50歳以上になると、ねんきん定期便には老齢年金の「見込額」が表示されるため、老後に受け取れる年金額を具体的にイメージしやすくなります。ただし、勤務先に企業年金制度がある人は、「この見込額には企業年金も含まれているのか」という点に注意が必要です。
ねんきん定期便は、基本的に日本年金機構が管理する公的年金の加入記録をもとに作成されています。そのため、勤務先独自の企業年金や企業型確定拠出年金などが、すべてまとめて表示されているわけではありません。
一方、「企業年金」という言葉には企業年金基金、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金、過去の厚生年金基金など複数の制度があり、厚生年金との関係も制度によって異なります。老後の収入を計算するときは、ねんきん定期便と企業年金を分けて確認することが大切です。
ねんきん定期便に記載されるのは基本的に公的年金
ねんきん定期便は、日本年金機構が国民年金・厚生年金保険の加入者へ毎年誕生月に送付しているものです。加入期間、これまでの保険料納付額、年金額などを確認できます。
50歳以上の人に送付されるねんきん定期便では、現在の年金制度への加入条件が60歳まで継続すると仮定して計算した「老齢年金の種類と見込額」が示されます。したがって、記載されている金額を「これまで積み立てた金額」や「会社からもらえる退職年金を含めた老後収入の総額」と考えないことがポイントです。
日本年金機構によると、50歳以上の年金見込額は現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定して計算されます。具体的な記載内容や計算条件については、日本年金機構の案内で確認できます。[参照:日本年金機構「ねんきん定期便」]
一般的な企業年金はねんきん定期便の金額とは別に考える
会社員の老後資金には、公的年金とは別に勤務先が用意する企業年金が存在することがあります。代表的なものが確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(企業型DC)です。
こうした企業年金は、公的年金である国民年金や厚生年金保険そのものとは別の制度です。そのため、ねんきん定期便に表示された老齢基礎年金・老齢厚生年金の見込額に、勤務先の企業年金から将来受け取る金額が単純に上乗せされて表示されているわけではありません。
例えば、ねんきん定期便の見込額が年額180万円で、勤務先の確定給付企業年金から別途年額30万円を受け取れる見込みだったとします。このケースでは、単純化すれば老後の年金収入を検討する際に「180万円+30万円」というように別々の制度として把握する必要があります。ただし、企業年金の受給額や受給期間、受給開始年齢などは制度ごとに異なります。
企業型確定拠出年金(企業型DC)も別に確認する
企業型確定拠出年金は、事業主が拠出した掛金などを加入者自身が運用し、その運用結果によって将来の給付額が変化する仕組みです。公的年金とは異なる制度なので、その資産残高をねんきん定期便から確認することはできません。
企業型DCへ加入している場合は、制度を運営する記録関連運営管理機関などから提供される情報や加入者向けウェブサイトなどで、現在の資産残高、掛金、運用状況を確認します。
例えば、ねんきん定期便に公的年金の見込額として年額200万円と表示され、企業型DCに800万円の資産があったとしても、「年額200万円」の中へ800万円が含まれているわけではありません。公的年金の見込額と確定拠出年金の資産は別々に把握する必要があります。
確定給付企業年金(DB)も勤務先などで確認する
確定給付企業年金(DB)は、加入期間などに基づく給付の内容があらかじめ定められている企業年金制度です。企業によって制度内容が大きく異なるため、将来の受給額については勤務先の規約や企業年金基金などの案内を確認する必要があります。
「会社には企業年金があるはずだが、自分がいくら受け取れるのか分からない」という場合は、人事・総務部門や企業年金を運営している基金などに確認するとよいでしょう。退職時に一時金として受け取る選択肢と、年金として受け取る選択肢が用意されている制度もあります。
また、転職経験がある人の場合、以前勤務していた会社の企業年金に関する権利が残っていたり、資産を別制度へ移換していたりすることもあります。現在の勤務先だけを確認すれば十分とは限りません。
