場合の住民税の非課税限度額として合計所得金額45万円以下という基準が示されています。
扶養親族がいる場合、障害者、未成年者、寡婦、ひとり親など一定の条件に該当する場合には非課税基準が異なります。そのため単身者と子どもを扶養している人では、同じ所得でも住民税の課税・非課税が変わる場合があります。
住民税は前年の所得に対して翌年課税される
所得税と住民税で非常に大きな違いが、課税されるタイミングです。
所得税は基本的に、その年に得た所得に対する税金です。給与所得者なら毎月の給与から源泉徴収され、年末調整によってその年の所得税を精算します。
一方、住民税は前年1月1日から12月31日までの所得をもとに翌年度の税額が計算されます。
例えば2026年度の住民税は、原則として2025年1月1日から12月31日までの所得を基礎として計算されます。
今年の所得税が0円でも前年の収入が多ければ住民税がかかる
住民税が前年所得をもとに計算されるため、現在の収入だけを見ていると「なぜ住民税が来るのか分からない」ということがあります。
例えば2025年に会社員として年収400万円あり、2026年に退職して無職になったとします。
2026年の現在は給与がないため所得税の源泉徴収も0円ですが、2026年度住民税は2025年の年収400万円をもとに計算されるため、住民税の請求が来ます。
これは二重課税ではなく、所得税と住民税で課税タイミングが異なるために起こる現象です。
退職後に住民税の請求が来るのも同じ理由
会社員の間は住民税が毎月の給与から特別徴収されているため、税金を自分で払っている感覚が薄いことがあります。
退職すると給与天引きができなくなり、残りの住民税について市区町村から納付書が届く場合があります。
退職後に収入がなく、所得税を1円も払っていなくても、前年に一定の所得があれば住民税を払う必要があります。
そのため退職・転職を予定している場合には、翌年の住民税分も生活費として確保しておくと安心です。
所得税と住民税では扶養控除などの金額も異なる
基礎控除だけでなく、扶養控除、配偶者控除、障害者控除などの人的控除にも、所得税と住民税で金額が異なるものがあります。
例えば一般の控除対象配偶者について、条件を満たす場合の住民税の配偶者控除は33万円です。一方、所得税では異なる控除額が設定されています。
そのため源泉徴収票に記載された所得控除額と、自治体から届く住民税決定通知書の所得控除額が一致しないことがあります。
横浜市も、個人住民税と所得税では基礎控除額や扶養控除額など一部の控除基準が異なるため、両方の金額が一致しない場合があると案内しています。
[参照] 横浜市「個人市民税・県民税・森林環境税の納税通知書に関するよくある質問」
所得税の税率と住民税の税率も違う
所得税は超過累進税率が採用されており、課税所得が増えるにつれて5%、10%、20%というように税率が上がっていきます。
住民税の所得割は原則として市町村民税と都道府県民税を合わせた一定の税率を基本として計算されます。
つまり所得税と住民税は「同じ課税所得に同じ税率を掛けている税金」ではありません。
税率、控除、非課税基準、課税時期がそれぞれ異なるため、所得税が0円で住民税だけが数千円・数万円発生することは制度上珍しいことではありません。
給与から所得税が引かれていない=年間所得税が絶対0円とは限らない
給与明細で所得税が0円になっている場合でも、それだけで最終的な年間所得税が0円と確定しているとは限りません。
所得税の給与天引きは、給与額や扶養人数などをもとにした源泉徴収税額表によって行われます。
複数の勤務先から給与を受けている、副業収入がある、給与以外の所得があるといった場合には、確定申告によって所得税が発生する可能性があります。
逆に給与から所得税が引かれていても、年末調整や確定申告によって還付され、最終的な所得税額が0円になる場合もあります。
アルバイト・パートでは「110万円前後から住民税」を意識することがある
給与収入だけで扶養親族がいない人について、2026年度住民税では横浜市の例で給与収入110万円以下なら住民税非課税となります。
そのため年間給与が110万円を少し超えた人は、所得税がかかっていないにもかかわらず住民税が発生する可能性があります。
例えば年間給与130万円なら、所得税が0円となる条件を満たしつつ、住民税は課税対象という組み合わせが考えられます。
ただし、住民税の非課税基準には自治体や扶養人数、本人の状況による違いがあります。全国一律に「110万円を1円超えたら必ず住民税」という意味ではありません。
2026年分以降は住民税の非課税ラインも変化する
税制は毎年同じとは限りません。2026年時点でも給与所得控除などについて追加の改正が予定されています。
例えば横浜市は、2026年分の給与収入を基礎として計算する2027年度住民税について、扶養親族がいない一般的なケースでは給与収入119万円以下が非課税となる例を案内しています。
これは給与所得控除の最低保障額が改正されることによるものです。
したがって「住民税は○万円まで非課税」という数字を調べるときには、何年分の収入・何年度の住民税についての情報なのかを確認することが重要です。
住民税がいくらかかるかは所得だけでは決まらない
住民税の金額は単純に年収だけを見て決めるものではありません。
給与収入から給与所得控除を差し引いて所得を計算し、さらに社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、扶養控除など、その人に適用される所得控除を差し引きます。
そのため同じ年収200万円でも、扶養家族がいる人といない人、社会保険料を多く支払っている人などでは住民税額が異なる場合があります。