注意したい「厚生年金基金」の扱い
企業年金について調べる際に少し複雑なのが、かつて広く利用されていた厚生年金基金です。厚生年金基金には、国の老齢厚生年金の一部を国に代わって給付する「代行部分」が存在していました。
そのため、過去に厚生年金基金へ加入していた人については、「企業年金は全部ねんきん定期便とは別」とだけ理解すると正確でない場合があります。日本年金機構も、厚生年金基金の加入期間がある場合のねんきん定期便について、基金の代行部分を含めた年金額が表示される旨を案内しています。
一方で、基金独自の上乗せ部分まで、ねんきん定期便の年金見込額としてすべて表示されるという意味ではありません。厚生年金基金の加入歴がある人は、企業年金連合会なども含め、自分の記録を個別に確認することが重要です。[参照:企業年金連合会]
50歳以上のねんきん定期便の「見込額」は確定額ではない
50歳以上のねんきん定期便に記載される見込額について、もう一つ重要なのが将来必ずその金額を受給できると確定した通知ではないという点です。
50歳以上では、現在の年金制度への加入条件が60歳まで継続すると仮定して見込額が計算されます。その後に退職して厚生年金から外れたり、給与水準が変わったりすれば、実際の年金額も変わる可能性があります。
また、年金を何歳から受給するかによっても金額は変化します。老齢年金には繰上げ受給・繰下げ受給の仕組みがあるため、老後の資金計画では「ねんきん定期便に書いてある金額」だけを見るのではなく、受給開始時期も含めて検討する必要があります。
老後にもらえる金額は3つに分けると整理しやすい
会社員が老後の収入を確認するときは、すべてを「年金」という一つの数字にまとめるより、制度ごとに分けた方が分かりやすくなります。
| 種類 | 代表例 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 公的年金 | 老齢基礎年金・老齢厚生年金 | ねんきん定期便・ねんきんネット |
| 企業年金 | 確定給付企業年金(DB) | 勤務先・企業年金基金など |
| 確定拠出年金 | 企業型DC・iDeCo | 各制度の記録・運営管理機関など |
| その他の老後資金 | 退職金・個人年金保険・預貯金など | 勤務先・金融機関など |
例えば、公的年金が月15万円相当、企業年金が月3万円相当だった場合、老後収入を考える際には両方を確認します。ただし、企業年金が終身給付とは限らず、10年間・15年間など一定期間のみ受給する制度もあるため、「毎月18万円が生涯続く」と単純計算しないことが重要です。
より詳しい年金額は「ねんきんネット」でも確認できる
公的年金について詳しく確認したい場合には、日本年金機構の「ねんきんネット」が便利です。自身の年金記録を確認できるほか、条件を設定して将来の年金見込額を試算できます。
特に50代では、退職する年齢や年金を受け取り始める年齢によって老後の資金計画が大きく変わります。ねんきん定期便を入口として、ねんきんネットの試算機能を利用すると、より具体的に検討できます。[参照:日本年金機構「ねんきんネット」]
そのうえで勤務先の企業年金や確定拠出年金の見込額を別途確認し、最後に合算すると、老後に受け取れる収入の全体像を把握しやすくなります。
まとめ|ねんきん定期便と企業年金は分けて確認しよう
50歳以上のねんきん定期便に記載される年金見込額は、基本的に老齢基礎年金や老齢厚生年金といった公的年金についての金額です。一般的な確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(企業型DC)の給付まで全部まとめた「老後にもらえる総額」ではありません。
ただし、過去の厚生年金基金には老齢厚生年金の代行部分があるため、加入歴がある人は少し注意が必要です。「企業年金は一切含まれない」と一律に判断せず、過去の勤務先や加入制度も確認すると正確です。
老後資金を把握するなら、ねんきん定期便・ねんきんネットで公的年金を確認し、勤務先や企業年金基金などで企業年金を確認するという二段階で考えるのが分かりやすい方法です。さらに企業型DC、iDeCo、退職金なども加えて整理すれば、実際の老後収入に近い見通しを立てやすくなります。

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