住民税決定通知書を見ると、「所得」「所得控除」「課税標準」「所得割額」などが記載されているため、自分の税額がどのように計算されたか確認できます。
住民税には森林環境税もあわせて請求される
現在は個人住民税の均等割とあわせて、国税である森林環境税も徴収されています。
そのため自治体から届く納税通知書には「市民税」「県民税」に加えて「森林環境税」が記載されている場合があります。
所得税が0円であっても、住民税の非課税要件を満たしていなければ、住民税と森林環境税の負担が生じることがあります。
通知書の合計額だけを見るのではなく、税額の内訳まで確認すると理解しやすくなります。
具体例|前年は会社員、今年は無職の場合
2025年に年収350万円で会社員として勤務し、2026年1月に退職した人を例にします。
2026年は収入がほぼなければ、その年の所得税は0円になる可能性があります。
しかし2026年度住民税は、2025年の年収350万円をもとに計算されます。そのため2026年6月頃から住民税の納付書が届くことがあります。
「今無職なのに税金が来た」というケースは、この前年所得課税が理由です。
具体例|アルバイト年収130万円の場合
扶養親族がいない人が給与収入130万円を得たケースを単純化して考えます。
所得税については、給与所得控除や基礎控除などによって課税所得が0円となり、所得税が発生しない可能性があります。
しかし住民税については、給与所得控除後の所得が住民税の非課税限度額を超えるため、翌年度に住民税が課税される可能性があります。
このケースでは、所得税と住民税で税金が発生するラインが違うことが直接の理由です。
住民税が高いと感じたら通知書の「所得年度」を確認する
住民税の通知が届いて「今年そんなに稼いでいないのに高い」と感じたら、まず何年の所得をもとに計算されているか確認しましょう。
2026年度の住民税なら、原則2025年中の所得が計算基礎です。
2026年に転職して給与が下がったとしても、2025年に高い所得があった場合は2026年度住民税が高くなることがあります。
逆に2026年の所得が低ければ、その影響が住民税に反映されるのは原則として2027年度です。
所得税0円なのに住民税が高すぎると思った場合の確認方法
住民税額に疑問がある場合は、勤務先から渡される「給与所得等に係る市民税・県民税・森林環境税特別徴収税額の決定通知書」や、市区町村から届く納税通知書を確認します。
前年の給与収入、給与所得、所得控除、扶養人数などが自分の認識と一致しているか確認してください。
例えば年末調整で扶養控除が反映されていない、確定申告した社会保険料控除が反映されていないなどの可能性もあります。
計算根拠が分からない場合は、所得税については税務署、住民税については1月1日時点の住所地の市区町村税務担当部署へ問い合わせるのが基本です。
所得税と住民税の違いを一覧で比較
| 項目 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 税金の種類 | 国税 | 地方税 |
| 納付先 | 国 | 都道府県・市区町村 |
| 課税時期 | 原則その年の所得 | 前年所得をもとに翌年度課税 |
| 基礎控除 | 所得に応じて住民税と異なる | 原則43万円など |
| 非課税ライン | 所得税独自の計算 | 自治体の非課税基準あり |
| 税率 | 累進税率 | 所得割は原則一定税率を基本 |
| 均等割 | なし | あり |
このように制度そのものが別なので、一方が0円だからもう一方も自動的に0円になるわけではありません。
まとめ|所得税と住民税は「税金がかかり始めるライン」と課税時期が違う
所得税が0円なのに住民税だけがかかることは、制度上十分にあり得ます。
最大の理由は、所得税と住民税では控除額や非課税基準が異なり、税金がかかり始める所得水準が同じではないためです。
例えば2026年度住民税について横浜市の一般的な例では、扶養親族がいない給与所得者なら給与収入110万円以下が住民税非課税となる一方、所得税では一定の所得層について給与収入160万円以下でも課税されないケースがあります。その間の収入であれば、所得税0円・住民税ありという状態が起こり得ます。
さらに、所得税と住民税では基礎控除などの金額も違います。2026年度住民税の基礎控除は合計所得金額2,400万円以下なら43万円ですが、所得税では低所得層を中心により大きな基礎控除が設定されています。
もう一つ重要なのが課税される時期です。所得税は基本的にその年の所得に対して計算されますが、住民税は前年の所得をもとに翌年度課税されます。そのため退職して現在の所得税が0円でも、前年に給与収入があれば住民税の請求が来ることがあります。
したがって「所得税が0円だから住民税も0円のはず」と考えるのではなく、①前年の所得はいくらだったか、②住民税の非課税基準を超えていないか、③所得税と住民税それぞれの控除額はいくらか、の3点を確認すると理解しやすくなります。
なお、住民税の非課税基準は扶養人数、未成年者・障害者・ひとり親など本人の状況、自治体によって異なる場合があります。また税制改正によって給与所得控除なども変化しているため、「年収○万円なら絶対に非課税」という数字だけで判断せず、対象年度を確認することが大切です。
自分の住民税額に疑問がある場合は、住民税決定通知書に記載された前年所得と所得控除を確認し、市区町村の税務担当窓口へ問い合わせると具体的な計算根拠を確認できます。
[参照] 横浜市「アルバイト収入と税金はどのように関わっているのでしょうか」


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